響ちゃんが海に行きたいと言うので、2人は山を降りてすぐにあった大きな川に沿って歩いていました。
途切れ途切れの会話を続けながら歩いていると、川のそばに大きな岩を見つけました。その上には、黒い服を着た女の子がいました。
女の子は、川に向かって竹竿から伸びた糸を垂らしています。
「………時雨?」
「…響、か」
響ちゃんは彼女のことを知っているようでした。
彼女は水面の方に目を向けたまま、竿を大きく動かしました。
少しの間竿は大きくしなっていましたが、すぐに弾けたようになり動かなくなりました。
「ああ、バレちゃったか」
彼女はそう呟くと、竿をその場に置いて腰掛けていた大きな岩から飛び降ります。
とん、と2人の前に着地して、スカートのお尻をはたきました。
「久しぶり、響……少し見ない間に綺麗になったね」
彼女は響ちゃんに近寄って、左側の頬に唇を落としました。
2人は知り合いのようです。
「時雨は…少し痩せた?」
「そうかな?そんなつもりはなかったけど…」
昔の知り合いに会って、めでたしめでたし。
とはいきません。
『響ちゃんがまた、1人になっちゃうから』
そう言って、 彼は響ちゃんと旅をしていました。しかし、もう響ちゃんは1人ではなくなりました。。彼がいなくなっても。
じっとみつめる彼の視線に気づいたのか、響ちゃんは慌てて答えました。
「あの、えっと……まだ貴方と、一緒にいたい」
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黒っぽいセーラー服を着た女の子は、時雨ちゃんというそうです。
響ちゃんと同じくらいの背の高さで、胸部装甲や臀部装甲は響ちゃんのものより大きめです。
「珍しいね。響が誰かといるなんて。……ああいや、僕が響が誰かといるところをあんまり見たことないだけなのかな?」
響ちゃんが山であったことを話すと、時雨ちゃんは自分の体を確かめるように、一度だけ撫でました。
「…君は、僕達が怖くないの?」
時雨ちゃんがぐいと顔を近づけます。
彼は、視界いっぱいに広がった整った体と柔らかい匂いに顔を赤く染めました。
「僕達は、道端の石ころを蹴るように人の命を踏み躙るんだ。…リンゴをかじるように、君たちをかじっちゃうんだよ?」
どうにも、信じられません。一度響ちゃんに命を奪われかけましたが、時雨ちゃんも響ちゃんも、普通の女の子にしか見えないからです。
信じられない彼は、時雨ちゃんの体をぺたぺたと触り始めました。
「…あ、あの、そこは触らないでもらえるかな。くすぐったくて。…そっちは恥ずかし……ひゃん⁉︎」
敏感な所を触られてびっくりしたのか、時雨ちゃんは可愛らしい悲鳴をあげました。
「…貴方、何をしているんだい?」
仲のいい時雨ちゃんの体を触ったことに怒ったのか、響ちゃんは昨夜と同じナイフを作り出し、彼に向かって投げつけました。
響ちゃんが投げたナイフは狙いを外さず彼の顔に向かっていき…
「あぶなっ…!」
プシッという掠れた音がして、水しぶきとともに弾き飛ばされました。
彼を庇うように動いた時雨ちゃんは、ピストルの形に構えた手を下ろしながら話します。
「僕、大丈夫だからね?ほら、まだ一緒にいたいって言ってたでしょ?」
「……ごめん…ありがとう」
彼は、響ちゃんに、気にしていないという風に声をかけようとしました。が、言葉では伝わらないような気がしました。
言葉では伝わらない気がしたので、響ちゃんの体もぺたぺたと触り始めました。
「わ、私もかい?…んっ、…やっぱりこれは、はずかしいな…」
時雨ちゃんの目から、光が消えました。
「……ぼくを、すてるの?」
底冷えした声が響きます。
彼は急いで土下座をしました。
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時雨ちゃんには、響ちゃんのように水を操る力があるそうです。
さっきナイフを弾き飛ばしたのも、指先から打ち出した水でした。
1つ気になった彼は、2人に尋ねました。
「…え、響と僕、どっちの方が強いのかって?」
「…強さは同じくらいじゃないかな。…でも、時雨の方が、怖い」
どうにも、時雨ちゃんが怖いとは思えていなかった彼ですが、先ほどのハイライトが消えた時雨ちゃんの目を思い出して、じっと彼女を見つめます。
「こんな可愛い顔をして、時雨はすごい殺し方をするんだ。水で鼻と口を覆ったり、酸が溶けた水で全身をじわじわ溶かしたり…さっきの水鉄砲も、時雨のことだから毒でも入ってるんじゃないかな」
「ひどいじゃないか!」
顔を赤くした時雨ちゃんは、響ちゃんの言葉を否定しました。
「せいぜい合金に穴が空く程度の威力があるだけさ!」
予想外の威力に、彼と響ちゃんは顔を見合わせました。
怒らせない方が良さそうです。
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時雨ちゃんの住処に案内してもらえることになりました。
川から少し離れたところにある、洞窟の中に住んでいるそうです。
洞窟の中には草で編まれたカゴがいくつかと、水が入ったツボと小さな棚、天井からハンモックが吊るされていました。
「下は砂利で変な虫もいないし、雨も流れてこないからけっこう快適なんだよ。…響のところには敵わないと思うけど、慣れると楽しいよ。………ただ、蚊が多いのだけはちょっと困るな。寝ている間にスカートの奥のほうを刺された時は、恥とか外聞とか、そういうのを全部捨てそうになったよ」
彼は、時雨ちゃんのスカートの裾を見つめました。
「な、なに…?み、見たいの?……いいよ、捨てないでくれるなら」
時雨ちゃんはスカートの橋を掴むと、ゆっくりとめくりあげ始めます。
彼女を隠す最後の布地が見える前に、彼の意識は響ちゃんによって早急に奪われました。
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彼が目を覚ましてから3人で談笑していると、思い出したように響ちゃんが持ってきた大きなリュックを漁り始めます。
「時雨にあったら渡したいものがあったんだ。時雨、これ好きだったと思うんだけど」
響ちゃんは、紙で包まれた筒状の何かを取り出しました。
「あー……貴方にはちょっと刺激が強いかも、見ない方がいいよ」
響ちゃんは、テーブルがわりに使っている大きな平たい岩の上に、それを起きました。
ごん、と音がしました。瓶のようです。
衝撃で、目隠しになっていた紙がはらりと剥がれ落ちました。
「「「あ」」」
中には、
眼球目玉眼玉目球。
沢山の、目が入っていました。
彼は、それをじっと見つめました。
「ご、ごめん、うまく留めれてなかったみたい」
響ちゃんが慌てて体でその瓶を彼に見えないように隠します。
時雨ちゃんは、君たちをかじると言っていました。響ちゃんは、時雨が好きだったと思うと。
恐らく、そういうことなのでしょう。
彼は時雨ちゃんに目を向けました。
時雨ちゃんは…
「やだ、いやだ、すてないで、僕を捨てないでお願いだから、僕なんでもするから、人として扱ってくれなくていい、物として使ってくれてもいいから…すてないで」
虚ろな目で、彼に向かって手を伸ばしました。
一度、自分のことを大切な誰かに知られて、捨てられたのでしょうか。
僕達のことが怖くないのかと聞いてきたり、響ちゃんに、他の女に触れた時に、捨てるのかいと聞いてきたり、自分を捧げるような真似をした時にも、僕を捨てないでくれるなら。
一度、捨てられたのでしょう。でなければ、『彼女たち』は何故こんな生活をしているのでしょうか?
きっと、恐らく。本当はもっと、人間に近い生物だったのでしょう。生活の仕方からも、『人間』の文化に詳しいことはわかります。
ある転機。…恐らく『捨てられた時』から、彼女たちはどうしようもなく歪んでしまった。
「響ちゃん…君も、なのかい?」
「……うん。」
彼は、2人の体をいっぺんに抱きしめました。
自分がここにいるということを伝えるため。離さないという意思表示のために。
「僕のことを、捨てないでくれるのかい…?」
「まだ、一緒にいてもいいのかい?」
「ああ。もちろん」
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「…ごめん。みっともないとこ見せちゃったね」
「また、貴方に迷惑をかけちゃった」
彼は、気にしていないという風に伝えました。ボディランゲージで。
もう少しわかりやすく言うとぺたぺたと。
「ん…また触るの?…いいよ。貴方になら。…僕の体、ちゃんと確かめて」
「私も一緒にかい?…2人の美女を侍らせて、貴方もオトコノコだね」
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初期構想はここまで。
続きはそのうち。
なんとなくの終わり方は決めてるんですけどねー。
というより続きこんなに遅くなったこと謝った方がいいですよねごめんなさい。
響ちゃんと旅だったところからの原稿紛失してたんです(言い訳)
恐らく次回か次次回で完結。
もう1人くらい出したいけどキャラと能力思いつかないんですよね。