やはり俺たちのオラリオ生活はまちがっている。   作:シェイド

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日を跨いでしまいましたが…………。
新年明けましておめでとうございます。今年も宜しくお願いします。今年も頑張っていきます。
楽しんで読んでくださったら恐縮です。


ダンジョン⑩

アイズが入団してから七ヶ月が経過したある日。

いつもの通り、アイズはハチマンと朝の稽古をしていた。

入団時とは比べ物にならない歩法と剣捌きを用いてハチマンに斬りかかるアイズ。

それをハチマンが長い槍で綺麗に捌いている。

ちなみにハチマンが槍を使い始めたのは最近である。

槍を作成したのはハチマンの専属鍛冶師であるリク・シュトラウスである。

彼はLv.3であり、戦える鍛冶師だ。もちろん鍛冶の腕は優れている。

理由としては、アイズが日に日に成長していく姿を見ていると、自身も何かに挑戦しようと思い至ったため、団長であるフィンが主として使う槍を扱ってみようと思ったのだ。

フィンがこの武器を何故好んで使うのかは察せるだろうが、リーチがかなりあるから使えるだろうとハチマンはフィンに師事。

アイズがリヴェリアと勉強している時に少しずつ教わり、今ではフィンには遠く及ばないものの、中々の腕前には達していた。

 

「うぁぁぁぁぁ!!」

「おおっと」

 

アイズの攻撃。

右からの斬撃はハチマンの槍によって弾かれる。

だが、アイズは元々これで攻撃を当てようとは考えていなかった。

この槍が離れた一瞬で懐へと飛び込むために、わざとやりやすいぐらいの力加減とタイミングで攻撃をしたのだ。

 

(よし、今なら行ける……!)

 

アイズは迷わず懐へと入り込み、反対側から回転して剣で斬りつけようとした。

ちなみにこれはハチマンが許したことなのでアイズは何の抵抗もなしに斬りつけた。

だが、手応えがない。

 

「え?」

「隙あり」

「うわぁ!」

 

ハチマンはアイズの思考、行動を読み切り、即座に後方へとバックステップ。しかも、アイズが攻撃をキャンセルできないタイミングからのバックステップである。これは止めきれない。

その後隙だらけになったアイズを槍の柄で突き、いとも簡単に腰をつかせた。

 

「今のは良い動きしてたぞアイズ」

「ホント!?」

「ああ。………そうだ、朝食食べたらロキのとこへ行こう」

「ロキ?なんで?」

「ここ二ヶ月ステイタス更新してないだろ。ステイタス次第だが、今日の昼はダンジョンに行こうかなって」

「えっ!?」

「アイズは最初のころに比べたら見違えるくらいに強くなった。技術と覚悟、それにやる気も申し分なかった。合格だ」

「やったぁ!!」

 

ここにきて初のダンジョン解禁。アイズにとっては焦がれに焦がれ続けたダンジョン探索。ステイタス、及び自身の力をあげるのにここまでの効率的な道はない。

 

「じゃあ朝飯だ」

「うん!」

 

 

***

 

 

朝食後、アイズとハチマンはロキの部屋にいた。

 

「で?どうしたんやハチマン?アイズたん連れてきて」

「ステイタスを更新してやってくれ、ロキ」

「おお!いいでいいで!アイズた~ん、ベットに寝転がってな。はよはよふぎゃあ!」

「手をわきわきしないで!」

「うわぁ」

 

アイズは7歳にしてセクハラの対応を覚えたようだ。

ぶたれたロキは床でのた打ち回っていたが、痛みが引いたあとは速やかにステイタスの更新をしてくれた。

 

結果はこちら。

 

 

アイズ・ヴァレンシュタイン

Lv.1

 

 力:F310

耐久:F333

器用:G204

敏捷:E457

魔力:I0

 

 

魔法以下は前回と同じ(アイズ知らない)。

 

 

「これならダンジョンに行っても問題ないな」

「じゃあ!」

「ああ。ダンジョン行きを許可しよう」

「やったっ!」

「ただし、俺とかリヴェリアとかと必ず行くこと。一人で行くなよ」

「はーい」

「(ハチマンが保父さんに見えるのはうちだけか……?)」

 

ロキの眼には明らかに師弟というより親と子供、先生と生徒にしか見えなかった。

 

 

 

***

 

 

そして昼時。

昼食を食べた二人はダンジョン1階層へと来ていた。

始まりの道を通り抜ければ、そこはモンスターが生み出される魔境の洞窟。

だが二人はそんなことを意にもかえしていなかった。

まぁ、1階層でそんなにビビるわけがないっと、そんな考えを持つ人もいるだろう。むしろほとんどがそうだと思う。

だが、今から行うのは命の取引。死ぬか生きるかの勝負。様々なものを抱え、すべてを背負い込んで戦うのだ。

アイズはそれをハチマンとリヴェリアから仕込まれていたため、暴走することはなかった。

歩きながらハチマンがアイズに言う。

 

「お前の実力なら10階層までは行けるだろう。ステイタス的には不安が残るが、お前には知識と技術があるんだ。問題ないはずだ」

「うん」

「でも今日は6階層までな。今日は久しぶりのダンジョンだし、モンスターとの戦闘を身体に慣らそう。そうすれば死ぬ確率が格段に低くなり、ずっと闘える」

「わかった」

「おっ、いいところにゴブリンさんじゃん」

 

ハチマンが指を指した先には一匹のゴブリンがいた。

 

「じゃあアイズ。相手にならないがまずは基本からだ」

「ん」 

 

アイズは了解の意を含めた返事をすると、ゴブリンと応対するように立った。

ゴブリンも少しずつ距離を詰めながら緊張を感じ取っていた。

両者は一定距離から動かずに沈黙。静かな時間が流れる。

この静寂を断ち切ったのはゴブリンだった。

アイズ目掛けて奇声を上げながら走ってくる。

それに対してアイズは冷静だった。ゴブリンに臆することなく走りだす。

そして両者がすれ違った。

またも流れる静寂。

どちらも動かない中、この静寂を断ち切ったのはハチマンだった。

 

「お〜良かったぞアイズ」

 

その一言のあとゴブリンは魔石を残して灰と化し、アイズとハチマンだけになった。

アイズが口を開く。

 

「凄い………………!」

 

口にしたのは驚きだった。

ゴブリンを意図も簡単に倒せたからではない。7ヶ月前だってゴブリンは一撃だった。

ただ、姿勢、威力、そして目など、様々なものが全く違った。

それは当たり前ではあるが、自身の努力の結果が目に見えたことで、アイズは驚いたのだ。

 

「な?マンツーマンの鍛錬良かったろ?ダンジョンに行かせなかったのもこのためだ。前の自分と今の自分の差が、よく分かるだろ?」

「うん、私は強くなってる!」

「よし、じゃあ引き続きモンスターを狩っていくぞ」

「もちろん」

 

アイズは意気揚々とダンジョンを進むのだった。

 

 

***

 

 

数時間後、アイズとハチマンは6階層へと来ていた。

 

「さて、今日はここが最終地点だ。俺が帰るぞっていうまではモンスターを倒していっていいぞ」

「ん」

 

ハチマンはアイズに指示を出し、アイズはそれに頷いた。

階層内を歩いていると、近くの壁から『ピキッ』と割れる音が鳴った。

そこからモンスターが湧きだしてくる。

『ウォーシャドウ』。6階層出現モンスター。

全身は黒く、影、と言った方が正しいかもしれない。

160Cほどの体躯をしており、頭部は十字型で、その上に手鏡のような真円状パーツが組み込まれている異形の怪物だ。

アイズは110Cもないので、大人を相手にしているような感じだろう。

さらに『ウォーシャドウ』は鋭利な指を持つ。

長い両腕の先には三本の指があり、その鋭さはナイフなどのそれと同じだ。

純粋な戦闘力では6階層モンスターの中でもトップだ。

 

「…………」

 

アイズは剣を構え、少しずつにじり寄っていく。

『ウォーシャドウ』にはリーチがある。その範囲を確認しなくては戦えない。

今日初めて戦うモンスターなのだ。慎重にならなければならない。

そこにまた『ピキッ』っと。

アイズを挟むように後ろから新たな『ウォーシャドウ』が産まれてくる。

2対1。数的には不利だ。

しかし、ここにいるのは………

 

「…………」

 

強くなりたいと、悲願を叶えたいと単身でオラリオにきた少女だ。

さらに彼女にはオラリオでもトップクラスの師匠がいた。

 

(ハチマンから言われた複数を相手する時の鉄則…………常に一対一を保つ!)

 

「はぁ!!」

 

アイズは後ろの『ウォーシャドウ』を放置して目の前にいる『ウォーシャドウ』へと突撃する。

すかさず攻撃を仕掛けてくる『ウォーシャドウ』。

その攻撃は、確かに新米の冒険者では捌ききれない鋭さを持っていた。

新米なら、だが。

アイズはその攻撃を姿勢を低くして回避し、そのまま突き出されている両腕を剣でぶった斬る。

そして、勢いを殺さないように回転してそのまま刺突攻撃を繰り出した。

『ウォーシャドウ』はなす術もなく攻撃を受け、そのまま魔石を残して灰と化した。

そこに、後ろから『ウォーシャドウ』が襲いかかる!

 

「うっ!」

 

アイズは咄嗟に防ぐものの、衝撃で転んでしまった。

見上げた先には『ウォーシャドウ』の鋭い指が。

 

しかし、アイズも簡単にはやられない。

その場に剣を突き刺し、その剣を蹴って後方へ逃げた。

『ウォーシャドウ』の攻撃は外れたものの、攻撃が剣へと当たり剣が折れてしまった。

剣を扱うアイズとしては武器なし状態に。万事休す。

だが、アイズは冷静だった。

むしろ折れた剣の心配をしていた。

 

(ハチマンになんて謝ろう………ごめんなさいしながら抱きつく?それとも軽い感じで何ともなかった風を装う?それとも土下座?)

 

目の前に『ウォーシャドウ』が迫ろうともあわてないアイズ。

とりあえず謝り方はその場で考えるとして、アイズは懐より短剣をとりだした。

一応ではあるが、剣以外に短剣、投げナイフが使えるアイズ。ここは短剣にしたようだ。

 

そして、『ウォーシャドウ』が動く!

両腕のリーチを活かし、アイズに先制攻撃を仕掛けた。

アイズはこれをかわしながら接近。決めに行くような動きだ。

だが、『ウォーシャドウ』の方は馬鹿ではなかったらしい。

その前の戦闘を観ていた『ウォーシャドウ』は、両腕を引き戻すことで裏拳の要領でアイズに攻撃していく。

完全な死角からの攻撃。さしものアイズもこれは食らうしかなかった…………はずなのだ。

だが、アイズは短剣を後ろに突き刺してそれを潰した。

ちなみに何故こんな反応をしたかというと、もちろんの如くハチマン師匠の教えによるものだ。

彼曰く、「モンスターにだって本能ってのはある。だから、いざって時がたまにあるんだ。だから、攻撃をかわしきっても油断するな。臨機応変ってのは本当に大事だぞ」らしく、アイズはその教えを忠実に再現していた。

 

「うりゃあ!」

 

可愛い声を出しながらアイズは斬りかかり、見事、『ウォーシャドウ』ニ体を打ち破った。

 

 

***

 

 

「はぁ~それにしてもよくやれたなアイズ」

 

ダンジョンから本拠地までの帰り道、ハチマンはアイズに語りかける。

 

「確かに臨機応変にとは言ったが………ここまで出来るようになっていたとはな。アイズ、俺がいないときとかコソ練してたろ?」

「………」コク

「それにしても今日は良かったぞ。強くなってきてる。確実に早くな」

「ホント?」

「ああ。俺は良い弟子を持ったものだ」ナデナデ

「ん~」ニヤケ

 

アイズにとっての至福の時間である。

ハチマンのなでなではもの凄く気持ちいいらしく、普段キリッ!っとしている顔がだらしなく緩んでいる。

少し頬を染めているのは嬉しさからだろう。

ずっと戦い方を教えてくれた師匠(ハチマン)に実戦で褒められたのだ。嬉しいに決まっている。

それに、今日は自分でも強くなったと実感できた日だった。

 

「それにしても撫でやすい髪だよなぁ。綺麗な金色だし」

「えっへん!」

「ドヤるんじゃありません…………あれ?ドヤるって何だ??」

「ハチマンが言ったんじゃん。意味は知らないけど」

「ま、いっか」

「うん」

「じゃあ明日も頑張ろうな」

「うん!」

 

 

夕日に照らせれる二人の物語はまだまだ続くのだった。

 




締め方には何も言わないでください。
わかっています。ですが、思いつかなかったのです。


次回、アイズとデート!? お楽しみに。
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