白露と、ってタイトルですが、白露ちゃんに恋する時雨ちゃんのお話。
露時雨…露が降りて、時雨の降ったようになること。また、草木に降りた露が時雨のように滴り落ちること。
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朝、目を覚まして、何気なく窓の外を見てみると、駆逐艦の寮の周りをジャージを着た姉さんが走っているのが見えた。
なんでだろう、少し楽しくなって、急いでいつもの制服に着替えて、髪を纏めることもせずにタオルと冷蔵庫の中のペットボトルを掴んで外まで降りてみた。
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外に出てみると、ちょうど寮の周りを何周かしたのか、玄関の右手にある芝生に生えた木の下で荒い息を吐いている姉さんがいた。
僕は少しうきうきしながら姉さんに寄って行って声をかける。
「おはよう、姉さん。」
「……あぁ、おはよう、時雨、」
持っていたスポーツドリンクのペットボトルを手渡して、首元や額に浮いた汗を拭っていく。
「……ありがとうねぇー」
小さく笑った姉さんはペットボトルをぱきりと開けて中の液体を口に含んだ。
息を整えるように、2回、3回大きく息を吐いた姉さんは、僕に向かっていつもの声で語りかけてきた。
「…ねえ、露時雨って知ってる?」
「…つゆしぐれ?」
僕は静かに首を振る。
何かを小さく呟いた姉さんが木を背にしゃがみ込んだのにつられて僕も隣に座り込む。
「こういうの、なんだって」
すっと姉さんが指差したのは僕達の下に生えた芝生とその先の黒く濡れたアスファルト。
ちょうど顔を出した太陽の光に照らされて滴がきらりと輝いた。
「露が、時雨みたいに見えるんだって」
露と時雨、2人っきりのときにその言葉を出された僕はつい姉さんと自分のことを思い浮かべてしまう。
にへっと笑いながら、少し悔しそうに姉さんは言った。
「私も、時雨みたいになれるかな?時雨ってほら、強いしかっこいいじゃん?」
そうかな、と呟いて、少しだけ意識を思考に落とす。
僕の強さは姉さんのものだった。
姉さんは自分がやりたいことに艤装の出力が追いついていないみたいだった。
そのぶんをこうやって、自分を鍛えてカバーしている姉さんと違って、僕の改二の艤装はその努力を必要としなかった。
姉さんから貰ったこの力のおかげで、僕は確かに強くなれた。
姉さんの魅力に触れ続け、姉さんのように優しくなりたいと思い続け、…姉さんのことを想い続けた僕をかっこいいと言ってくれるなら、
僕のかっこよさは姉さんのものだ。
だから。
「僕が、姉さんに似たんだよ。…焦らなくてもいいんじゃないかな。」
僕の全ては、姉さんの物だ。
ひゅうっと強く風が吹いて、僕らの頭上の若葉を揺らした。
「きゃあっ、露時雨…いや、夕立?」
葉からこぼれ落ちた雫は僕達に降り注ぐ。
姉さんの可笑しな悲鳴に、クスリと笑みがこぼれた。
「あー、ずいぶんと濡れちゃったねー」
一緒にお風呂行く?、と言いながら立ち上がった姉さんに手を引かれて僕も隣に立ち上がる。
掴んだ手は僕と同じくらいの大きさのはずなのに、とても安心できる手だった。
誰かとネタ被ってそう(小並感
近いうちに投稿するつもりでつけた性転換とボーイズラブが息をしていないので次は多分時雨くんと提督の話