やはり俺たちのオラリオ生活はまちがっている。   作:シェイド

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……なんか時間かかっちゃいました。これもハチマンが鈍感なのとアイズが可愛いのが悪い。

……設定作ったの私なんですけどね。

ちょっといつもの倍くらいあります。


アイズとお出かけ①

ある日のこと。

いつものごとく朝鍛錬して朝食をとり、さて今日もダンジョンに行くぞ!と意気込んでいたアイズたん。

彼女はハチマンに声をかけた。

 

「ハチマン。ダンジョンに行かせて」

「……………なぁ、アイズ。今日はダンジョン以外に目を向けてみないか?」

「え?なんで………?」

「たまには息抜きで街を回ってみるのも良いんじゃないかって思ってな。ずっとダンジョン通ってたら息が詰まるし、おかしくなるぞ」

「それは…………そうだけど…………でも、私は早く強くならないといけないの!」

「焦ったって良い結果は出ないに決まってんだろ。たまには軽く出かけて気分転換した方がいいと思うぞ?」

 

実のところ、ハチマンがいきなりこんな提案をしたのには理由があった。

それは、昨日のこと――――――――――

 

 

 

 

いつも通りアイズとダンジョンに行って帰ってきたハチマンは、週一で行われる幹部会議に出席していた。

そこで各々が一週間で起きたことや、【闇派閥】の対応策、遠征の話、ファミリアの資金の状況などを話し合っている。

そのとき、ロキがアイズの話題を出した。

 

「それでやハチマン。アイズたんの調子はどうや?」

「好調じゃねーの?鍛錬も勉強も怠ってないし、アドバイスをすればしっかりと聞いて次の戦いに活かすし、多少無茶しがちな点をおいておけば良い軌道に乗ってると思うぞ」

「へぇ、あのアイズがそこまで丸くなるなんて……ハチマンは指導慣れしてるね」

「ああ。フィンの言うとおりだ。私が必要かどうか不安になるときがあるぞ」

「いやいやリヴェリアがいてこそ、ここまでアイズを育ててこれてんだって」

「そうであればいいのだが………」

「しかしハチマンの面倒見が良いのはコマチという妹がおったからか?」

「おう。幼い頃のコマチと接する時と同じように接してる」

「へえ~アイズちゃんのこと大事にしてるんだね?」

 

コマチが嫉妬した感じでハチマンにジト目を送った。

ハチマンはそれに気づかずに、

 

「ああ。コマチの次にな。コマチの方が大事だよ」ニコ

「ふぇ!?」

 

と、鈍感ジゴロ能力を遺憾なく発揮。

コマチは頬を赤く染め、俯いてしまった。

 

((((ああ、またやったな………))))

 

ロキ、フィン、リヴェリア、ガレスの四人は内心ため息をついた。

こんなことが日常茶飯事であるため、ハチマンファンがオラリオに続出しているのだ。

 

「ぃ、ぃゃ、ぉ、ぉ………うぅ~///」

 

コマチは毎回餌食となり、毎回こんな感じになってしまう。

コマチのブラコンを過剰にしてしまっているのはハチマン本人なのかもしれない。

 

「ま、まあそれなら良かったで。でも、ダンジョンばっか行かしたらあの子は本当に人形みたいになってしまうで」

「………そうだな」

 

アイズの戦闘を見て、他の冒険者が畏怖の名として言い始めた【人形姫】という異名。

ロキはそのことを知って、アイズのことを気にかけているのだ。

まあ、可愛いからという理由も含めてだろう。むしろそれしかない。

 

「たまにはダンジョンに潜るのを控えて街を散策してみたらどうだい?アイズも年頃………というのはまだ早いかもだけど、女の子なんだしさ」

「せやな。フィンの言う通りや。うちもアイズたんと出かけたいけど、あの子うちの言うことガン無視するんやで!?」

「それはロキが悪い」

「「「異論なし」」」

「酷いわぁ!!うちがなにしたん言うんや!?なぁ、コマチはうちが悪いと思うんか?」

 

皆に貶されたロキは唯一残っているコマチへと縋るが………

 

「はうぅ~///」

 

現在のコマチは受け答えすらままならないようだ。

 

「くっ、まあええ。この中で一番アイズが信頼を寄せとんのはハチマンや」

「(まあここまで世話見て俺よりもロキが良いとか言われたら凹むんだけどな)」

「せやからハチマン。明日から週に1回はアイズたんと街に行って出かけてくるんや。ええな?」

「おう」

 

特に反論もなく、ハチマンも考えてはいたことなので了承した。

 

 

 

 

――――――――――――――という経緯があったというわけである。

 

「うーん……」

 

悩んでいるアイズ。少し前のアイズならば、即座に却下していただろう。彼女が少しずつ変わりつつあるのが見受けられる。

そんなアイズを見たハチマンは攻め時とばかりにアイズの好物の話を持ち出す。

 

「ジャガ丸君抹茶クリーム味奢るぞ?」

「行く!」

 

ジャガ丸君。

最近オラリオ内の街で販売され始めたスナックである。

「【闇派閥】の影響で失われつつあるオラリオに活気を!」ということで屋台販売をスタートしたスナックで、アイズのお気に入りは抹茶クリーム味である。

ちなみにハチマンはノーマルバージョンが好きである。

 

「決まりだな」

 

ハチマンとアイズは出かけるために準備をし始めた。

 

 

 

***

 

 

 

「………なあ、アイズ。それ以外の服はないのか?」

「ない」

 

二人は普段着を着て黄昏の館の門前に集合していた。

ハチマンは上に黒を基調としたパーカーを着ていて、下はジーパンである。

アイズは…………いつも鎧の下に来ている服、無地のシャツを着ていた。

 

「マジか…………お前俺がいなかった4ヶ月何してたんだ?」

「フィンやガレスと鍛錬。もしくはリヴェリアと勉強」

「でもフィン達に剣と鎧は買ってもらったんだろ?他は買ってもらわなかったのか?」

「それだけ」

「……まぁ、あの中だとロキがダメな時点で詰みだもんな」

 

フィンとガレスは女子は分からないというし、リヴェリアはそっち方面に関しては転でだめだ。ロキは心に親父がいるから身の危険を感じるのだろう。

しかし、ここでハチマンの頭に妹の顔が浮かぶ。

 

「コマチは?」

「コマチは………私のことを可愛がってくれるだけ」

「だけ?」

「うん。たまにお兄ちゃんに恋心とか抱かないでね?とか言われる」

「アイツ何言ってんだ」

 

ハチマンは呆れたような表情をする。

何かと危ない妹だが、根は良い子だったはずなのに…………と呆れていた。

 

「とりあえず今日は街を回るぞ」

「はぁい」

 

二人は黄昏の館を出発した。

 

 

 

 

 

 

二人がまず訪れたのはヒューマン専用の洋服店。しかも女性の服を扱う店だ。

 

「よしアイズ。ここに入るぞ」

「え?私はこれでいい」

「あのな、アイズ。お前は可愛いんだ」

「か、可愛い!?どうしたのハチマン……///」

「お前にはちゃんとした服を着せるからな。すみません店員さん。あのですね……」

 

ハチマンは店の店員にテキパキと用を伝え、アイズはあれこれと着替えさせられる。

 

 

~1着目~

 

「おお~」

「そ、そんな反応するの?」

「いやいや、似合ってるぞアイズ」

 

アイズが着ているのは白を基調とした長袖に黒のワンピースを合わせたものだ。

 

「わ、私にはこんな服似合わないって……」

「いやいや、無茶苦茶可愛いからな?」

「か、可愛い///」

 

アイズの好感度パラメーター 50→63

 

 

~2着目~

 

青と赤を基調とした長袖T-シャツ。

 

「普段着に持って来いだな。着やすくないか?」

「確かにさっきのより着やすいかな………」

 

アイズの好感度パラメーター 63→63

 

 

~3着目~

 

水色一色のミニドレス&帽子。

 

「おお~いいんじゃないか?」

「どうして疑問形なの?」

「いや、中々似合ってるなぁって」

「………ありがと」

 

アイズの好感度パラメーター 63→66

 

 

~4着目~

 

可愛らしい花柄のワンピース。

 

「アイズってなんでも似合うんだな」

「なんでもは言い過ぎ。………ハチマンの馬鹿」

 

アイズの好感度パラメーター 66→70

 

 

~5着目~

 

大人っぽい黒を基調としたパーカー(下はロゴ入り長袖)。

 

「………」

「?……どうしたアイズ?」

「……なんでもないっ!」プイ

「あ~感想か。悪い悪い。毎回可愛い可愛い言っても意味ないかなぁって思ったから言わなかったわ」

「………そういうところがハチマンはずるい

「え?なんか言ったかアイズ?」

「なんでもない」

 

 

アイズの好感度パラメーター 70→90

 

 

 

***

 

 

 

 

「………店員さん。これ全部でいくらですか?」

「10540ヴァリスです」

「どうぞ」

「お買い上げありがとうございました!またのおこしをお待ちしております」

「よし、これでアイズの普段着をゲットしたな」

「ありがとハチマン」

「別にお礼はいい。………それよりお前はその服が気にいったのか?」

「………うん」

 

アイズが今着ているのは最後に着たパーカーだ。

理由はもちろんハチマンとお揃いになるからだが、当の本人は全く気が付いていない。

 

「次はどうする?」

「私は………武器屋が見てみたい」

「あ、そういやフィン達に貰った剣ってフィン達が直に渡したから一回も行ったことないのか」

「うん」

「よし、じゃあバベルだな」

 

二人はバベルへと向かうことにした。

 

 

 

 

 

「わ、人がいっぱい」

「そりゃあダンジョンの上にあるからな」

 

アイズは普段、黄昏の館の設備しか使わないため、ダンジョンの上にあるバベル内には立ち入らないのだ。

 

「どこに行くの?」

「武器屋だろ?もう少し上に行けば、【ヘファイストス・ファミリア】の支店がある。そこに行けば武器が山ほどあるぞ」

「どれもいい武器?」

「そりゃあこの世界中で一番と言ってもいい鍛冶師のファミリアだしな」

「でもハチマンは槍とかナイフとかしか使ってない。ここで買ったやつ?」

「いや違うぞ」

「?」

「あのナイフはただのギルドの支給品だ。槍は俺の専属鍛冶師が作ってくれたものだ」

「!?……!?」

 

アイズが二回驚いたのは、あれだけ鋭利で凄い威力を誇っていたナイフがギルドの支給品、つまりは最底辺の攻撃力しかないものだったことに驚き、二回目は専属鍛冶師がいたことに驚いたのだ。

アイズとてリヴェリアやハチマンとこの世界やオラリオのこと、冒険者稼業の類の知識を増やしてきているため、専属鍛冶師のことは知っていた。

だが、ハチマンはここ半年ほどアイズと行動を共にしているのだ。一体いつ会っていたのだろうか………………。

 

「よしアイズ。上に行くぞ」

 

ハチマンが先行し、アイズはそれについて行く。

 

 

 

 

 

「ここだ」

「わぁ!」

 

ハチマンがアイズを連れてきたのは【ヘファイストス・ファミリア】の一番質の良い武器が置いてある店だった。

アイズは少し前にその努力が認められて、フィン達から【ゴブニュ・ファミリア】製の剣を貰っていたが、このようなショーケースに飾ってあるような武器などを見たことがなかったため、一瞬にして釘付けとなった。

 

「凄く強そうな武器……ハチマン、あれ買って」

「却下だ。俺はお前自身に強くなってもらいたい。それにフィン達に剣を貰ったんだろ?それもかなりの業物らしいな」

「それは……そうだけど……それとこれとは別って言うか……」

「駄目だ」

「けち!」

「けちってなんだ」

「お金たくさん持ってるんでしょ?前ロキに聞いた。ここの武器全部買っても余るって!」

「「「!!」」」

「ここで言うんじゃねぇよ………」

 

ハチマンはソロで一ヶ月間ダンジョンに潜り、それは深層域にまで及ぶ。一人で深層域など無茶苦茶だが、あの『ウダイオス』をLv.4で倒したのだ。それくらいは出来てもおかしくはない。

そこで発生した魔石やドロップアイテム、資源などの額は計り知れないものになり、軽く遠征(現在の【ロキ・ファミリア】の遠征)に二回行けるくらいには手に入る。

さらに発展アビリティ『神秘』によって作成したマジックアイテムを高値で売っているため、それらの利益も加えると、かなりの額のヴァリスを保持していることがお分かりいただけるだろう。

 

そしてアイズがそんなことを言えば、近くにいた鍛冶師達が話に耳を傾けるのは当たり前というものだろう。

そんな彼らはハチマン達の姿を見て……そして残念そうに去っていった。

 

「ねぇ、ハチマン?なんかたくさんの人が私達を見に来て去って行ったけど何かあったのかな?」

「アイズ。俺に専属鍛冶師がいることは知ってんだろ?そのせいだ」

「あ!そっか」

 

ハチマンは【ヘファイストス・ファミリア】のリク・シュトラウスと直接契約を結んでいる。リクは有名な鍛冶師でもあり、また、【ヘファイストス・ファミリア】でもかなりの実力を持ち、鍛冶の腕も相当なものなので、他の鍛冶師からは尊敬されてもいる。

そんな彼の専属冒険者相手に自身の武器や防具を売るなど恐れ多いものなのだ。

 

そんな会話を挟みながら、アイズとハチマンは【ヘファイストス・ファミリア】の支店を見回っていく。

その途中で、紅髪の女性………女神と出会った。

 

「あら、ハチマンじゃない。あの子の調整にでも来たの?」

 

そう、【ヘファイストス・ファミリア】の主神である神ヘファイストスだ。

右目に黒の眼帯をつけており、先程も記したが紅髪紅眼であり、短髪である。

短髪である理由は鍛冶仕事に邪魔だからであり、彼女のファミリアの女性団員は短髪が多い。

天界で火の神と称されていた女神ヘファイストスは、【神の力(アルナカム)】が封印されているこの地上においても、類を見ることのない鍛冶職人で、世界中の鍛冶師が尊敬する神なのである。

 

「久しぶりヘファイストス。今日は『レイ』の点検に来たわけじゃない。アイズと一緒に出かけてた」

「はじめまして、アイズ・ヴァレンシュタインです」

「あなたが噂の【ロキ・ファミリア】の冒険者ね。いくつなの?」

「7歳」

「噂は本当だったのね……ハチマン、その、大丈夫なの?」

「ああ。フィンやロキからしたら最初は危ない感じだったらしいが………今では立派な冒険者だもんな、アイズ」

「うん」

「それにコイツは俺が面倒見てるから死なせはしないに決まってるだろ?」ナデナデ

「ん~」

「………そうね。今のやりとりで大体のことはわかったわ。それで何をしてたの?」

「アイズは強くなりたいらしくてな。フィン達から武器と防具はプレゼントされたんだが、こんなふうに武器を見たことがないって言ってたから大きくなったらここで買うのも良いんじゃないかって思って連れ回ってる」

「よく考えてるわね。指導者に向いてるんじゃない?」

「それフィンにも言われたな………そんなに上手か?」

「少なくとも私の眼からはそう見えるわよ」

「そうか。あ、ありがとう?」

「ふふ。本当ハチマンと話してると楽しいわね」

 

アイズを置いてけぼりにして、ハチマンとヘファイストスは会話を弾ませる。

アイズを見ると……頬をプクゥと膨らませている。可愛……お気に召してない様子だ。

そこでアイズは気になっていたことを口にする。

 

「ねぇハチマン」

「ん?どうしたアイズ」

「『レイ』っ何?」

「あー『レイ』のことか………」

「あら、まだ教えてなかったの?」

「そりゃあね………『アイツ』は規格外だからな。新米冒険者に教えられるわけないだろ」

「それもそうね」

「ねぇ、『レイ』って人なの?」

 

アイズの疑問はもっともだ。ハチマンとヘファイストスは先程から人のことを話すかのような会話をしている。

だが、実際は違う。

 

「あのな、アイズ。驚かないで欲しいんだが……『レイ』ってのは剣だ。人格が宿ってる剣のことなんだ」

「……えっ、え!?えぇぇぇぇぇぇ!!?」

「ま、こうなるよな」

 

はぁ。と息を吐くハチマン。こうなることは予想していたらしい。

 

「どういうことなの!?」

「……直接見てもらったほうが早いか」

 

ハチマンは自身の影から一振りの剣を取り出した。

その剣を見たアイズは、普通に感動してしまった。

見ただけで眼を奪われるような剣。綺麗な刀身をしていながらも、どこか強さを感じる。【ヘファイストス・ファミリア】の武器の中にあった剣も素晴らしいのだが、この剣の前では霞んでしまうだろう。素人の眼から見ても創りが素晴らしいのが分かる。

 

「………凄い」

「そりゃな。なにせここにいるヘファイストスが天界から降りて、はじめて作った剣だ。それに製作に………どれくらいだっけ?」

「100年越えた当たりから覚えてないわ」

「ってくらいの期間がかけてあるんだ。なんでタダで俺にくれたのか、今でも謎なくらいの品だ」

「それは貴方が初めて『あの子』と繋がったからでしょう?ビックリしたんだから。私にすらあまり応えてくれなかった剣がハチマンには必ず反応するんだから」

「ハチマンってやっぱり凄い」キラキラ

「や、やめろって。俺はそんなに凄くないぞ」

「何を言ってるのかしら?Lv.5でありながら【闇派閥】の連中を尽くギルドへと連行し、さらに【フレイヤ・ファミリア】の Lv.6、オッタルと互角の戦いを見せた……。これで凄くないわけがないでしょうに」

「それにハチマンの指導は、分かりやすくていつも私の事を気に掛けてくれていることがわかる。それに眠れなかった私と一緒に寝てくれたり、頑張れたら頭をナデナデしてくれるし、今日もこうして服も買ってくれたし……」

「待て待て待て!これ以上何も言うな!恥ずかしすぎる!」

「「~♪」」

 

ハチマンはニヤけが止まらなくなった自身の顔を手で掴みながら誤魔化そうとし、その様子にアイズとヘファイストスはご機嫌な様子である。

しかし、こうなるとハチマンが黙っているはずがない。

 

「……さっきから俺のことばっかり凄い凄い言ってるが、お前らのほうが凄いからな?ヘファイストスはしっかりと自団員の鍛冶に的確なアドバイスをするし、団員が長い時間鍛冶に打ち込めるように事務仕事を進んでやってるだろ?」

「そ、それは主神として当たり前のことでしょ?全然すごくないわよ」

「うちの主神にヘファイストスの爪の垢でも煎じて飲ましてやりたいくらいだ。それに凄いことって言ったらそれだけじゃない。リクが言ってたが、恩恵を貰ってる俺達よりも鍛冶の技術が凄くて、熱心で情熱的。慕わない、尊敬しない鍛冶師はいないって言ってたぞ」

「リクがそんなことをねぇ……まぁ、ロキに比べたら絶対に慕われてるとは思うけどね」

「むーっ」

 

ロキは天界の時にかなりの厄介もんで有名だった。外界に降りてからは子供たちが愛おしくなってかなり丸くなったらしいが、それでも娯楽大好きの神であることに間違いはない。

それと比べてしまえばヘファイストスは凄過ぎると言っても過言ではないのだ。

 

そしてハチマンがヘファイストスを褒めている間、アイズはずっと頬をプクゥとしていた。そりゃあもうハリセンボンみたいにプクゥっと。

 

「次にアイズだ」

「むー……ん?」

「俺はかなり厳しく指導してきたつもりだった。鍛錬にしろ勉強にしろ、厳しくな。でもお前は一度も弱音を吐かなかった。一度もだ。文句があるわけでもなく、ただ黙々と鍛錬も勉強も頑張っていた。勉強は苦手らしかったが、今ではかなり計算とかもできるようになって来たしな。そしてフィン達に聞いたが、俺が居ないときは自分で朝から走り、剣の素振りをし、鍛錬も勉強も真面目に取り組んでいたんだろ?それに夜は俺の部屋で読書もしてたらしいしな。確かにアイズは一人でオラリオに来るくらいの覚悟と願いを持って来たんだろうけど、これだけやれるってのは凄い事だ。アイズは俺の誇りだよ」

「……う、嘘でしょ?」

「いや、本当だからな。てか俺がアイズに嘘を吐くわけがないだろ。それにだ。アイズは可愛い」

「ふぇ?」

「いや、多分【ロキ・ファミリア】の男連中でアイズを可愛いと思ってないやつがいないだろ。いたら正気を疑うね」

「は、ハチマン。も、もうわかったから」

「それに加えて俺みたいなやつを慕ってくれるんだからな……慕ってくれてるよね?」

「も、もちろん!」

「それは……良かった」ニコ

「……だ、だからハチマンはズルい///そんないきなりたくさん言われると困る///

「ん?なんか言ったかアイズ?」

「……なんでもない」

 

プクゥっとしていたアイズはハチマンが言葉を発するたびに少しずつ萎んでいき、ついには顔を赤らめて俯いてしまった。

その様子を見ていたヘファイストスは思った。

これ、もう堕ちてるな、と。

 

 

***

 

 

「今日は色々回ったな」

 

ヘファイストスと会った後、家具の店や本屋、ジャガ丸君の販売されている屋台を回ったハチマンとアイズは帰路へとついていた。

そしてもちろんのごとく、帰り道にあった雑貨屋へと入る。

 

「なんかお土産でも買っていくか」

「……」ジー

「おっ、これなんかいいな。コマチも喜ぶだろう。店員さーん。これくださーい」

「……」フイ

 

あるものをジッと見つめた後、アイズは先に店を出た。

 

「………あ、すいません店員さん。これもください」

 

 

 

店を出て帰路を進むハチマン達。

そして黄昏の館が見えてきたところでアイズが数歩前に行き、振り返った。

 

「ハチマン。今日はありがとう。楽しかった」

「そうか。なら良かった。………アイズ、これやる」

「えっ、こ、これって」

「アイズがずっと見てたからな。ほれ」

 

ハチマンがアイズにやったのは、先ほどアイズが見ていた指輪である。

さらにコソコソとこの短時間で毒耐性と麻痺耐性、そして闇の加護がつくように加工した指輪だ。

 

「いいの?」

「おう。つけてみろよ」

「うん」

 

アイズは指に指輪をはめ込んだ。

 

「……綺麗」

「そうだな。金色だしアイズに似合ってるぞ」

「………ありがと」

「どういたしまして」

 

二人は並んで黄昏の館へと帰るのだった。

……アイズにある想いを抱かせながら。

 




やっと書き終わりました。
さて、次の話から約3年時間が飛びます。ちょっと早過ぎる気もしますが飛ばします。
構想自体は出来ているので、学年が上がる前には完結させたいです。


~好感度の設定について~

0・・・・嫌い
25・・・嫌な感じがする
50・・・普通
75・・・好感が持てる
90・・・好き
100・・大好き

ぐらいに設定してます。
さて、最後のアイズの好感度はいくらでしょうかね……?

次回もお楽しみに。

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