ターミネーター イースタン・フロント   作:花咲 狼

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皆さん、コロナ禍をいかがお過ごしですか?
私はこの度、新生活がスタートしました。
まだこれから新たに自粛生活を迎えることもあるかもしれませんが、
この小説が皆さんの外へ出られないストレスを少しでも発散できるような時間に片手間に読んで頂けるような作品になれるように努力していきたいと思います。


14話「片翼の渡鳥」

〈対馬市:駐屯地・地下施設 神崎一狼〉

緊急事態用の警報で目を覚ます。

廊下からは状況の説明を求めながら持ち場につく人の声や足音が響いていた。

 

「先輩、ここに居てください。」

 

ずっと側に居てくれていたらしい未来にそう言われる。

 

「いや、司令室に行く。」

 

重い身体を起こし、立ち上がる。

傷口の多少の痛みや麻酔の副作用で怠さはあるが動けないほどではない。

寝る前に着替えた服は寝汗で濡れていた。

ベッド脇にある棚に仕舞ってあるTシャツに着替えて部屋を出る。

行き交う人に何度もぶつかりかける。

後ろに居る未来に案内してもらいやっとの事で司令室に到着する。

長らく放置されて居たせいかドアは錆び付いていてなかなか開かず、未来に手伝ってもらう。

入室して辺りを見渡すと燐が必死に指示を出していた。

 

「状況は?」

 

俺の声に驚いた表情で振り返る。

 

「一狼!?」

 

一瞬動揺した様子を見せたがすぐに落ち着き俺を中央の机に誘導する。

切り替えの良さは弓道部の時から変わらず、彼女が一目置かれる所以でもあった。

誘導された中央の机に向かうと、そこには対馬市の紙媒体の地図が広げられていた。

地図の上には対馬の北北西に一カ所と厳原、豊玉に一カ所ずつ広い丸が書かれており、島の西岸に一つの点が打たれていた。

 

「これは?」

 

「数十分前に在韓アメリカ空軍からSOS通信がありました。

報告によると複数機のハンターキラーと交戦、

輸送機、及び戦闘機が撃墜され一名の生存を確認、

それ以外の生存者は確認されてないわ。」

 

「円で描かれてるのが輸送機で点が生存者の位置か?」

 

「ええ、すぐに捜索・救助隊を編成して向かわせるところよ。」

 

説明を受けながら腕を組む。

 

「言っておくけど、行かせないわよ?」

 

そう言って睨みを効かせる燐に手を広げて見せる。

 

「生憎この足じゃ行きたくても行けん。」

 

その言葉聞いて燐はまたモニター机に向き直った。

 

※ーーー※

〈06:14 レイブン1〉

太陽と向かい合った状態のまま降下する。

目下の孤島が視界から海を奪い去り、広く深い森林を突き付ける。

生い茂る木に突入し枝や葉を掻い潜るもパラシュートが木に引っかかってしまう。

 

「...Fuck.」

 

ため息交じりに悪態をつくと、

太ももにある鞘からサバイバルナイフを取り出し左肩のベルトを切る。

右肩のベルトを切り始める時に着地する用意をする。

パラシュートから身体を拘束していた鎖は解かれ、

すぐさま陸地が接近してくる。

両足で着地し、流れるように膝、腰、肩、背中へと着地の衝撃を逃がしていく。

中腰姿勢で起き上がり辺りを警戒する。

耳を澄まして聞こえるのは鳥の鳴き声や川の潺、外海からの侵入者に枝葉を震わせる木々のざわめきだけだ。

不快な金属音や赤く発色する目は見えない。

レッグホルスターからM9を取り出し、神経を研ぎ澄ませながら前へと進む。

額から滲み出る汗を袖で拭う。

一歩、また一歩と歩を進める。

急に羽音が鳴り響き鳥が飛び立つ。

 

「クソ!」

 

小声で悪態をつき、また前へ進む。

もしここで機械と接触したら、俺はこの豆鉄砲を使って逃げるしかないだろう。

生き残れたとしたら奇跡だ。

 

 

「おい!それは俺のだって言ったろ!」

 

近くで声が聞こえる。

おそらく50mもない。

茂みを搔き分けて進む。

森林を出て、舗装が剥げた道路に出る。

そこには5人の武器を持った民間人と2人の負傷した兵士が居た。

兵士は跪き、両手を挙げている。

 

「何でも持って行って良いから、命だけは助けてくれ。」

 

「黙れ!」

 

命乞いをした兵士が猟銃の銃床で殴られる。

後ろに居たもう1人が殴られた兵士の顔を上げさせる。

顔をよく見ると輸送機に乗っていたパイロットのようだ。

俺はM9を強く握り心の奥底に沸々と煮えたぎる感情を押し殺す。

 

「何度言わせるんだ?

武器の箱の暗証番号だ。知ってるだろ?」

 

しゃがんで顔を覗かせる男に兵士は唾を吐く。

 

「Fuck off.」

 

男は眉を上げると立ち上がり銃床で5回顔を殴る。

我慢できなくなり飛び出そうとしたときに誰かに右肩を捕まれた。

反射的に振り払おうとする。

 

「動くな。見方だ。」

 

そう言われて恐る恐る振り返る。

そこにはジャパンの抵抗軍らしき男が数名居た。

 

「在韓米空軍の人間だな。」

 

ネイティブに近い発音でこちらに語りかける。

喋り慣れているのか、日本人にしては聞き取り易い。

 

「そうだ。もし良ければ彼らを助けてくれるか?」

 

こちらの要求に彼は頷き、ハンドサインを後方の隊員に送る。

彼らは散開すると狙いを定める。

Type89を構えると小声で何かを話す。

次の瞬間、サイレンサーの音と同時に5人の頭から血が舞うと一斉に倒れる。

洗練された動きに驚愕し、彼を一瞥する。

米日合同訓練でもJSDFの隊員は優秀だったが抵抗軍になってもその実力は健在らしい。

 

「手当てしてやれ。」

 

彼は立ち上がると見方に指示を出すと周囲の警戒に戻って行った。




次回
 「狼と鴉」
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