時刻5:00
「…………」
…………オラリオに来てから今日でちょうど一年となるこの日。
俺はいつものごとく朝5:00ぴったしに目を覚ました。
オラリオに来る前、親父たちと農村で暮らしていたときは7:00起きだったから実に2時間も早く起きるのが習慣となってしまった。
自室の窓の外を見れば、まだ辺りは薄暗く、人なんて一人もいないくらいの静けさが広がっている。
「ふあぁ~」
起きた後特有の欠伸をしながらも、俺はベットの上の布団を畳み、窓を開けて空気の入れ替えをする。
この冷える冷たい風を受けながら、軽いストレッチを行う。
よし、走るか……………。
***
さて、時は過ぎて今は昼前、つまり11:00ぐらいだろう。
ぐらいだろうというのは、現在の俺はダンジョンに潜っており、体内時計に寄る間隔での話だからだ。
現在の階層は13階層。中層のスタート地点の階層だ。
出てくるモンスターのうち、気をつけるのは『ヘルハウンド』の不意打ち一斉火炎放射ぐらいで、残る『一角獣』を始めとした他モンスターは複数対峙しても大丈夫なくらいまでの力はつけた。大丈夫大丈夫!
「よし、今日も下層に行って頑張るとするか」
そんな独り言を呟きながら俺はダンジョンを進む。
ここで思わぬトラップにかかってしまう。
「ん?!周囲の壁が………」
そう、周囲の壁が一斉にヒビ割れ始めたのだ。
「おい、おいおいおい、この数のモンスターがこんな狭い場所に集中発生したら………」
現在ハチマンは14階層へと続く正規ルートを進んでおり、今、人三人が横に入れるかぐらいの道を進んでいたのだ。
そこにモンスターが発生すれば………
「うおおおお!??」
床が底抜けした。突然割れて落下することの恐怖は尋常が無いものがある。現にハチマンは冷や汗をかいており、落下しながら体制を整えるので精一杯だ。
ふと隣を見れば、そこには見知った黒色の犬がいた。『ヘルハウンド』だ。
「うお!びくったー!!あ、そういや俺が今落ちてるのってこいつらが原因だったわ。うん、死ね」
『キャウン!』
一切の容赦ない攻撃を浴びせ、その姿を強制的に魔石へと変えた。
だが、落下中だ。
「…………これ、どこまで落ちるんだ?」
疑問を口にするハチマンだったが、ソロで来ている為応えるものはいない。
「あーーれーー」
ハチマンは底見えぬ闇へと落ちて行った。
***
「痛ぇなぁ・・・ここ、何階層だ?」
数分後、ハチマンは受け身をしっかりとり(それでも痛い)、無事地上へと降り立っていた。
モンスターたちも同じように降って来たが、そのまま撃墜して灰に変わるものがほとんどだった。
残りは全部斬り殺した。
「とりあえず歩いてみないと分かんないな。進むか」
この場だけで何階層かを判断するのは難しすぎたため、ハチマンは道を進む。
数分後………
「うーん…………どこなんだここ?」
数分経ってからもハチマンは居場所が分からずじまいだった。
ハチマンはリヴェリアに多くのことを教わって下層30階層までのモンスターと地形は頭に叩き込んでいるつもりだ。
そのためなおさらここがどこだかわからない。
今までダンジョンに潜ってきて、中層以下にある竪穴に一度も落ちたことがなかったために、何階層分下に落ちたのかすら不明だ。
「ま、たまにはこういう時もあるよな。飯も数日分はあるしなんとかなるだろ」
ハチマンは進みだした。
数時間後………
「うん、舐め腐ってたせいだな。マジでここどこやねん」
数時間経った現在でも、ハチマンは迷ったままだった。
しかし、少しだけわかったことがある。
「ここはまだ中層域だ。どうにかなる」
そう、現れるモンスターのおかげで、まだここが18階層前の17階層以下だということがわかったのだ。
現れてくれた『ミノタウロス』は無残にも斬り殺されてしまったが、いいヒントを与えてくれた。
ハチマンは探索を再開した。
***
「ん?」
そろそろ見知った道現れてもおかしくないよね?ね?とかいうテンションで探索をしていたハチマンは、前方にて何かが起こっていることん気がついた。
そして少しずつ近づいていけば……………
「(――――――――モンスターがモンスターを襲っている………?)」
モンスター同士で戦いあっていることが認識出来た。
だが、ハチマンが目にしたのはモンスター同士が戦い合っているものではなく、正確にいうなればモンスターがモンスターを一方的に攻撃しているところだ。
ハチマンが驚いたのはモンスター同士の争いではない。争いくらいは普段でも見る。
「どうして………
ハチマンが目にしたモンスターというのは『一角兎』であり、連携に優れたモンスター軍がある一匹の『一角兎っぽいが明らかに違う』やつを一方的にやっつけていたことだ。
その明らかに違う奴は他の『一角兎』をよりスラッとスマートしたような体形をしており、眼は赤ではなく青色。武器である自然武器は持っておらず、なんとなくだが、
そして右手から血が出ていることも目に入り込んでくる。
(…………冷静になって考えてみてもおかしすぎるよな)
とりあえず自我とうは放っておいて、まずは周りで集団リンチを敢行している『一角兎』らを最速で片付けた後、その異端児の様子を探ることにした。
なにしろ(危険な一般においてのはなし)モンスターであることに変わりはないし、これが罠かもしれないからだ。罠だった場合、かなり恐ろしいものが待っていてほしい。
そしてそれは時に新たなる出会いを生むものでもあった。
『エ、ット………アリガ、ト、ウ』
「なっ!?」
モンスターがしゃべったー!!?