艦これ短編   作:天城修慧/雨晴恋歌

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改二村立ふたつめ

こっちは夕立が村雨をかじってる夢の中の世界


全てを捧げても

 

 

村雨が、改二になった。

 

髪の先と、右目の色が変わった。

 

服もおしゃれで村雨らしいと思う。

 

変わったのは見た目だけなわけはないと知っていた。私の時もそうだったから。

 

でも。

 

変わったのは村雨だけではなかった。

 

 

 

____________________

 

 

 

うれしかった。とっても。

 

私と同じ色になった右目。

 

先が赤く染まった髪を嬉しそうに見せびらかしてくる村雨。

 

新しくなった服を着た自分を姿見で眺めている笑顔。

 

よかったと、心から思う。

 

でも。

 

正の感情と負の感情は矛盾しないのだと知っている。

 

それが仕方ないとわかっていても。

 

今は私を許せない。

 

それは、村雨の幸せを壊してしまうものだから。

 

 

 

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私は変わった。自分の中にあるものをきちんと理解したから。

 

春雨と色違いの帽子。

 

五月雨と同じノースリーブ。

 

那珂さんに似たスカートのフリル。

 

砲のグリップは由良のに似ていた。

 

私に似た服だというのに。

 

私と同じ髪飾りをしていて、村雨が1番似ているのは私だというのに。

 

村雨と1番一緒にいたのは私だ。

 

村雨のことを1番知っているのも。

 

村雨の幸せの1番多くを占めているのも。

 

村雨のことを1番好きなのも。

 

私は1番では満足できないようだ。

 

全部が欲しくなる。

 

頭のてっぺんからつま先まで。

 

心さえも。

 

すべて。

 

初めて自覚した、渇きと愛以外の気持ち。

 

こんなに辛くなるなら、嫉妬も独占欲も知らないままでよかった。

 

 

 

 

____________________

 

 

村雨の顔を正面から覗き込んだ。

 

髪をしばる黒いリボンに手を伸ばしてそれを解いて、ふわふわした髪を手で梳いた。

 

鏡みたいだ。

 

同じ顔。同じ髪。髪飾り。身体。

 

村雨をベッドに押さえつけたまま、その新しい服をびりびりと引きちぎっていく。

 

これは、同じじゃない。邪魔だ。

 

それとあと1つ。

 

この目だけ、赤くない。

 

どうすれば赤くなるのかな。

 

燃え盛る赤をずっと見せてみるとか。

 

血で染めるのがいいかもしれない。

 

右手の人差し指を噛んで、流れた血を村雨の左目に垂らした。

 

目尻からこぼれた血を舌でなめとる。

 

どうして抵抗してくれないのか。

 

どうして微笑めるのだろうか。

 

左目に溜まった液体を全部舐めとった。

 

赤くなっている筈など無い。村雨の目のままだ。

 

どうしてそんなに悲しそうなの?私がこんなになっちゃったから?

 

どうして右目まで濡れてるの?私が泣いてるから?

 

 

____________________

 

 

 

村雨は私のものじゃない。

 

村雨の幸せは私だけでは無い。

 

だから、自分の全てを押し付けてはいけない。

 

村雨が私のものになってくれたら、それだけで私は幸せになれるというのに。

 

それだけは、村雨のためにも叶えてはいけない。

 

お願いだから、抵抗してよ。

 

今の私に改二になった村雨と張り合うだけの元気なんてないんだから。

 

どうして。

 

その気になればすぐに私を押しのけられるのに。

 

涙を流しながら首筋に噛み付く。

 

少しかおをしかめただけで、村雨が私に何かをすることはない。

 

どうしてなの

 

涙が混じった声はもはやなんて言っているのか。

 

村雨の胸に顔を押し付けて泣いた。

 

 

「夕立だから」

 

夕立が好きだから。

 

夕立になら、全てを捧げられるから。

 

なら、私も。

 

自分の全てで村雨を幸せにしよう。

 

それなら、納得できるから。

 

私を抑えていられるうちは。

 

 

 

____________________

 

 

「どうしようこれ。まだ服1着しか支給されてないのに布切れになっちゃった。」

 

「…ごめん」

 

「いいの。夕立のせいじゃないんだから。不安にさせちゃった私のせい。」

 

「……。うん。ありがと」

 

「…そうだ、夕立の服貸してよ。何着かあるでしょ?」

 

「 ?いいよ。クローゼットにまだあったはず。…………はい」

 

「…あ、首のとこ血ついちゃう、」

 

「…舐めていい?」

 

「 いいわよ」

 

「…、……。味は、おんなじっぽい。」

 

「よかった。今度夕立も味見させてね」

 

「…うん」

 

「ま、とりあえず今はこっちかな」

 

「村雨、何するの?」

 

「ちょっとね。髪の毛とか変わったから、そこを誤魔化すような動き方しなくても夕立になれるのかなって」

 

「………よし、お着替え完了、」

 

「…リボン、私どこやったっけ、……あ、あった。髪飾りも自前であるから付け替えて……ここちょっと整えて、……よし。どう?」

 

「……あれ、私?」

 

「声も…ん、……これで戦闘は……できるっぽい!」

 

「 ⁉︎村雨、戦闘!夜戦しよ!」

 

「わ、まって。せめて服の残骸片付けてから」

 

「嫌なら押し退ければいいっぽい。村雨、改二になったんだからできるでしょ?」

 

「う……。…いい、よ」

 

「!じゃあ、いただきまーー

 

「村雨、夕立、いる…ごめん、ノックしたけど返事なくて、でも中から声してて、ノブ回したら開いちゃって、……って、夕立が二人?」

 

「………時雨」

「万死に値するっぽい」

 

「ひっ……」

 

「夕立、今すっごく怒ってるの。」

「その首置いてけっぽい」

 

『ソロモンの悪夢、見せてあげる…』

 

 

 

 

 

後日、夕立が影分身の術を習得したという噂が鎮守府の中で広まった。





これで多分、『変わった』村雨は終わり。

成長(?)したけど村雨であることは変わってないのでそこまで脳内キャライメージも変わらないと思う。
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