艦これ短編   作:天城修慧/雨晴恋歌

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ツイッターでこなさんの、村雨と夕立の「どっちでしょーか!」って絵見て死にました。


噛み癖

 

 

 

 

 

「何してるの、村雨、」

 

「んー?」

 

背後からかけられた夕立の声に適当に返事をしながら、手元のキーボードをつつく。

 

『かみぐせ』

 

「…夕立が、いっつも噛んじゃうの、…禁止、ってわけじゃないけど、いくらかマシになったらいいなって」

 

マウスを動かして、『検索』の文字をクリックする。

 

数秒の読み込みの後、画面はそれの検索結果を映し出す。

 

………とりあえず、『犬の噛み癖とそのしつけ』という文字をクリックした。

 

「村雨、」

 

「ごめんごめん」

 

少し不快感を込めてかけられた声。それを半分無視して中身を読んで行く。

 

軽く流し読みしていくと、途中で気になった文字を見つけた。

 

『 例えそれが遊びの延長だったとしても、永久歯が生えて力をつける前にしつけておかないと、取り返しのつかないことになってしまう可能性があります』

 

カーソルで文字をなぞって、その文字列を選択することで後ろから画面を覗き込んでいる夕立に意思を伝える。

 

「うぐぐ、」

 

へんな唸り声を上げた夕立に、首筋をがじがじと噛まれた。そういうとこなのに。

 

また文字列を送っていく。

 

『噛み癖の躾の基本』

 

なるほど、簡単なことなら今からでもできるかもしれない…が、本格的に犬の躾よねこれ。

 

「……あー、夕立、見るの…嫌?」

 

「……。いい、けど。」

 

夕立の了解も得れたので、その続きを読み始めた。

 

『まず、目的をきちんと定めましょう。して欲しいこと、して欲しくないこと。例えば、物を噛まずに我慢できるようになる。必要な時に我慢できるようになる、などです』

 

…この場合、頻度を覚えてもらうというのでもいいだろう。夕立は犬っぽいけど人間だし。

 

『して欲しいことをした時には褒め、して欲しくないことをした時には叱ります。これが基本になります。』

 

まあ、基本らしいしこれからやってみよう。とりあえず、がじがじと歯を立て続ける夕立に声をかけてみる。

 

「…あー、えっと、……こ、こら?」

 

「ふっ…全然怖くないっぽい」

 

バカにするように笑われて、少しイラっとした。

 

「いますぐ、やめなさい。…わかるわよね?」

「はいっ」

 

語気を強めるとちゃんと聞いてくれた。…なるほど、『高い声で叱ると褒めていると勘違いするので低い声で叱りましょう』ね。『逆にちゃんとできた時は明るい声で褒めてあげましょう。』

 

「うん。よくできたわね、夕立」

 

体をひねってわしゃわしゃと撫でてみる。

 

「……喜んじゃう自分が悔しいっぽい」

 

とりあえずはこんな感じでいいのだろうか。………『ご褒美を用意してあげるのもいいですね』。

 

「夕立、ご褒美何か欲しい?」

 

「村雨がじがじしたいっぽい!」

 

…………無言で、画面の端の左向きの矢印をクリックする。

 

うん。犬用のサイトを参考にするのは間違いよね。

 

また、知識の目次から目を引く物を探していく。

 

「……あ、これって、」

 

『噛み癖がある人の心理』

 

カーソルを合わせると、後ろの夕立が慌て出す。

 

「あ、だめ、まって、それ恥ずかしい、」

 

「今更じゃない。お互いの体と心の恥ずかしいとこ、たっくさん知ってるのに」

 

「うー…。」

 

カチリ。文字列を送っていく。

 

『①:ストレス解消、フラストレーションの発散をしたい』

 

「夕立の、これ?」

 

「…それもある、けど、…ちょっと違うっぽい」

 

なら次次。

 

『②:肌を噛んだ時の感触が好き』

 

「これ?……なんかちょっと怖いけど」

 

夕立なら……ないこともないのかな?

 

「あー……村雨の肌は、ちょっと好きかも。」

 

「こわ」

 

『③:深い愛情表現』

『④:愛情の確認』

『⑤:独占欲の表れ』

『⑥:もっとかまって』

 

 

 

『⑦:信頼の証』

 

 

 

なんとなくわかった。

 

「これね」

「うん」

 

 

『どの理由においても、相手への信頼の表れであります。甘えたくても、構って欲しくても、ストレスの発散がしたくても。少し間違えば犯罪になってしまう行為です。お互いの信頼関係に自信があるということと、』

 

「もっと気持ちを伝えたい。もっと愛が欲しい。そういう心の表れ。…貴女への最大級の愛情表現です。…ぽい」

 

ダメだ、恥ずかしい。すっごく。

 

「顔、真っ赤だね。」

 

「…夕立のせいよ、もう、」

 

『どうしても、噛み癖をやめて欲しいとき』

 

『いくら愛情表現の一つと言っても、最初は可愛いなと思った相手の行動でも、頻繁に続くと不快に感じるようになることもあります。本当にやめて欲しいなら、その気持ちをきちんと伝えましょう。』

 

『気持ちを伝える仕草の一つとして、噛むという手段はおかしくないものです。しかし、どちらかが不快に感じているのなら、今の関係を壊すことにもなりかねません。素直に言葉で伝えてみるのもいいかもしれません』

 

「村雨、…いや?」

 

夕立の声が耳元でぽしょぽしょと聞こえる。

 

だけど、とりあえず私達の場合で言えば、言葉よりも確実に想いを伝える方法があった。

 

パソコンを置いている机から立ち上がって、甘えるように夕立の体に抱きつく。

 

『…ゆうだち』

 

夕立は私の唇をぺろりと舐め上げると、そのまま体を抱え上げた。

 

『おもくない?』

 

『だいじょうぶ』

 

声なんか出さなくたって。想いを伝える自信ならある。

 

ふっと、少しの浮遊感に包まれて、柔らかな感触の上に落ちる。続いて上から降ってきた重みを受け止めた。

 

『ゆうだち』

『むらさめ』

 

だいすきだよ。

 




ツイッターで知り合いと話す内容にリョナとかそっち系が混じり始めた結果妄想をすることも出てきたけど書くだけの知識はまだないしゅえさんです。

光と陰は表裏一体って言葉をよく理解できました。

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