ストーリーをどこから始めるか考え中です。
序章
とある村
ここに幸せな家庭があった。
その家は四人暮らし(父母兄妹)で、父母は元冒険者。兄妹は12歳と9歳で、非常に仲が良いと近所でも知られていた。
「おにーちゃん!早くいこう!」
「わかったからそう急かすなってコマチさんや」
「あーもうこのバカ、ボケナス、ハチマン」
「おい、最後のは悪口じゃないだろうが」
「えーコマチわかんないー」
「はあ……置いてくぞ」
「ちょ、待ってよお兄ちゃん!」
家を出ると、農家のおじちゃんと出会った。普段から野菜をくれたりする優しいおじちゃんだ。
「おーおはようさん。今日も元気がいいね~」
「あ、おじちゃんおはよう!」
「おはよう」
「相変わらず仲がいいなぁお前たちは」
「そうなのです。コマチとお兄ちゃんは見えない赤い糸で結ばれているのです」
「おい、恥ずかしいからやめろ」
「はっは!コマチちゃんは本当にハチマンのこと好きだな~」
「大好きだよ☆」
「これからも仲良くな。あと、これやるよ」
おじちゃんが投げてよこしたのは新鮮なトウモロコシだった。
「さっきとれたばっかりのものだ。なに、きちんと洗ってあるから生で食べられるぞ」
「おおー!おじちゃんありがとう!」
「サンキュー」
兄妹はおじちゃんと別れ、トウモロコシを食べながら自分たちの畑へと向かう。
「モグモグ………やっぱりトウモロコシっておいしいよね」
「そうだな」
兄妹は自分たちの畑へと向かっている。
この村は全体が農業を生業としており、ハチマンのところも畑を持つ農家だ。
「おおーい、来たよー」
「ハチマン。力仕事手伝ってくれ」
「あいよ」
「コマチはこっちで選別作業ね」
「ほいさっさ」
このようにハチマンやコマチも畑仕事を手伝っている。
この村の規模はそれなりにある。だが、村人はあまり多くない。そのため自然と一人一人の所有地が大きくなり、農家では子供達も手伝っているところが多い。
「よっこいせっと」
「ハチマンー力逃げてるぞ」
「ホントに?」
「ああ。足腰にもっと力を入れてやれ」
「わかった」
時間が過ぎて昼の時間帯となった。
「おにーちゃーん!!」
「フベフッ!」
「はいこれ。昼ごはん」
「ありがとう。あとコマチちゃん、いきなり突撃するのは止めようね」
「ごめんちゃい」
「はあ~」
こんな感じで、この村で平和な生活を営んでいたハチマンとコマチ。
だが、彼らの人生は今日の夜に180度変わることとなる。
***
夜
「ああ~今日もつかれたぁ~」
俺――――――ハチマン・ヒキガヤは家の敷き布団上でボーっとしていた。
この時間がすごく幸せなんだよな~
だが、すぐにこの幸せの時間は壊されることとなった。
ボアアアアア。
ギャアアアアアアアア!!
キャアアアアアアア!!
誰かー!!
グアアアアアアアアアアアア!!
ん?騒がしいな……。
そんなことを思っていると、奥から親父とお袋がコマチを連れて現れた。
その姿はいつもの農家の格好ではなく、どこか狩人を彷彿とさせるものだった。
「ハチマン。お前に頼みがある」
「は?」
「コマチと一緒に早く逃げろ」
「何言ってんだよ………何があったんだよ。それになんだその格好は」
「よく聞け。村に大量のモンスターが現れた。この村で戦えるのは俺たちだけだ」
「そう。ハチマンも知っているでしょう?私たちは元冒険者。これ以上の適任はいないのよ」
「でも!」
「ッ!いかん。時間がない!急げ!ハチマン!」
「私たちもモンスターを倒してすぐに向かうから。南の方を目指して!早く!」
「ッ!!死ぬなよ!」
ハチマンは嫌な胸騒ぎを覚えながら、寝ているコマチを抱えて駆けだした。
これが、親子最後の会話になるとも知らずに。
***
「はあ、はあ」
ハチマンは肩で息をしながら、森の中を駆けていた。
途中にゴブリン等のモンスターが出るが、おかまいなしにかわしてひたすら走る。
「はあ、はあ……ぐあ」
森を抜けた後、さすがに限界が来たらしいハチマンは足を止め、コマチを下におろして自身も腰を下ろした。
「親父たちはまだか……」
キン!キン!
村の中で剣が振るわれていた。
「ふッ」
「ガぁああああ」
「これで二十体目だな」
ハチマンの父――――――ゴロウ・ヒキガヤはあたりを見渡す。
ゴロウは元冒険者であり、妻であるサエコ・ヒキガヤと結婚した後この村に来て暮らしていた。
冒険者としてのLvは4。オラリオでいう第二級冒険者。
妻であるサエコはLv.3であるが、こちらも強かった。
二人からしてみればダンジョンほどの強い相手は存在しないためどんどんモンスターを狩っていった。
そしてそんな中ソイツは現れた。
『グルルルルルル・・・』
ドラゴンである。
しかも黒い。
かの三大クエストの一角である黒龍よりかはかなり劣るだろうが、それでも脅威に値するほどのものだった。
推定Lvは5か6。
(くっ!どうする!?あいつは他のモンスターとは格が違う。戦っても倒せるかどうか・・・・)
ゴロウは考える。なにが最善かを。
そして選択した。
(ここで倒さなければ・・・あいつらにまで被害が及ぶかもしれん。それは絶対に避ける!)
ゴロウは愛する家族のためなら何だってできるタイプの人間だ。
そのためにここで逃げだすという選択肢は選ばなかった。
「あなた。私も戦うわ」
「小枝子……」
「さ、早く倒して、あの子たちと合流するわよ」
「わかってる。いくぞ!」
二人は黒龍に向かって駆け出した。
***
翌日
ハチマンはいまだに平原にいた。
(くっそ、なんでこないんだ)
そう、両親が来ないからである。
昨日の深夜、凄まじい爆音が鳴り響いたときに、ハチマンはモンスターたちが消滅していくのを目のあたりにしている。だから、両親が来ないのがおかしいと分かっている。
「んんっ~おにい、ちゃん?どしたの?」
「コマチ」
「ここは?え?なんで平原にいるの?」
「それはな……」
ハチマンは昨日の出来事を簡潔に話した。
「じゃ、じゃあもうモンスターはいないんだね」
「多分な。だが何故か親父たちが帰ってこない」
「え!?そ、それって…」
「待てコマチ。まだ決まったわけじゃない。今から確認しに行こうと思う」
「わかった。コマチも行く」
「行こう」
二人は村へと向かい歩き出した。
***
「酷い」
「なんだよ、これ」
二人が見たのは変わり果てた村の姿だった。
「うわぁ、私たちの家がボロボロだ……」
「マジか………」
二人が住んでいた家はボロボロにされており、屋根がなかった。
「入って見るか」
「うん」
二人は中に踏み入る。
「………こんなものだな」
ある程度のがれきをどかし、自室にあったものをそれぞれ整理していた。
「おにいちゃん」
「ん?どうしたコマチ」
「これ」
コマチが差し出したのは大人の人間の約四分の三ぐらいの大きさの黒い尻尾だった。
「これが家に突き刺さってた」
「まあ、持ってとくか」
ハチマンはそれを引きずりながら、コマチとともに両親の捜索を続けた―――――――――――――
「そ、んな……………うそ」
「なんで…………なんで、なんでだよ!?」
そして二人が発見したのは――――――――すでに息絶えた両親だった。
***
時は遡ること深夜。
二人の夫婦冒険者VS黒龍の戦いは熾烈を極めていた。
だが、家族愛が強かったのか、ゴロウとサエコは黒龍に致命傷を与えることに成功していた。
「よし、これならいける!」
「ええ!」
二人はとどめを刺そうと黒龍へと向かっていった瞬間だった。
『ヴオオオオオオオオオオオオオオッ!!』
「「!!」」
「ゴハッ」
「グッ!」
黒龍は最後の力で波動のようなものを飛ばしてきたのだ。
一体だれが想像できるだろうか。
二人はそれをもろに食らってしまったのだ。
(ああ………俺はもう生きながらえることはできない)
ゴロウは黒龍の方を見ながら、もう動かない口の代わりに胸の内で叫ぶ。
(だが、黒龍は討った。これであの子たちまで被害は及ばない。良かった……)
そしてゴロウとサエコは、息を引き取った。
「くっそ!なんでだよ。なんでなんだよ!!」ポロポロ
「うっ、そんな、うっうっ、ぐすっ………」ポロポロ
二人は悲しみに暮れていた。
しかし、そんなところに邪魔者が現れる。
「グギャ」
「「!!」」
そうゴブリンである。
「こんなときに!コマチ、絶対に兄ちゃんから離れるんじゃねーぞ!」
「うっ………うん!」
ハチマンはゴブリンの攻撃を簡単にいなしたりかわしたりして応戦した。
いつもならナイフで一撃だが、手元に今はない。
だが両親が冒険者ということもあり、たまに手ほどきを受けていたのが功をそうした。
「ふっ!」
「グギャ!」
渾身の右ストレート。
ゴブリンは倒れる。それをチャンスと見るや、ハチマンはゴブリンにのしかかり、拳で滅多打ちにする。
まるで、行き場のなかった怒りをぶつけるように。
「…………殺った、か?」
「…………うん」
そのうちにゴブリンは動かなくなった。
本来なら魔石を取るところだが、今はそれどころではない。
「親父…………お袋………」
「お兄ちゃん…………これからコマチ達どうしたらいいの!?家も荒らされて、お父さん達も殺されて!?もう、なにも考えられないよ」
「ああ。今は泣くしかない、よな」
そして二人の兄妹は静かに泣き始めた
***
昼時
ハチマンとコマチは両親を埋葬していた。
「やっぱ家の近くがいいよな」
「そうだね」
ということで、家の近くに両親を埋葬し終えたハチマン達だったが、問題があった。
これからの生活をどうするかだ。
「で、これからどうする?俺はここで死ぬ気はないぞ。親父たちの分まで生きて、モンスターを殺してやる」
「コマチもここで死にたくない」
「あ、そうだ…………ここに行こう」
「ん?どこ?」
ハチマンが持っている日誌の中には『迷宮都市オラリオ』と記してあった。
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