「出来ました~。」
およそ1時間半ほどで服が完成した。服とズボンの柄は黒い世界に赤く燃えるイメージとなっており逆立っているダンの髪と実に似ている。
ダンはすぐに着替える。
気温はそれほど寒くはなかったが風によって体温が奪われている今、どれほどダンにとって暖かかった事だろうか。
冷え切った身体を布が包み、ダンの肌の色も良くなっていく。
「ありがとう。」
そこへ丁度良いタイミングでマリーが帰ってきた。
「どうだ?お、良い感じじゃないか。いくらだい?」
「替えの衣服を入れて2620です。」
マリーは袋を取り出しそこからお金を渡す。
女性店員は受け取り「ありがとうございました~。」と元気よく声を出す。
「よし!用事は済んだね、ダンさっさと出発するよ。」
「ちょっと待ってくれ。」
ダンはマリーが帰ろうとする所を止める。
「ん?」
「この国でバトスピの大会があるらしいんだ。出来ればそこに参加したい。」
「この国そんな事してたのか、あの国王も物好きだねぇ。」
「知ってるのか?」
何か知っている人について話しているようにと思いダンは尋ねるがマリーは「まぁね。」とはぐらかす。
「ただダンが思っているほど人数は多くないはずだよ。せいぜい集まって16人、トーナメント式だと勝ち進んでも4回だけだ。」
「構わない。」
「分かったよ、食料はアフロに積ませてある。会場は恐らく城の傍の広場だろうから案内するよ。世話になったな。」
マリーは店の女性店員に声をかけると女性店員は一度礼をして見送ってくれた。
ダンはマリーの後を追い、この世界に何があるのかをもう一度詳しく眺める。
様々な姿の人達がいるが基本的に同じ姿、つまり同種族の人達で固まって生活しているようだ。
あるところでは巨人の人、あるところでは小人、あるところでは翼の生えた人・・・。
それぞれの種族の人達は共存しあい、しかし互いを尊敬し必要以上には踏み込まないように気を付けている。
しかし、あの店の人が言っていた奴隷、どこへ行っても立場や位が存在してしまう。
「ついたよ。」
ダンはマリーの声で思考を散らし広場を見る。人は確かに少ないがどの人達も楽しそうにバトルしている。
この空気、思い出す。
皆が皆自分の持っているカードの中で一生懸命デッキを考え、プレイする最中も何をするべきか、何をすれば良かったかなどを考える。
今のダンはこれまでの経験から自ずと最善と手が瞬時に脳内に浮かび上がってしまう。
こうなってしまってはデッキの内容、運。この2つのみが楽しみとなってしまいバトルスピリッツの一番の楽しい時はもう得られない。
しかし、それは本気のバトルの話で今この広場にいる人達は楽しんでいる。勝ち負けなど気にせず出したいカードを出し、負けても笑う。
張りつめた空気では無く寧ろ逆、ほのぼのとしたバトル。
ダンは一体どんなバトルが出来るのか胸が高まってしまう。
≪皆の者!!!!!≫
大きな声と共にこの場にいる全員がその声の方向に顔を向ける。
姿はダンと変わらず人間のよう・・・。違う点は金ぴかに光った服に・・・人間の椅子だ。
その椅子の人はみすぼらしい以外に説明がつかないような恰好をしている。
服はダンが着ていた物よりもボロボロで髪は遠くからでも見えるほどベタベタ、所々に傷があり見ているだけで痛々しい。
そんな椅子に誰も目も行かずその椅子に座っている人を見つめている。
「あれがこの国の国王だよ。」
「あれが・・・。」
見た目はかなり良い人そうだ。恐らくこの国民からもかなり慕われているのだろう。
ダンにはあの奴隷が気にかかり良い人には見えないがそれがこの世界の理、もしたてつこう事ならこの世界を敵に回す事だろう。
国王は手に持った拡声器のような機械でこの辺り一帯に聞こえるように大きな声をあげる。
≪これよりバトルスピリッツ大会を始める!!!!≫