やはり俺たちのオラリオ生活はまちがっている。   作:シェイド

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そういえばいつの間にかUA100000超えていました。正直びっくりしています。
見てくださっている読者の方々、ありがとうございます。




ダンジョン⑤

「んー………ふぁぁ」

 

俺は自室に差し込んでくる日の光を浴びて目を覚ました。

とりあえず体を動かして眠気を覚まし、朝のランニングへと向かう。

ルートはオラリオ全体をぐるりと囲む城壁の上だ。結構な横幅があるため走るのには苦労しない。この時に綺麗な朝日を拝むことが俺の日課の一つになっている。朝日を見ると、今日も一日頑張ろうって気持ちになる。うん、暖かい朝日が気持ちいい。

ランニングを終えた後は朝食作りだ。

本来なら当番制なのだが、ロキの奴が俺だけ週三で料理作れと命令したため俺だけ週の半分は厨房に立っている。

最初は嫌々だったのだが、団員達やロキがおいしいー!と言いながら食ってくれているため悪い気はしない。人は自分の料理を褒められると悪い気分にはならないのがよくわかった。

 

「お兄ちゃん!今日の献立は?」

 

俺が調理を開始しようとしたら最愛の妹、コマチが現れた。そう、最愛の妹だ。大事なことなので二回言いました。

 

「今日はサンドウイッチだな」

「ふーん、中身は何ー?」

「色々な具材を作っておいて、その中から自分の好きな具材を挟んで食べるって言う形にしようって思う」

「おいしそーだねそれ。ま、お兄ちゃんの料理でおいしくないものなんてないけどねー。あ!今のコマチ的にポイント高い!」

「はいはい」

 

出た。最近はやりのポイント制度。

なんなのかはわかんないが、いきなりコマチがポイント制度たるものを始めたのだ。最初は不思議だったが、今ではもう突っ込む気にさえならない。

少しぶぅ垂れてしまったコマチはほっといて、俺は調理を再開する。

20分ほどで具材は完成。パンもスライスして皿に載せて行く。

ちなみに具材はトマトをはじめとした野菜を潰して調味料と混ぜ合わせた野菜のソースと少し濃いめの肉のソテーっぽい奴。そして芋を蒸かして潰したものの三つだ。

正直朝から時間のかかる料理をする気にはならないので手抜きである。それでも考えはしたけど。

他の団員が作ったスープやサラダなども完成し、それらを食卓へ運んでいく。

 

「それじゃあ皆、いただきますやー!」

 

ロキの合図で団員たちは食べ始める。

今日はロキのところで朝食をとることにした。相変わらずロキがうるさかったが、俺が作ったサンドウィッチには満足したらしく、めっちゃうまいで!なんやこれはハチマン!とか言ってくれたので良しとしよう。

他の皆も朝食には満足してくれたようで良かったです。

 

朝食後、食器を洗い終えた俺はいつも通りダンジョンに行くかフィン達に稽古をつけてもらうか、考えながら自室へと戻る。

そして今日は稽古にしようと思って『白銀』と『銀零』を装備してフィンのいる執務室を訪ねる。

フィンはいつも通り書類と向き合っていて、俺に気がつくと声をかけてくる。

 

「おはようハチマン。朝食おいしかったよ。それでどうしたんだい?」

「稽古をつけてもらおうと思ってきたんだが………忙しそうだからまた今度にするよ」

「そう?じゃあ今日はダンジョンに行くのかい?」

「そうなるな」

「少し待っててくれないか?この書類が片付いたら今日は何もないんだ。僕もファミリアの団長なんてやってるとダンジョンに行く機会が減ってね。ハチマンとの稽古もいいんだけど、たまにはダンジョンにも行きたいからね」

「わかった」

 

俺は黄昏の館の入り口で待っている旨を告げた後、執務室をあとにした。

暇な時間は悩んだ末にロキにステイタス更新をしてもらおうと思いロキの部屋へ。

 

「ロキー、ステイタス更新頼んでいいか?」

「ええでええで。ハチマンのステイタスは最近のうちの楽しみの一つでもあるしな」

 

ロキの了承が得られたので、俺は『銀零』を外して下着も脱ぎ、上半身裸になる。

ロキが更新している間、俺はフィン・ディムナという団長の情報を思い浮かべていた。

フィン・ディムナ。小人族で唯一のLv.5で第一級冒険者。《ロキ・ファミリア》団長であり、オラリオ内の多くの女性冒険者の憧れでもある。人気は高い。頭も切れる。

また得物として槍を使う。その腕は一級品。マジで凄い。それと状況に応じてらしいがナイフも使うし殴ることもある。ナイフも一級品らしい。

そして彼には野望がある。衰退した小人族を再興するという野望が。これはロキから聞いた話だが、ロキとは利害関係で協力しているのに過ぎないため、最優先事項はファミリアより小人族の再興らしい。

俺が思うにフィンは話しやすい。泰然とした穏やかな物腰の人物で、俺の疑問や提案もしっかりと聞いてくれる。理想の上司みたいな人物だ。実際上司だけど。

 

「終わったで~」

 

そんなことを考えている内に更新が終わったらしい。

俺は下着を着た後にロキから今回の更新内容を見せてもらう。

 

 

ハチマン・ヒキガヤ

Lv.2

 

 力:F343(+1657)

耐久:G219(+1462)

器用:D576(+2320)

敏捷:D524(+2516)

魔力:E496(+3081)

孤独:E

 

《魔法》

 

悪夢(ナイトメア)

・付与魔法

・補助魔法

 

闇影(ダークシャドウ)

・闇を完全に支配できる

・詠唱式【我は闇と同化する者なり 我は闇を従える者なり】

・詠唱連結。詠唱は本人の感情により、怒りの場合は眼が赤黒く染まる。

・闇を形作ることであらゆるものを形成できる

 

自己犠牲(サクリファイス)

・特定の味方が受けるダメージを肩代わり出来る

・詠唱式【我は庇いたい 彼の者の苦痛は我に与えられよ】

・詠唱連結。詠唱は本人の感情による

・-------------------

 

 

《スキル》

 

闇の加護(ダークブレス)

・闇の一部を意識することで使用可能

・戦闘時における魔力アビリティの高補正

・-------------------

 

強者願望(シュタルクノゥト)

・早熟する

・想いが続く限り効果持続

・想いの丈により効果向上

 

 

ふむ、まぁまぁといったところだろうか。

前回よりはある程度伸びた。そして器用と敏捷が抜きん出ている。やはりあの特訓の成果だろう。

 

「ハチマンは努力もしとるし、実際強いからそこまで言わんけど、最近は闇派閥(イヴィルス)とか色々物騒やからな。そこらへんとこは気ぃつけてや」

「わかったよ」

 

ロキの忠告をしっかりと聞いた後、俺はロキの部屋をあとにして黄昏の館門前へと向かった。

 

 

***

 

 

そのあと数分待っていたらフィンが来たため、俺達は連れだってダンジョンへと向かう。

 

「今日はどこまで行くんだいハチマン?」

「出来れば18階層ぐらいだな。俺の最高到達階層は18だし」

「もう18階層まで行ったのか………さすがだと言いたいね」

「いやいや、フィン達に稽古をつけてもらったおかげだって」

「嬉しいことを言ってくれるね。稽古をつけている側としては嬉しい限りだよ」

 

二人で会話をしながらどんどん下へと向かう。

相変わらずフィンの槍捌きは見事なもので、どれだけ鍛錬を積めばあそこまで扱えるようになるのか想像もつかない。きっと昔に途方もない鍛錬に取り組んできたのだろう。

俺も負けてられねえ!

前方からやってくるキラーアントの群れへと突っ込み、『白銀』で斬る、斬る、斬る!

次々と押し寄せるキラーアント達を捌いていき、全員を魔石に変えて見せた。

 

「凄いねハチマン。前の稽古の時よりも剣筋が洗練されている。Lv.2のステイタスにも慣れてるし、文句のつけどころがないよ」

「それは良かった。結構鍛錬してたから嬉しいぜ」

 

フィンよりお褒めの言葉を貰って気分を良くした俺は転がっていた魔石を闇の手ですぐさま回収し、フィンとともにダンジョンを進むのだった。

 

 

***

 

 

次々に現れるモンスターたちを屠りながらダンジョンを潜ること1時間。俺とフィンは18階層まで到達していた。

 

「今日は久しぶりのダンジョンだからかな、ちょっと速足になってしまったみたいだね」

「俺が前に到達できたのは2時間かかったから、やっぱりソロよりもパーティ組んだ方が効率いいんだな」

「もちろんだよ。3~4人までのパーティならソロよりも速い。だけどファミリアの遠征みたいに大規模なものだと4時間はかかるだろうね」

「俺もパーティ組んだ方がいいと思うか?」

「うーんどうだろう。ハチマンはちょっと特殊だからね。他の皆は早熟スキルのことも知らないから結構浮いちゃうんじゃないかな?」

「浮いちゃうって………やっぱり俺は発展アビリティ通りの孤独体質なのかよ………」

「あーそう言えば見たこともない発展アビリティが出たんだったっけ?」

「そうなんだよ。ロキも見たことないし聞いたことないって言ってたし………」

「確か孤独だったかな?どんな効果かわかるかい?」

「それがよくわからないんだよな。確かにソロでダンジョンに潜った時、前よりもモンスターの動きが見える気がするけど、それくらいだな」

「ちなみに評価は?」

「Eだ」

「E!?まだランクアップしてから1ヶ月ほどだと言うのに………ちなみにランクアップしてからダンジョンに来たのは何回くらい?」

「何回って言うかほぼ毎日だな。フィンやガレスと稽古をした時はその前後に潜ってるし、リヴェリアとの勉強後にも行ったし……あ、コマチに無理やり街に連れ出された時が2回あったから20回は確実だな」

「全部ソロで?」

「ソロで」

「絶対それが原因だね。多分、孤独はソロでの戦闘時、胆力や身体能力に補正がかかるアビリティだと思う」

「なるほど。確かにそれだと納得がいくな。モンスターを見て恐怖の感情が浮かぶこともなくなったし」

「………ハチマンはソロの方が向いてるんだろうね」

「やっぱり孤独体質か………」

 

フィンと雑談をしながら18階層内を歩いて行く。

18階層はモンスターが生まれない一息つける階層だ。ここはそこまで神経を張り巡らせる必要はないので少し回復が出来る。

だが、ここでフィンがある提案をしてきた。

 

「さてどうする?このまま19階層まで行ってみるかい?19階層からはまだまだ中層域だしハチマンなら十分通用すると思うけどね」

 

確かに、ここのところLv.2になってから敵が物足りなくなっているのは事実だ。武器を最底辺の物にまで下げて中層に来ても倒せてしまう。『白銀』を抜いてしまえば相手にもならない。……よし。

 

「おう。行ってみよう。今回はフィンがいるしだいぶ安心だしな」

 

もし俺の力が足りず、対応出来なくても今回は第一級冒険者であるフィンがいる。なにかあっても大丈夫そうだしな。

 

「よし、じゃあ行こうか」

 

俺とフィンは18階層をあとにし、俺にはまだ未知な領域である19階層へと歩みを進めた。

 

 

***

 

 

「ハチマン!右側の『マッド・ビードル』を頼む!僕はこっちを倒す!」

「わかった!」

 

現在地点は20階層。

中層が13~24階層とされているため、半分を越したところだ。

俺はとりあえず右側より押し寄せる『マッド・ビードル』三体を標的にし、『白銀』で真っ二つにしていく。次々と現れる大昆虫を屠っていき、ついに最後の一体を倒す。

フィンの方を見るとすでに終わっていたらしく、落ちた魔石を回収してこちらに歩いてきた。

 

「『マッド・ビードル』五体をこの速さで倒すなんてね。ハチマンならソロでもここまで来れるんじゃない?」

 

なんて言う軽口を叩きながら話しかけてくる。

確かに俺の動きはモンスターたちに通じるし、攻撃も決まる。だが俺はそこまで自惚れてはいない。

もし、一人で来ていたならば早々に引き揚げていたと言える。20階層まで来れたのはフィンの力があってだ。

初めての階層で初めてのモンスター。経験を積んできたフィンがいたからこそ無傷だと思う。正直言って悪夢を使わないで済んでいるのはフィンのおかげだ。

 

「来れるとしたら魔法は常時使っとかないと危ないだろうな。フィンがいなかったら早々に18階層に舞い戻ってた」

 

素直に感想を述べる。

するとフィンは少し驚いた表情を浮かべた後に口を開いた。

 

「気付いていたんだね。やるじゃないか」

 

………試されてたんですね。

フィンとこうしてダンジョンに潜るとなにかと俺を試してくるような行動が多い。何を思ってか知らないけど。俺の成長のためにこうしてくれているなら願ったり叶ったりだ。

 

「確か中層って24階層までだよな?そこまで行っていいのか?」

「これから行ってそれを確かめよう」

「うっし、気合入れないとな」

 

俺は両頬を両手で強く叩いて気合を入れ直し、闇の手で魔石を回収してからフィンとともにさらにダンジョンを進んでいく。

途中途中で現れるモンスターは、余程の数でない限りは俺一人で倒していった。『ソード・スタッグ』然り、『デッドリー・ホーネット』然り、群れでも10の数を超えない限りは俺一人で倒す。

続々と押し寄せるモンスターを次々に倒しながら俺は思った。

(俺は結構成長してきたんだな)

まだオラリオに来たばっかりの頃は剣の構えもまだまだだったし、間合いや敵感知。カンなども働いてはくれなかった。

だが、今では違う。たった7ヶ月の歳月が俺にこの強さを与えてくれた。

(もっと、もっと強くなってみたい!もっと高みを見てみたい!もっと、もっと!!)

俺が強くなりたいと願うたびに背中が熱くうずき、眼の前のモンスターたちが倒されていく。

幾度倒しても次々に現れる『デッドリー・ホーネット』の元をたどっていくと、ダンジョンの壁面の樹洞に埋め込まれた巨大な蜂の巣。無数の『デッドリー・ホーネット』が取り付く蜂の巣は希少モンスターだ。名前は『ブラッディー・ハイブ』。前回のリヴェリア先生による授業で教えられたモンスターだ。

これを駆除するために、俺は魔法を使う。その場にとどまってではなく、戦闘と同時に。

 

「【我は闇と同化する者なり、我は闇を従える者なり】」

 

次々と襲ってくる『デッドリー・ホーネット』を倒していきながら俺は詠唱を続ける。

頭に思い浮かぶ言葉をそのまま口にする。

 

「【我は闇を変化させる者なり 我こそが闇の支配者なり」

 

少しモンスター達から距離をとり、全体を捉えられる位置を模索する。

 

「真っ暗な世界 未知なる世界 蔓延る愚かなる知性なき者」

 

近くにいた『マッド・ビードル』を倒して、詠唱を仕上げる。

 

「その身に刻み、後悔せよ、ダークマター!!」

 

詠唱後、ダンジョンの壁や地面を通して闇の管みたいなものが通って行き、そして………その管より闇の渦が発生し、天井へと巻き上げられ、爆発した。

『デッドリー・ホーネット』はもちろんのこと、『ブラッディ・ハイブ』もその闇に呑まれ、その後に残ったのは数多くの魔石とドロップアイテムである『デッドリー・ホーネットの強殻』だけだった。

 

・・・・そしてこの時にハチマンの瞳が橙色に輝いていたことに気がついたのは、ダークマターの範囲外からその様子を傍観していたフィンだけであった。

 

 

***

 

 

「ハチマン。20階層で見せた魔法は見事だったよ。ランクアップをあとニ回ぐらいすればリヴェリアの『レア・ラーヴァティン』と良い勝負だろうね…………だけど僕がいなかったとき、どうするつもりだったんだい?」

「あ、あはは………」

 

俺は今フィンに背負われている形でダンジョンから生還していた。

あの魔法撃った後、魔石やドロップアイテムを回収したところでマインドダウン寸前の状態となってしまい、なんとか持ちこたえているものの、結構キツイ状態になってしまった。

もし、フィンがいなかったら・・・・・・想像するのも嫌になるな。

 

「あの魔法はLv.3になるまでは使うことを禁じることにしよう。またあのような状況になったらどうなるかわからないからね」

「そうする」

 

俺とフィンのダンジョン探索は、結果として俺の魔法が進化を遂げたということで終わりをつげた。

 

 




次回はガレスとダンジョン探索する予定です。
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