ハチマン「リヴェリア先生!」 リヴェリア「やめろ!」
……俺が【ロキ・ファミリア】最高幹部である、【勇者】フィン・ディムナ、【九魔姫】リヴェリア・リヨス・アルーヴ、【重傑】ガレス・ランドロックに稽古をつけてくれとお願いしたことは、すでに知っていると思う。
彼らはそれを承諾してくれて、フィンやガレスとは稽古。リヴェリアとは世界やダンジョンのことを学ぶために勉強を教えてもらうことになった。
ここで聞いてほしいことがある。
リヴェリアとの勉強は、だいたい週に5回ほど行われていて、最高で3時間。最低で1時間の間、世界の国々についての情報や、オラリオ内の立地や由来。ダンジョンに関する基本知識に応用と、たくさんのことを学ばせてもらっている。
そして教えるのが初めてだと言うリヴェリアの教え方がそれはそれはわかりやすく、丁寧で確認まで行ってくれるからか、どんどん色々な知識を付けて行くことが出来ていた。
これは前回の授業の時の話だ。
その時の授業内容は共通語の読み書きの最終確認だったのだが、最後にリヴェリアがこんなことを教えてくれたのだ。
「ここには学区というところもあってな。お前ぐらいの歳の子が行っている所謂学校だ」っと。
俺はこの事実を知った後、以前学校で勉強し、卒業生だと言う同じファミリアの団員に話を聞いてみた。
「なあなあ、学校ってどんなことをするところなんだ?」
「おっ、ハチマン。興味あんのか。学校はな、勉強したりクラスメイトと友達になったり、先生や生徒とともに生活するようなところだ」
「先生?」
「おう。勉強を教えてくれたりする人のことを、俺達は先生って呼んでるんだ。先輩たちや他の同級生も先生って呼ぶのが普通だったからな」
「へぇ~」
という会話をしたその日に、俺は闇影を使って学校とかいう施設に入り込むことにした。
確かに俺と同い年くらいの奴が椅子に座って、机の上で前方の板?に書かれた共通語をせっせと書きうつしていた。そして一人の生徒が、「先生ー!」と声を上げると、前方の板の前で文字を書いていた女性が、「どうしたのレオン君?」と声を返していた。
なるほど。あれが先生か………リヴェリアみたいな人のことだな。よし。
明日の授業で言ってみよう。
***
「よし、今日は18階層以降のことについて詳しく見て行くぞ」
「はい、わかりましたリヴェリア先生」
「………おいハチマン、今なんて言ったんだ?聞き間違えたかもしれない」
「はい」
「いや、そこじゃなくてそのあとだ」
「わかりましたリヴェリア先生」
「その先生はどうしたのだ?」
「学校だとそういうらしいですよリヴェリア先生。こういった教える行為をする際には、俺が生徒だからリヴェリアは先生らしいですよ」
「………それをお前に教えたのは誰だ」
「え、俺が学校に忍びこんで実際に観てきただけですリヴェリア先生」
「忍びこんだだと?まったく、これからはそんなことはするんじゃないぞ」
「はい、すみませんでしたリヴェリア先生」
「とりあえず先生と敬語を止めてくれハチマン」
「ですがリヴェリア先生のことをなんと呼べばいいのですか?」
「普通にリヴェリアでいい」
「いや、リヴェリア先生はリヴェリア先生なんですからそんなこと言えません」
「一昨日まではリヴェリアと呼んでいただろう!?」
「その時はまだまだ自分が未熟で何も知らなかったんです。今まで舐めたマネしてきて本当にすいませんでしたリヴェリア先生!」
「いや、私が気にしないから普通にリヴェリアと呼んでくれ」
「先生がそうして欲しいんですね?」
「ああ頼むハチマン」
「わかった。これが生徒と先生のイケナイ関係ってやつなんだなリヴェリア!」
「お、おま、お前はいきなりなんてことを言い出すのだ!?」
「えーだってリヴェリア先生が一人の生徒と二人っきりで名前で呼べってのはそういうことなんだろ?俺、実際に学校って施設で目にしてきたから間違ってないよ」
「それはその学校がおかしいだけだ!なんて破廉恥なことを言うのだ!それは間違っているぞハチマン!目を覚ませ!」
「…………リヴェリア先生!」
「だからやめろ!」
その後もこのようなやり取りが続き、突如乱入してきたロキが、「リヴェリアお母さん」とか言い出したため、俺のリヴェリア先生とロキのリヴェリアお母さんでリヴェリアがどんどん顔を赤くしていき、やがて来たフィンが見たのは、俺とロキが正座した状態でリヴェリアに怒られている姿だったという。
その日は結局勉強が出来ずに終わってしまい、また明日ということになってゾロゾロと部屋から出て行き、俺は最後にリヴェリアに向かって、
「リヴェリア先生!」
「やめろ!」
と言ったあとに走って逃げ、部屋で眠りに着いたのだった。
………次の日に朝からコッテリ絞られたのは言うまでもない。