カルデアのマスターと、もう一度の   作:魚谷井亭 桝

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バーサーカー (C)

 魔術師が、足取り軽く意気揚々と部屋を出ていった。

 「これでようやく…」だの「我が一族の悲願…」だのと妄想逞しい様子であったから、どうやら俺を呼び出せたのがよっぽど嬉しいらしい。

 

(…どうでもいいことだ)

 

 そんな姿を見せられたところで何かを思うことはない。

 兵器に過ぎぬこの俺に、何かを感じろという方が間違っている。

 雇い主の事情も、これから戦うであろう他の奴らの事であっても変わらない。

 敵を倒す。敵になったものを刺す。この身の消えるその瞬間まで戦う。

 それだけだ。少なくとも、今の俺にとっては。

 

「おい、バーサーカー!何やってる!早く来い!」

 

 雇い主の声がお呼びだ。行くとしよう。

 

 カタッ――

 

 扉に向かって一歩踏み出そうとした瞬間、背後で物音がした。

 敵の気配はなし。殺気も、それ以外の気配も。

 暗殺者であったとしても、いや、物音をさせる暗殺者なぞ恐れるだけ無駄か。

 何かのバランスが崩れただけだろうと思いつつも一応と、緩慢な動きで背後を振り返る。

 

「…………」

 

 そこにあったのは召喚陣、そして祭壇。

 つまりこの俺を呼び出すために捧げられた生贄の山だ。

 興味がない。

 そう判断して振り返る寸前に山の一角に転がるそれを見た。

 ケルト関連で統一されたガラクタの中にあって浮く異物――

 

(あぁ、槍兵ではない俺が喚ばれたから何があるのかと思えば……)

 

 ――開かれ、腑分けされ、ホルマリン漬けとなった心の臓。

 

 それで察した。

 全てをではないが、大体は。

 どうしてそうなったかは分からないが、何故そうなったかは。

 あの時あの天文台に集まった奴らにも似たようなやつが何人かいただろう。

 

(そんなもんだ。世界を救った英雄であっても。いや、だからこそか)

 

 作家のサーヴァントであれば「ありきたりだ」と吐き捨てたのだろうが。

 或いは「それでこそだ」と筆を進ませただろうが。

 もしくは槍か術の俺であれば、何か『彼女』に言葉の一つもかけたのだろうが。

 やはりそれに何かを感じる、ということはない。

 悲嘆に暮れることも、義憤に憤ることも。少なくとも、この俺は。

 兵器に何かを感じろという方が間違っている。

 

「おい!聞いているのかバーサーカー!」

 

 ……ただ少し、時間を食われただけだ。

 

 

 肉塊から視線を切って、のそりのそりと部屋を出る。

 一歩ごとに己の槍を、狂気を、本分を取り戻す。

 魔術師がこちらを不審そうな目で見ている。

 そう、それでいい。それがあるべき関係だ。

 精々うまく使ってみせろ。

 

(それじゃあ、此度の聖杯戦争を始めよう)




Twitterの方で「カルデアのマスターが闇オークションにかけられたら」といった感じのつぶやきを見て、反射的に浮かんだものを書きなぐってみました。
文量短いのはご容赦を。


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