やはり俺たちのオラリオ生活はまちがっている。   作:シェイド

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今回はハチマンの魔法お披露目と新人鍛冶師との出会いをお送りします。


新人鍛冶師

次の日の朝

 

ハチマンは朝食を食べた後、幹部とともにダンジョンに出向いていた。

理由はもちろん、ハチマンの魔法の確認だ。

 

「……なるほどな。それは確かに規格外の魔法だ。私の魔法より断然使える」

「それはないですよ」

「どうしてだ?」

「これ使うと魔力の消費が激しいんですよ。1日1回が最大なんです」

「……いや、お前の魔力は規格外だからな。これからLvが上がるたびにもっと多くなると考えたら……末恐ろしいにも程があるぞ」

「がっはっは!リヴェリアがそう言うなら間違いないのだろうな」

「……Lvってどうやったら上がるんですか?」

「そう言えばハチマンにはまだ伝えていなかったね。Lvが上がると言うのは器の昇華のことでね。つまりは『偉業』を成し遂げればいいんだ」

「『偉業』……」

「確かに今のハチマンのステータスであればランクアップは可能だろう。『偉業』を成し遂げられればの話だがな」

「『偉業』と言っても人それぞれじゃぞ。Lv.1なら……11、12階層に出現するレアモンスター、インファントドラゴンを討伐すればランクアップできるようになるはずじゃ」

「けど正直不安だね。今のハチマンにはどんなことをすれば『偉業』と認められるのか……。食糧庫を一人で二つも掃討したのにただステータスが激上がりしただけだからね」

 

そう。ハチマンのステータスはすでにLv.1でも1,2を争うほどのステータスのはずだが、ランクアップが認められていない。

 

「ステータスを見ると耐久が異常に低いな。いつもどうやってモンスターを狩ってるんだ?」

「いつもは魔法使って倒したり、防具の上でモンスターの攻撃を滑らせたりして防いで反撃していますが」

「絶対それが原因だね」

「それだけ技術がしっかりしているということだが……」

「攻撃を受けないから耐久のアビリティ値が上がらないということじゃな」

 

四人でここに来た目的も忘れて考え込む。すべてはハチマンのステータスのせいだ。

 

「俺は強くなりたいんです」

「それは前にも聞いたね。それで?」

「お願いします!お三方に稽古をつけてほしいです!」

「ほう」

 

ハチマンが考えついたのは主要幹部に教えを請うことだ。

ベテランであり屈強な冒険者である彼らと日々特訓すれば自ずと強くなれると踏んだのだ。

 

「それはいい案だね」

「儂たちの暇さえあれば付き合うぞ」

「では、私とは魔法の練習と勉強をしよう。知識はあればあるだけ役に立つからな」

「フィン、ガレス、リヴェリア・・・・ありがとう!」

 

ハチマンはこの日から、三人を呼び捨てで呼ぶようになるのであった。

 

 

***

 

 

その後ハチマンは当初の目的であった【闇影】の怒りの場合の効果を三人見せ、三人を驚かせた。

そのあとは各魔法の理解を深めて、今日のお披露目は終了した。

現在、ハチマンは三人と別れてバベルに来ている。

理由とすればファイた……神ヘファイストスが創り出した人格を持つ剣に会いに行くことと、自らの装備を強化するためにだ。

 

「えーっと……これどうしたら入れるんだろうか?」

 

前回は神(ロキ)の付き添いだったからすんなりと入ることが出来たが、今回はハチマン一人だ。

結局、未だあまりコミュ力の高くないハチマンは、先に武器や防具を見て回ることにした。

 

「こうして回って見ると色んなのが売ってあるよな」

 

ヘファイストスファミリアは鍛冶系のファミリアで、団員数はオラリオでも多い方だ。

その団員達が鎬を削りながら売りだす武器や防具は色々な種類があった。

 

「値段は……高っ」

 

Lv.2以上の鍛冶師が作った武具は、ヘファイストスブランドもので高い性能のかわりに値段が高く、80万ヴァリスを所持しているハチマンでも手が出せないものばかりだった。

 

「どこかに安いものは……あっ、あったあった」

 

ハチマンが見つけたのはまだLv.1の新米鍛冶師が作った武器や防具が置かれているコーナーだった。

まだLv.1で発展アビリティ『鍛冶』を持っていない彼らは、このように売りながら鎬を削っているのだ。

一つ一つ見ていく……だったが、あるものに目を惹かれた。

 

「おっ、この太刀いいな。昔親父が使ってたのと似てる」

 

ハチマンが目を付けたのはある太刀であった。

刀身の色は真っ白であり、結構丈夫な仕様になっていた。

 

「価格は……29000ヴァリス!これ絶対買う得だろ。もっと探せばこれと同じ掘り出し物がありそうだし、探してみっかな」

 

ハチマンはその太刀を手に取り、また一つ一つ武具を見て行った。

 

 

***

 

 

武具を見て回っていると、前からヘファイストス様が現れた。

 

「あら?ハチマン君じゃない。来ていたなら声かけてくれたらいいのに」

「あ、ヘファイストス様。お久しぶりですね」

「また他人行儀で……もっと柔かくしていいのに」

「妹曰く、俺は最初距離感がわかっていないだけらしいですよ」

「妹がいるの?」

「はい。世界一可愛い妹です」

 

この一言を言った際、黄昏の館で嬉々とした表情をする少女がいたが、今はほうっておこう。

 

「兄妹愛なんて素敵ね。今日はどんな用件で来たの?」

「アイツに会いに来たのと……武器や防具を見に来ました。今んとこはこの太刀とこのメタルアーマーを購入しようかと思っています」

「あら。その太刀と防具は……もう会計するかしら?」

「お願いします」

 

合計で58000ヴァリスとなったがその場で払い、俺はヘファイストス様について行ってアイツがいる客室に案内してもらった。

 

「それでハチマン君。ちょっと君に会わせたい人がいるんだけど会ってくれるかしら?」

「構わないですけど……」

「じゃあ今から連れてくるから、それまでその子とお話ししてね」

「わかりました」

 

じゃあちょっと待っててっと言ってヘファイストス様はどこかに行ってしまった。

それにしても俺に会わせたい人って誰なんだ?

 

『きっとその武具の作り主だよ』

「うおっ!いきなり話しかけてくんなよ。ビビったじゃねーか」

『久しぶりだね☆ハチマン☆』

「ちょっとそのしゃべり方ウザいんだが……で、作り主って?」

『その太刀とメタルアーマーを製作した人だよ。僕は結構ここにいてヘファイストス様と鍛冶師の話を聞くんだけどね。鍛冶師にはある冒険者の専属鍛冶師になることが基本らしくて……』

「それで俺とソイツを会わせようってか?」

『そうだと思うよ』

「ちょっとドキドキしてきたな……厳ついやつだったらどうしよう」

『大丈夫だって』

「なんかお前に言われるとなんとかなりそうに思えてきたわ」

『えへへ~なんか嬉しいな~』

 

いつの間にか周りが客間から不思議な空間に変わっていた。

 

どうやら剣の方に意識を持ってかれたらしい。

 

『ねえねえ、この一週間何してたー?聞かせてよ!』

「おう」

 

 

***

 

 

俺はここ一週間の出来事を話した。

コマチや他の団員とのダンジョン探索、フィンやリヴェリア、ガレスとの会話。ロキの我儘に困ったり、そしてコマチと二人で行った7階層での出来ごと。

新しいスキルや魔法を教え、7階層の食糧庫を掃討したことを伝えた。

 

そしたら……、

 

『う、うぅ………ハチマンは辛かったんだね』

 

泣いちゃったよこの子。

 

『悩みとかあったらいつでも僕に言ってね!力になるからさ!』

「……ありがとな」

 

コイツは俺を励ましてくれるんだな。素直にうれしい。

 

『ところでさっき言ってたスキルと魔法だけど、早熟なんて聞いたことないよ。味方を庇う魔法も知らなかったし……どっちもレアじゃん』

「まぁな」

強者願望(シュタルクノゥト)ね……。ハチマン焦ってるの?強くなるには時間が必要だよ』

「それでも、俺は強くならなくちゃいけないんだ、強く。あんな思いはもうしたくないんだ」

『…………でもね、ハチマン。それで周りに迷惑かけていい理由にはならないんだよ』

「……迷惑なんてかけてねー『かけてるよ』!?」

『ハチマン。これは僕のただの勘でしかないし、推測でしかない。それでも聞いてね?』

「……」

『多分、君のとこの主神や団長は頭を抱えたはずだよ。もちろんレアスキルやレアな魔法を覚えたこともあるけど……それよりも君のその感情をどうするか悩んだはずだよ』

「………」

『強くなりたい気持ちは結構。だけどそればっかりに夢中になって大事なことを忘れてはいないかい?』

「!?」

『妹の看病に行ってないんでしょ?』

「………ああ」

『君は大切なものを忘れていたんだよ。あ、ヘファイストス様来たからまたね~』

 

僕っ子はそのまま俺の意識を身体に戻していった。

 

 

「……大切なこと、か」

 

 

確かに俺は忘れていたんだろう。コマチですらも放っておいて、ただ強くなろうとした。

 

「帰ったら怒られるだろうなぁ」

 

コマチの外出禁止は今日まで。つまりもう歩き回れるはずだ。

 

「ごめんなさい遅くなって。さ、入って入って」

 

入口の方を見るとヘファイストス様が俺と同じくらいの歳であろう少年を連れてきていた。

 

「お前が俺の太刀とアーマーを買ってくれたのか?」

「そうだぞ」

「そうかそうか。ついに俺の作品の良さをわかってくれる奴が現れてくれたんだな」

「いやいや、いい武器と防具だと思うぞ。もっと金取って良かったと思うぜ。俺なら10万ヴァリスまでは払ったな」

「おお~俺の作品をそこまで評価してくれるとは……やっぱ分かる奴には分かるんだな!」

「あ、言ってなかったな。俺はハチマン・ヒキガヤ。【ロキファミリア】所属の冒険者だ。ちなみに歳は12歳だ」

「俺はリク・シュトラウス。ヒキガヤと同じ12歳の鍛冶師だ。と言ってもまだLv.1なんだけどな」

「俺もLv.1だぞ」

「……マジかよ。お前雰囲気がLv.1のそれじゃないんだが……」

「そうか?」

「まぁそこは置いといてだ。ヒキガヤ。いや、ハチマン!俺をお前の専属鍛冶師にしてくれないか!?」

「いいぜ」

「いいのか!?」

 

だってまだ新米である俺みたいな奴の専属鍛冶師になってくれるって言ってくれてんだぜ?断る理由があるわけないだろ。

 

「じゃあ、これからよろしくな!ハチマン!」

「こちらこそだ」 

 

後に伝説の鍛冶職人と呼ばれるようになる二人が契約を結んだ瞬間だった。

 




とりあえずオリキャラのステータス書いときますね。

リク・シュトラウス 男 12歳 ヒューマン

所属 【ヘファイストスファミリア】

Lv.1

 力:F321
耐久:F305
器用:H103
敏捷:I79
魔力:I0


【ヘファイストスファミリア】所属の新人鍛冶師。ヘファイストスの作品を見て、自分も作りたいと思ったのがきっかけで鍛冶師の道へ。
夢はヘファイストスを超える武具の作成。

見た目は髪の色が青のかなり整った顔立ちの少年。将来的にイケメンになるのは間違いない。

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