もしもガリィちゃんがちょっとだけ優しかったら(完結) 作:ぶり大根(元・孤高の牛)
以下簡単な現時点人物説明おさらい
・主人公(24)
そこはかとないバカな為に会社をクビになった
本来はGX一話で響とキャロルのやり取りを盗撮していたところをガリィにキスされ殺されるあのモブのポジションだったが『恋愛妄想力』で思い出を捏造して生き残った
ガリィに一目惚れし、成り行きで同棲(?)している
無駄にポジティブだが童貞
・ガリィ
原作と違うのは元より『優しさ』が微妙に残ってる為に一般人を襲わなかった点、原作より劣等感が激しかった点、主人公の『恋愛妄想力』を誤って吸収したせいでより人間に近い性格とより人間に近い性質に変化した
『家出』した後主人公の部屋にお世話に(?)なっている
おバカな主人公に振り回される苦労人だが…?
・キャロル(二話)
原作との相違点はドールズを家族として見ている、シンフォギアを狙う目的が父親を生き返らせる等『復讐』より『家族』に固執しているところ
『家出』したガリィを内心心配しているが他のドールには見抜かれている
基本的な性格や境遇は変わっていない
・服屋の店員(三話)
主人公とは生まれた日からの幼馴染
爽やかで程々にイケメン、彼女持ち
主人公の言葉の真偽を完全に見抜ける特殊能力持ちのお陰でガリィの正体に気付いてしまった苦労人
・お局キャリアウーマン(一話)
主人公の元職場にいた40代未婚の口うるさい女上司
直接的な登場は無い
「うーし、今日も疲れたなあ」
「全く、そう思うならもう止めたら?」
「ハハッバカを言え、明日がこのお出掛け三連チャンのメインイベントだぞ? それをちょっと疲れただけで休むなんて有り得んでしょ」
「いやアタシが疲れてたらどうすんのよ」
「普通の女性ならまだしも君は大丈夫でしょ」
「ぶん殴るわよ」
まだこの美少女と出会って三日……ちゃんと関わりを持ってから二日目だがもうこのやり取りは青年の日常になっていた。
きっとこの少女との関わり無しに仕事をクビになっていたら今頃途方に暮れ、やがて賃貸の金も払えなくなり追い出されホームレスになり、まともに生きていく事は出来なかっただろう。
この青年が今まで常人の言うまともとして生きてきたかは別問題である。
「まあそんな事はさておき」
「ほんとどこまでもウザイわね!?」
「まあまあごめんって。それよりさ、今度君の家族に挨拶に行きたいんだけど」
余りに唐突であった。
青年の中では既に付き合ってるレベルに達しているとでも思っているのだろうか、ここまで親密にしてきた女性がいないとはいえ流石にぶっ飛びすぎも大概である。
そして言われた当のガリィはというと
「家……族……?」
また違う方向で困惑していたのであった。
それはそうだろう、ガリィの中では少なくともキャロルや他のドール達はマスターとドール以上も以下も無い関係性だと思っている、ガリィの表層意識上はの話だが。
だからこそこうして劣等感に苛まれおかしな事に巻き込まれているのだが、生憎とこの場にそれが分かる者はいなかった。
「ん? あれ? なんかおかしな事言った?」
そしてその言葉は明らかに今更である。
この青年がおかしいのは生まれてこの方24年変わらずなのだが、青年が知るよしもない。
露骨に沈黙の長いガリィに首を傾げる青年。
そんな青年を無視する様に沈黙していたガリィは、それから暫くしてから大きく息を吐き出した。
「…………まあ良いわ」
「そう?」
全くもっておかしな事しか言っていない青年に、だがガリィは何故か否定する気になれずにそう吐き捨てた。
「それより、今日はアンタも布団で寝なさい」
「え!? 一緒に寝てくれるの!?」
言った瞬間にガリィ自身が動揺した。
さっさと切り替えようと思っていた矢先だった為に一段と動揺は強かった。
それに加え無意識の内にそう言葉が出ていた、意識など全くしていなかったのに、だ。
過剰に食い付いてきた人間の形をした脳味噌単細胞生物を尻目に何とか言い訳を考え誤魔化し誤魔化しで言葉を投げ付ける。
「う、うっさいわね! アンタに布団譲ったところでどうせ引かないでしょーが! アタシは人間の食べる物が案外イケてたから案内役と金ヅルのアンタに身体痛められると困るっつー事よっ!!」
だが言い訳と言いつつ半分は本音だった。
今まで人間の食事などした事が無く、というか出来るのかさえガリィ自身知らなかったのだが食べてみると中々に『美味い』と感じた。
そこから内心そこそこ気に入っていた『人間の食べ物』は言い訳としては充分足り得るものになっていた。
たった二日で青年の性格を自然と理解している事に付いてはここにドールズがいなくて心底幸運なのだが、双方それに気付く事が無いのはある意味運が良かったと言える。
「いやー照れるなあ」
「なんかムカつくわね……」
ムカつくと言いつつも青年がわざわざ開けたスペースにちゃんと寝転がってくる辺りやはり無自覚にツンデレである。
「んじゃおやすみー」
「はいはい」
ガリィは青年の家に来るまで布団という物を知らなかった、知る必要性が無かった。
だからどこかに寝そべって休息を取るなんて言う行為には二日目ではまだ慣れきれていなかった。
もちろん全く知らない文化を受け入れてそこに即座に馴染める様な図太い人間は目の前の青年を除いてそうそうはいないだろうが。
(この変な浮いてる感じが慣れないのよねぇ……まあ、悪い気はしないけど)
まるで今この青年と共にいる自分と同じみたいだ、と考えていたかは定かではないが、ガリィはそれから暫くして『寝て』いた。
今まで誰も見た事の無い、穏やかな笑みで。
そして唯一それを独占出来る権利を持っていた青年は、やはりというべきか爆睡していたのだった。
「ビバ! 遊園地!」
「アンタはこどもかっつーの」
時刻は午前十時、平日で少々閑散としている遊園地に青年の声が響いた。
青年的には何も考えずに日取りを決めていたが、前日遊園地までのルートの一部でシンフォギア装者とドールズがかち合っていた事を二人は知らない。
「いーじゃんいーじゃん! 楽しめる時にバーっと楽しもうぜ!」
「……楽しめる時に、ねぇ」
知らないとはいえガリィは何となく察してはいるのか、何とも言えないといった顔付きになる。
――『楽しめる時』がいつまで続くか分からない、と思っているかはさておきガリィが当初の目的を忘れた事などありはしない。
この『今日』という日が終わり次第ひっそりと消えようと思っていたのだから。
戦いに巻き込まない事こそが、彼女の、ガリィの考える最大にして唯一の恩返しだと思っていたのだから。
何だかんだと青年が決めた最後の日取りまでは律儀に付き合い、少なからず青年に『恩』を感じていたのかとガリィが思考し一瞬目頭を押さえかけたのは言うまでもないだろう。
「うぇぇ……目が回る…気持ち悪いぃぃぃ……」
「最初乗り気だった癖に情けないわねぇ……」
朝のテンションそのままに青年が先導していたものの、昼前の〆に乗った日本有数と言われる速さと落差が持ち味のジェットコースターに乗ったせいで伸びていた。
そして青年がジェットコースター好きといえばそうでもなく、反対に本来高所恐怖症・乗り物酔いの気がある為に通常なら絶対乗らないのだが、ガリィとのデートでテンションが上がりまくっていた青年はそんな重要な事をすっかり忘れ率先して乗ってしまったのだ、やはり青年は馬鹿であった。
そしてそんな青年が「あ、これ自分が一番苦手なやつじゃね?」と気付いたのは爆走☆ジェットスカイウルトラインフィニティとか無駄に厨二病じみた名前のジェットコースターが急降下を始める瞬間であり、お察しの通り既に手遅れだったのは言うまでもない。
「いや~つい浮かれちゃったみたいで嫌いなものだとはつゆ知らず……うぷっ」
「どこまでバカなのよアンタは」
「あはは……君といると楽しくて浮かれちゃってついつい」
ベンチで情けなく寝転がる青年を横目に、それでいて少し楽しげなガリィの姿はどことなくお似合いであった。
勿論それを言う野暮な人間は存在しないが。
「ふーん、そっ」
素っ気なく反応しながらも暫く心地よい無言が続く。
興味無さげに横目に青年を見ていたガリィだが、余りにも酔いからの回復が遅い青年を見かねたのか溜め息を付く。
そして無言で青年の顔をアイアンクローし自分へと引き寄せる。
「ぐぇっ……ちょ、ギブギブ……」
引き摺られる途中で小刻みにプロレスラーのギブアップ合図の様なタップをする青年とガリィ、傍から見れば先程までのちょっと良い雰囲気は消えていた。
「……ちょっとだけ、サービスしてやるんだからさっさと治しなさい。この貧弱馬鹿」
「へっ? ……って、こ、これはッ……!? あの伝説の……!!」
青年の首が一瞬浮いた……かと思えば後頭部と首元にひんやりとした感触が伝わってくるのを覚えたのか少し驚いたリアクションの後に、顔はあからさまな驚愕に変わっていった。
それもそのはずだろう、何せガリィのとった行動は――
「ひ、膝枕ですとぉぉ!?」
膝枕である。
今まで全く
「うっさいわね大人しくしなさいよ……それとも口の中にアルカノイズの結晶ぶち込まれる方がお好きかしら?」
「いやーそりゃビックリするよ、今までツンツンしてた君が膝枕してくれるなんて……めっちゃ嬉しいもん」
人間とは違うドールの身体故、ちょっと固いだとか冷たいとかはあるがそんなもの年中脳内お花畑の青年には関係の無い事であった。
『惚れ込んだ女の子が膝枕してくれるまでに仲良くなった』
その事実だけが脳内を駆け巡っている単純脳は、暫くの間幸せそうな顔をしながら静かに目を瞑り、彼女の膝を堪能したという。
そんな異質な単純脳を見つめるガリィは、呆れた様に、それでいて無意識の内に穏やかな顔をしていた。
そしてその幸せな時間は、爆発音と悲鳴によって掻き消された。
「はぇ? 花火?」
「んな訳あるか!!」
すっかり寝ていた青年は寝ぼけているのか素なのか、爆発音を花火と勘違いしていたがそんな訳は無い。
そもそも悲鳴が聞こえてる時点で違和感に気付けというツッコミが必要な青年は多分危機感の欠けらも無い早死にするタイプだろう。
ガリィは軽快にツッコミを入れていたが誰が何をやっているか……など、察していた。
「うわぁ……アルカ?ノイズが遊園地闊歩してる……」
「…………合ってるわよ」
遊園地にアルカノイズが闊歩する様は見事なまでの地獄絵図、ではあるが一般人を追い回したりはするが消し炭にはしていない。
そしてそれを高速排除するシンフォギア奏者達……という奇妙な図式が出来上がっていた。
「そういやさ」
「何よ」
「もしかして今殺り合ってんの、君の家族いたりする?」
流石の青年でもシンフォギア奏者とガリィが対立関係にあるのは覚えている、その為にガリィの仲間であるキャロル一行が奏者と戦っている、というのは理解出来ていた。
「…………家族かどうかはさておき、マスターとかならいるわよ」
「……なあ」
だからこそ青年は、疑問をぶつけた。
「なんで君達はこういう事してんの?」
「なんで、ねぇ……」
青年には、双方ボロボロになってまで戦う理由が分からなかった。
奏者サイドも分かってはいないが。
双方の誰しもに『家族』がいる事を感じていたからこそ、青年は疑問に感じざるを得なかった。
「マスターはね……理不尽に家族を、お父さんを殺されたの」
ゆっくりと声を紡ぐガリィ。
怒号と悲鳴と爆発音響く喧騒の中で紡がれるそれには、今まで見た事の無い様な悲しそうな顔をしたガリィがいた。
「だから、生き返らせる為にシンフォギアを錬金の触媒に使う訳。それがあれば人間を生き返らせるとかいう禁術のヤツでも身体が欠損するだけらしいから」
「……止めようとはしなかったの?」
「無理よ。アタシらはマスターには逆らえないし、何より笑顔でいてもらいたいのよ……ま、見た事無いんだけど」
おどけた様に笑う彼女に、元気は無かった。
性根が腐っていると自他共に言われ続けたガリィの本性は、キャロルが本当は寂しがり屋で優しい性格の部分を間違えて組み込んでしまっているのかもしれない。
「なるほどねー……君はそのマスターの笑顔が見たかったからやってた訳だ」
「そ、そうよ悪い訳!?」
今更になって何を言っているんだと正気に返ったガリィは捲し立てる様に逆ギレしながら肯定する、何とも器用である。
「いんや。多分他の子もおんなじ気持ちだろうしな……って思うと今やってる事ってなーんか違う気がする!」
「え……?」
毎度毎度無能が歩いている様な感じの青年が核心を付いたからか、不意を突かれたガリィが振り返る。
「カンだけど!!」
「ちょっと感心したアタシがバカだったわ!!」
否、やはりバカはバカであった。
「まー、という事でちょっち止めてくるわ」
「は?」
そして世界一のバカは、物騒な魔法とか拳と拳がかち合い起こる衝撃波の中、勢いと直感だけで
「は?」
取り残されたガリィは、ただひたすらにそう言うより他無かった。
シリアスが書きたかった(なお)
やっぱりギャグじゃないか!!
あ、次回最終回(次こそ詐欺じゃないはす)