今日は従姉妹の山風の話をしたい。
緑色の長い髪を黒いリボンで纏めている高校一年生の女の子。
親の五月雨叔母さんと涼風叔父さんには似なかった大きな胸と人見知りする性格。
小さい頃は体が弱かったらしく、その頃から本を読むのが大好きな女の子。
母さんが風邪引いた日に買いに行った本は気に入ってくれるだろうか。
一応全部読んだけど…なかなか面白かったとは思う。
今日の昼ごろ叔母さんと叔父さんとうちに来た山風だけど、今は下のリビングで姉さんや夕立におもちゃにされている。
春雨はなんとか止めようとして巻き込まれていた。
自惚れでなければ山風はうちの家族のことを気に入ってくれてるんだと思う。さっきも楽しそうにしてたし、叔母さんがこっそりと、ここにくるのを楽しみにしていたことを教えてくれた。
一回挨拶してからろくに話をする間も無く2人に取られてしまったから今俺が嫌われてるかどうかは知らない。
そういえば今日は泊まっていくんだっけ。
うちの家はそれなりの大きさがある。だから3人泊めるくらい問題はない。
1度父さんに聞いたら、昔の分で使い切れないほどの貯金があると言っていた。
具体的な額は聞いていないけど「どこかの島を1つ買って整備して豪邸を建ててもお釣りで同じことがもう一回できる」くらいの金額らしい。
父さんと母さんの過去はあまり教えてくれないけど、すごい人なのかもしれない。そういえば今なんの仕事をしてるのかも聞いたことないなぁ。
などと変なことを考えていると階段を上ってくる足音が聞こえてくる。まっすぐ俺の部屋に向かって来た。なんだか急いでいるように聞こえる。
ノックすることなくドアが開かれたので姉さんかなと思っていると、揺れているのが緑色の髪の毛だったので驚いた。
駆け込んで来た山風が急いでドアを閉めて、扉についている簡素な鍵をかける。
続いて聞こえて来た2つの足音がバタバタとドアの前まで近づいてきて、ドンドンとドアを叩く音が聞こえてきた。
「鍵かかってるっぽい!」
「山風ちゃん、もう変なことしないからね?だからここ開けて?」
「やだ……構わないで!」
うーんこれは。姉さん達が何かやらかしたのはわかるけど下で何があったんだ?母さん達が何も言わないってことはそれほどでもないんだろうけど。
……聞いてみるか。電話かけよ。
扉の前でぎゃーぎゃー言い合っている3人を放置したまま母さんに電話をかける。
すぐに通話が始まった。山風や、あわよくば2人にも聞こえたらいいなと思ってスピーカーにする。
「何があったの?」
『あーうん。ちょっとね』
『ごめんなさい、私と時雨は止めようとしたんですけど、村雨と涼風が』
意外なことに聞こえてきたのは父さんと五月雨叔母さんの声だった。
『あたいらはおもしろ…可愛い子供の喧嘩だからほっとこうって。な?村雨?』
『うん。おもし…これくらいならほっといてもいいかなって。』
続いて涼風叔父さんと母さんの声が聞こえてくる。
それにしても叔父さんどこからあんな声出てるんだろうな。…まあ喉からなんだろうけど。
「いやさ、その面白そうで被害受けそうなの俺なんだけど」
『大丈夫よ。あの子達が山風ちゃんをかわいがりすぎただけだから。』
『ああ。山風も嫌って感じじゃなくて恥ずかしそうなだけだったからな。人見知りだからってろくに人と喋ってこなかったから恥ずかしがりも治しとかなきゃと思ってね。』
うーんなるほど。それらしい考えはあったわけだ。面白そうってのも本心なんだろうけど。
「じゃあどうするの?山風匿わないほうがいいの?」
「…〇〇⁉︎」
山風の悲鳴が聞こえた気がするけど気にしない。
『うーん……どうしよ。』
『あの、やっぱり山風かわいそうだし』
『そうです、しばらくこっちに来ない?、ってお誘いだったのでもう少し滞在しますし』
『…あーそうかもな。悪いな〇〇、今から白露と夕立回収しにいくからちょっとの間山風おいといてやってくれないか?その間にちょっと話つけるから。』
叔父さんの頼り甲斐がある声が聞こえたかと思うとすぐに階段を駆け上ってくる音がする。
「きゃっ⁉︎叔父さん⁉︎」
「悪いな夕立、話があるからちょっとだけ頼むぜ。ほら白露も、」
「ひゃうっ…大丈夫?叔父さん重くない?」
「ふふーん軽い軽い。じゃあ頼むぜ〇〇!」
すぐに階段を駆け下りる音が聞こえた。足音が1つなのは叔父さんが2人を抱えていったからだろうか。可愛い悲鳴は抱え上げられた時のものだろう。
「やばい…叔父さんかっこいい……惚れる…」
『だめ、涼風は私のなんですから!』
『私も食べたことあるんだけど』
『うぅ、…で、でも私が本妻なんですから!』
『私は涼風じゃなくて五月雨でもいいのよ?……うん。今夜一緒に寝ない?』
『なんだい村雨、五月雨も抱くのかい?ならあたいは時雨と〇〇と男同士で話でも』
『……どうしよう〇〇、おかしいことだってわかってるのにみんなこうだし…何より僕も幸せそうなんだしいいんじゃないかって思い始めて…』
なんて答えるか迷っているとドアの前から俺の近くに移動してきていた山風が口を開く。
「ねえパパ、ママが他の人とそういうことするの嫌じゃないの?」
『?ああ。だって五月雨悦んでるし』
『…たしかに姉さんと仲良くできるのは嬉しいですし、その、すごく上手だから』
「えまってまって叔母さんも手着けてるの母さん」
『私と夕立と春雨と母さん。この人の親がそんなでもおどろかないなぁ』
姉さんが少し非難するように上げた声が心を貫く。
『お、〇〇も思ったよりオトコだったんだな。…なあ村雨、今夜白露と夕立と春雨と一緒に山風と〇〇も一緒に寝かせて見ないか?』
「はっ⁉︎」
「えっ⁉︎」
『いいわね、それ』
『お兄ちゃんとみんなで…』
『あわよくば山風ちゃんも一緒に』
『兄さんに負担かけたらダメですから順番ですよ?』
「なんでその方向で固まってるの⁉︎山風もなんとか…」
「……あのね、そんなに嫌じゃない。…〇〇優しいし、怖くないし、本のこといろいろ教えてくれるし、……その、すき、かも」
『おいおい、いつの間にうちの娘墜としたんだい?』
『村雨の英才教育受けてるからね。……先言っとくけど僕涼風とは嫌だからね?』
『そうか?お互い結構見た目悪くないし心の波長さえ合えば…』
『本気でするつもりだったのかい⁉︎』
「なんなのこの家族…」
嫌じゃないよ?ただもうちょっと…
「〇〇、もう諦めたほうがいい。私が言えることじゃないかもしれないけど、みんなおかしいから」
わかってるよちくしょう
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村雨と五月雨
「姉さんと寝るのって久しぶりですね」
「昔以来かしら?」
「はい。時雨と涼風と……海風と江風と。」
「……改白露型、性能あげるためにいろいろ無理させてたんだってね。明石さんから聞いた時、ぼろぼろ泣いちゃって。せっかく生き残ったのに私達より短い間だけしか生きられないって聞いて。」
「涼風は先に作られたからそういう風にならなかったけど、2人は…。」
「今はなんとかのみこめたし、海風と江風の子もいるからそんなに悲しくはならないけど…時々、楽しい時に「2人が此処に居たら」ってなっちゃうのよね」
「2人に幸せになってねって言われちゃいましたし、私もめいいっぱい楽しみたいとは思うんですけど」
「……こういう言い方は2人に悪い気がするけど、随分な呪い遺してくれたわよね」
「はい。何があっても、幸せになりたいと思えて…その度に悲しくなるなんて」
「2人も、もっと生きてたかったんでしょうね。でもどうしようもないし、怒りをぶつけられる相手もいなかったから、最期にいたずら、みたいな」
「可愛い妹たちでしたね」
「……さっき時雨と話してたんだけどね。明日水族館に行ってみない?」
「水族館ですか?」
「そう。近くに新しくできたのがあるの。私達も平和な海なんてあんまり知らないじゃない?」
「…良いですね。見てみたいです。」
「よかった。なら決まりね」
「なら明日に備えて早く寝ないと」
「そうね。あんまり長引くと明日に響くから」
「…あれ?今私寝るって言いませんでした?」
「五月雨から言ってくれるのってなんだか嬉しいわね」
「あの、私そのつもりで言ったんじゃ」
「いただきます」
「⁉︎いきなりそんなところ…お願いですからもっと優しく…」
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時雨と涼風
「うーんやっぱり時雨のとこの風呂はでかくていいねえ。うちももっと大きく作れば良かったよ。
「お風呂が大きいのは良いけどそうなった理由すごいよ?」
「ん?どんなだい?」
「村雨がお風呂でしたいからって」
「あー。村雨のやつなら言いそうだな」
「おっきく作ったら〇〇と夕立が一緒に入るようにもなったんだよね。」
「はえ〜〇〇もやるもんだね」
「なんかあの人を思い出すね。提督」
「提督もバカみたいな人数と関係持ってたしね〜」
「あ、そういえば村雨が明日水族館行きたいって言ってたんだけど」
「いいんじゃねえのか?イルカ見たいイルカ!」
「僕はタチウオ見てみたいな。かっこよさそうだし」
「んじゃ〜ヤることヤってさっさとねるか。明日寝不足とかじゃ困るからね」
「え、……あー。……どうしてもしなきゃダメ?」
「悪い、嫌だったか?」
「ううん。全然嫌じゃないんだけど。……嫌じゃないんだよ?ただ…海風と江が……うぅ」
「な、泣くなって時雨、」
「どうして、みんな幸せだったのに、何でって。村雨も涼風も五月雨もなんとか折り合いつけてるみたいなのに、僕だけずっと、」
「良いんだよそれで。あたいたちは最前線で戦っていっぱい殺して、殺されて、でもそれは幸せになるためだったんだから。だから悲しくて良いんだ。じゃないとまた何かあった時に今度こそ守れなくなっちまう」
「わかってるよ。でも…白露型全員は揃わなくて僕が1番上だったのにみんなを幸せにできなかったのが辛いんだ。なのに僕だけ幸せになるなんて」
「海風と江風も言ってたろ?幸せだったって。幸せになってって。あれが嘘だったと思うのか?」
「でも、もっと幸せになれたはずなんだ。いっぱい頑張ってそれこそ人類を救ったっていうのに、なのに僕だけ」
「時雨、頼むから一回黙れ。このままだと殴っちまいそうだ」
「………あ」
「落ち着け。な?あたらいらいっぱい時雨にに幸せにしてもらえてるんだよ。だから、2人は時雨にも幸せになってもらいたかったんだよ。…だから、幸せになろうとするのはやめないでくれよ。な?」
「………ごめん」
「ん。」
「あぁ、ごめんようみかぜ、かわかぜ…あ、あぁ」
「やっべ、泣かせちまった」
「僕がずっと悩んでるせいで2人にまためいわくかけて…ごめん、ごめん、」
「な、時雨、頼むから泣き止んでくれよ。あいつらも心配してろくに寝れなくなっちまうって。強く言いすぎて悪かったから、な頼むよ、」
「うぅ…ずるいよ涼風、妹からの願い断れないっって知っておきながら…ぐすっ」
「悪いな。ほらこっち来いよ。今日ぐらい一緒に寝ようぜ?明日になったら忘れてやるから」
「うん……あったかいよぉ、すずかぜぇ」
「あーもーどうしてこんな泣き虫になっちまったんだい」
「みんなが悪いんだ…僕を幸せにするからだよ」
「はいはい。ならもっと幸せにしてやんよ」
「え、まって涼風どこ触って」
「あたいのこと嫌いじゃないんだろ?おんなじオトコだから何されたいのか…村雨や海風より解るからいっぱいよくしてやれるぜ?」
「なんで涼風の体そんな女の子みたいにやわえらかいんだ…」
「時雨もおんなじだろ?」
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白露と夕立と春雨と山風と〇〇
「両隣の部屋から父さんと叔母さんの鳴かされてる声が聞こえてくるんだけど…」
「すっごく寝にくいです…」
「お楽しみっぽい?」
「ママ、どんな気分なんだろ、」
「………。」
「どうしたの姉さん?」
「…いやー。なんか声聞いてたら。…やっぱり私もお母さんの子供なんだなって。こう、お腹の奥に火がついたみたいな」
「それは確実に母さんの遺伝子……姉さんのお父さんってどんな人だったか知ってる?」
「…聞いたことないんだよね。みんなは?」
「しらないっぽい」
「聞いてないです」
「…あの、私知ってるかもしれない」
「え、ほんと⁉︎山風ちゃん知ってるの?」
「あ、あのね、…パパとママが時々江風さん、って人の話してるの。だれって聞いたら、パパが村雨のって言いかけてママが止めてた」
「江風さんか…姉さん聞き覚えある?」
「うーんないなぁ」
「あの、私少し聞いたことが」
「春雨聞いたことあるの?私ないのに」
「はいっ。あの、お母さんと2人でお墓参り行った時に、海風と江風って呟いてて…」
「夕立も聞いたことあるっぽい。お母さんがお父さんに江風に似てきたって。その時誰かわからなかったから気にしてなかったけど」
「そっか…言ってくれないのって、やっぱり何か理由あるんだろうね。」
「…江風さんがひどい人だったりとかは、ないんでしょうか」
「それはないとおもう。パパもママも悪い人じゃないって言ってた」
「母さんもその人の話する時、恋してる乙女の顔だったし」
「複雑な家庭環境だなぁうちって」
「私たちがお兄ちゃんとすきすき言ってる時点でもうおかしいっぽい」
「そういえばお父さんもお母さんも…叔父さんも叔母さんもあんまり昔のことって喋ってくれませんよね」
「あの時代何かあったっけ?私歴史の成績が…」
「…白露、はずかしくないの?」
「やめて山風ちゃん心に突き刺さる」
「母さんたちの頃って確か」
「深海棲艦との戦いがちょうど終わった頃っぽい」
「…病気とか、事故とかで死んじゃったんじゃなくて殺されちゃったんでしょうか」
「…村雨叔母さんも、思い出したくないかも」
「じゃあ私たちの間でも気をつけなきゃね。みんな出来るだけこの話禁止ね?」
「良いけど…気になるっぽい」
「そのうち教えてくれる日が来ますよ姉さん」
「大丈夫…村雨叔母さんも時雨叔父さんも優しい人だから」
「うーんちょっと強引に聞いちゃったのまずかったかな。」
「…。どうしよ〇〇、たいへん」
「どうしたの姉さん」
「お腹の疼きが治らなくて」
「夕立のも結構きてるっぽい」
「ごめんなさい、私も…」
「あ、あのね、私も」
「ちくしょう叔父さんと母さん絶対こうなるのわかってて一緒の部屋に寝かせただろ!」
「ふ、ぅん…ごめん、慰めてくれない?」
「お兄ちゃん、おねがい、」
「春雨も、ん、お願いできますか?」
「ずるい…私も…」
「「「「ねえ、お願い」」」」