やはり俺たちのオラリオ生活はまちがっている。   作:シェイド

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今年完結は無理かな……………。


アイズ・ヴァレンシュタインという少女②

翌日

 

アイズは6時頃起床した。

強くなるために無意味な時間は過ごしていられない。眠たくても我慢して、早く起きようと心掛けていた。

 

「強く、なるんだ」

 

改めて気合を入れ直すアイズ。

昨日ハチマンに言われたように、今日からハチマン達にひっついて生活をしようとしていた。

……………ひっつく対象は決まっていたが。

 

(ハチマンはどこにいるんだろう)

 

毎日稽古をつけてくれると言ってくれたハチマン。早速朝から稽古をつけてもらおうとハチマンの姿を探す。

 

「!……いた!」

 

ちょうど良いタイミングでハチマンの姿を発見できたアイズ。早速声をかけにいくが…………

 

「ハチマンおはよう。今から稽古を……」

「悪いアイズ。今から朝食作らなきゃいけないんだ。その後にしてくれ」

「ちょ、朝食?あ、あの美味しいご飯ってハチマンが作っているの?」

「おう、多分そうだ。良かったら見とくか?」

「………」コク

 

ハチマンはこのひと月の間、朝昼晩、すべての時間帯の飯を作ることになっている。

原因はハチマン自身がつくったというか取り決めというか………色々あるのだが、今は置いておこう。

 

ちなみに、アイズがハチマンについていくのは決してご飯がおいしかったからじゃない。ないったらない。少しつまみ食いしたいわけじゃない。決してない。

 

「あ、アイズ。好きな食べ物あるか?」

「………特にない」

「なら、無難にサンドウイッチにするか」

「………」

 

厨房へ行くハチマンのあとに無言でついていくアイズだった。

 

 

***

 

 

朝食を終えたアイズは、早速ハチマンと稽古を開始することにした。

 

「アイズに足りないのは主に技術と駆け引き、それに"見ること"だ」

「見ること?」

「おう。相手との力量の差を見る目、相手の弱点を探す目、自身の力をしっかりと見極め切れる目だ」

「どうすればいいの?」

「簡単だ。経験値をつむこと。それしかない」

「それじゃあ……!」

 

遅い!………とアイズは感じた。

今すぐにでも力が欲しい。今なのだ。今しかない。

自分から全てを奪っていった憎き者たちを倒すために、滅ぼすために。

そして、取り戻すために。

ハチマンはアイズの様子からただ事ではないと感じたが、アイズが話すときを待つことにしたようだ。

 

「アイズ、焦っても良いことは一つもないぞ」

「………」

「焦って強くなっても意味がないんだ。まだお前にはわからんだろうけど」

「………」

 

意味がない?意味がわからない……とアイズは思った。

どちらにせよ強いことに変わりはないだろうにっと。

 

「強者には二種類いる。見せかけの強者と、真の強者だ」

「……」

「見せかけの強者も真の強者も、実際強さ的にはあまり変わらない。どちらも強者と呼ばれるだけはあるんだしな」

「……」

「ただ、見せかけの強者ではいざって言う時に動けない」

「!」

「"ただ"強いだけだとなにかあった時に動けないんだ。真の強者との違い、何かわかるか?」

「……」フルフル

 

アイズは考えだが、全然わからなかった。

強者は強者だろうという気持ちが強いまま。

だが、次のハチマンの言葉で考え方が変わるようになる。

 

「"覚悟"があるものだ」

「覚悟……?」

「ああ。覚悟だ。自分の目的のために愚直なまでになんでも出来る者だ。自分の守るべきものを命を賭けてでも何をしてでも守り抜く者のことだ」

「私には、その覚悟がないの……?」

 

アイズは少し不安になった。自分には覚悟が足りないのか。取り戻したい、強くなりたいと言う覚悟はないのか。

 

「いや、アイズは7歳にして覚悟はある。元々してある」

「……」ホッ

「ただ、それが弱いってだけだな」

「えっ」

「アイズの覚悟ってそんなものか?」

「……ッ!」

「そんなんじゃアイズの悲願なんて一生叶えられないぞ?」

「…うッ」

「どうした?お前にとって母親ってそんなちっぽけな存在か?」

「違うッ!」

「……」

「私はッ!絶対に取り戻すって決めた!どんなに相手が巨大でも、どんなに相手が強くても、どんなに相手が多くても、私は絶対に取り戻す!お母さんは、私に安らぎを与えてくれた!お父さんは、私たちのために怪物たちに挑んだ!」

「……………そうか。そういうことか」

 

アイズは絶叫を繰り返すが、ハチマンは一人、どこか悟った目でアイズを見る。

そんな目に気付かないアイズは叫び続ける。

 

「そんな大切なものを、私からすべて奪っていった奴らを、私は絶対に許さない!」

「そうか」

 

ハチマンは未だ叫び止むことのないアイズに少しずつ近づいていく。

それに気づかないアイズ。

 

「私はッ!」

「アイズ」

「あ………」

「お前の覚悟は伝わった。辛いかも知れないが、話してくれないか?お前の、その、過去をさ」

「…………」

「どうしても無理ならいい。お前に決定権はある。だけど、俺は知りたい」

「………どうして?」

 

アイズは不思議だった。

どうしてそこまで踏み込んでくるの?どうして知りたがるの?どうして辛そうな顔をしているの?どうして?どうしてそこまで親身になってくれるの?

まだ、昨日会ったばかりなのに。

教育係に任命されたから?

 

「…………教育係に任命されたからじゃないぞ?」

「!?」

「ある程度の思考は読めるんだからな…………どうして、か。それには俺の過去も関わってくるんだが………それは置いといてもだ」

「?」

「俺達は同じ【ロキ・ファミリア】の仲間で、家族なんだ。家族の心配をするのに理由がいるか?」

「………いらない」

「だろ?」

「でも………」

 

なんで?どうして?という気持ちが抜けきれないアイズ。

家族だなんて………と。

 

「………俺の目的というか、目標はさ」

「………うん」

「皆を、この【ロキ・ファミリア】のみんなを守ることなんだ」

「えっ?」

 

どうしてっとアイズは思った。

そんな人間を見たことがなかったから。

 

(あっ…………お父さん)

 

だが、自身の記憶から父親の一言を思い出す。

 

『お父さん』

『ん?どうしたアイズ?』

『お父さんの生きてるうえでの目標は何?』

『そうだなぁ、考えたこともなかったが、しいて言えば、アリアとアイズを守ることかな』

『モンスターは?』

『もちろん討伐が悲願だ。だけど、それも遡ればアリアとアイズを守ることに繋がるだろ?』

『お父さんはお母さんと私のこと大好きだね!』

『まぁね』

 

………というのを思い出したアイズ。

 

「アイズ?」

「あ、うん。大丈夫」

「……俺はさ、今のこの時間(とき)をずっと過ごしていきたいんだ。フィンがいて、リヴェリアがいて、ガレスがいて、妹がいて、皆がいて………アイズがいる、この時間(とき)を大事にしたい」

「………」

「だから、それらを奪おうとする奴らは絶対に許さない。必ず俺が守ってみせる。そのためなら、命くらい捨ててやるさ」

「!」

 

アイズは感じ取った。いや、感じ取ってしまった。

この目の前にいる男は、自分より上の段階(ステージ)にいる。先程ハチマンが言っていた、真の強者だと。

覚悟が違う。覇気が違う。全てが上の存在であると。

 

「だから、アイズの悲願も手伝わせてくれないか?」

「えっ?」

「さっき皆を守ることって言ったが、家族みたいな皆の目標も手伝いたいんだ。迷惑じゃなきゃ、だけどな」

「………」

「おっと、思ったより時間くったな。そろそろ鍛錬しようぜ」

「…………待って」

「ん?」

 

離れていくハチマンに声をかけ、立ち止まらせる。

そして、俯いたままだ。

 

「ハチマンにならいい」

「……?」

 

そして、アイズは顔をハチマンに見せた。

その顔は、何か意を決した表情だった。

 

「聞いて、私の過去を」

「………おう。気が済むまで話せ」

 

そして、アイズは語りだした。

 

 

***

 

 

当時、世界中の悲願である三大クエストに挑戦した【ゼウス・ファミリア】と【ヘラ・ファミリア】。その中でも特に有名で英雄だった男がいる。

その男の名はディルムッド・ヴァレンシュタイン。当時、世界で唯一のLv.8であり、【ゼウス・ファミリア】の団長であった男だ。

彼は剣士で強く、仲間からも信頼が厚かった。

だが………

 

「撤退撤退!一度引き返せ!」

「負傷者を連れて逃げろ!」

「俺が殿を務める!今の内に早く!」

「団長!」

「すいません!全員撤退!」

 

三大クエストが一つ、陸の王者に一度敗北した。

理由は単純な火力不足。

陸の王者は巨大で、しかも防御が高い。

一度引き返すしかなかった。

 

 

 

引き返した一行は見つけた森の中で野宿をすることにした。

 

「どうしたものか………」

 

ディルムッドは一人、簡易の執務室にて考えを張り巡らしていた。

 

「はぁ~駄目だ駄目だ。一度外の空気でも吸いに行こう」

 

だが、良い考えが浮かばず、眠れもしないので、気分転換に外を歩いてみることにした。

しばらく歩いて行くと、湖が見えはじめる。

その湖は満月の光で神々しい光を発していた。

 

「綺麗なもんだ……」

 

しかし、ここで事件が起きる。

 

「キャー!!」

「!」

「いや、いやぁぁぁ!!」

 

湖の端の方で、金色の髪をした女性がモンスターに襲われていた。

 

「やめろ!」

 

ディルムッドはLv.8の脚力を持って瞬く後に接近し、剣でモンスターを切り裂いた。

 

「大丈夫ですか?」

「ありがとうございました……」

「………綺麗だ」

「ふぇ!?」

「あ、いえ、すみません……!」

 

…………ここからしばらく甘い時間が続くので省くが、この時ディルムッドが助けた女性が風の大精霊、アリアだった。

意気投合した二人は共に三大クエストのモンスター達を倒すことに決め、アリアはその風の力をディルムッドへと分け与えた。

それ以降、圧倒的な風の力によって攻防力が格段に上がったディルムッドは仲間たちにアリアを紹介し、共に陸の王者(ベヒーモス)海の覇者(リヴァイアサン)をうち倒すことに成功。

残すは隻眼の竜だけとなった。

これらの冒険でお互いに意識し合いまくったディルムッドとアリアは、人と精霊という概念を超え、他の精霊の力を持ってして子を成した。

その後、隻眼の竜討伐のために再び彼らは最終決戦の地へと向かう。

その途中に、自分と同じ力を持つ少年に会ったディルムッド達は、昔話で盛り上がり、一人一人が最終決戦に向けて意欲を高めていった。

 

だが…………

 

「はぁぁぁぁぁ!!」

「団長!もうお止めください!!死んでしまいます!」

「だが!コイツを倒さなければッ!」

「あなたが死んでしまえばこいつ等に一生勝てなくなる!」

「!」

「………団長。今までお世話になりました。あなたと出会い、生きてこれたことに感謝します。……野郎共!団長を生きて帰らせるぞ!正念場だ!」

「「「「「うおおおおおお!!!」」」」」

「お前達………すまない、すまない」ポロポロ

「あなた………」

「アリア、その子と一緒に逃げよう。カルム達の想いを無下にはできない」

「……はい」

 

隻眼の竜とその眷族達は、そのはるか上の力を誇っていた。

第一級冒険者が分も持たないぐらいで殺されていく。

彼らは団長であるディルムッドを生かすために、自らの命を懸けて時間を作った。

ディルムッドとアリアとその子どもは、来るときのために療養することにした。

心に深い傷を負って。

 

 

***

 

 

「そのディルムッド団長と大精霊アリアの子がアイズなんだな?」

「うん。それから最近までは三人で息をひそめながら穏やかに暮らしてた。でも………奴らが現れた」

「!」

 

 

***

 

 

三人で暮らしていたアイズ達のもとに、ある知らせが入ってくる。

それが、隻眼の竜が単身で暴れているとのこと。

そして、何かを探している様子だと。

 

「アイズ」

「なぁに?」

「すまない」

「えっ?」

「ごめんね、アイズ。私たちは遠くへ旅立たなきゃいけなくなった」

「なんで?」

 

その頃のアイズはまだ理解できていなかった。

両親が何をするのかを。何を思っているのかを。

 

「すまない」

「なんで?!」

「………行きましょう」

「ああ」

「待って、待って!」

「さようならアイズ」ポロポロ

「アイズの幸福を、心から願ってるよ」ツー

「待って!待って!」

 

アイズがいくら声をかけても、いくら走ろうと、追いかけようとも、彼らは止まることがなかった。

 

 

………そして後日、近隣住民によって両親の死亡がアイズに知らされた。

 

 

***

 

 

「だか、ら、私、は……」ポロポロ

 

アイズは全てを話し終わって………泣きだして蹲ってしまった。

フィン達に自身の悲願を伝えた時よりも色々なことを話してしまった。

そんなアイズに対してハチマンは…………無言で近づいて行った。

そして…………

 

「………」ダキ

「え?」

 

アイズを抱きしめた。

それも、コマチ……妹に接するように。

 

「辛かったんだな。苦しかったんだな………」ナデナデ

「………ハチマン!う、ぅぅ、うわああああああ!!」

「泣け泣け。思う存分な」

 

 

しばらくの間、【ロキ・ファミリア】の中庭では少女の泣き声が響き渡り、なんだなんだと集まった団員達は、その光景を見て微笑むのだった。

 




少し感情移入し過ぎると泣いてしまうお話だったら良かったです。


あ、ちなみにカルムというのは【ゼウス・ファミリア】副団長の名前です。オリキャラですね。公式ではまだ出てませんし、適当に付けました。
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