「プレゼント持ってきたっぽい!」
バタン、と勢いよく扉が開き、白い大きな袋を持った夕立が戻ってきた。
おかしやジュースが置いてあるテーブルの隣に袋を置くと、夕立は自分のベッドに倒れこむ。
「ほら夕立、しわになるから寝るなら脱ぎなさい」
「……うぅ、もうちょっとがんばる」
そういうと夕立は体を起こした。
「あのね、明石さんにね、村雨にあげるプレゼントが欲しいって相談したの。村雨、今満足してるっぽいから、欲しいものとかなさそうだったから。」
夕立はサンタさんが持っているような大きな袋をずるずると引きずって差し出す。
ちなみに私は机の上に乗っているおかしとジュースと、夕立が欲しがっていた私のと同じ種類のリボンをあげた。
「明石さんにおまかせしたから中はわからないけど……多分いいものっぽい!」
この子、そのうち詐欺に合わないかしら…いや、明石さんなら思ってる以上に安く譲ってくれたのかもしれないけど。
夕立から袋を受け取ると意外と重かったので、そのままベッドまで引きずっていって、その上に袋を置く。
ベッドに座って隣をぽんぽんと叩くと夕立が飛び込もうとしていたので埃が舞うからと止めた。
その後、普通に登ってきた夕立と一緒に袋の中のものを出していく。
クッキー、ペットボトルに入ったジュース、前衛的なデザインの置物、いまいち良さがわからない絵、24色の色鉛筆とA4サイズのコピー用紙、セロハンテープ(業務用)、水晶玉。
ところどころ押し売りや在庫処分のにおいがするが一旦おいておいて、まだある中身を出していく。
髪留め、ヘアスプレー、小さな鏡とくし、化粧水と保湿クリーム、リップグロス、チーク、マスカラとマニキュア。と、今度はおしゃれ関係の物が出てきた。
「村雨、ねぐせおさえる以外にヘアスプレー使わないし、グロスもチークもマスカラもマニキュアも使ったことないのにね」
やっぱりこう、気を使っていいるように見えるのだろうか。
そんなに手のこんだことはしていないんだけどなぁ。
化粧水と保湿クリームはありがたく使わせてもらうことにして、次を取り出す。
カラフルな毛糸、編み棒、黒と白の縫い糸と糸切りバサミ、前に買っていたけど残り少なくなってきていた包帯とガーゼ、消毒液、色々なおくすり。
この辺りは私がよく使うし素直に嬉しい。
夕立に中見てていいよ、と言ってから、包帯などを救急箱に、糸などは押入れにしまう。
戻ってくると、どう考えても大きさや重さの計算が合わない扇風機や冷蔵庫などの家電が出てきていた。
明石さんの技術には深く触れないほうが身のためなので今回も気にしない事にする。
あとでちゃんと袋は返してこようと深く心に刻んだ。
「…あれ?」
ベッドの上の物を物色していたら不意に夕立が疑問の声を上げたので手元を覗き込むと、
「チョーカー……じゃなくて、首輪よね、これ。」
今までのものは使い道がなくはないものだったので、鎮守府内で飼えないペット用の首輪には違和感を感じた。
が、それも次に夕立が取り出した物でわかる事になる。
「しっぽ?」
「…よね」
しっぽだ。こう、ずぷりと差し込むタイプの。
嫌な予感がしたので夕立の顔を見ると、
「プレゼント・フォー・ユーっぽい!」
と襲いかかってきたので、夕立を押さえつけながら首輪をつけて、しっぽをねじ込む。
やはり痛かったのかお腹を押さえて悶絶していた。
残り少なくなった袋をひっくり返すと……たくさんの『そういうコト』に使うものが出てきた。
ご丁寧な事に、女の子同士で使うものも紛れている。
異物感が強いのかお腹を押さえて丸まっていた夕立と顔を見合わせて、私は部屋のカギを閉めに行き、夕立は関係ないものを全部ベッドの下に落ろす。
服がしわになるのも気にしないで2人でベッドに寝転んで、まずは、とピンク色の容器に入っているクスリを開け始めた。