すっごく久しぶりですが時間ができたので投稿。
村雨視点です。
私達は、よく似ていた。
普段の髪型や台詞はちがうものの夕立の服を借りて夕立のふりをしながら生活すれば誰にも気づかれない自信はある。
この前遊び感覚で体のいろんなところを測ってみたら胸のサイズまで同じだったのには少し驚いた。
ただ、戦いのセンスだけはどうも似なかったようで。
夕立についていけるのが私だけだったので提督さんはいつも私達をペアにして編成していた。
だから、夕立のことを1番近くで、1番長く見ていたのは私だと思う。
夕立が「狂犬」だとか「ソロモンの悪夢」などと呼ばれるようになったのはいつからだったろうか。
随分と「狂犬」っぽい動きだとは思う。
夕立に合わせて接近戦を強いられた結果、錨で殴るという手段をとった私が言えることではなさそうだが、私のそれは夕立のようなセンスや直感だけで戦っているのではなく単なる生き残るための技術。
気があうから夕立のフォローができるだけで、夕立のように才能があるわけではないし、そこまで強くないものだと思っていた。
だが、その認識は改めた方がいいのかもしれない。
この前来たばかりの海風と江風が、「姉さん達の中で誰が1番強いのか」という話をしていたのを聞いたのだが、驚いたことに候補の中に私の名前があったのだ。
姉さんと夕立と時雨の三強だとばかり思っていたので訳を聞いてみると、
「夕立に見劣りしない近接戦闘の巧さと夕立とは違う闇を覗き込んでいるかのような恐怖」
だそうだ。
怖いというのは少し心外だったが、可愛い妹たちがそう言うのだから少しは自信を持っていいのだろうか。
「夕立、どう思う?」
「知らないっぽい。でも、私がいつもああやって戦えるのは隣にいるのが村雨だから。」
「でも、夕立も私みたいなことできるでしょ?」
「うん。村雨の真似をしたらね。だから村雨も夕立のまねしたらいいの。そしたら、夕立が強いなら村雨も強いっぽい」
…そっか、夕立のまねか。
「村雨」がどんな手段で戦うよりも、「夕立」が戦っていると感じれるなら自信が持てるだろう。
「自分の中で暴れまわってるのを、そのまま暴れさせたらいいの。」
「うん。わかる。今はすごく。」
私たちの可愛い妹をきずつけたのだから、たっぷりお礼をしてあげなければ。
左手に握りしめていた錨を艤装に吊り下げた。
代わりに太ももの魚雷を一本引き抜いて、投げやすいように握りしめる。
「海風、江風、待っててね」
「すぐ終わらせるっぽい」
出来る気がする。
彼女のように大きく口を開いた。
「ソロモンの悪夢、見せてあげる!」
なんだか少し気恥ずかしい。
後ろで夕立がくすりと笑った気がした。
「ちょっといいとこ、見せたげる、っぽい!」
1番近くの敵に向かって一直線に進んで行った私の背後を取ろうと動いた敵が、視界の端で爆炎に変わる。
正面のおくちに魚雷を一本プレゼントしてすぐさま次に向かって飛び退けば、背後から飛来した砲弾がそれを起爆させ、もう一つ、命を奪っていった。
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「……んーおわったー!」
「お疲れ様っぽい」
「海風、江風、大丈夫だった……え、どうしたの?」
「村雨が怖すぎて震えてるっぽい」
「やだ、村雨そんなつもりないのに…!」
「なかなか怖いよ。うん。」
「夕立もそんなにかわんないでしょ⁉︎」
「私のは、単純な敵を蹴散らす暴力。村雨は容赦なく、効率よく、しかもときどきからかいながら倒していくから怖さの次元がちがうの。」
「……やだぁ、夕立のまねするの止める…」
「ん、それがいいっぽい。」
違うんだ村雨さん。サボってたわけじゃなくてですね。ほら、仕事とか色々あるわけですよ。だからね、暴力は良くないと思うんだ。このしゅえさんを縛っている縄を解いてだね。あ、ダメ。しゅえさん斬属性耐性ないから刃物はちょっと。