くーちゃんの心が読まれてしまうと後々面倒なので。でも会話はさせたい。この葛藤。
前話を読んだ人ならわかると思うが、僕らは今スイーツバイキングに来ている。ここは町内でも有名な店で、スイーツの味もまさに絶品。当然倍率も高く、ここに辿り着くには相当な運が必要だが……流石照橋さんといったところだろう。コネやその身に宿る神の力でGETしたに違いない。
しかし、困った。さっきから僕への殺意がおさまらない。照橋さんは自他共に認める『完璧な美少女』。それがこんな根暗野郎(あくまで第一印象)と一緒にスイーツを食べているんだ。まあそうなるとは思っていたが、殺意を向けられている側にとったらとんだとばっちりだ。しかも僕は常時テレパシー発動状態、普通の人間だったら発狂しかねないレベルの罵詈雑言が浴びせられている。まあ僕は平気だが。
(おっと……ボーッとしていた。早くこの店のスイーツを堪能しなければ)
「……斉木」
……嫌な予感がする。テレパシーとか、勘とかそういうのじゃない。
「あのね?私――」
――本能だ。
「雄英に行こうと思ってるの」
(へ?)
「え?分かんなかった?私ね、高校は雄英に行こうと思ってるんだ」
雄英高校――それは、国内でも有数のヒーロー育成校。体育祭は国の1大イベント、人気ヒーローになるにはこの学校の卒業生であることが必須条件とまで言われている。さらに言えば、『平和の象徴』オールマイトや、事件解決数はぶっちぎり、No.2ヒーローエンデヴァーなどが卒業している――簡単に言うと、すごい高校なのだ。
そんな学校に照橋さんが行くと言っている。それだけならばよかったなとでも言ってやればいいのだが……残念なことに、この悪寒はまだおさまってはいないのだ。
「だから……斉木も一緒に行かない?」
それまで静かだったスイーツバイキングの会場が、湧き上がる。僕に向けられていた殺意が、形となって襲いかかってくる。
「「「「「あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛!!!」」」」」
憎しみ、嫉妬、その他諸々の感情を隠そうともせずに、男共が僕の方に向かって来る。なんか知ってる人が数人いる気がするけど気がするだけだろう。うん。
(さて……どうするか)
この世界は超常社会。別にちょっとぐらい超能力を使っても目立たない。……が、一緒にいるのが
まあ、それはいいんだ。いざという時には記憶を消せばいい。じゃあ、なんでこんなに迷っているかって?恐怖しているんだ。
《こうなるのはわかってたけど……斉木なら、何とかしてくれるわよね?》
……恐ろしいな。ちょっと信頼しすぎじゃないか?まあいい。過信がどれだけ愚かかというのを教えてやろう。
暴徒と化した客が、僕目がけて拳を振り下ろす。僕はそれを腕で受け止め……顔を歪める。
「さ、斉木!?」
別に全く痛くないのだが、僕は無敵だと信じて疑わなかった彼女には、大きなダメージとなっただろう。その後も彼女に近寄る暴徒を排除しながら苦戦する演技をし続けた。これでもう信頼はズタボロだろう。
(さて、これぐらいにしておくか)
僕はいい感じの所で演技をやめ、超能力で暴徒を……
「う゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛!!!」
(!?)
予想外の攻撃。
周りにあるものを次から次へとこちらに投げつけてくる。
(他の声に混じって近づくのが分からなかったか!?いや、それよりも!)
照橋さんにフォークが向かっている。急いでフォークを吹き飛ばそうとするが、他の暴徒に阻まれて、超能力の発動が遅れる。その暴徒を吹き飛ばし、続いてフォークも吹き飛ばす……が、照橋さんがフォークに気づき、それを避けようとする。慌てていたのでバランスを崩し、椅子から転げ落ちる。
「いったあ……」
急いで他の暴徒を吹き飛ばし、彼女に駆け寄る。
「……ハッ!心美!?」
照橋さんに近づいた暴徒も吹き飛ばす。
「腰打っちゃった……斉木?」
(すまない)
「え?」
(腰を打ったんだろう?僕の責任だ)
「いや、斉木は別に……」
(君がフォークに気づく前に片付けておけばこんなことにはならなかった。君に痛い目を見せてやろうと思ってしまった。これは紛れもない僕のせいだ)
「…………」
俯いた。
(だから、君に何かお詫びをしたい)
「……お詫び?」
(そう。例えば、何でもお願いを聞くとか)
「おね、がい?お願い……」
また、俯く。
「じゃあ、改めて」
「私と一緒に、雄英に行きましょ!」
……シッテタ
次回から時間が飛んで雄英受験編が始まります。
タイトルにΨ付けるのだんだんめんどくさくなってきた。