やはり俺たちのオラリオ生活はまちがっている。   作:シェイド

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アスフィとの冒険会です。
次回話でオラリオに到着します。


冒険

いきなりだが今までの旅をざっと振り返ってみよう。

 

村で幸せな暮らし

    ↓

モンスターに襲われる

    ↓

両親が死亡して悲しみにくれる

    ↓

生活のためにオラリオを目指し始める

    ↓

俺が魔法を発現する

    ↓

ドラゴンやっつけたりする

    ↓

闇の精霊少女を助ける 

    ↓

力を貰って超強化

    ↓

オラリオを目指して旅を進める

    ↓

牛のモンスターの群れに襲われる

    ↓

逃げきるが道がわかんなくなる

    ↓

牛モンスターに襲われそうだった少女を助ける

    ↓

助けた少女は王国を抜け出してきた王女

    ↓

その王女に一緒に冒険をして欲しいと頼まれる

    ↓

さぁてどうしようか←今ココ

 

 

今俺達三人は、洞窟の最深部を目指していた。

ん?ああ。どうしてこうなったか、振り返って見るとしよう。

 

 

 

***

 

 

 

「そのかわりに、私と一緒にモンスター退治の冒険をしてくださいませんか?」

 

……マジですか。

俺はこのことに関して損得を考えてみる。

まあ、悪くない条件ではある。オラリオへの行き方がわからない俺たちにとっては、今いる場所自体、わかっていない状況だ。そんな中、道を知るためにはまず村などを探す必要があることを踏まえると、得の方が大きいのではないだろうか?

いや、冷静になるんだハチマン。目下の問題はそこではない。問題は、そのアスフィのいう場所に存在するモンスターの強さだ。

ゴブリン×10ぐらいの強さだったら楽なんだがなぁ・・・そんなわけないよな。

すると、こちらの内心を悟ったのか、アスフィは話を続ける。

 

「私が近くにある王国の王女であることはお話ししたと思います。そこでの私の唯一の楽しみが、王国の外の話だったのです。前に商人から偶然聞いたもので、王国の近くにある洞窟の最深部には、ものすごい絶景があるそうなのですが、その前にはその絶景を守るように主モンスターが存在している。と言うのを聞いて、外に出られるチャンスがあったら、その時はそこを目指そうと決めていました」

「なるほどな。それで俺達にも手伝ってもらいたいってことだな」

「はい。この冒険が終わったら、さすがに私は王国に戻らなければなりません。その前に、どうしてもこの話に出てくる絶景を見てみたいのです」

 

……………ふむ。

 

「コマチはどうしたい?」

「オラリオへの行き方聞けるんだし、それにコマチはもうちょっとアスフィちゃんと一緒にいたいからついて行きたいな」

「わかった。アスフィ。一緒に行くよ」

「本当ですか!?ありがとうございます!」

 

アスフィは大喜びと言った表情でお礼を言ってきた。

今頃気がついたのだが、アスフィの服装はところどころが破けている。ここまでくるまでにモンスターに襲われたことが分かる。

そして、それと同時に疑問がわく。

 

「そういやアスフィ。どうやってここまでモンスターを凌いできたんだ?」

「実は王国を抜け出す際に、こっそりと爆弾を数個盗んできたんです。それで、今までは爆発させてきました」ニコ

「そ、そうか」

 

この子、笑顔でなんてこと言うんねん。

 

 

***

 

 

ってわけで俺らはアスフィのいう洞窟を目指している。

 

「コマチちゃんは今までどんな旅をしてきたの?」

「えっとね・・・・・・」

 

現在、コマチとアスフィが前で俺が後ろという2-1の状態で進んでいる。

村にはコマチの同年代の女の子がいなかったから、コマチはとてもうれしそうにアスフィと話をしている。

アスフィもコマチの今までの旅の話を聞いて、楽しんでいるようだった。

 

少々の時間が経った時、アスフィが前方を指差した。

 

「あの洞窟の最深部だそうです」

 

俺達は、早速その洞窟内に足を進めた。

 

 

***

 

 

ピチャン、ピチャン

 

洞窟内に水の落ちる音が響く。

この洞窟はかなりの広さがあるようで、結構闇が深い。

闇精霊に強化してもらった所縁か、闇に敏感になった気がする。

そして、気づいたことがある。

 

「なぁアスフィ」

「どうしましたか?」

「その商人さ、この洞窟がどれくらいの規模のものか言ってたか?」

「……いいえ」

 

やはりな。そうだろうと思ったんだ。

今の俺には闇を探知する能力が備わっている。それのおかげか、ある程度この洞窟の全容が分かるのだ。

この洞窟、下手したらかなり下まで下ることになりそうだ。 

 

「予想なんだがな、この洞窟は多分、かなり下まで続いている」

「わかるんですか?」

「俺には精霊の力とやらが少し混じってるんだ。そのおかげで闇に関してはかなり有利に働ける」

「それで予想、ですか」

「ああ」

 

そこまで話すと、アスフィは顔を俯かせる。迷っているのだろう。このまま最深部を目指すのか、引き返すのかを。

 

そして、結論を出した。

 

「そうであっても、すいませんが私は最深部を目指します」

「分かった」

 

依頼人がそう言うのなら、俺達は従うだけだ。こっちだって条件を飲んでここにいるわけだし。

 

「お兄ちゃん、実際どれくらいありそうなの?」 

「私もそれ、気になります」

 

コマチとアスフィが同時に聞いてくる。

さて、困ったものだな。実際、俺の感覚からいけば最低で100メドル程度は潜らなければならないだろう。

しかし、ここでそのままの事実を述べてしまえば、二人は少なくともビックリはするだろう。

何故ならこの洞窟は、入ったときから出口が見えている。

その下があるっていう奴がいる時点でおかしいんだ。

 

「質問には後で答える。そこで二人に提案なんだが・・・・」

 

現時点で出来ることは、この案を出すことぐらいだ。

 

 

 

***

 

 

 

「これが闇の中・・・便利な魔法ですね」

「ああ。俺もそう思う」

「やっぱ外からの影響を一切受けないってのが一番いいよね」

 

俺達は今現在、俺の案により闇の中に潜っていた。

俺の二つ目の魔法である【闇影】の効果だ。…………実際は違うけど。

この闇な溶け込むという効果のおかげで、実はかなりのショートカットが出来るのだ。

現在、ショートカットの途中である。

 

「私もいつかこんな魔法を使ってみたいです」

 

そうか。思い返してみれば、アスフィにとってはこれが最初で最後の冒険だ。

王国の王女として、生まれてから義務という鎖がアスフィを縛り付けている。

……今回の冒険は、最高のものにしないとな。

 

俺は一人、この冒険への気持ちをより一層高めた。

 

 

 

***

 

 

 

しばらく闇の中を歩いたあと、俺達は地上に戻った。

現在地点は地下100メドルといったところだ。

俺の感覚ではここが最深部なんだがな・・・間違えたか?

するとそこへ、ズシン!!ズシン!!と大きな音が轟き始めた。

俺達が音のする方を見ると、巨人がこちらに歩み寄ってきた。

コイツは・・・・ゴブリンで計算すると、250体くらいか?強いな。

 

『オオオオオオ!!』

「コマチ、コイツは危険だ。闇に潜っとけ」

「アスフィちゃんは?!」

「冒険したいってやって来たんだ。戦わなきゃ意味がないだろ」

「その通りです」

「でも!!」

「安心しろ……【悪夢(ナイトメア)】」

 

俺は【悪夢】を唱え、自身の身体に纏う。

そして、もう一度【悪夢】を唱え、次はアスフィに闇の加護を纏わせた。

 

「本当に万能ですね」

「俺もそう思う…………が、話の前にアイツを倒さないとな」

「そうですね」

 

目の前には巨人が迫って来ている。

俺はすぐに現在の状況を分析する。

こちらは二人。俺とアスフィ。そしてコマチは闇の中だ。

敵はあの巨人。他の気配はないからこの一体を相手取ればいい。

そして、今いるフロアはある程度広い。

……勝てるな。

 

「アスフィ。ちょっと頼みがある」

「なんですか?」

「耳貸せ」

 

 

俺は思いついた策をアスフィに伝える。

巨人の動きがとろいため、完全に攻守特化だろう。

俺の【悪夢】でも倒せるが………多分同時に俺が意識失っちまうからな。

アスフィにしかできない。

 

 

「それだと私帰りが怖いんですが………」

「安心しろ。王国付近までは一緒について行くから」

「わかりました。死なないでくださいね」

「はっ。コマチ残して死ねるかよ」

 

俺はアスフィと二手に分かれ、戦闘を開始する。

俺は正面。アスフィは側面に回る。

さあ、モンスター退治と行こうか!!

 

 

***

 

 

あれから数十分が経っただろうか。

やはり睨んだ通り、この巨人は攻守特化だった。

まず、攻撃が恐ろしく強い。

地面にいくつも穴できちゃってるし。

そして、動きがとろいという予測は合っていたため、すぐに攻撃を叩きこむことが出来たのだが………いかんせん硬すぎる。

なにせゴブリンを塵に出来る【悪夢】を纏った一撃が、効かないのだ。

ナイフに【悪夢】を纏わせると、一応通りはした。だが、なんか知らんけど入れたヒビが修復されていくのだ。

………なにこれ無理じゃね?

なんて考えてしまう時もあったが、アスフィの一撃で多分片がつく。

 

俺がアスフィに耳打ちした内容はこうだ。

 

「耳貸せ」

「なんですか?」

「アイツを倒すための策だ」

「策?」

「ああ。アイツは見た感じとろい。だが、その分攻撃と防御に特化しているんだろう。多分だが、俺の【悪夢】の一撃じゃ倒しきれない」

「じゃあどうするんですか?」

「アスフィ、まだ爆弾は残っているか?」

「あと二つあります」

「二個で充分。俺が合図したら放て。それで奴を倒す」

 

という内容だ。

まあ、爆弾自体がどのくらいの威力かは知らないが、倒せるはずだ。

俺には最終的な奥の手もあるしな。

 

 

 

俺は正面から巨人と相まみえる。

俺は【悪夢】のおかげで攻撃、防御、素早さが底上げできているため、巨人の一撃など造作もなくかわし、攻撃を叩きこめる。

体制を崩させて、核になっている魔石の部分まで切り、そこに爆弾を入れて爆発出来たら勝てる!

 

「行くぞアスフィ!」

「わかりました!」

 

俺は一瞬で巨人に肉薄し、悪夢最大出力をナイフに込めて巨人を切り裂く!

そしてアスフィの爆弾が炸裂する。

 

 

 

 

………はずだった。

なんとこの巨人。俺が切り裂いた跡を即座に塞ぎやがったのだ。

そのせいでアスフィの放った爆弾は巨人の外面に当たり爆発。多少はダメージを与えられただろうが、倒せてはいない。

 

「そんな!?」

「アスフィ落ち着け!」

「……すいません」

「いや、俺の推測が甘かっただけだ……すまんアスフィ」

「はい?」

「ちょっと闇に潜っていてくれ」

「え?ちょ、ちょっと待っ」

「ごめんな」

 

アスフィの抗議も聞かずに、俺は闇の中にアスフィを潜らせた。

しっかしもう()()使うしかねえよな。

 

………仕方がない。

 

俺はコマチにさえ()()()()()()()()を使うこと決めた。

 

「我は闇と同化する者なり ()()()()()()()()()()

 

俺は詠唱を続ける。

 

()()()()()()()()()() ()()()()()()()()()()()!!」

 

俺は巨人に狙いを定める。

 

「喰らいやがれ!!」

「オオオオオッッ!!?」

 

俺は周囲の闇を集め、デカイ球体を形成。それを巨人に放った。

 

放たれた闇の球体は巨人を飲み込み、あとにはなにも残らなかった。

 

 

 

***

 

 

 

「お兄ちゃん!あの魔法は何!?小町知らないんだけど?!」

「お、落ち着けコマチ・・・・」

「私も気になります!」

「アスフィまで・・・・わかった、わかった。話すから」

 

話は二ヶ月前に遡る

 

 

 

 

俺は二ヶ月前。闇精霊の少女に会った夜。もう一度闇精霊と話をしていた。

あ、コマチが寝た後でな。

 

「どうしたんだ?」

「いや~することがなくてね」

「それで俺達の旅にこそっとついて行こうと」

「そういうこと♪」

 

そういうこと♪じゃねーよ。

 

「いや、迷惑なんですが」

「えーつれないなー」

「じゃ、俺帰るわ。寝たい」

「わかったわかった。本当の目的言うから~帰らないで~」

 

やっぱ別の件か。

 

「今日授けた【闇影】。実は本当の効果は闇と同化することではないんだ」

「マジで?」

「うん。君はもう普段の状態で闇とは同化できる。本当の闇影は闇自体をなんにでも使うことが出来る超万能魔法なんだ~」

「強いよな、それ」

「もち」

 

どうしよう。もちって言ってる闇精霊が可愛すぎる。

 

 

 

***

 

 

「どういうこと?コマチよりあの子がいいっていうの?」

「そこ?!いや、あの、えっとですねコマチさん……」

 

コマチが怖すぎる。

 

「あのな、言っとくけど俺の中での一番はコマチだからな」

「ホントに?」ジト

「ホントだっての」

「ならいいや」

 

この子切り替え早すぎない?

 

「では、さっきの闇に潜ったときに唱えていたのは何なのですか?」

「あれは魔法を唱えているようにカモフラージュしてたものだよ。ま、つまりはもとから可能ってわけだ」

 

そのことを告げると二人してポカンとしている。べ、別にポカン顔を可愛いとか思ってないから「思ってないの?」……コマチ、ナチュラルに心読むの止めて。実際可愛いって思ってます。はい。

 

「とにかく番人っぽいやつ倒したんだ。先に進んでみようぜ」

「は、はい!」

 

先に自我を取り戻したアスフィが答え、俺達は最深部を目指した。

 

 

***

 

 

巨人を倒して、その後奥に進んだ俺達は、湖を発見した。

その湖の上は地上へとつながっているらしく、光が差し込んでいた。

その光によって、澄んだ色の湖はまさに絶景と呼べるにふさわしいものだった。

 

「綺麗………」

「素晴らしいです」

「本当にあったな……」

 

俺達は口々に感想を述べながら、この絶景を眺め続けた。

 

「さあて、帰るとするか」

 

俺達はここを出ようとしたときだった。

 

 

ガゴンッ!

ズシン!!ズシン!!ズシン!!

 

嫌な音が響き渡る。

俺達が音のした方を振り返ると……

 

 

無数の巨人がこちらに歩み寄ってきていた。

 

 

「逃げるぞ!」

「もちろん!」

「ですよ!」

 

俺は二人とともに闇に潜って、すぐさま洞窟の外を目指した。

 

 

***

 

 

「本当にありがとうございました」

 

俺達は現在、洞窟を脱出した後にアスフィの王国を目指していた。

アスフィの所持していた爆弾を、俺の策で使い果たしてしまったため、護衛替わりでつき添っているのだ。

 

「むしろこっちこそありがとうだよアスフィちゃん。コマチも初めて同性の友達が出来たし、絶景も見られたし、今日はいいことずくめだよ」

「そんなこと」テレテレ

 

俺としていい日だった。闇影の能力も実戦で使えることが分かったし、なにより小町が楽しそうなのが良かったな。

 

「ハチマンさん、コマチさん。今日は本当にありがとうございました」

「俺達もいい日になったし、こっちこそありがとうだよ」

「オラリオへの道も教えてもらったしね♪」

「では、私は国に戻ります」

「おう、また会えたらいいな」

「……はい」

 

こうして俺らはアスフィと別れ、オラリオへの旅を再び始めたのだった。

 

 

数年後、オラリオで再会するとは思わずに。

 




書いてる本人が言うのもなんだけど、こいつら12歳と9歳と7歳なんだよなぁ。

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