つゆ露ちゃんボイス妄想。
「うひ〜、今日も雨か〜…」
廊下の窓ガラスには雨の雫がたくさんついている。
朝日が昇り始めているはずの空は濃い雲に覆われている。
洪水になるほどの大雨ではないが、外に出ればすぐずぶ濡れになってしまうだろう。
もう何日雨が続いただろうか。
ふう、と小さなため息をつく。
「姉さん」
背後からの声に振り返った。
今日は休みのはずなのに、村雨は制服を着ていた。……まあ私もなんだけど。
「姉さんのせいで、妹達大混乱よ」
「え、私何かしたっけ…?」
村雨は少し困った顔を引っ込めて苦笑いを取り出す。
「昨日の夜夕立がね、『白露が、雨嫌いだって…提督さんと話してたの』って。…雨の娘たち大騒ぎよ」
「あー…そんなことも言ったっけ?」
「きっと髪が纏まらないとか…頭が痛くなるとか、洗濯物が乾かないとかあとは……その…」
村雨が言いにくそうに口をつぐんだ。
「私の、あの時期だから…ね」
「そう…そうだって言ったのよ。でも、」
「……やっぱ心配になるよね。…悪いことしちゃったなぁ…」
「…雨だけじゃなくて、風は…私たちはどうなのかって、…ほかのみんなも」
「……今は?どうしてるの?」
「まだ寝てるわ。…いい夢見れてるといいんだけど」
「ーー村雨、ちょっと手伝って」
「いいけど…何するの?」
「ちょっとね」
村雨の手を引いて歩き出した。
階段をおりて、廊下をたーっと走って角を曲がって、裏玄関から外へ。
雨の中へ。
「村雨って、よく夕立と雨の中遊んでるじゃない?あれって何やってるの?」
「何って…ただ泥だらけになるまで追いかけっこしてるだけよ」
「じゃ、私とそれやろっか。範囲は……この辺から、あの辺までで」
「どうして?」
「ここなら、みんなの部屋から見えるでしょ?」
____________________
「まてーっ‼︎」
「またないっ‼︎…あはっ」
やってみると、これが思ったより楽しい。
村雨は慣れている感じがする。ぬかるんだ土の上でもうまく走るし、地面を滑って私の手の下をくぐったり、水たまりの水面を蹴り上げて私の視界を数瞬塞いでその隙に背後に抜けたりと、なかなか捕まえられない。
熱くなる体も、すぐに雨粒が冷やしてくれるので心地よい。
何度か転んだ。その度に村雨は心配してくれたけれど、柔らかくなった地面は痛くなかった。
どれだけ叫びながら駆け回っただろうか。10分くらい?20分?
よくわからない。夢中になっていた。
村雨が左足で水たまりを叩くのと同時に、村雨に向かって跳躍する。
水しぶきを突き破って村雨に抱きついた。
村雨の頭を抱きかかえるようにして庇いながら地面を転がって止まる。
体を起こして2人で笑った。
「あっははは、」
「…うふっ」
「やっとつかまえたーっ!」
「初めてなのに上手いじゃない」
つかまえた村雨にすりすりと頬を擦り付ける。
「村雨、逃げるの上手いね」
「そりゃあ何度も夕立とやってるもの」
「じゃあ次は」
「私がー
『夕立もまぜてーっ!』
声の方に顔を向けると、夕立が雨の中をかけてくる。夕立だけじゃない。
「待って夕立、僕も!」
「姉さんばっかりずるいです!」
「私も、待って!」
雨のみんなだけじゃない。
「ほら、はやくいきましょう!」
「まって、手、ちょっと痛いわ」
「姉貴、転ぶなよ?」
「あたいも混ぜな!」
ぴょーんと飛び込んできた夕立を2人で受け止めて立ち上がった。
「私ね、雨が続いたらみんなとそとで遊べないから、だから…だからいやだったの!……みんな、大好き‼︎」
露は太陽の下で輝く
晴れの、元気なあの子がみんなを引っ張ってくれます。