タイトルにはこうありますが、多分ハチマンがモンスターを狩る部分の方が多くなっていると思われます。
それと前の話の後書きに太刀と鎧とサラマンダーウールの詳細載せました。
「本当にダンジョン内に街があるのか………」
俺は辺りをぐるりと見渡す。
ここ、18階層は入るとすぐに目に入るものがあった。
そう、街である。
もちろん地上よりか立派な建物はそうそうないし、規模もそこまでではないが、確かにダンジョン内に街があった。
今までリヴェリアなどから話だけは聞いていたが、なるほど、これが百閒は一見にしかずというものなのだろうか。
とりあえず探索しようと決めて、俺は街に向かって歩いて行く。
ここ、18階層はダンジョン内で数層しかないモンスターが生まれない場所であり、冒険者たちには
街の名前はリヴィラと言い、今まで300回以上壊されてきたがそのたびに冒険者らが修復し直してきた歴史がある。
俺はまず街の中で目ぼしい店をいくつか決め、とりあえず売られている商品を見る。
ええっと………ポーションが2000ヴァリス!?マジックポーションは3000ヴァリスだと!?
なんというぼったくりだろうか。地上で買えば500ヴァリスあれば手に入る品をここで買うにはその4倍~払わなければならないなんて、俺なら買う気になれない。
だが、それでも買うものはいる。
何故なら唯一ダンジョン内で回復アイテムが買える場所であり、いくらそれがぼったくりな値段をしていようと、人間、命は惜しいのだ。
もし、金が勿体無いからと言って、不十分なままの装備やアイテムでここから地上へと帰還する際に
俺がここに来たのは単純に興味本位だったということと、リヴィラの街の頂上付近から見える18階層全体の絶景を見るためである。それが終わったら、また特訓だ。
正直もっと街を探索してみたい気になるが、リヴェリアからの忠告の中にあった、『リヴィラの街では、地上では扱えない法外なものが売買されている』という事柄に関しては、結構ヤバい予感がするので今回はある程度の街の雰囲気や店、メインストリートっぽい部分だけにしておこう。
***
「おお~これは中々にいい景色だな。今度コマチと一緒に来るか」
街をだいたい見回った俺は、その街を出て少し下に下ったところで18階層全体の景色を見ていた。
この18階層は他の階層のような迷路や仕切りは存在せず、円形状の大空間になっている。階層をぐるりと囲うように立っている岩壁は水晶が咲いている天井まで続いていた。
実は18階層の構図はリヴィラの街が山の頂上付近にあり、その下らへんでは今俺が見ているように、階層全体を見渡せる場所がある。そしてこの山を下ったところに17階層へと続く洞窟が存在している。
まあ、つまりは下から順に17階層へと登る洞窟<リヴィラの街となっている。
19階層は北の方角にある洞窟から行くことが出来る。17階層へと登る洞窟は南の方角だ。
「さて、今日は良いもん見れたし良い日だったな。………ミノタウロス狩りに行こうっと」
俺はそのまま山を下り、17階層へとつながる洞窟から上へと登って行った。
***
『ヴオオオオオオオオ!!』
「おっ、出たな30体目」
リヴィラの街を出てから数刻後のこと。
俺は今日通算30体目になるミノタウロスに狙いを定めていた。
正直言ってミノタウロスがもう敵ではない。
最初の20体まではギルドの支給品のナイフで倒していたが、ちょっとめんどくさくなってきたので『白銀』を抜き、斬り倒してみたのだが…………ミノタウロスが驚くぐらい簡単に切り裂けた。
それはもう料理している時の野菜を切る作業と同じくらいの手応えで斬ることが出来るようになっていた。
はっきし言おう。ミノタウロス数体では相手にならない。
俺は天然武器を用いてくるミノタウロスの攻撃を飛んでかわし、そのまま『白銀』で両腕を断ち切る。
ミノタウロスが痛みでだろうが絶叫しているが容赦はしない。するわけがない。
これがアルミラージなら考えたかもしれないが、ミノタウロスみたいな見るからに危険モンスター、人害モンスターな奴に容赦なんてする奴はいないだろう。
両腕を失ったミノタウロスは角を前に出した前傾姿勢、つまりは本気の体制をとり攻撃する構えを見せている。
対して俺はと言うと、ごく自然に右手で『白銀』を持ち、いつでも斬れる状態でミノタウロスを見据える。
もちろん先に動くのはモンスターであるミノタウロスであり、それはミノタウロスの敗北を意味する。
前傾姿勢になると、ミノタウロスはさらに凶暴化して攻撃力が上昇するが、回避が簡単になる。つまりは懐に潜ってしまえば終わりなのだから。
そうしてミノタウロスの懐に入り込んだ俺は両足を切断し、ミノタウロスをダルマ状態にする。
中々に滑稽な姿になったミノタウロスを切り刻んで殺し、落ちた魔石とドロップアイテムを回収する。
正直もうミノタウロスの角はありすぎて困る。リクの奴に相談してみよう。何か良い武器の素材に使えるかもしれない。
「そろそろ帰らないと夕飯に間に合わないな。帰ろ」
俺はそそくさと地上を目指した。
***
ダンジョンから帰還した俺は、まず初めにバベルで冒険者ならだれでも使用可能なシャワールームに入って汗を流し、それから換金所にて魔石をヴァリスに変えた後、俺はリクがいるであろう《ヘファイストス・ファミリア》の武器・防具販売所へと足を運んだ。
「―――――――――それで?ミノタウロスの角は何個あるんだ?」
「5個だな。前の分のストックと合わせると10個ある」
「それだけあったらなんでも作れそうだが・・・とりあえずなにが良い?」
「うーむ、悩むところではあるが、ショートナイフは頼めるか?それも二つ」
「おう、まかせとけ。必ずハチが納得のいく得物を作り上げるからな」
「そこに関しては心配してねぇって。お前の腕を疑ったりはしてねえよ」
「ま、俺もまだまだルーキーポジなんだ。もっと鍛冶師として頑張らねえとな」
「ああ。じゃ、俺はいつも通りアイツと話してから帰るとするわ。ところで何日ほどで出来そうだ?」
「まあ多めに五日ほど見ておいてくれ」
「わかった。じゃあ一週間後に受け取りに来る」
「おう。それまでにいい物作っとく」
「期待しとくぜ」
俺はリクにショートナイフを二本頼み、それからアイツがいる客間へ向かった。
「よっ、久しぶりレイ」
『ん?おおハチマンじゃんか!久しぶりだね。元気にしてた?』
「おう。お前も元気そうで何よりだ」
『もう、お前じゃなくてレイって呼んでよ』
「悪かったよレイ」
『よろしい』
ちなみに今まではアイツとこの剣のことを呼んでいたが、実はこの剣には名があったらしく、名をダーインスレイヴ。秘剣だの聖剣だの言われてきたものの、誰一人として扱えきれなかったもの凄いほどの力を秘める宝剣である。
ちなみに今一度言うが、一人称はボク。そして見た目は女。中身も女。所謂僕っ子である。
レイという名はアイツが『なにか愛称的なので呼んでほしい』と言ってきたため、ダーインスレイヴのレイをとってレイと呼ぶことにした。
『ええ!?もうLv.2になったの!?凄いねハチマン!!』
今は最近の出来事を話しているところだ。
「まあ
『それに僕を使いこなせるように毎日特訓しているようだしね!』
「おいっ、それ誰から聞いた!?」
俺がレイ本人に言うわけもないので、違う奴が言ったことになる。
『ここの部屋でリク君がヘファイストス様に伝えてたのをこっそり聞いてただけ』
「やっぱりリクか……」
俺のことを勝手に話す奴はコマチとリクの二人だけ。そしてコマチがレイのことを知らないならば必然的に犯人はリクということになってくる。
「今度なんて言ってやろうか……!」
『まあまあ落ち着いてよハチマン。別にいいじゃん。僕は嬉しかったんだし』ニヤニヤ
「くっ、なんかめちゃくちゃ恥ずかしいぞこれ」
『しまいには「まだ足りない。アイツを使いこなすためには、まだ足りないんだ!」だっけ?』ニマニマ
「もうやめて!!」
結局俺はレイに弄られ続け、今日は羞恥に悶える日となった。
必ずリクに仕返しすると息巻いて、俺はレイに「また今度な」っと簡単に挨拶をしてから黄昏の館に戻ってきて、飯やなんやを食べた後、自分の部屋で眠りに着いた。