艦これ短編   作:天城修慧/雨晴恋歌

24 / 45
艦これ短編かと聞かれると怪しい

時雨を拾いましたの続編


かりんのあい

 

 

 

おひるごはんにイチゴ味の氷をかじっていた時。

 

家の周りにトゲトゲした気配をたくさんと、おぼえのある気配を1つ感じた。

 

おぼえのある気配はトゲトゲした気配をかいくぐってこちらに近づいてくる。

 

トゲトゲした集団に動きが無いことを見るとおそらく見つからないい径路で来ているのだろう。

 

少し前に教えた地下通路から、彼女…時雨が入ってくる。

 

「かり」

 

私の名前を呼ぼうとした彼女の口に人差し指を押し付ける。

 

「これを、あのひとに」

 

右手の薬指につけていた指輪を抜き取って、彼女に押し付ける。

 

動き始めたトゲトゲを感じながら慌てて彼女を地下通路に押し込んだ。

 

私は器の中に残っていた最後のかけらを噛み砕くと、いつもの外出自宅をせずに玄関の扉を開けた。

 

包囲している、武装した海軍制服の人間達に向かって歩いていく。

 

 

 

 

 

 

 

 

____________________

 

 

 

 

 

 

 

 

護送車に乗せられるなんて初めての経験だ。

 

いろいろ見てみたかったのだけれど、目とついでに口も塞がれている。

 

手と足もワイヤーらしきもので縛られているのだけれど、力を入れるとうっかり切ってしまいそうな強度だ。

 

無事帰れる手は打ってあるものの、私が問題を起こせば起こすほどその効力は弱くなってしまう。

 

できる限り、抵抗と見られる行為は抑えなければいけなかった。

 

それなのに、というかだからなのか。

 

 

顔の近くに湿った息が吹きかけられて、1人分の数を超える手が私の全身のいたるところを這いずり、弄る。

 

呻き声を漏らすたびに、その手達は嬉しそうに跳ね、秘する箇所まで暴き、潜り込んで、肉体を通して精神まで嬲られる。

 

堪えきれずに天辺に押し上げられる度に、私は跳ね回る体を必死に意識の内に留めておかなければいけなかった。

 

今の私にはこの刺激に焼かれ続ける以外の選択はない。

 

 

 

 

 

 

 

____________________

 

 

 

 

 

 

 

 

 

どこかにたどり着いたようだった。

 

体も心も揺さぶられ続けていたのでここがどこなのか、どれくらいの時間進んだのかは分からなかった。

 

乱された服を整えられ、護送車から降ろされる。

 

腰が抜けたフリをしていると両脇から抱え上げられた。そのままどこかへ連れていかれる。

 

どれくらいか歩かされた後、先程までの私で遊んでいた手つきとは違って、優しく柔らかい何かの上に降ろされた。

 

まずは口にかまされていた布が取られ、次いで手と目が自由になる。

 

光に目が眩んでいる風を装っていると、そのうちに足音が遠ざかっていく。

 

厳重に鍵がかけられる音がした。

 

 

少し経ってから自分の状況を確認した。

 

部屋はこれぞ独房といった感じだった。

 

一方の壁は鉄格子で、それ以外は無機質なコンクリート。

 

私が今座っている薄いマットレスだけのベッドの他には壁についた蛇口とすみに設けられたトイレと監視カメラ。

 

それ以外には何も存在しない。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

____________________

 

 

 

 

 

 

 

 

しばらくしてから壁にもたれかかるようにしながら部屋の中を歩き出す。

 

まずは、と蛇口をひねってみる。茶色い水が出るとかいうことはなかった。

 

流した水に指先で触れてみる。とくに害があるようには感じられなかった。

 

一呼吸置くと、下半身の湿った感覚が今になって主張し始める。

 

監視カメラを一度見上げてからドレスの左袖を継ぎ目にそってちぎって、半分に割いて片方を蛇口の水で濡らした。

 

カメラに背を向けたかったが死角ができないよう複数設置されているので諦めて、少しだけスカート部分をたくし上げてスカートの中で撒き散らしてしまった液を拭いて、もう片方でできる限り水分を拭った。

 

幸いなことに自分で出したものでしか汚れていないので嫌悪感は0に近い。

 

しかしそれも「まだ」汚されていないだけとも言える。

 

すぐに先程の続きをしようとする人間はいないものの、私が打った手では少なくとも2回くらいは夜を越えないといけない。

 

そういったことの機会など腐るほどあるだろう。

 

眠れるかわからないこの先のために、少しだけ目を瞑っておくことにした。

 

 

 

 

 

 

____________________

 

 

 

 

 

 

 

 

実のところ、私が今どういう状況なのかは理解してはいるもののどのような理由でこの状況に連れてこられたのかは分かっていない。

 

私は種族的には恐らく深海棲艦なため、私を海軍が捉えるのに詳しい説明はいらない。

 

しかし捉えた後に何をするのか。例えば人(?)体実験をするのか情報を吐かせるのか、結局は解剖されてしまうのかこのまま飼い殺され続けるのか。

 

そういったところは未知だ。

 

私が打った手は、余程の例外でない限り機能する。

 

しかしそのためにはその手が機能するまでは生きている必要があるのだ。

 

独房に入れられたということは、少しの間は生きていられるのだろう。

 

その少しがいつまで続くかはわからないが。

 

だから私には、生きる為に行動しなければならない。

 

僅かばかりの深海の情報や、このカラダを使ってでも。

 

まだ死にたくはないのだから。

 

 

 

 

 

 

 

 

____________________

 

 

 

 

 

 

 

 

 

気配が近づいてくるのを感じて目を開いた。

 

手早くさりげなく服と髪を弄る。

 

非力に、無害に、そして美味しく見えるようにだ。

 

私がここに入れられてから初めてのが近づいてくる来訪客。

 

それは女性だった。美味しそうに見せる必要は無かったのかもしれない。

 

女性は鉄格子の、私を入れた大きな扉ではなく別に設けられた小さな窓から包みを入れて去っていった。

 

紙袋だったそれは、地面にぶつかると倒れて中身をコンクリートに散らかした。

 

タオルが数枚と、汗拭きシートのような物が見えた。

 

うーん…有り難いのだけどもう左袖を引きちぎってしまった…。

 

彼女なりの配慮なのはわかるし捕まえた深海戦艦にすぐさま物を与えるわけにはいかないこともわかるけど。

 

心配なのは彼女が独断でこれを投げ込んだ場合。私が彼女を絆したなどと取られては非常にまずい。

 

申し訳無いが、私はそれには触れられない。

 

 

 

 

 

 

 

 

____________________

 

 

 

 

 

 

 

 

どれだけ時間が経ったのだろう。

 

窓がなく、蛍光灯の均一な光の中でずっといると時間の感覚も薄れてくる。

 

一度も食事を出されてはいないからそれなりの時間か、そんなもの要らないと判断されてもっと経っているのか。

 

水を飲んだり排泄しているフリこそしているものの私は食事も代謝も必要とはしていない。

 

向こう側の意思や認識がわかるまでは余計な印象を与えない行動を取るしか無い。

 

動きがあるなら早くしてほしいものだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

____________________

 

 

 

 

 

 

 

 

 

少し前の、動きを望んでいた私を叱りたい。

 

私の意思が現実に影響を及ぼした訳ではないとわかっていても叱りたい。

 

現れたのは、沢山のオス達。

 

これから起きることなど誰でも予想できる。

 

汚されることなど避けようがないだろう。

 

私はついうっかり激しく抵抗してしまわないように、彼らの興味を引き続けるために反応は返すように、彼らの底に堕ちてしまわないように気を張り続けなければいけないだろう。

 

なんとか、なるだろうか。

 

感情を持ったものの性として、何に対しても確実などあり得ない。

 

特に、このような行為には耐性がないから。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

____________________

 

 

 

 

 

 

 

 

 

始めのうちはなんとかなりそうだと思っていた。

 

かわるがわる大人数の相手を強いられ、肉体だけではなく機械まで持ち出されて、休息など与えられずに乱され続けて、

 

打った手が機能してくれることだけを希望に正気を保ち続けた。

 

別の感覚に乱され続ける感覚の中、待ち望んでいた人の気配をやっと感じてもその喜びを押し流すほどの感覚の波。

 

後一歩押されるだけで、もしかしたら私は。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

____________________

 

 

 

 

 

 

 

 

 

外界を認識する余力はほとんどのこっていなかった。

 

それでも、私に群がるオスを追いちらして私に駆け寄った彼が誰かはわかった。

 

私が時雨に渡して、提督をしているあのひとに渡って、そこからこの彼に届いた指輪。

 

私に好意を抱き続けてくれている彼、私にその指輪を送ってくれた彼。

 

私と彼の関係性はまっすぐなものではない。

 

彼が私に愛を伝え続けて、私は、あの人がすきだから、と。

 

それでも、あの人がいなければ私は彼を受け入れていただろう。

 

それほどにまっすぐな気持ちを向け続けてくれた。

 

まっすぐな気持ちを向け続けてくれていたから。

 

その気持ちが大きなものだと理解せざるを得ないほどに愛されていたから。

 

汚されてしまったことが申し訳なく感じて、

 

だから

 

 

「…ごめんなさい」

 

 

お礼より先に、そう呟いてしまったのだろう。

 

 

「かりん…」

 

 

私の体は、あのひとのものだと思っていたのに。

 

私が頼ったのが彼で、謝罪した相手も彼だったことに、私は暖かい気持ちを感じた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

____________________

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

彼の手の中で意識を落として、再び目覚めた。

 

 

病室のような場所だった。

 

恐らくは彼の手によって清められた体には、シーツだけが巻かれていた。

 

服を再構成しようと寝かされていたベッドから立ち上がる。

 

シーツが解けて床に落ちたのと同時に、意識の外にあった扉が開く音がした。

 

 

扉を開けたのは彼だった。

 

彼が硬直している間に、私はいつもの服を再構成する。

 

光が集うように体に纏わり付いて、弾けた後には淡い黒とレースでできたドレスが顕現する。

 

髪を少しだけ撫で付けてから、彼の元に歩いて行った。

 

「…かりん」

 

「はい」

 

「……」

 

暗い表情になってしまった彼の頬を撫でる。

 

「…早く助けてやれなくて、すまない」

 

「助けてくださって、ありがとうございました」

 

本心を伝えると、彼は渋い顔をする。

 

私にとっては許容範囲でも、彼にとっては許せないことだったのだろう。

 

硬い髭が私の手を引っ掻く。

 

「ありがとう」

 

もう一度呟く。

 

私の意思を尊重する形で彼は無理矢理納得したのか、その表情は緩んだ。

 

「すみません。頂いた指輪なのに、手放してしまいました。」

 

「…気にしなくていい。」

 

彼はズボンのポケットの中から、私が時雨に渡し巡って彼に届いた指輪を取り出す。

 

少しばかり手で弄んでから、彼はそれを手に乗せ、私に向けて差し出す。

 

「もう一度、受け取ってくれるか」

 

「はい」

 

 

彼の手で鈍い銀を放つ指輪。

 

私と彼が、ある一定の線で折り合いをつけた証だった。

 

 

私はあの人を愛しているけれど、あなたの気持ちを拒絶する決断はできないの。

 

俺はかりんを愛している。…かりんの思いを知っても諦めきれないんだ。

 

 

過去に交わした言葉を思い出しながら右手を彼に向けて差し出した。

 

「もう一度、嵌めていただけますか」

 

「…ああ」

 

彼が指輪を嵌めるために私の右手に触れる。

 

その瞬間、びりりと電流が流れた気がした。反射的に私は彼の手を振り払う。

 

 

彼は右手で指輪を摘んだまま固まり、少ししてからそれを握りこんでしまう。

 

 

やっと私は、決断した。

 

 

「もし、あなたが許してくれるなら」

 

 

そっと、左手を持ち上げる。

 

 

「こちらに、いただけますか」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

____________________

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「かりんがあいつと、ついに結ばれるとはなぁ」

 

彼に出されたお茶をすすりながら、あのひとが呟く。

 

私はベッドに横たわったまま左手の指輪を眺める。

 

「貴方様は、私のことをどう思っていらしたのですか」

 

「そうだな…きっとかりんがあいつに向けるのと同じような感じだろう」

 

「もう少し待てば、貴方様は私に応えてくださいましたか」

 

「俺はあいつがかりんに向けるくらい、別のやつに惹かれているんだ」

 

「…白露ちゃんのことですか」

 

「ああ」

 

「私は、貴方様を愛しています」

 

「………」

 

「私達を、祝っていただけますか」

 

「…ああ」

 

 

 

 

 

 

 

____________________

 

 

 

 

 

 

 

 

「かりん」

 

あの人が去った部屋で目を瞑っていると、彼が帰ってきた。

 

「あいつは何て言ってたんだ」

 

「祝ってくださると」

 

近くまで来た彼の手を掴む。

 

「…かりん」

 

「不躾なお願いなのですが」

 

その手を手繰って、有無を言わさない力で彼を抱き寄せる。

 

「私を、愛してくれませんか」

 

彼は返事をしない。

 

「始めの1度だけ、私がどれだけ涙を流しても気にせずに、深く、深く、貴方で染めてください」

 

 

 

 

こんなに辛い涙は初めてだった。

 

こんなに辛い温もりと快楽は初めてだった。

 

それでも1度彼に抱かれてしまえば、それは薄れていく。

 

 

あの人への思いが消えたかというとそうではない。

 

 

お腹の奥に熱いものが注がれる。

 

 

「貴方は私を、愛してくださいますか」

 

 

呟いた言葉は2人分の吐息に紛れて消えた。

 

 

 

 

 

 

 




この「彼」は「あのひと」の友人で結構な偉いひと


もうちょっとだけ続かせます
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。