短いです。
おい、おいおいおいおいおいどうしよう、これ…………。
モンスターが人の言葉を喋った………!
「え、マジで……?」
『タスケテクレテ、アリ、ガトウ!』
「お、おう!無事でよかった」
「(いやいやいやいや、普通に返しちゃったけどこれどうしたらいいんだよ!?)」
『ネェ、アナタハワタシヲタスケテクレタカラ、チョットキキタイコトアル。イイ?』
「よし、わかったから少し場所移動しようか」
『ア、ホカノモンスターガクルネ………』
もし、この場を他のモンスターに襲われたらたまったもんじゃないし、それにこの光景を他の冒険者に見られたら………。
うん、たぶん怪物趣味とか言われるんだろう。それは避けたい。
最悪俺だけに非難が振りかかるのは良いが、【ロキ・ファミリア】の皆にまで迷惑をかけてしまうと困る。
ここはこのモンスターと共に移動しよう。
それからこの喋るモンスターと行動を共にしている間に様々なことを話した。
話したというよりは質問に答えたと言った方が正しいかもしれない。
このダンジョンの上にはどんな世界が広がっているのか。このダンジョンはどれくらいの規模のものなのか。まずはここはどこなのか………などなど多くのことについて話をした。
話を聞く限りでは悪いモンスターではないように思えた。
発見時に他のモンスターに襲われていたところを見るに、このモンスターはモンスターというよりモンスター+人間と言った方が合っていると思う。
さらに『一角兎』っぽいが違う体形をしていることから変異種だろうと思う。極稀にあるモンスターの変異体というやつだ。なにせ普通のより小さいし。
コイツの性別は♀で、人間の如くニ足歩行をしている。本当に人間みたいだ。
「………てなわけで俺はここにいる」
『ナルホドネ~』
気付けばここまでの出来事を話していた。
だってコイツ真面目にこちらの話に耳を傾けてくれるし、害意全然ないし、むしろ好意さえ感じてしまうのだから、そんなコイツに邪険にする意味なくね?って思った。うん。
「そういやお前、名前あるのか?」
『ナマエ?ナイヨ………アッ!ツケテツケテ!』
「付けてと言われてもな………」
人の名前なんてつけたこと無いんだよな。だってまだ13歳だぜ?そんな男女のあれこれをするような歳じゃないから子供とか考えたこともなかった。
でもコイツモンスターだしな………呼びやすい名前、呼びやすい名前…………。
「じゃあ・・・・"トト"とかどうだ?」
『トト?イイネ!』
ピョンピョン跳ねまわって『トートっ!トートっ!』と連呼するトトは嬉しそうだった。
(―――――――喜んでくれたみたいで良かった)
………あ、コイツの事どうしよ。
(頼れる人がいないな………どうしたもんか)
なんか自然な流れで名前までつけてしまったが、コイツはモンスターなのだ。人とモンスター、決して相容れない存在なのだ。
だが…………
『ハチマンガワタシニクレタナマエ………トート!』キラキラキラ
(め、めっちゃ目をキラキラさせながら自分の名前を呼んでいるぅぅぅぅぅ……!)
もし"トト"がハチマンのことを毛嫌いしていたり、襲いかかろうもんなら一切の温情も掛けずにハチマンはトトを屠るだろう。
だが現在の状況から見るに………手を下すのはほとんど無理だ。
(誰がこんな可愛いモンスター殺せるかー!?)
あのときトトを助けてしまった時点でハチマンの未来は決定していたのだ。
トトと共に生活するということが。
その1時間後、ハチマンはなんとかダンジョン正規ルートへと辿り着き、普段の予定よりだいぶ遅れて黄昏の館へと帰還していた。
………もちろん、トトを連れだって。
「さーてさてさてさてさて、どうしようか」
『ナニガー?』
「しーっ!声を出すんじゃないトト!………もうここまできたら道は一つだ」
『?』
「一生トトを匿いながら生活する」
『?…………ヨクワカラナイケド、ハチマントイッショニイラレルンダヨネ?』
「ああ」
『ヤッター!!』
「だ・か・ら!しーっ!」
『ゴ、ゴメンナサイ……』
「ふーっ…………よし、これからよろしくなトト!」
『ウン!』
これが、未来に
月日をかなり飛ばします。
次はアイズ入団の原作9年前頃の話です(アイズ出てこない)。