これは朝、朝食終わりのこと。
フィンを始めとした最高幹部と、主神であるロキは中庭を見ながら談笑していた。
中庭ではアイズがハチマンへと向かっていっており、それらすべてをハチマンが受け止めていた。
「まったく。いつもの事ながらアイズは根性があるのぅ。あれだけ綺麗に弾かれて、ぶっ飛ばされてもまたすぐ立ち上がって攻撃しに行く。たいしたもんじゃ」
「そうだね。元々アイズには素質はあった。そしてそれを伸ばす為の根性もあった……というわけだね」
「さようじゃな」
「なぁリヴェリアー。アイズたんは勉強の時はどうなんや?」
「同じだ。元々勉強は苦手らしいが、よく頑張っている。根気強さが光っているな」
「マジか……アイズたん健気すぎるで!あんな出来事があった後にここまで強くなろうと努力して、その過程で師匠に禁断の恋心を抱いて……くぅ~萌るわ!!」
「…………待て」
ロキの言葉にリヴェリアが待ったをかけた。
「禁断の恋心を抱いてとは何だ?」
「あーリヴェリア気づいとらんかったか………だから行き遅れるんやで!」
「ふんっ!」
「いぎゃぁぁぁぁぁ!!?」
調子に乗って禁句ワードを口にしてしまったロキの顔面に、リヴェリアの拳が炸裂した。
ロキは地面を転がりまわっている。
「………リヴェリアは気付いてなかったのかい?」
「………全然気付かなかったぞ」
「まぁかくいう儂も気付いとらんかったがな」
ガッハッハッハと豪快に笑うガレス。言っておくが凄いことではない。ただ気付かなかった鈍感である。
「いつ頃からだ?」
「ンーそうだね………きっかけは少し前に二人で出かけた時かな?」
「あの時か?」
「うん。あの後アイズにハチマンのことを出すと、ぼーっとした後に頬を赤く染めて、顔を横にブンブン振るってたから、これはもう恋してるんじゃないかなっては思ってたけど」
「なるほど………全然気付かなかったな」
ハイエルフの王女はまだまだ知らないことがあると、己の無知を思い知った。
………言っておくがただの恋愛話ではある。
そこへ先程まで地面で転がっていたロキが起き上がって、会話に参加してくる。
「な?禁断の恋心を抱いとったろ?」
「恋心はわかった…………その禁断とやらがわからん」
「僕もそれは分からないね。ロキ、何が禁断の恋なんだい?」
「意味がわからんぞ」
初期メンバー三人に問われたロキは、少し間をおいたあと、ニヤニヤしながら言った。
「師弟関係やで?ただの師匠とその弟子。やましい心を持っちゃいけない関係や。そんな中で弟子は師匠に対して恋心を募らせていく…………禁断の恋話定番の流れや!」
「「「………ハァ」」」
三人は深いため息をついた。
この馬鹿はどこでそんなことを知ったのだろうと。
だがここでロキから衝撃発言が。
「言っとくけどこれ知ったのは、ハチマンの部屋の本からやで。たまに一緒に読書する時にたまたま見つけた本にそう書いてあったんや」
「「「!?」」」
三人は驚いた。それはもう原作で18階層にベルがいることに驚いたベート並に驚いた顔をしていた。
「あのハチマンが…………」
「いつの間にそんな本に手を出すようになったのだ?」
「ハチマンのやつ……」
三人とも目を合わし、アイコンタクトで決めた。
今日、ハチマンの部屋に行こう、と。
しかしここであることに気付いたフィンがロキに尋ねる。
「ロキ。一ついいかい?」
「どした?」
「師弟関係が禁断の恋なら、兄妹はどうなるんだい?」
「「!!……確かに」」
そう、ハチマンにはアイズという弟子もいるが、コマチというブラコンの妹がいる。
あれだけは誰がどうみても好きたということが分かる。
「それもあったで!でもウチは師弟の方に焦がれとんのや!」
「…………混乱してきた」
もう取り敢えずハチマンの部屋に行って調べてくる。と言ってリヴェリアは部屋をあとにした。
***
その日の夜。
ステイタスの更新をしにきたアイズと会話をしていたロキ。
そこで今朝の話題を持ち出した。
「なぁ~アイズた~ん」
「………なに」
「ズバリ……ハチマンに恋しとるやろ!」
「……な!?え、ち、違う!」
「ほほう?じゃあ嫌いなんか?」
「嫌いなわけない!むしろ大好き!!………待って!今のナシ///」
「禁断の恋や!」
「…………煩い///」
アイズはそっぽを向いた。
その顔は真っ赤に染まっていたという。
一方、ハチマンの部屋にて本を漁っていたリヴェリアはというと……
「な、なんという破廉恥な………///」
と、言いながらも読みふけっていたという。
その後帰ってきたハチマンと鉢合わせになって気まずくなったのは言うまでもないだろう。