夕立を妹にしたいだけの人生だった
夕立とお兄ちゃん
「お兄ちゃん、今大丈夫?」
扉ごしに夕立の声が聞こえたので、マーカーを引いたテキストとノートのことを頭の隅に追いやった。
「うん、いいよ」
「じゃあ、お邪魔します」
かちゃりとノブが回り、夕立がそろそろと部屋に入ってくる。
「あ…やっぱり勉強してたよね…」
邪魔しないほうがいいのかな。といった感じだ。
俺は定期テスト前ということもあって勉強していたのだが、5点6点の数字よりも夕立を優先しなければならない。自明の理だ。
「今丁度休憩しようと思ってて…夕立はどうしたの?」
俺の言葉を聞いて、夕立は笑顔になった。
嬉しさを抑えきれないといった感じでとてとてと歩み寄ってくると、ばっと俺に飛びついた。
「お兄ちゃん、お兄ちゃんっ♪」
椅子から落ちそうになりながらも夕立の身体を受け止める。
夕立がすりすりと頬擦りをすると母さんに似たクリーム色の髪が鼻をくすぐった。
「夕立、危ないから急に飛びつくのは止めろって言ってるだろ?」
そう口で言いつつも、俺は夕立の体を抱きしめた。中学生でありながらも豊かに育った胸がぐいぐいとおしつけられ……
待ってくれ、そこの画面の前で見てる……そうそう、君。今シスコンだとか思っただろ?言い訳を聞いてくれ。
言い訳をするにあたって、夕立の説明をしなくてはいけない。すごく綺麗で肌はすべすべで、スタイルも良くて、誰にでも優しく出来るし、俺には一段とよく甘えてくるし、なんかいい匂いするし、今すっごくドキドキしてるしこれはもう言い逃れ出来ないシスコンですねはい。
だってしょうがないだろ?こんなに可愛い妹がいて何も感じないほうがおかしい。さらに言うと血は繋がっていない。
夕立がまだ0歳の内に父さんと母さんが再婚して、そこからずっと一緒に生活して、その可愛さを刻み込まれて、スキンシップでハグとかキスなんかもして、一緒のベッドで寝たり、……げふん。
話をまとめると、夕立は可愛くて、俺はシスコンだと言うことだ。
「でも、…夕立、我慢出来ないっぽい!」
夕立は飛びついてきた事に対して悪いとは思っているらしい。正直俺はこれが嫌いではないし、母さんが父さんにやるような愛情表現ーー後ろからしなだれかかって、胸を押し付けながら耳元で「村雨のちょっといいとこ、触って欲しいな〜♡」と囁くーーよりは心臓にいい。
しかし、しかしだ。兄として言わないといけない時はある。夕立にだって、言うことは言わないといけないのだ。
「ごめんね、お兄ちゃん…」
「はあ…夕立ったらしょうがないな…」
即堕ちである。
あぁ、どうしてこんなに可愛い夕立を諌めることができようか。
「ありがとっぽい!」
嬉しそうに俺の膝の上で飛び跳ねた夕立がばっと顔を近づけてきて、
「♡♡♪」チユッ
「くぁwせdrftgyふじこlp」
その唇が触れた。
どうも夕立はスキンシップが好きなようで。
一年ほど前に一緒にお風呂に入って欲しい、と頼まれた時に、流石にまずいだろうとゆるく断った時も涙目で頼まれたし、年頃の女の子と同じように『そういうこと』の知識を得た今でも俺と一緒にいたいらしく恥ずかしがることはないようで。
結局夕立の笑顔には勝てずに、毎晩天国のような地獄のような時間を味わっている。
因みに母さんも父さんを引きずりながらお風呂に入っている。もう少し静かにして欲しい。いろいろ聞こえている。「止めてよ、いたいじゃないか、」って聞こえた時はとても心配したが、出てきた母さんは笑顔で、父さんも苦笑に見えるけど、楽しそうな感じにも見える笑顔だったので、なんやかんやでうまくいっているのだろう。
それにしてもいつまで唇を吸っているんだろう、と朧げに考えていると、唐突に夕立の舌が口の中に滑り込んできた。
「ん…ふ…んっ…」
とろんとした目で頬を赤く染めて、時折息を漏らしながらも、舌は止めない夕立。
やっと口を離すと、だらしなく開いた口の端から、つつっとよだれが垂れた。
「ねえお兄ちゃん、」
「なんだ、夕立」
「夕立、もう我慢できないっぽい…」
そう言って、再び顔を近づけてくる。
「大丈夫、おとーさんもおかーさんも、たぶん許してくれるっぽい」
…想像できてしまうのが悲しい。母さんは楽しそうに「やっちゃえやっちゃえ♪」なんて言って、父さんはその隣りで目を閉じながら黙って首を振って……あれ?父さん許してなくない?諦めろ、って言ってない?何を諦めるの?母さんと夕立の遺伝子のえっちなところ?
夕立が俺の太ももに押し付けるように腰を揺らした。二枚の布を挟んでも、その奥の柔らかさがが太ももに伝わった。
「んっく、ふ、ん…」
2、3度腰をゆすった後に、にこりと笑ってもう一度唇を近づけてくる。
もう一度重ねられて、すぐに離れる。
「いいでしょ?お兄ちゃん…夕立、お兄ちゃんのこと、大好きだよ?」
もちろん俺だって大好きだ。でも、夕立は妹で、
「夕立と…えっちなパーティー、してみよ?」
……そんなこと、もうどうでもいいや。と思える程には夕立のことが好きで、救いようがなかった。
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