今回はちょっと趣向を変えて書いてみました。
追記 視点キャラの見た目描写をちょこっと修正しました
続編書きます
釣り竿を持って海辺を歩いていた時のこと。
そろそろ梅雨に入ってしまうのでしばらく糸を垂らせなくなってしまうことに悲しみを感じながらいつもの場所へ歩いていた時のこと。
浜に、人が倒れていた。
近寄ってみると、どうやらただの人ではないようだ。
所々穴の空いたセーラー服。その背中についた2門の大きな砲。
うつ伏せに倒れている彼女の頬を、延べ竿の先でつつく。
意識はあったようだ。小さく呻いて顔を上げる。こちらを見つけると、震える右手で背中の砲をつかみ、向けてくる。
「ー ー」
何か囁いている。…なんと言っているのかはわからないが。
しかしまあ、そんなものを向けられても困る。敵意などないのだから。
彼女が向ける砲を掴んで、その射線を強引に、ゆっくりと変える。
じっと目を見つめた。
笑顔も、おしゃべりもあまり得意ではない。
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力尽きたように倒れた彼女。手からこぼれ落ちた砲は、持ってきたクーラーボックスの中身の氷を捨てて、その中に入れて背負った。
手に持った竿を背中のものやスカートに引っかけないように注意しながら彼女を持ち上げる。
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家までたどり着いた。
釣り竿をその辺にぽいっと放って、彼女はベッドに運ぶ。
背中の砲のせいで仰向けに寝かせられないのでうつ伏せに置こうかとも思ったが、悩んでいると鈍い音を立てて背中の鉄が床に落ちたので仰向けに寝かせる。
よく見てみると、結合部が壊れてしまっているようだった。床も少し凹んでいた。
背負っていたクーラーボックスはベッドの隣に置いて、白いタオルと水を張った洗面器を用意する。
タオルを水に浸して軽く絞り、勝手に脱がせるのも悪いのですでに見えている範囲の肌を拭っていく。
絞りが足りずにベッドを濡らしてしまったりしたが、見える範囲は彼女の体を清めきり、身体中に見える傷にガーゼと包帯をあてていく。
今まで使ったことはなかったのだが、初めて役に立った。
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冷凍庫の中に大量に作ってある氷に赤色のイチゴシロップをかけてゴリゴリかじっていると、彼女が目を覚ました。
体を起こして辺りを見回すと、ゴリゴリに気づいたのかこちらを向いた。
何を齧っているのかと見て、探るように目を動かす。
「君は…」
器の中に残った最後の氷を口の中に入れて、ゴリゴリ言いながら彼女にタオルと洗面器とガーゼを渡す。
「あ、ありがとう…」
彼女がベッドの上でごそごそし始めたのを見届けてから、隣の部屋に地図を探しにいく。
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持ってきた地図を、彼女がいるベッドの上に乗せる。60…何ページだったか、ーーここだ。
2年前の地図だが、場所を示すのに問題はないだろう。
「ー随分と遠くまで流れてきちゃったな…」
彼女はどこから来たのだろうか、と思っていると、地図を手にとってパラパラとめくり始める。
「この辺りから来たんだけど…」
なるほど、これは遠いな。
「帰ろうにもこの格好じゃ……そうだ、僕が背負ってた…アレは⁉︎」
床に置いて…落ちている鉄の塊を指差す。
一応小さく頭を下げて置いた。
「あー、…しょうがないや。かなり無理させちゃったから。…僕が持ってた砲は?」
今度はベッドの隣のクーラーボックスをぱかっと開く。
それを見た彼女は小さく笑った。
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革のサンダルがあったので、虫の食っていない青い布を使ってワンピースを作った。
重ねた布を切り抜いてミシンで縫い合わせただけの簡粗なものだったが、穴だらけのセーラー服よりはマシなのではないだろうか。
できたそれを彼女に渡してから台所へ向かう。
今日は何か釣って来た魚を食べようかと思っていたが、きちんとボウズだった時に備えて別の物も用意してあるのだ。
とは言っても雑なのだけれども。
スパゲッティを茹でてフライパンに移す。ツナ缶とネギと唐辛子。オリーブオイルとニンニクを入れて炒める。
皿に盛って、フォークと一緒に彼女に持っていく。
机の上にコトンと置いてから、彼女に出かける旨を伝えた。
「ーわかったよ。ごはん、ありがとう」
外出用の服に着替えて、カバンにお金の入った封筒を突っ込む。
ニット帽とサングラスをかけて外に出た。
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レンタカーを借りて来た。
彼女が指した場所は、ここから車で山を越えれば1日目と少しでつく所なのだ。
車を家の前に停めて部屋の中に入る。
今すぐにでも出発しようかと思ったが、彼女がフォークを握ったまま机で寝こけているのを見て考え直す。
疲れているのなら、明日の朝でもいい。車は余裕をもって借りて来たし。
彼女の硬く握り締められた手からフォークを抜き取ってもう一度ベッドに運ぶ。
明日はいいものを食べさせてあげようと釣り竿を持って家を出る。
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小ぶりな魚を二匹とアサリとワカメを入手した。
明日の朝はこれでいいものを作ってあげよう。
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朝だ。
砂を吐かせたアサリとワカメでお味噌汁を作った。
魚は鱗と内臓を取って焼く。
残念ながらお米がないのでパン食。
チグハグな朝ごはんが出来上がる。
氷(メロン味)をゴリゴリしながら彼女を待っていると、朝日に照らされた彼女がむくりと体を起こす。
「ーおはよう」
あたたかい緑茶を注いで、彼女を朝食の席に招待する。
豪華ではないがたっぷり食べるといい。
パンと味噌汁はお代わりあるし、バターもある。
「……ありがとう、すごく美味しいよ」
美味しそうに食べてくれるのは嬉しい。
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彼女が背負っていたものを毛布にくるんで車の後ろに積んだ。
彼女には助手席に座ってもらって出発する。
まずは神社に向かった。
「ーなんで神社に?」
これからの旅の、安全祈願のようなものだ。
ここの神様にそう言った後利益があるかは知らないが、まあ祈っておいて損はないだろう。
彼女と一緒に硬貨を投げて鈴を鳴らし、おじぎしたり手を叩いたりする。
お守りも買っておいた。
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高速道路に入って数時間。山中のサービスエリアでご飯を食べることにした。
彼女はラーメンを頼んだ。かき氷美味しい。
食べ終わってから展望台に出てみる。
いつも見ている海とは違う、一面の緑だ。
「ー綺麗だね」
緑は命の色だ。
太陽の光の下で元気に輝いている。
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三時を過ぎた頃、少し早めに高速道路を降りた。
近くのファミレスに入っておやつを食べた。
アイス美味しかった。でも歯ごたえが足りない。お冷の氷にガムシロップをかけてかじっていると、彼女はまた小さく笑う。
それから服屋に。
いつまでも薄い布のワンピースというのも忍びない。
店員さんに五万円程渡して、何かいいものを見繕ってもらう。
自慢じゃないが服のセンスなど持ち合わせていない。
店員さんに任せて店を出る。
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しばらく待っていると、彼女が店から出てくる。
しろと黒を基調にした服だ。(イメージ:カメラの時雨)
手には店の紙袋を持っていた。
それにしてもイメージが大きく変わった。ロングコートにニット帽にマスクサングラスの不審者スタイルで彼女の隣を歩くのは危ないかもしれない。
この服は気に入っているから変える気はないのだけれど。
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おまわりさんにはなしかけられました。
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少し早めに近くのうどん屋に入る。
彼女はきつねを頼んだ。1番安かったかけうどんを食べ終わってから、店主さんにお冷用の氷をもらう。
甘いものがななったので七味唐辛子をかけてゴリゴリしていると彼女に変な目で見られた。
結構美味しかった。
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空いているホテルを探す。
車中泊でもいいのだが、彼女の体を気遣うならベッドでしっかりと休ませてあげたい。
とりあえず近くにあったビジネスホテルに来たのだが、
『予約で埋まってます』
とのこと。
彼女が公衆電話で電話帳をめくりながら電話をかけるも、
『空いてません』
とのこと。
予約しておくべきだったんだろうが。
「ーあ、あそこ」
彼女が指す先を見る。
ピンク色に輝くホテルがあった。
まずいんじゃないだろうか。
「でも…僕、今日は疲れちゃったからちゃんと寝たいな」
わかる。寝かせてあげたいのだが、
「所々包帯を巻いた幸薄そうな美少女」
と
「ロングコートニット帽マスクサングラスの不審者ガチ勢」
なのだ。
うーん。
…………まあいいか。
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ホテルに入ろうとするとおまわりさんに話しかけられました。
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薄暗い部屋の明かりを限界まで上げる。
意外と明るくなって驚いた。
傷にさわるといけないから、軽くシャワーだけあびた彼女の傷を、コンビニで買った新しい包帯で覆っていく。
彼女が着替えている間にシャワーを浴びて、戻ってくると彼女は昨日作ったワンピースに戻っていた。
「…僕、これ気に入っちゃったんだ。…優しい感じがする」
長旅に疲れただろうと早くベッドに入る。
ダブルベッドより、彼女の体の方が柔らかかった。
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朝だ。
近くのコンビニで朝食を買って、ぼったくりコインパーキングに止めた車内でそれを食べる。
Ice b◯xおいしい。
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高速に乗って、10時くらいにサービスエリアに着く。
この分だと夜には着きそうだ。
ベンチに座って彼女とアイスを舐める。
このわさび味は当たりだ。
コーンを口の中に投げ込んでから、売店で売っていたポラロイドカメラを彼女に向けて、シャッターを押す。
白と黒の服が背景の曇った空と重なってしまい、あまりいいものは撮れなかった。
彼女が手の中のカメラを奪い、シャッターを押す。
吐き出された用紙には、歪んだロングコートが写っていた。
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次に止まったサービスエリア。きっと、彼女との旅で最後の食事だ。
彼女に何が食べたいか聞くと
「……もう一度、あなたの料理が食べたい」
…まあ、機会があればまた作ってあげよう。
彼女にすすめられるまま、彼女と同じオムライスと食べる。
美味しいなあ。
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日が沈む前に、彼女が地図で指し示していた場所についた。
彼女は正門らしき場所に立って、となりのインターホンを押す。
しばらくすると、茶色い髪に赤っぽいカチューシャをして、左手に銀色の指輪をつけている女の子と、奥の方から白い軍服を着た男性が走ってくる。
それを嬉しそうに見つめている彼女の肩を叩いて、振り向いた彼女の顔の前でばいばいと手を振る。
「…行っちゃうの?」
コクリ、と頷く。
これは置いていくから、と地面に降ろした彼女の艤装を指差す。
「…ありがとう」
ふふん。お礼を言われるのは嬉しい。
だけど、悲しいな。
「また、会いにってもいい?」
ちゃんと、漂流しないで安全に来てくれるなら。
もう一度手を振って、2人が来る前に車を出発させる。
さあいざ、愛しのマイホームへ。
……カギ、しめてきたっけ。
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彼女を無事送り届けてから1週間ほど後。
家の扉を叩く音が聞こえた。
ここに誰かが来るなんて珍しい。
外出用のコートとニット帽とマスクとサングラスを着用して扉を開ける。
そこにいたのは、軍服の人と茶髪の子。そして彼女だった。
「来ちゃった。……忘れ物もしてたしね」
忘れ物。…ああ、あれか。
家に帰ってベッドの上にそれを置き忘れていたことに初めて気づいたのだった。
所々凹んではいるものの、動作に影響はないだろう、あれ。
部屋に戻ってクーラーボックスを担いで戻ってくる。
彼女の前でそれを開いた。
「…ありがとう」
彼女はまた小さく笑う。
「妹を拾ってくれて、ありがとうね」
「…あんまり強く言えないけど…顔を見せてはくれないか」
「提督、」
彼女が少し強い声で諌める。
気にしてくれているのだろう。
彼女の頭を数回撫でてから、2人の方へ向き直る。
ニット帽を取って、押し込めていた同じ白銀の髪を晒す。
マスクとサングラスを取って、淡い黄色の目とひび割れたような真っ白な顔を見せた。
ロングコートを脱いで、傷跡の残った体と、フリフリしたドレスを見せる。
茶髪の子が、クーラーボックスの中身を私に向ける。
彼女が射線を遮るように私と砲の間に両手を広げて入り込んだ。
「…お前は、まさか」
何かに気づいた男の人。
久しぶりの顔に、少しからかいたくなった。
『はい、かりんです。あなたさまのかりんです。おあいしとうございました』
久しぶりに出した声。
少しかすれてはいるが、うまく出てくれた。
茶髪の、結婚指輪をつけた子が、男の人を睨む。
慌てた彼から目線で急かされ、茶髪の子の頭を、普通の人より少しばかり長い手を伸ばして撫でる。
『むかし、…ん、…昔、彼が拾ってくださったの。私に生き方を教えてくださって。今でも私は彼を愛しています。……貴方様、彼女を拾って、少しでも恩を返せたのなら、嬉しく思います。………あぁ、貴方様」
久しぶりに見た彼に愛おしさを抑えきれず、彼に向かって手を伸ばす。
間に割り込んだ茶髪の子が、ぽかぽかと私の胸を叩いた。
「…かりん、っていうんだね」
『はい。…貴女は?』
「僕は…。時雨、だよ」
茶髪の子は私の胸を叩くのをやめ、彼を追い始める。
彼は海の方に逃げて行った。
『ごはん…食べますか?』
「…頼めるかな」
時間は丁度お昼時。
彼女が来てくれるような気がしたので、今日は材料をたっぷり用意してある。
せっかくだし彼にと、茶髪の子にも作ってあげよう。
『食べたら、釣りでもしますか?…時雨と、もっとお話ししてみたかったんです』
「…僕もだよ、かりん」
彼女を部屋の中に招き入れる。
まずはとみんなが座れるだけのスペースを空ける。
彼女はまた笑ってくれた。
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わかりにくい気もしますね。
主人公、視点キャラの「かりん」は、はぐれた深海の姫。昔いろいろあった時『彼』に助けてもらっていた。
提督となった『彼』に、この身分ではあまり会うことが出来ず、次第に交流は薄れ、今では海辺の小屋で一人暮らしをしていた。
かりんは、彼に大きな愛を抱いているが、それとは別ベクトルで時雨ちゃんのことも好きになった模様。
みたいな感じ。
時雨ちゃんが薄い気がもする。
かりんちゃんの続編書きます