やはり俺たちのオラリオ生活はまちがっている。   作:シェイド

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うーむ、どうしようか。この先の展開を考え中です。思ったよりも名無しにはまってしまいました。


刺客②

「何が……起こったんだ!?」

 

ハチマンは唖然としていた。

名無しが剣を取り出したあとからずっと注意は怠らなかった。

だがいつの間にかハチマンの体には無数の斬り傷が生まれている。

 

(まさか…………オッタルより強いのか!?)

 

つまりはハチマンの目にすら視えなかった高速の斬撃を相手が放ったということになる。

 

「やってくれるじゃねーか」

「…………」

「お返ししてやる……【悪夢】」

「!」

 

ハチマンは闇の鎧を身に纏い、戦闘態勢を整える。

今のハチマンはLV.5をとうに超えている。

それを見た名無しの反応は………

 

「なるほど……これは確かに"危険"だな」

「なんだと?」

「いや、すまない。ただの独り言だ」

「("危険"か……何故俺なんだ?)」

 

ハチマンの疑問はもっともだ。確かにハチマンは強い。だがこの都市にはハチマンよりLVが高いやつが数人いる。LV.7までいるのだ。そんな彼らを放っておいてハチマンを狙う理由など無い筈だ。

 

「無駄話をしてしまったな」

「!」

「無駄だよ」

 

またしても高速の斬撃がハチマンを襲った。

すでに全身から血を出しているハチマン。久しぶりの重症である。

だがこの時、ハチマンが考えていたことはこんなことではなかった。

 

(何故だ。何故【悪夢】をすり抜けた?)

 

そう、ハチマンは現在闇の力を纏っており、普通攻撃が通ったならば跡が必ず残る筈。

しかし、悪夢には何の痕跡も残っていない。

さらに、

 

(服が一切破れてねぇ。一体どういうことだ?)

 

着ていた普段着が一切破れていないのだ。

二度も全身を斬られていながら服には自身の血以外の痕跡がない。

 

「そんなことがありえるのか?!」

「だが実際にありえているだろう?」

「……クソが」

「!?」

 

ハチマンは少し油断していた名無し目掛けて本気で突っ走る。

圧倒的なステイタス+【悪夢】による速度の上昇によって瞬く後に名無しに接近する。

 

「おらっ!」

「ぐっ!」

 

ハチマンは白銀で斬りかかるも、名無しは剣で防ぐ。

しかし、力の差なのか少しずつハチマンが押していく。

 

「食らっとけ!」

「くっ、うおお!!」

 

連続で刺突を繰り出すが、尽く名無しは防ぐ。

足元を狙った横薙ぎを繰り出すも、名無しは飛んでかわした。真っ二つにする思いで剣を振るうが、弾かれて二人の距離が遠くなる。

 

「…………」

「(来る!!)」

 

名無しの構えから高速の斬撃が放たれると感じ取ったハチマン。今まで攻撃に割いていた分の【悪夢】の力を防御へと回し、完全防御体制を敷いた。

だが、無駄だった。

 

「が……何故、だ……ゴハッ」

「しぶとい。常人ならばすでに息絶えている」

「はぁ、はぁ。お、おれにはまだ生きる目的がある。こんなところで、終わるわけにはいかねぇんだよ!!」

「そんなものを俺は知らん。ただこの世界に何らかの大規模な影響をもたらす貴様を殺しに来ただけだ」

「……そんなものを俺が気にする必要はねぇよ」

「そうだな。だから楽に死ね」

「ガァァァァァァ!!」

 

全身を斬撃が痛めつける。限界が近い。

 

(なんで通り抜ける。どうして……どうしてだよ!!?)

 

血にひれ伏し、血をダラダラと流し続ける。

これ以上血を流せば本当に命に関わるだろう。

名無しが少しずつ近づいてくる。

 

「……ここまで斬桜鬼に耐えた者は貴様が初めてだよハチマン・ヒキガヤ。冥土の土産に教えてやろう」

「あ?」

「斬桜鬼は東国に、それも密かに佇む地方にて生まれた。造った者が自身の夢を託し、そして多くのものが怨念を込めた聖剣……俺から言わしてもらえば妖刀だ。そしてこの斬桜鬼は……俺が振りかぶることもなく思考した時に貴様は斬られるのだ」

「何だと!?なら何故物を擦り抜ける?!」

「この剣は次元を断ち切る。斬ると思ったもの以外は斬れないようにできている」

「なるほど、な。だから、か……」

「まぁ知ったところで貴様には何もできないがな」

「ぐっ!アアァァァァァ!!」

 

一歩歩くたびに全身が斬り刻まれる。

数回の後、ハチマンはピクリとも動かなくなった。

 

「……逝ったか。だが念のためだ」

 

そして名無しがひれ伏すハチマンに向かって斬桜鬼を振りかぶった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「何!?」

「殺されるわけには、行かねえんだよ!」

 

聖剣ダーインスレイブを手に持ち斬桜鬼を受け止めているハチマンの姿があった。

 

 

***

 

 

数分前。

ハチマンは攻撃を受けながらも自身の影から『レイ』に呼びかけていた。

 

「レイ!……レイ!」

『んん~どしたのハチマン?僕まだ眠いんだけど』

「力を貸してくれ」

『ふぁぁ~だから僕眠いんだよ!それにハチマンなら僕がいなくてもだいじょうえええええええ!!』

「うるさ、い……ぞ、レイ」

『いやいやいやいや!!?どうしてハチマンがそんなに血だらけになってんの!?』

「ちょっと厄介な敵に襲われててな。軽く死にそうだ」

『どうすればいいの!!?ねぇ、こんなときどうしたらいいのハチマン!?』

「力を貸してくれ」

『……敵を倒すんだね。勝機はあるの?』

「ああ。そしてチャンスなんだこれは」

『……己の限界を超える。だね』

「そうだ。こんな機会滅多にない。やってやる」

『……わかった。最大出力を出すよ』

「ありがとな。助かる」

 

 

 

***

 

 

 

そして現在。

ハチマンは名無しを押し返すとゆっくりと立ち上がり、自ら【悪夢】を解いた。

 

「……何故闇の気流を解いた。正気か?」

「……正気だよ。それにお前には感謝してる」

「何っ?」

「お前のおかげで限界を超えられそうだ」

「……馬鹿なことを。すでに死んでもおかしくない血の量を流し、今にも倒れそうな貴様に何が出来るというのだ。潔く死ね!!」

 

名無しが持つ斬桜鬼より次元を断つ不可視の斬撃が放たれた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

だがハチマンは一歩横にズレた。

それだけで斬桜鬼の斬撃をかわして見せたのだ。

 

「悪いな……もう見切った」

「馬鹿な……何故だ!?」

「……」

「答えろ!!」

「……己が浮かび上がってきた」

「……」

「全身から血が抜けて、全身が冷えて己自身が一つの剣になったようだ」

「……」

「そして己の内なる剣が見えたんだ……粗く、堅く、欠けた剣が」

「己の内の剣、だと!?」

「ああ。そしてお前が持つ斬桜鬼の姿は……小童だ。まるで悪霊のようにこちらを睨みつける、な」

「そんなもの、幻覚に過ぎん!!」

「ふっ!」

 

名無しは次々に不可視の斬撃を放つが、尽くハチマンはかわす、かわす、かわす!

 

「何!?」

「斬桜鬼よ。聖剣とはな……」

「!……なんだその輝く剣は!?」

「武器として圧倒的なだけではいけないんだ」

『そうだそうだ!』

「真の聖剣とは……」

 

―――――――――――仁を持って己を研ぎ、使い手と聖剣が一つになったその先にあるものだ!!!

 

ハチマンは聖剣ダーインスレイヴを持って接近。圧倒的な力によって斬桜鬼を粉々に破壊した。

 

 

***

 

 

「さて、テメェは何者だ?目的は俺の抹殺か?」

「く、っそ。任務失敗か……」

 

その後名無しは斬桜鬼を失いながらもハチマンと死闘を繰り広げた。

その能力からしてLv.6とハチマンは踏んでいた。

 

「テメェがLv.6なのはわかっている……お前の上は誰だ?」

「ぐっ!」

 

蹴りあげながらハチマンは問いかける。

もしコイツの所属する組織にコイツよりも上の使い手が存在するのなら、ハチマンとしては見逃せなかった。

また闇討ちされるかもしれないし、もしかしたらファミリアにまで影響が及ぶかもしれない。

それだけは避けたかったのだ。

だが、名無しも情報漏えいは避けたかったのだろう。

 

「クソ、覚えておけハチマン・ヒキガヤ!ここで俺が倒れようとも、第二、第三の俺がお前を必ず殺すだろう。………さらばだ」

「?……!…おい、おいやめろ!」

 

名無しと名乗った暗殺者は体内に仕込んでいたであろう自殺用爆弾で派手に散って行った。

 

「チッ!」

 

ハチマンは地団駄を踏むしかなかった。

 

「逃したか……思ったより時間かかっちまった。夕飯作るために俺も、帰らないと、な……あ、これまずいな……力が、抜け、る………」バタ

『ハチマン?ねぇ、ハチマン!起きてよハチマン!!!』

 

暗い路地裏には大量の血と倒れているハチマンだけが残されていた。

 

 




斬桜鬼とかセリフとかは聖闘士聖矢THE LOST CANVAS 冥王神話外伝5巻より引用しました。

思っていたよりも名無しを強くしてしまいました。【悪夢】をまとったハチマンは現段階の【ヘル・フィネガス】唱えたフィンを超えているんですけどね………あ、原作と同等くらいです。

次回は看病回です。

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