やはり俺たちのオラリオ生活はまちがっている。   作:シェイド

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ハチマン14歳、Lv.2での偉業です。


Lv.3到達へ

突然だが俺は今日、ある『偉業』を成し遂げたいと思う。

そう、Lv.2ソロでの階層主、『ゴライアス』の討伐だ。

Lv.4にカテゴライズされている『迷宮の孤王』に一人で挑むとか、死にたがり野郎と言われても仕方ないかもしれないが、これくらいしか『偉業』と言われるようなものが思いつかなかったのだ。

 

「ここから先は本気で行かなきゃな……【悪夢】」

 

俺は事前に【悪夢】をかけた状態で、17階層へと飛び込んだ。

 

 

***

 

 

『ゴライアス』はすでに姿を現していた。

一言で言い表せば"巨人"だ。

明らかに階層内で狭そうにしている巨人。その眼光が俺を捉えた。

瞬間、凄まじい速度で腕が横に振られる。

俺は白銀で斬りつけながらも回避。少しだけ腕から裂けるが、すぐさま修復してしまう。

 

「ちッ、硬いな!」

 

『ゴライアス』の欠点としては以下二つが言える。

一つ、その図体には少々狭いルームにて生まれること。

もう一つは……地を這う形でいることだ。

通常、モンスターはニ足歩行できるものならニ足で立つのが基本だ。

しかし、『ゴライアス』はそのデカすぎる図体に狭いルームに生まれることで、四足歩行のような形になるしかない。

つまり、隙はあるということ。

 

『オオオオッッ!!』

「うらぁ!」

 

『ゴライアス』の太くて長い腕による攻撃を回避しながら、白銀でカウンターを合わせて『ゴライアス』の胴体を斬り付ける。

しかし、やはり硬いために攻撃が魔石まで通らない。

 

「どうしたもんか……」

『オオオオオッッ!!』

「うおっ」

 

思考を始めればこれ好機とばかりに『ゴライアス』は攻めてくる。

そんないたちごっこが続くこと数十分。

痺れを切らした『ゴライアス』は強行手段に出る。

 

『ゴオオオオオォッ!!』

「お、おいおいおいちょ、ちょっと待って……!」

 

ハチマンは慌てるが、時すでに遅し。『ゴライアス』はルーム内に乱立してあった柱を壊していき、さらには避難場所としてハチマンが使っていた壁も破壊し始めた。

ハチマンはこれを止めようとするも、元々『耐久』のアビリティ値が低いために【悪夢】も合わせた防御力では、『ゴライアス』の高い攻撃力に勝ることが出来ず、手出しがしにくかった。

結果。

ものの見事に17階層は平面地と化していた。

 

『オオオオオオ!!』

「あー!!やりやがったなこのクソモンスターめ!!更地にするとかホント迷惑だよこの野郎!」

『アアアアアアアアアッッ!!』

 

ハチマンが抗議の声を上げるが、相手はモンスターだ。現在部屋にて共に暮らしているトトのように人間の言葉は話せないのだ。

しかし、ハチマンの様子から何かを察したのか、『ゴライアス』は動きを止めた。そして次の瞬間、モグラ叩きのような要領でハチマンを潰しに来た。

どうやら怒ったらしい。

 

「ちょちょ待って。『ゴライアス』ってこんなことするっけ?!今までの参考文献には載ってなかったぞ!」

 

【ロキ・ファミリア】の本拠地である黄昏の館内には団員兼用の図書館がある。

そこでハチマンは知識面の先生であるリヴェリアと一緒に『ゴライアス』の行動パターンを予習していた。

しかしそこにはこんな攻撃方法なんて書かれていなかった。

 

『オッ!オッ?オッ?オオー!!?』

「なんか腹立つぞおい!!」

 

明らかにモグラ叩きの気分になっているような『ゴライアス』。ハチマンがかわすたびに驚いたり、怒ったりと声音が変化する。

さらに、少しずつ予測して拳を放つことが多くなってきた。

一発一発が並の威力ではない『ゴライアス』の拳。

一回地面に叩きつけるだけでそこはクレーターとなり、見れば全体の三分の二が穴だらけになっていた。

 

「いたちごっこだな……てかそろそろ倒さないとリヴィラにも被害がいきそうだ」

 

17階層の下には18階層にある冒険者の街、リヴィラがある。そこは300回以上壊されてもまた修復してきた不死身の街だが、さすがに『ゴライアス』が降ってきたらそうもいかないだろう。

 

「そろそろ決着付けるか……【悪夢】!」

 

俺は効力が切れかけていた【悪夢】をもう一度唱え、今一度闇の力を身に纏う。

闇の力は破壊の力だ。

俺は全体的に防御や身体強化にも使ってはいるが、特化しているのは攻撃である。

闇の精霊『シェイニー』によって力を授かった俺は、普通の魔法とは異なった魔法を二つ持っている。

その内の一つである【悪夢】。

これは()()()()()()()()()()()()()()()()と同調することにより、効力を向上することが出来る。

ちなみにだが、俺に精霊の血が流れていることを知っている者は力を与えてくれた本人であるシェイニーくらいしかいない。

 

「行くぞ、『ゴライアス』!」

 

最後の勝負が始まった。

 

 

***

 

 

(右、右、左前、右、左、右後ろ!)

 

『ゴライアス』によるモグラ叩き攻撃を掻い潜りながら、少しずつ接近していくハチマン。

そしてあと十数歩というところまで来た時。

ハチマンは跳んだ。地面を全力で蹴りつけて本気で跳んだ。

 

「エンチャント!くらえェェェェェェェェ!!」

 

【悪夢】を白銀に纏わせて、『ゴライアス』に斬りかかった。

だが。

 

『オオオオオオオオオオオッッ!!』

「ッ!?」

 

ハチマンの攻撃は『ゴライアス』には届かなかった。

斬り付ける直前、『ゴライアス』の左腕がハチマンを急襲。拳が直撃したのだ。

ぶん殴られたハチマンは壁へと吹き飛ばされる。

その拳の威力を物語るかのように、ハチマンの身体は壁にめり込んでいた。

 

「ガハッ!……痛ってーな……」

 

血を至るところから出しながらも、意識は保ったままのハチマン。

そこに止めとばかりに『ゴライアス』が近づいてくる。

そして腕を振りかぶり、追撃する瞬間だった。

 

「お返しだ。この野郎!」

 

突如として爆音が響き渡る。

その音とともに『ゴライアス』に変化が生じた。

先程まで十全だった『ゴライアス』の動きは鈍り、立っていることすらままならなくなっていく。

 

『オオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオッッ!!?』

 

何が起きたのか理解できない様子の『ゴライアス』。

何故だがわからないが、『ゴライアス』体内にある魔石の周りを囲う部分がダメージを受けたのだ。

 

「はっ、何が起きたかわかんないだろ?」

 

そんなゴライアスを上から見下ろすハチマン。

いつの間にか壁から抜け出しており、その削れた部分を足場にしていた。

 

闇の力の根源は破壊にある。

つまりは攻撃に特化しているわけだが、これは応用が可能だ。

例えば今さっきハチマンがやって見せた物。

【悪夢】状態でその闇の一部を『ゴライアス』の体内に侵入させたのだ。

闇=破壊という前提を前にした時、相手の能力を落とすことも破壊に繋がる。

『ゴライアス』を作っている物質に闇の力が干渉し、それを削いでいくことによってダメージをあたえるのだ。

 

『アアアアアアアアアアアアァアアアア!!?』

「さて、もう終わりにするぞ」

 

もがき苦しむ四つん這い状態の『ゴライアス』の上に降り立つハチマン。

白銀を下に向け、魔石を狙い定める。

 

「お前の敗因は、俺との相性が悪かったことだ」

 

白銀で魔石にキズを入れ、ハチマンは『ゴライアス』に止めを刺した。

 

後日、一年という期間でLv.3にレベルアップしたハチマン。

彼の戦いはまだ終わらない。

 




ハチマンと相性が良い奴っていなくね?って書いてて思いました。
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