オーバーロード~宇宙の帝王~ 作:ビエン
DMMO-RPG「ユグドラシル」。
仮想現実世界に入り込み、まるで実体験しているかのようなリアリティの大人気オンラインファンタジーゲームだ。
放置にも見れる自由度の高さが売りで、九つの世界を冒険するゲームだ。
アバターの姿形も自由に変えられるのでこれも人気の由来だろう。
ユグドラシルは十二年と長くサービスが続いていたが、時間が経つに連れて徐々に過疎化して行き・・・ついにはサービス終了が決定。
そんな折に私がユグドラシルで所属していたギルドのまとめ役であった彼からメールが来た。
『サービス最終日にユグドラシルで集まりませんか?』
私はそれを見た時は驚いた。
まだ辞めていなかったのかと。
少し考えてから返信を送る。
『何時になるかは分かりませんが、行きますね』
アップデートやらなんやらは少しずつやっていかないとな。
そう思いながら私は次の日の仕事に備えて早めに床に付いた。
「クソ上司め。自分の失敗を部下に押し付けるんじゃない」
ユグドラシルのサービス終了日。
私は悪態つきながらユグドラシルを起動する。
今は・・・23時か。大丈夫そうだな。
懐かしいPVが流れるが無視してログインする。
するとこれまた懐かしい場所に出た。
黒曜石のような輝きを放つ巨大な円卓。
そしてそれを囲むように置かれた四十一の椅子。
かつては満席になっていたその椅子が埋まっているのはたったの二つ。
「おや。わたしが最後みたいだね」
「ディクタさん!」
椅子を埋める内の片方である
「ディクタさん。お久しぶりでーす」
残りの片方である
「久しぶりですね。ヘロヘロさん。モモンガさん」
ディクタトゥーラ。
略してディクタ。
それが私のユグドラシルのアバター名だ。
姿形は百年以上前の大人気漫画の悪役と同じだ。
私はこのキャラが酷く好きで、著作権が切れているのをいいことに同じにした。
そのキャラの名前はフリ○ザだ。
今の私はそのキャラの第一形態だ。
無論、最終形態まで変態できる。
デメリットは大きいがね。
そして私はユグドラシルのプレイ中はずっとかのキャラのロールプレイをしていた。
「では少々ですが可能な限り雑談でもしましょうか」
「行ってしまいましたね」
私は今までヘロヘロがいた椅子を見つめながら呟いた。
眠気が凄まじくなったので落ちると言い、この場所───我らがギルド「アインズ・ウール・ゴウン」の拠点であるナザリック地下大墳墓───を維持してくれていたことを感謝しながら去っていった。
「モモンガさん」
「はい。何でしょうかディクタさん」
項垂れていたギルド長に声をかけて立ち上がる。
「どうでしょうか。最後は玉座の間で・・・ギルド武器を持って迎えるというのは」
「それは・・・」
ギルド長は逡巡してから笑った。
「そうですね。そうしましょう」
壁に飾られたギルド武器───スタッフ・オブ・アインズ・ウール・ゴウン───を手にしてギルド長と共に歩き出す。
ナザリック地下大墳墓最深部である玉座の間へと・・・。
途中に居たNPCである執事とメイドたちを引き連れて玉座の間へと入る。
「随分と久しぶりですよ。此処に来るのは」
「私もです。いつ見ても此処は素晴らしいですね」
ギルド長の言葉に頷きながら玉座へと向かう。
「おや?これは・・・」
玉座のすぐそばに立つ女性。
NPCの頂点である守護者統括アルベド。
長い黒髪に白い角。
腰から生えた黒い翼を持ったスタイル抜群の絶世の美女だ。
だが問題はそこじゃない。
「
その手に持つ
ユグドラシルで公式チートである
それを持っていることが問題だ。
「モモンガさんではないということは・・・タブラさんですかねぇ」
「だと思います」
ギルド長は取り上げるべきかと考えたようだが「どうせ最後だし」と呟き玉座に座った。
「様になってますよ?モモンガさん」
「止めてください。ディクタさん」
「ホーッホッホッホッ」
高笑いしてそこからは無言で最後の時を待つ。
ギルド長は掲げられたギルドメンバーのサインが書かれた旗を指差してそのメンバーの名前を上げていく。
そして最後に自分の名前を上げると玉座に深く座る。
サービス終了まで後数十秒。
「・・・・最後まで付き合ってくれてありがとうございました」
「それはこちらのセリフですよ。私たちが此処から去っても尚、此処を守っていてくれたのですから・・・モモンガさん、お疲れ様でした。今度、オフ会をしましょう」
最後にロールプレイではなく本当の口調で言った。
ギルド長は驚いたような仕草をしてから頷いた。
「はい。楽しみにしてますね」
人生最期の約束。
それは永遠に果たされることはなかった。
何故なら彼らはこの瞬間から───
「どこにもっ行かないでくださいませ・・・!」
「「え?」」
───人間ではなくなってしまったからだ。