やはり俺たちのオラリオ生活はまちがっている。   作:シェイド

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ダンジョン⑧

時刻5:00

 

「…………」

 

…………オラリオに来てから今日でちょうど一年となるこの日。

俺はいつものごとく朝5:00ぴったしに目を覚ました。

オラリオに来る前、親父たちと農村で暮らしていたときは7:00起きだったから実に2時間も早く起きるのが習慣となってしまった。

自室の窓の外を見れば、まだ辺りは薄暗く、人なんて一人もいないくらいの静けさが広がっている。

 

「ふあぁ~」

 

起きた後特有の欠伸をしながらも、俺はベットの上の布団を畳み、窓を開けて空気の入れ替えをする。

この冷える冷たい風を受けながら、軽いストレッチを行う。

よし、走るか……………。

 

 

***

 

 

さて、時は過ぎて今は昼前、つまり11:00ぐらいだろう。

ぐらいだろうというのは、現在の俺はダンジョンに潜っており、体内時計に寄る間隔での話だからだ。

現在の階層は13階層。中層のスタート地点の階層だ。

出てくるモンスターのうち、気をつけるのは『ヘルハウンド』の不意打ち一斉火炎放射ぐらいで、残る『一角獣』を始めとした他モンスターは複数対峙しても大丈夫なくらいまでの力はつけた。大丈夫大丈夫!

 

「よし、今日も下層に行って頑張るとするか」

 

そんな独り言を呟きながら俺はダンジョンを進む。

ここで思わぬトラップにかかってしまう。

 

「ん?!周囲の壁が………」

 

そう、周囲の壁が一斉にヒビ割れ始めたのだ。

 

「おい、おいおいおい、この数のモンスターがこんな狭い場所に集中発生したら………」

 

現在ハチマンは14階層へと続く正規ルートを進んでおり、今、人三人が横に入れるかぐらいの道を進んでいたのだ。

そこにモンスターが発生すれば………

 

「うおおおお!??」

 

床が底抜けした。突然割れて落下することの恐怖は尋常が無いものがある。現にハチマンは冷や汗をかいており、落下しながら体制を整えるので精一杯だ。

ふと隣を見れば、そこには見知った黒色の犬がいた。『ヘルハウンド』だ。

 

「うお!びくったー!!あ、そういや俺が今落ちてるのってこいつらが原因だったわ。うん、死ね」

『キャウン!』

 

一切の容赦ない攻撃を浴びせ、その姿を強制的に魔石へと変えた。

だが、落下中だ。

 

「…………これ、どこまで落ちるんだ?」

 

疑問を口にするハチマンだったが、ソロで来ている為応えるものはいない。

 

「あーーれーー」

 

ハチマンは底見えぬ闇へと落ちて行った。

 

 

***

 

 

「痛ぇなぁ・・・ここ、何階層だ?」

 

数分後、ハチマンは受け身をしっかりとり(それでも痛い)、無事地上へと降り立っていた。

モンスターたちも同じように降って来たが、そのまま撃墜して灰に変わるものがほとんどだった。

残りは全部斬り殺した。

 

「とりあえず歩いてみないと分かんないな。進むか」

 

この場だけで何階層かを判断するのは難しすぎたため、ハチマンは道を進む。

 

 

数分後………

 

「うーん…………どこなんだここ?」

 

数分経ってからもハチマンは居場所が分からずじまいだった。

ハチマンはリヴェリアに多くのことを教わって下層30階層までのモンスターと地形は頭に叩き込んでいるつもりだ。

そのためなおさらここがどこだかわからない。

今までダンジョンに潜ってきて、中層以下にある竪穴に一度も落ちたことがなかったために、何階層分下に落ちたのかすら不明だ。

 

「ま、たまにはこういう時もあるよな。飯も数日分はあるしなんとかなるだろ」

 

ハチマンは進みだした。

 

 

数時間後………

 

「うん、舐め腐ってたせいだな。マジでここどこやねん」

 

数時間経った現在でも、ハチマンは迷ったままだった。

しかし、少しだけわかったことがある。

 

「ここはまだ中層域だ。どうにかなる」

 

そう、現れるモンスターのおかげで、まだここが18階層前の17階層以下だということがわかったのだ。

現れてくれた『ミノタウロス』は無残にも斬り殺されてしまったが、いいヒントを与えてくれた。

ハチマンは探索を再開した。

 

 

***

 

 

「ん?」

 

そろそろ見知った道現れてもおかしくないよね?ね?とかいうテンションで探索をしていたハチマンは、前方にて何かが起こっていることん気がついた。

そして少しずつ近づいていけば……………

 

「(――――――――モンスターがモンスターを襲っている………?)」

 

モンスター同士で戦いあっていることが認識出来た。

だが、ハチマンが目にしたのはモンスター同士が戦い合っているものではなく、正確にいうなればモンスターがモンスターを一方的に攻撃しているところだ。

ハチマンが驚いたのはモンスター同士の争いではない。争いくらいは普段でも見る。

 

「どうして………姿が違うんだ(・・・・・・)?!」

 

ハチマンが目にしたモンスターというのは『一角兎』であり、連携に優れたモンスター軍がある一匹の『一角兎っぽいが明らかに違う』やつを一方的にやっつけていたことだ。

その明らかに違う奴は他の『一角兎』をよりスラッとスマートしたような体形をしており、眼は赤ではなく青色。武器である自然武器は持っておらず、なんとなくだが、自我(・・)の存在を感じさせるような存在感を放っていた。

そして右手から血が出ていることも目に入り込んでくる。

 

(…………冷静になって考えてみてもおかしすぎるよな)

 

とりあえず自我とうは放っておいて、まずは周りで集団リンチを敢行している『一角兎』らを最速で片付けた後、その異端児の様子を探ることにした。

なにしろ(危険な一般においてのはなし)モンスターであることに変わりはないし、これが罠かもしれないからだ。罠だった場合、かなり恐ろしいものが待っていてほしい。

そしてそれは時に新たなる出会いを生むものでもあった。

 

『エ、ット………アリガ、ト、ウ』

「なっ!?」

 

モンスターがしゃべったー!!?

 

 

 


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