ウルトラゼロストーリー ~もうひとつの可能性~   作:字だけを載せる。

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知っているだろうか、かつて銀河を守ってくれたセブンの息子のことを。
ウルトラマンゼロ――――――――すべての宇宙の平和を守るために戦っている、光の戦士だ。
炎の戦士、グレンファイヤー。鏡の騎士、ミラーナイト。鋼鉄の兄弟、ジャンボットとジャンナイン。彼らと結成しているウルティメイトフォースゼロは、時空を超えて人々を救いに行く。

そして今、新たな時空での伝説が語られる。


第1話

プロローグ 

 

暗闇から、声が聞こえる。

誰なのか、何をいっているのかは分からない。ただ、聞き覚えがあるような気がした。

―――――誰だ?

自分が発した言葉により、声が一瞬止む。

が、次の瞬間。

 

「ゼロ」

 

後ろから耳元に、名前をささやかれた。

背筋に、ぞくっとするような悪寒が走る。

震えながら、ゆっくりと振り向いた。

そこにいたのは――――――。

 

 

 

1

「うわああああああ!!」

ゼロは叫びながら勢いよく体を起こした。

「うおおおっ!?」

近くにいたグレンファイヤーが思いきり驚き、大声を出してその場から飛びのく。今までのが夢だったと気がついたゼロは、ようやく我を取り戻し、荒い息を整えた。

「ああ…びっくりした」

「いやそれオレのセリフ!!」

グレンファイヤーがツッコミを入れ、ため息をつきながらあぐらをかいた。

「なんだいなんだいゼロちゃん、悪い夢でも見たってか」

「ああ…」

ゼロが説明しようとすると、さっきの夢が頭の中にフラッシュバックした。ぐっと言葉を飲み込み、相手から顔をそらす。

「なんだよ、聞かせろよ」

その顔を、グレンファイヤーが覗きこむ。

ゼロはとっさに、嘘をついた。

「…モロボシ君がでかくなった夢を見た」

「えー! なんだよそれ、オレも見たかった…つか、モロボシ君じゃねぇって」

「俺達より数倍もでかくなってさ、踏み潰されそうになっちまったんだよ」

こんなだぜ、と腕を大きく広げる。

「どんだけでかくなったんだよ、あいつ」

ゲラゲラと笑う彼を見て、ゼロはさらに話を大きくしていく。

「いやホントなんだって、俺ぺっちゃんこになるところだったんだからな」

「どうかしたんですか」

ミラーナイトがピグモンを片手に乗せながら、こちらへ歩いてきた。その後ろから、ジャン兄弟も姿を見せる。

「いやな、こいつ妙な夢見て飛び起きてやんの! チビ助がでかくなっちまったんだと!」

「ピーちゃんが…巨大に…」

ジャンボットが少しショックを受けたような声を出した。

「だからピーちゃんじゃねぇって。なぁチビ助」

グレンファイヤーが話しかけると、ピグモンは高い声で鳴いて答える。

「どう呼んでくれても構わねーって? だからってよ、モロボシ君はねーわ」

「なんでだよ! 親父の名前だぞ!!」

すかさずゼロが詰め寄る。グレンファイヤーも負けじとメンチを切った。

「だからその名前は、色々とアウトだっつってんの!!」

「まあまあ、落ち着いて」

ミラーナイトが二人を引き離す。

「しかし、夢というのは面白いものだな。そんな風に、普通ではあり得ないことが起きるなんて」

ジャンナインが感心したように言う。

 

…普通では、あり得ないことが起こる。

 

彼の言葉が、ゼロの頭の中で繰り返された。

あれは夢だ。

ゼロは軽く首を振った。

普通ではあり得ないことが起こった、ただの夢だ。

そうでなかったら俺は―――。

 

「でもそうなったら、運ぶのが大変ですね」

ミラーナイトの声で、ゼロは現実に引き戻される。

「何いってんだよ、ただの夢だろ。本気で考えるようなことでもねーって」

「ただ、可能性があると言っただけです。なんにせよ、絶対あり得ないなんてことはないのですから」

「はいはい、わざわざありがとさん! 真面目なミラーちゃん」

相手の堅苦しさはうんざり、というようにグレンファイヤーは茶化して答えた。

「よし、そろそろ行くか」

そんな彼らをよそに、ゼロは軽く伸びをする。

「おっ? もう行っちまうのかよ。さっき帰ってきたばっかじゃねぇか」

グレンファイヤーが、頭の後ろで腕を組んで聞いてくる。ゼロはへへッ、と親指で口の上を擦る。

「とりあえず軽く休めたからな、もう充分だ」

「無理は禁物ですよ、ゼロ」

ミラーナイトが困ったようにいう。ピグモンも、心配そうに鳴いている。

「大丈夫だって! 俺を誰だと思ってんだよ」

胸をドン、と叩き得意気にいうが、今度はジャン兄弟も口を挟んできた。

「とはいえ、ゼロ。もう少しペースをおとした方がいいんじゃないのか」

「確かに君のことをここでみることが、少なくなった気がするな」

ゼロはやれやれと首を振る。

「なんだよお前ら…俺ってそんなに信用ねえか?」

「バーカ、心配してんだよ」

ゼロはグレンファイヤーに軽く小突かれる。

「ま、そんなにいうなら止めねえけどさ。気を付けていってこいよ」

バン、と背中を叩かれる。少しよろけるが、ゼロは送り出してもらったことにちょっとした喜びを感じた。

「ああ、行ってくるぜ!」

 

その時。

 

すさまじい音と共に、基地の床が傾き始める。

「なっ…」

「なんだぁ!?」

全員、床から飛び上がる。

「上だ!」

ジャンボットの声を聞き上を見ると、基地の入り口近くに、黒い渦を巻く何かが出現している。

「あれは…ワームホール!? 何故あんなところに!」

ミラーナイトが驚いたように声を上げる。

「お、おい、どうすんだよあれ、なんか近付いてきてねぇか!?」

グレンファイヤーがワームホールを指をさし、焦ったように全員の顔を見る。

と同時に、全員の体に衝撃が走った。

「!!」

そのまま、床や壁に叩きつけられる。

「いっ! …てーな、クソ!! 何が起こった!!」

悪態を付くグレンファイヤーの隣で、ピグモンの周りにディフェンスミラーを張っているミラーナイトが答えた。

「…おそらく、この基地ごとワームホールに突入したんでしょう。そのため加速し、とてつもないGが我々の体に…」

起き上がろうとするも、あまりの加速度に動くこともままならない。

「畜生!! ふざけんな!! このまま連れてかれてたまるかよ!!」

必死に起き上がろうと抵抗する、グレンファイヤー。

「グレン、動かないで。今の状況で、体力を減らすのはあまり良い考えではありません」

ミラーナイトは冷静にたしなめる。

「ワームホールは、さっきのようにピンポイントで現れるようなものではないはず。つまり、あれは意図して作られたと思われます」

「だからなんだよ!!」

「…どこかの誰かが、私たちをわざわざこの基地ごとご招待したということですよ」

「…んだとぉ…!?」

わなわなと震えるグレンファイヤー。

「こんな荒療治でお誘いしてくるってことは、少なくとも好意的な連中じゃあねーだろうな」

ゼロが、吐き捨てるように呟く。

「上等だ…会場に着いたら、今までにない最高のパーティを味わってもらうぜ!!」

力強い彼の声は、基地全体に響いた。

 

 

 

2

「うおっ…と」

ようやく加速が止まり、起き上がれるようになった。勢いよくゼロが立ち上がり、全員のところへ足を運ぶ。

「お前ら、大丈夫か!」

「オレは平気だぜ、ただちょいと肩がこっちまったかな」

グレンファイヤーは首を回し、あーあとため息をついた。

「私たちも大丈夫だ。特に問題はない」

ジャンボットがジャンナインを立ち上がらせながら、頷く。

「そうか、よかった。ミラーナイト、お前は…」

三人の無事を確認したゼロがミラーナイトの方を向くと、無傷のピグモンを片手に持っていた。

「私も平気です。そしてもちろん、彼も」

ピグモンは鳴き声でミラーナイトに話しかけている。どうやらお礼を言っているようだ。

二人が話しているのを見ながら、ゼロは思い立ったように飛び上がる。

「どこへ行くんだ、ゼロ」

ジャンナインが尋ねると彼は振り返らずに答える。

「ちょっと様子を見てくる。すぐ戻るからな!」

「待て! 未知の領域での単独行動は、危険すぎる!!」

ジャンボットが止めようと声をかけるが、すでに彼は基地の外へと飛び去ってしまった。

「あーりゃりゃ、相当頭にキテんぞあいつ」

呆れたように首を振り、グレンファイヤーが彼が飛んでいった方を見上げていると、すぐ隣から猛スピードで一人の影が通りすぎていった。

「兄さん…」

ジャンナインは小声で呟き、上を見つめる。その近くでやれやれ、とグレンファイヤーが腰をおろした。

「ゼロちゃんは心配性のあいつに任せといて、とりあえずオレたちはここで待つとすっか」

「ええ、そうしましょう」

ミラーナイトは、ゆっくりとピグモンを床に下ろした。

すると。

「おい!」

突如、基地に大声が響く。

三人は、声がした方を向いた。ゼロとジャンボットが飛び出していった基地の入り口に、人影のようなものが見える。だが、誰なのかはよく見えなかった。

「大丈夫か!」

人影が急いで降りてくる。かなり心配をしているらしい。

「おうおう、どこ見りゃ大丈夫だって思…う…」

グレンファイヤーは皮肉めいたことを返そうとしたが、だんだん見えてきた相手の姿に言葉を失った。

「!?」

近付いてきた相手も、三人の姿を確認して言葉を失う。そして、高速で向かってきた。

「何故マイティベースに、貴様らがいる!!」

 

「ここは…」

ゼロは辺りを見回し、ゆっくりと地に降り立つ。その荒野には、見覚えがあった。

「怪獣墓場か。なんでまたここに…」

「それは、私がお答えしましょう」

聞きなれた声に振り向くと、そこに立っていたのは。

「…ミラー、ナイト…?」

「長旅お疲れさまでした。少々乱暴だったことをお許しください」

相手は一礼をする。ゼロは混乱した。

「…お前、まさか…!!」

「あなたにここまで来ていただいたのには、ある理由がありました」

うまく言葉が出てこないゼロに、相手は近付いてくる。

「あなたは、パラレルワールドというものをご存知でしょうか?」

「…マルチバースのことか?」

「ええ、そうとも言いますね」

フフッと笑いながら、相手はゼロの隣を通り過ぎていく。

「多次元宇宙…そこは、あらゆる可能性が存在する世界。選択されなかった世界が、そこには広がっています。そう、あなたのように」

相手は、ゼロに指をさした。

「大いなる力を秘めた陛下がいたとしても、何らおかしくはないのです」

陛下――――?

心臓が高鳴る。

「ちょっと待て…陛下って、まさか」

ゼロが相手に近づこうとすると、誰かに腕を力強くつかまれた。バッと振り向くと、そこには見覚えのあるロボットが立っている。

「動くな」

「ジャンナイン!?」

「拘束する」

ロボットは、ゼロの体にガッシリとしがみついた。

「な、何を!!」

「あーあー、暴れんなって。そいつ、なに言っても聞かねーから」

必死に暴れていると、またしても聞き覚えのある声がした。

「こいつ、兄貴の言うことぐらいしか聞かねぇんだよなー」

「グレンファイヤーまで…!!」

「おっと、オレのこと知ってんだってよ! やっぱりあっちの時空でも有名なのかね! それとも仲間だったり?」

へへ、と嬉しそうに頭を掻きあげる。同時に、黒い炎が舞い上がった。

「グレン。相手は別時空のあの方だとしても、その言葉遣いはどうにかしなさい」

「へいへーい、悪かったって」

会話を聞いている限り、いつもの彼ら…知っている二人だ。さっきまで行動を共にしていた、いつもの…。

「俺をどうするつもりだ!!」

ゼロは、二人に叫ぶ。

「こんな御大層なやり方で、一体何を考えてやがる!!」

「あの方に、捧げる」

後ろから、ロボットの声がする。

「あの方って…」

「そんな焦んなくてもいいぜ、もうそろそろ来るからよ」

その言葉が終わらないうちに、後ろからすさまじい音が響いてきた。地面が大きく揺れ、土ぼこりが立つ。

「おかえりなさい、陛下」

「…ああ」

聞こえてきた声で、背筋にぞくっとするような悪寒が走った。

あの夢が、またフラッシュバックする。

「どこいってたんだよ、陛下」

「邪魔なものを消してきた。それだけだ」

――――――そんな、

「陛下、ご要望の物です」

「ありがとな」

――――――まさか。

声は段々と近付いてきて、彼の肩にゆっくりと手を乗せた。

「よう」

震えながら、振り向く。

「会いたかったぜ、ゼロ」

彼の目に映りこんだのは、黒いオーラをまとった、一人のウルトラマン。

 

そう、自分自身だった。

 

 

 

3

「そぉら!!」

グレンファイヤーが、炎をまとった拳で相手を殴り抜ける。

「ぐっ!!」

攻撃を受けた相手は低く呻きながらも、それを耐えた。

「やっぱり強ぇな、てめーは!」

さらに追撃を放ったが、上手くすり抜けられてしまう。相手は上へと飛び上がり、わなわなと震えた。

「貴様ら…どういうつもりだ」

「あぁ!? 何がだよ!」

グレンファイヤーがイラついたように言うと、相手は叫んだ。

「俺様の仲間はどこへやりやがった!!」

「はぁ!?」

そのまま急降下してきた相手は、グレンファイヤーに重い一撃を放つ。

「どわぁっ!!」

「グレン!!」

あまりの衝撃で吹っ飛ばされた彼を、ミラーナイトが受け止める。グレンファイヤーは「悪い」と軽く謝ると、すぐさま離れて相手に向かって指をさす。

「おいてめぇ!! なんだってんだ、さっきっから! 訳のわからねーことばっかり言いやがってよ!!」

「訳が、わからないだと!?」

相手は拳を握ると、思いきり腕を横に振る。

「それはこっちのセリフだ!! ここは俺様のマイティベースだ…それをよくも!!」

「だーかーらぁ!! そーゆーのが訳わかんねぇって言ってんだよ!! ここはオレらの基地だってぇの!!」

噛みつくように喧嘩をする二人の間に、ミラーナイトが静かに入ってきた。

「落ち着きなさい、グレン」

「邪魔すんじゃねぇよミラーナイト!! こいつにな、どんだけオレたちが酷い目に遭わされたか…」

「いいから、黙りなさい」

彼の怒ったような低い声に、グレンファイヤーは何か言おうとするが、地面を蹴り飛ばして黙りこんだ。

改めてミラーナイトは目の前の相手に向き直る。

「…初めまして。私はミラーナイトと言います」

「あ?」

彼の礼儀正しい様子に、相手はこちらをにらみつけてきた。

「何が初めましてだ、何度も会ってるだろうが」

「ええ、私もそうです。ですが…」

ミラーナイトは相手の姿をじっくりと眺めた。

「そのような邪悪なオーラが感じられないあなたとは、初めてお会いする気がしました」

「…何だと?」

そう、彼の姿は目につくあのどす黒い体色ではなかったのだ。確かに彼の目付きは鋭く、所々黒いラインが入っている。

が、何かが違う。根本的な、何かが。

「僕もそう思う」

ジャンナインが、ミラーナイトに賛同した。

「彼からは、闇の波動が感じられない」

「じ、じゃあなんだってんだ、こいつ。べリアルじゃねぇのかよ!?」

べリアルと呼んだ相手を指差しながら、グレンファイヤーが尋ねる。

「いえ、べリアルであることは変わらないでしょう。ですが、おそらく…別の時空。多次元宇宙の、彼かと」

「マジかよ!!」

「あのワームホールが私たちを他の時空に飛ばした、と考えれば何らおかしくはないはずです」

ミラーナイトが答えていると、今まで隠れていたピグモンが三人の間を走り抜けていった。

「お、おい! チビ助!!」

大声で呼ぶが、彼はそのまま目の前に立っていた相手の足に嬉しそうにすり寄ってしまった。

すり寄られた相手はしゃがみこみ、小声で語りかける。

「あっち行ってろ、怪我するぞ」

だが、ピグモンは離れようとしない。呆気にとられるグレンファイヤー。

「危険じゃねえっていうのか…相手は、あのべリアルだぜ…?」

「やはり、彼は僕たちの知っているべリアルではないようだ」

ジャンナインの言葉に、ミラーナイトが頷く。そして、ゆっくりと相手に近付き一礼した。

「いきなり不躾な真似を、失礼いたしました」

「いや…」

相手はミラーナイトの方を見上げた。

「よくよく見てみりゃ、お前らからいつものヘドが出るような…いつものオーラを感じられねぇ」

考え込むように、尖った指をあごに当てた。

「お前らは、何者だ?」

「私たちは…」

ミラーナイトが言葉を返そうとしたとき、上から大量のミサイルが降ってきた。

「!?」

全員、防御の体制に入る。

「何しやがんだ、コラァ!! ファイヤァァ…!!」

グレンファイヤーがいち早くミサイルが飛んできた方に、必殺技を放とうとする。

「兄さん!!」

が、ジャンナインの言葉にその手を止めた。

「は!? や、焼き鳥!?」

かなり驚いたのか、転びそうになる。

煙が段々と晴れていき、そこから現れたのは、確かに…。

「おい、何してんだよ焼き鳥! ゼロはどうした、ゼロは!」

怒ったように言うと、相手は淡々と返してくる。

「そちらこそ、何をしている。我々の任務はこんなところでそいつと遊んでいることではないはずだ」

その返答に、頭が混乱したグレンファイヤー。

「な…何の話をしてんだ、お前…」

「…しっかりしてください、べリアル!」

その後ろで、焦ったように呼び掛けるミラーナイト。

振り向くと、ピグモンに覆い被さるように彼が倒れていた。どうやら、身を呈してピグモンを守ろうとしたらしい。

ミラーナイトが揺さぶっても、当たりどころが悪かったらしく動けないようだ。ピグモンは心配そうに彼の下で鳴いている。

「とにかく、手当てを」

肩を貸そうとすると、またもや上からミサイルが降ってきた。

「兄さん…何故…!?」

ジャンナインはショックのあまり、動けないでいた。

「バカ!! 何してんだ、行くぞ!!」

立ち尽くす彼の腕をつかみ、ピグモンを抱えて走り出したグレンファイヤー。ミラーナイトもそれに続く。

逃げ出す彼らを見て、ミサイルをさらに飛ばそうとしたが、その手を止めた。

「彼らは、もしや…そうか」

納得したかのように頷くと、その場から離れていった。

 

 

 

4

「あなたを陛下の『糧』にするため、わざわざここへ呼び寄せたのですよ」

黒鏡の騎士が淡々とゼロへ説明する。

「…か、『糧』…だと…!?」

訳がわからず、聞き返す。

「そう、我らが陛下…いえ、ウルトラマンゼロは強大な力を持つ戦士です。それはあなたも同じこと…」

陛下と呼ばれたもう一人の自分は、低く笑った。彼は陛下に一礼し、話を続ける。

「陛下は力を求めていました。これ以上にない力を。この宇宙にはない、素晴らしい力を…ですから、こう考えたのです」

黒い彼は、ゼロの方に向き直した。

 

「自分と同じ性質をもった戦士から、力を奪い取ってしまおうと」

 

「何!?」

驚くゼロに、ブラックロボが答える。

「貴様が使える能力ならば、我々の陛下も同じ能力を使えると言うこと。つまり貴様を『糧』とすれば、陛下は更なる力を持つことができると推測した」

「そうそう、そゆことね。説明ごくろうさんと」

黒炎の戦士が話に割り込むように、ゼロの肩を組んでくる。

「なあ、きれいなゼロちゃんよー。お前さん、スゲー力持ってるらしいじゃないの」

ゼロの耳元に手を当てながら、小声で相手に語りかける。

「そいつをさ、がっぽり寄越してくれねーかなぁー…って思ってな?」

「誰がやるか!!」

「おーおー、意気がっちゃって。怖いねー、こっちの奴も大概だぜ」

ゆっくり肩から腕を外されたと思うと、思いきり腹をぶん殴られる。

「がっ! がはっ…!!」

咳き込むゼロに、連続攻撃を加える黒炎の戦士。

「ぐあっ!!」

「ほらほらどうした! てめーの力はそんなもんか!!」

「くっそ…なめんじゃ、ねええええええ!!」

頭に来たゼロは、その場で高速回転し始め、ブラックロボを引き剥がした。

「お前ら!! さっきから手加減してりゃあ、いい気になりやがって!!」

手の平と拳をバシッと合わせると、戦闘体制に入った。

「覚悟はできてるんだろうな!!」

「覚悟? ハッ…」

相手の言葉に、ダークゼロが小さく笑った。

「…それをするのはてめぇだ、ゼロ」

その声を皮切りに、手下の三人がこちらへ向かってくる。そして、四方八方から攻撃を仕掛けてきた。

手加減のないそのやり方に、ゼロは強く自分に言い聞かせる。

 

こいつらは、仲間じゃない。

例え、性格が同じだとしても。

例え、姿が同じとしても。

…例え、他の時空の俺の仲間だとしても。

 

「ファイヤァァァア!! フラァ――――――ッシュ!!」

すぐ近くから聞こえてきた声に気付き、放たれた黒い炎のエネルギー弾をワイドゼロショットで破壊する。

「シルバークロス!!」

闇で作られた十字架が複数飛んできたが、これを上手く避ける。しかしその先には、ジャンバスターを放とうとしているロボットが待ち構えていた。

「くっ!」

ゼロは下へと軌道を変える。

「待て」

急降下していく彼をロックオンし、猛スピードで追いかけ始めた。さらに他の二人も追跡を始め、全員で後ろから総攻撃を開始する。

いくらパラレルワールドといえども、彼らが強いことは変わらないようだ。

(このままじゃ、確実に…)

やはり、彼らをこの手にかけなくてはいけないのだろうか。

…そう、あの時のように。

思い出したくもない情景がよみがえったゼロは、拳を固く握った。

 

(…そんなこと…そんなこと、できる訳ねぇだろうが!!)

 

「ストロングコロナ、ゼロ!!」

思いを断ち切るかのようにタイプチェンジを行ったゼロは、真っ赤な太陽のように赤く輝いた。

「ガルネイト、バスタ―――――――ッ!!」

追ってくる三人に向かって、高熱のエネルギー弾を飛ばす。

「!」

三人はそれを間一髪で避ける。ゼロはその隙に、黒い自分自身の方へ雄叫びをあげながら向かっていく。

「うおおぉぉぉぉぉぉ――――――ッ!!!!」

ダークゼロは向かってくる光の自分に気付き、少し後ずさった。

「てめーをブッ飛ばして、全部終わらせてやるぜ!!」

腕に炎をまとわせ、さらに速く相手へと突撃していく。

「陛下!!」

三人が助けに向かおうとするが、もう間に合わない。

ゼロの炎の拳は、相手の胸のカラータイマーに直撃した。辺り一面に、炎の柱が立ち上がる。

 

 

 

 

しかし。

 

 

 

 

相手は、苦しむこともなく、倒れることもなかった。

「…クックックッ…」

ただ、笑っていた。とても楽しげに、相手を馬鹿にするように、ゼロに向かって笑っていたのだ。

「な、何がおかしい…」

そこまで言ったとき、ゼロは自分の手に異変を感じた。見ると、相手の胸に当てている拳から色が無くなっていく。

「う、うわあああぁぁ!!」

急いで相手から離れようとするが、相手にカラータイマーを掴まれた。

「…俺に勝とうなんざ、2万年早いぜ」

彼の言葉を合図に、ゼロの力がすさまじい早さで吸収されていく。同時に、体色がどんどん灰色になっていく。しばらくすると、ダークゼロの体の周りにはバチバチと火花が散るような音が鳴り出した。

「う…あ…」

叫ぶ暇もなく、どんどん力が無くなっていく。

そしてついに何かが割れた音を立て、ゼロは元の姿に戻ってしまった。体の色はタイプチェンジが解かれたことにより帰ってきたが、体力は奪われたままだ。しかし強大な力を得たもう一人のゼロは、赤いオーラをまとい、その周りには炎が舞っている。

「…これがこいつの力か。フン、悪くない」

自分の腕に炎をまとわせて満足そうに言うと、ぐったりとしているゼロへ目を向ける。

「試してみるか」

大きく拳が振り上げられた、その時。

「ゼロ!!」

何かの発射音と共に、上から聞き覚えのある声がする。

…また、新手だろうか。

朦朧とする意識の中でゼロが見たのは、こちらへ飛んでくる大量のミサイルだった。

 

 

 

5

そのミサイルは、全弾ダークゼロに向かっていく。

「!!」

彼はそれを避けるためもう一人の自分から手を離し、飛び上がった。

その際に体を支えていた手がなくなり、地面に横たわったゼロ。だが、砂ぼこりを立てただけでピクリとも動かない。

「ゼロ! 返事をしろ、ゼロ!!」

ジャンボットが急いで地上に降り立ち、動かない相手を揺さぶる。返事はない。カラータイマーを見ると、光が失われていた。

「ゼロ!!」

必死に呼び掛ける彼の周りに、三人の黒い戦士が降り立つ。

「な…!?」

初めて見る黒い彼らに、何も知らないジャンボットはうろたえるしかなかった。

「あなたは…こちら側の彼ではありませんね」

手刀を構える相手は、冷酷に言い放った。隣にいた黒炎の戦士が、頭をかきあげ、黒い炎を巻き上げた。

「なーんだ、こいつこっちの焼き鳥じゃねぇのか…なら、スクラップにしちまってもいいよな!」

「邪魔者は、排除する」

自分の弟に似たブラックロボが、赤く目を光らせる。その後ろには黒い姿のゼロが、こちらを見物するように眺めていた。

「一体…どういう…!?」

頭が整理できず、ジリジリと詰め寄ってくる三人に、どうすることもできないジャンボット。

 

「…ろ…」

 

その瞬間、小さな声が聞こえた。ハッとして、ゼロの方を向く。

「ゼロ!?」

「…早、く…」

ゼロは震える手で、ジャンボットの腕をつかむ。その握力は、もうほとんど皆無に等しかった。

「…逃げ…て、くれ…」

彼の手を取ろうとすると、つかまれることなくむなしく地面に落下した。目と額の光が、ゆっくりと消えていく。

「…嘘だ、ゼロ…目を覚ませ、ゼロ! ゼロ―――――ッ!!」

彼はもう、何も言わなかった。

返ってくるのは、沈黙。それだけだった。

これ以上声をかけても無駄だと思ったのか、ジャンボットはゼロの体を大事そうに担ぐ。

「あーあ。結構もろいんだな、そっちのゼロちゃんは」

その様子を愉快そうにみては、黒炎の戦士は指をポキポキと鳴らした。

「逃がしゃしねーぜ、焼き鳥。まだ全部の力を奪ってねーからな」

「…何が起こっているかは分からないが、貴様らが敵であることは確実だな」

ジャンボットはうつむいたまま、立ち上がる。

「だからなんだよ、たった一人でそいつの仇でもとるのか?」

バカにするように首をかしげる相手に、ジャンボットは叫ぶように言い放った。

「…ゼロは逃げろといった!! それに従わないほど、私はバカじゃない!!」

そのまま、超スピードで相手に突っ込んでいく。

「うおっとぉ!?」

まさかこちらへ来ると思っていなかったのか、なんとかギリギリのところで突進をかわす。体制を立て直すと、ジャンボットはもう空の彼方へと小さくなっていった。

「…っざけんなよ、この野郎!!」

すぐ追いかけようとするが、目の前に手を出される。

「邪魔すんのか、てめぇ!!」

「今は逃がしておいていいでしょう。力を吸収するには、彼自身タイプチェンジを行う方が好都合です。きっと、すぐに戻ってきますよ…とっても足の早い、お仲間がいらっしゃるようですから」

「…チッ!」

彼は地面を蹴りあげると、その場にどっかりと座り込んだ。

「もう、こちらに来ていたのか」

先程飛び去った彼に酷似しているロボットが、スッと降りてきた。

「私が迎えにいくまでもなかったようだな」

「ああ、逃げられちまったけどな。とりあえずパワーは奪ったぜ。オレ様のおかげでな」

「ならいい」

「ちょっとはツッコめよ焼き鳥お前…」

二人の会話を無視して、黒鏡の騎士が陛下の方へと近づく。

「陛下はこれからどうするおつもりですか」

「もちろん…」

陛下は拳をゆっくりと握る。

「…試しに行くんだよ、この力をな」

 

一方、その頃。

「…起きねぇなー」

グレンファイヤーは暇そうに地面に寝っ転がっていた。

そこは、マイティーベースの落下地点にできた洞穴。負傷者であるべリアルを抱えながら逃げられた場所が、ここだったのだ。

「それはあなたのことですか?」

ミラーナイトが皮肉を聞かせた返事を返す。

「こいつ!! こいつのこと言ってんの!!」

横たわるべリアルを両手で指差しながら、「分かるだろうが」とブツブツ文句を呟いた。

「…兄さんとゼロ、遅いな」

ジャンナインが、上を見ながら言う。

確かにすぐ帰ると言っておきながら、かなりの時間が経っている。

「…よっしゃ、いっちょオレらもいっとく?」

自分のひざを軽くはたき、グレンファイヤーが立ち上がる。

「べリアルのことをおいてけぼりにはできませんから、私はここに残ります。いってらっしゃい」

「なんだよ、つれねーなー。じゃあナインの坊主でいいや、行こうぜ!」

ポーズを決めて誘うが、彼も首を振った。

「僕は有機生命体8号の世話をしなくてはいけない」

「いやチビ助寝てるし、つかお前のネーミングセンス!!」

うわーっ、とグレンファイヤーは頭をかきむしった。

「じゃあいいよ! オレ一人で行くから!」

「ミイラ取りがミイラにならないようにしてくださいね」

「うっせー!」

すねたように顔をそらした、その時だった。

「見つけたぞ」

はっきりと、誰かの声が聞こえた。

三人は、思わず構える。

「誰だ」

ジャンナインが、外へ向かって語りかける。

「貴様らに名乗る必要はない!」

入り口に、誰かの足が入ってくる。だが、その一歩以上入ってこない。

「?」

全員がはてなマークを浮かべていると、見えていた足が勢いよく入り口から抜けた。

「ぐぬぬ…我輩にはとてもじゃないが入れんぞ、足がキツすぎる」

「なんだよ! がんばれよ、もうちょっといけば行けるって!!」

「もうちょっといったら、抜けなくなる可能性が高いのだ!!」

外の声は、ぎゃあぎゃあと騒ぎ始める。

「じゃあ、顔だけでもいいだろ! ほら!!」

「なら、貴様が行け!!」

「何でオレなんだよ!!」

「顔が細いだろう!」

レベルの低い口喧嘩に、ミラーライトがふぅ、とため息をついた。

イラついたグレンファイヤーは入り口の近くまでいくと、炎の拳で狭かった場所を無理矢理ぶち壊す。

「うわああ!?」

外にいた二人が、驚いた声を上げる。

「ほらよ、これでバッチリだろ。訳のわかんねーこといってないで、さっさと…」

顔を覗かせるとそこにいたのは、自分たちとかつて戦ったことのある二人の宇宙人だった。

「てめーら…こんなとこまで来やがったのか!!」

勢いよく洞穴から出ては、戦闘態勢に入る。その剣幕に、二人は慌てた。

「お、おい! 怒らせちまったぜ! 逃げた方がよくないか!?」

「いや! 我らが同胞、べリアルを取り戻さんことには…!!」

焦ったように二人も構えるが、グレンファイヤーがピクリと何かに気付く。

「同胞、べリアルだぁ?」

「さよう。…べリアルは我々の仲間だ…ろう?」

片方は、少し焦ったようにもう片方に話しかける。

「おう、そうそう。てか自信なくすなよ、合ってんだから!」

「そ、そうか。おちょくるのはやめろ! 名前を間違えたかと思ったではないか!!」

怒ったように相手が向けてきたハサミのような手を、グレンファイヤーはガッチリとつかんだ。

「ひっ」

相手は、短い声で叫ぶ。

「聞きてーんだけどよ…」

「は、はい…」

グレンファイヤーは奥の方で寝ているべリアルを、指差した。

「あいつって、いい奴なの?」

「は?」

 

 

 

6

…暗い。どこを向いても、真っ暗だ。

「ここは…」

どこだ、と言おうとするが目の前がいきなり明るくなった。まぶしさに思わず顔に手を当てる。

「大丈夫かよ、おい」

話しかけてきた声は、軽く頭を小突いてきた。まだ、視界がぐらついている。

「ダメだこいつ、まだ眠いってよ」

「そうか…」

相手が離れていくと、ようやくまぶしくなくなった。

少しずつ目が慣れてきたので改めて周りを見回すと、壁全体がごつごつとしている。まるでどこかの洞窟のようにみえた。

「で、どこまで話したんだっけ…べリアルの野郎が? 何の交渉したと?」

遠くから、さっきの声が聞こえてくる。

「『宇宙人和平交渉』だ。我が同胞はウルトラマンでありながら、敵である侵略型宇宙人と次々に条約を結んでだな」

「はぁー、あの野郎が交渉だってよ! ミラーちゃん、どう思う?」

ミラーちゃん。

その名前の呼び方に、何かが頭のなかに引っ掛かりを感じる。

…もしや。

「ミラーナイトか!!」

バッと起きあがると、その場にいた全員がビクッと体を震わせた。ピグモンも、飛び起きる。

「はい、そうですが…おはようございます。元気そうですね」

落ち着いた声で話しかけてきたのは、確かにミラーナイトだ。だが、何かが違うような…。

「我が同胞! よくぞ帰ってきた!」

「大丈夫かよ、おい!」

違和感に首をかしげていると、見慣れた仲間がバタバタとこちらへやってきた。

「ヴィラニアス…グロッケン」

「無理して出てくからこうなんだろ!! 帰りが遅いから探しにきたんだよ!!」

グロッケンと呼ばれた宇宙人が、泣きそうな声でべリアルにしがみついた。

「いっつも一人で抱え込んで! 心配させんなよぉ! もぉぉ~!!」

「………」

とりあえず肩を軽くポンポンと叩いておく。それを見た炎の戦士が、腕を組みながらボソリと呟く。

「あいつの言葉、今ここにいないあのバカにぶん投げてやりてぇな」

「全くだな」

ロボットがその意見に賛同する。鏡の騎士も、フフッと笑って頷いていた。

そうだ、彼らは。

べリアルは、ようやく気を失う前の記憶を思い出した。

何か話そうとすると、下から鳴き声が聞こえた。見ると、そこには先程の大声で起きたピグモンが、手を大きく振っている。

「そいつ、お前が倒れてからずっと隣にいたぜ」

「…そうか」

べリアルは、そんな彼を優しく撫でた。嬉しそうに、ピグモンが声をあげる。

「いやでも、ほんと…」

炎の戦士が、こっちに向かって歩いてきた。

「お前、べリアル…なんだよなぁ」

「だったらなんだ」

「いやぁ、こっちの話。なーんかスカッとしねぇなあ、こう、いつもだったらほら、こう…」

なんとかジェスチャーで伝えようとするが、諦めたように首を振って座りこむ。その様子を見て、鏡の騎士が話し始める。

「…先程は敵の襲撃で申し上げられませんでしたが、我々はワームホールに吸い込まれ、基地ごとと迷い混んでしまったのです。この世界…私たちにとっては、マルチバースとなるのでしょうね」

「多次元宇宙か」

べリアルはようやく、相手への違和感を正体を知ることができた。

「ええ。ここは、私たちのいた時空とは全く別の世界。推測ですが、我々の立ち位置がこの世界において、悪にあたるのでしょう」

鏡の騎士は、ベリアルの方を向いた。

「先程現れたジャンボットがそれに当てはまると考えると、べリアル。あなたが私たちに攻撃を仕掛けてきたのも、納得がいくんです」

「そもそも、奴らに似ているお前らが悪い」

べリアルの言葉に、炎の戦士がメンチを切る。

「んだとぉ?」

それに対し鏡の騎士が、まぁまぁ、と二人の間を取り持った。

「…申し訳ありません。ですが私たちの世界にとって、あなた方は敵。すなわち我々の世界とこの世界は、表裏一体と言えるわけです」

「ほほう、なるほど…それで妙にいい子ぶったグレンファイヤーやミラーナイトが、ここにいるというわけだな」

ヴィラニアスが納得したように声をもらす。その言葉に切れたのか、地団駄を踏む炎の戦士。

「いい子ぶってねぇ!! いつもこうだよ!!」

さらに、立ち上がって騒ぎ始める。

「オレたちだってな、お前ら見てメチャクチャ驚いてんだからな!! いいか、あっちの世界じゃお前らは極悪人なんだぞ!」

お前も、お前もだとヴィラニアスとグロッケンが指をさされた。二人も自分のことを指差し、顔を見合わせる。

「特にべリアル!! お前はもうダメだろ!!」

べリアルにおいては、すべてを否定されてしまった。

「何がだ」

「いや、何がだ…じゃねーんだよ!! 何をクールに決めてやがる、そういう態度は変わってねぇな!!」

「…こんな世界が存在するなんて、私も考えたことがありませんでした」

じたばたと暴れる彼を見ながら鏡の騎士はそう言ったが、すぐに首を振って訂正した。

「いえ…考えたくなかった、というのが本心なのかもしれません。自分が最も恐れている未来でもありますから」

「…確かにな」

べリアルは、その考えに賛同した。どうやら思うところがあったようだ。

「誰にでも、裏はある。見ようとしないだけだ」

「…ええ。ですが、同じように表が存在します」

「誰にでも、ねぇ」

ケッ、と嫌そうな声を出すべリアル。その声に、鏡の騎士が首をかしげた時だった。

「みんな! いないのか!!」

基地の中から、一人の声が響いてきた。

「やぁっと帰ってきたな」

炎の戦士が立ち上がると、尻をはたいて土をおとす。彼はそのまま、走って出ていってしまった。

「おい、おっせぇぞ! 何してやがった!」

「誰が来たんだ?」

グロッケンは入り口を覗きこむ。

「兄さんだ」

ロボットはそう言うと、洞窟の外へと出ていってしまった。鏡の騎士もピグモンを片手に乗せ、そのあとに続く。

「きっと、ゼロも連れてきているはずです」

ゼロ、という名前に、グロッケンが慌てた。

「そ、そうか! 奴らがいるってことは、つまり奴も…」

「行くぞ」

べリアルが立ち上がり、入り口の方へ歩いていく。

「ちょっと…ま、待てよ」

グロッケンは焦ったように相手を呼び止めた。しかし、止まる気配はない。

「…同胞よ、奴に会うというのか?」

ヴィラニアスがうつむいたまま、確認するようにそう言った。べリアルは振り返り、頷く。

「ああ、物は試しだ。奴らをみる限り、俺様たちの知っているゼロじゃないはずだからな」

「しかし…」

「来たくなかったら来なくていいぜ」

その言葉に顔をあげるが、そこにはもう彼の姿はなかった。

 

基地に戻ると、ジャンボットがゼロをゆっくりと床に下ろしていた。が、彼が動く気配がなく、倒れたままだ。

「ゼロ…?」

グレンファイヤーは走って駆け寄った。他の二人も、急いでゼロの元へ向かう。

「おい、ゼロ…ゼロって呼んでんだろ!! 返事しろよ!! 何か言えよ…冗談だろ、なぁ…!!」

「すまない…私が行ったときには、もう…」

ジャンボットはうつむいたまま、悔しそうに言う。ミラーナイトはそんな彼の肩をたたく。

「あなたは、彼を連れ戻してきてくれました。それだけでも、充分です」

「ミラーナイト…」

「今は、彼を甦らせる方法を考えましょう。落ち込むのは、それからでも遅くはないはずです」

その言葉に彼は顔をあげ、頷いた。

「彼のカラータイマーが止まっていることから察するに、エネルギーをすべて失ってしまっていると思われます。それを補給できれば…」

「か、帰ってくるんだろうな!」

「…おそらくは」

ミラーナイトの答えを聞き、グレンファイヤーはゼロから手を離した。

「善は急げだ! 早くこいつを起こそうぜ!!」

「しかし、エネルギーを補給できる場所がどこにあるんだろうか…」

ジャンナインがゼロを抱えながら、疑問を口にする。

「それは…」

その質問に、全員が頭を悩ます。そんな時、後ろから声がした。

「無様だな」

「お前は…べリアル!? 何故ここに!」

素早くジャンボットが構えるが、ミラーナイトがそれを止める。

「大丈夫、彼は味方です」

その言葉に少し戸惑ったようだったが、彼は手を下ろした。

「俺様たちの星に帰れば、そんなモンいくらでもあるだろ」

軽く肩を回して飛び上がると、付いてこいと言わんばかりに手をあげた。

全員、顔を見合わせる。

「俺様たちのって…まさか」

「ええ、おそらく」

 

「M78星雲…ウルトラの星でしょう」

 

 

 

7

べリアルは仲間の二人に事情を説明し、ついてくるなと命令して無理矢理に帰らせた。

「いいのかよ、あいつら」

寂しそうな二人の後ろ姿を見て、流石に同情したような声が聞こえた。

「いい、邪魔になるからな。それより」

べリアルは、仲間を視界からはずした。

「かなりスピードを出すが、付いてこれるだろうな。…まぁ、聞くまでもねぇか」

バカにしたように笑うと、炎の戦士が頭をかきあげた。

「ったりめーじゃねぇかよ、なめてんのか!」

「確認しただけだ。いくぞ」

勢いよく飛び上がると、その後ろから五人と一匹が付いてくる。

(全く、妙な光景だぜ)

ふと、心のなかでそう思った。

いつもなら敵であり倒すべき存在の彼らを、こうして助けようとしているのだ。

違和感が生まれるのも、仕方ない。

「そういえば、兄さん」

後ろでロボット兄弟が話し始める。

「どうした、ジャンナイン」

「ゼロをここまでにしてしまったのは、一体何なんだ?」

「それは…」

言うのを渋っていると、べリアルが会話に参加した。

「ゼロとその手下たちか」

「…あ、ああ。何故わかった」

ロボット兄が驚いたように頷く。

「奴らならやると思った。それだけだ」

べリアルは前に向き直すと、うんざりしたようにため息をついた。

「…俺様からノアの力を奪ってから音沙汰がなくなったから、何か企んでるとは思っていたんだが」

「何?」

今度は弟の方が驚く。

「能力を、奪われたのか」

「そうだ。奪い返そうとしたが、どこへいるのか見当がつかなかった…まさか戻っていやがったとは」

盲点だったぜ、と付け加える。

「お前らがこの世界に基地ごと持ってこられたのも、その力のせいかもしれねぇな」

「なるほど…それですべてが繋がりました。なぜ私たちをここへ運ばれてしまったのか。それがいまいち理解できていませんでしたが…」

鏡の騎士が納得したように頷く。

「ウルトラマンノアから授かった、ウルティメイトイージス。あの鎧を利用したのですね。確かあれは、時空を越える力が備わっているのだとか」

「お前らの方にもあるのか」

少し意外そうな声を出すと、ええ、と返事が帰ってきた。

「はい。…こちらの世界のゼロもまた、それを受け取った一人でした」

「…本当に、逆だな」

思わず笑ってしまう。よくここまで似たり寄ったりの世界もあるものだ。

「てかさー、べリアル」

炎の戦士が彼の隣に並ぶ。

「お前、なんでこっちでは悪に堕ちなかったんだよ」

「グレン、そういうことは軽々しく聞くことじゃありません」

鏡の騎士がやめなさいと戒める。

「だって気になるじゃん? オレたちの方じゃ、どうしたって敵なんだから」

頭の後ろで腕を組む炎の戦士。べリアルは、その言葉に頷く。

「別に構わん、減るものでもない」

どちらも、そこまで深刻な話とは思っていないようだ。

「だからと言って…」

「ストリウム光線!!」

止めようとする鏡の騎士の言葉を、誰かの大声がかき消した。声がした方をみると、遠くから光線が放たれている。

「危ない!」

後ろの四人が一斉に散ろうとするが、べリアルがその光線を弾き飛ばした。

「…何しやがる、タロウ」

前から急接近してきたのは、ウルトラマンタロウだった。

「大丈夫ですか、べリアル!」

「ああ?」

「セブンの言った通りだ。何かが接近していると言っていたが、まさか彼らとは!」

「…めんどくせぇやつに会っちまったな」

べリアルが頬をかく。

「め、めんどくさい?」

「よく見ろ、そいつらを」

タロウは指をさされた方にいる彼らを、じっくりと見る。しばらくして、違和感に気づいた。

「ダークメイトフォースゼロ、だが…何か、違うような…」

「おい、そこのロボット。そいつを寄越せ」

べリアルは、弟の方のロボットに話しかける。

「こいつがいるということは、そろそろ光の国だ。こういう面倒なことになる前に、ここで別れた方がいい」

「あ、ああ…」

手渡されるウルトラマンをみて、タロウは驚く。

「…ゼ、ゼロ!?」

「詳しいことはそいつらに聞け。おしゃべりは面倒なんでな」

そう言うと、べリアルは故郷に向かっていった。

 

光の国にたどり着くと、そこはいつものようにウルトラマンたちで賑わっていた。

「…チッ、気が揺るむぜ」

やれやれと首を振り、歩き出した瞬間。

「止まれ、べリアル」

後ろから、低い声が聞こえた。

「セブンか」

振り向くと、名前を呼ばれた彼が立っている。その後ろには、他の宇宙警備隊のウルトラマンたちが構えていた。

「丁度いい。今治療してくれる場所がどこだったか、誰かに訊ねようとしてたところだ」

「ああ、教えてやる。だが、その前に質問させてほしい」

警備隊のウルトラマンがべリアルを囲うと、セブンは相手が肩を貸している相手を指差した。

「何故、彼にとどめをささない」

べリアルは、呆れたように言葉を返す。

「見てわからねぇのか。こいつにエネルギーを補給してやるためだ」

「そんなことをする必要はない。力を失い、動けなくなった今こそ倒すべきだ」

ゆっくりと近寄ってくるセブン。その目には、迷いがない。

「息子と言えど、容赦はしない…か」

クク、と笑うべリアル。

「そのわりに、気付くのが早かったな。タロウまで使うとは…そんなにも息子が大事か」

「!」

相手の言葉に、立ち止まる。図星だったようだ。

「なんでもいいが、倒されるのは困る。こいつは、別時空からやって来た、てめぇの息子だからな」

「何?」

「いいから早く、マリーがどこにいるか教えろ。てめーの質問には答えたぜ」

驚く相手の隣を、べリアルが通りすぎていく。

「うるせぇ野次馬が集まってくる前に、急げと言ってるんだ」

 

「…そんなことがあったのか」

べリアルが行ってしまった後、ミラーナイトはタロウに状況説明をしていた。

「はい。信用していただけないかもしれませんが…少なくとも私たちに敵意はありません」

「…分かった。君たちのことを信じよう。セブンにも、きちんと伝えておく」

相手が話終わると、タロウは頷いた。ミラーナイトは喜んだ様子で、深々と一礼した。

「ありがとうございます」

「ゼロのことが心配だろう。ここで待つのもなんだ。星へ案内しよう」

タロウと一同は、光の国へと向かっていった。

 

 

 

 

 

その後ろから、何かの影が迫っていることを、彼らはまだ知らない。

 

 

 

8

「…」

ふと目を覚ますと、空にオーロラが輝いている。その周りには、銀色の植物のようなものが生い茂っていた。

「ここは…」

「やっと起きたか」

「!」

かなり離れた場所から、声がした。みると、誰かが背を向けて立っている。

「お前は…」

「とりあえず体力は戻ったらしいな」

さすがはマリーだ、と笑う相手。しかし、振り向こうとはしない。

「誰だ?」

ゼロが近付こうとすると、振り向かずに手をこっちに突き出してきた。来るな、と言いたいらしい。

「俺様はてめぇみたいな奴とは、目も合わせたくねぇ」

「何!?」

「待ってろ。すぐてめぇの保護者が来るはずだ。おとなしくしてな、クソガキ」

ゼロは相手の言葉にカチン、とくる。

「誰だか知らねぇが、言いたい放題言ってくれるじゃねぇか!」

相手に向かって走り出すが、途中で膝をつく。まだ、体は本調子ではないようだ。

「…結局、バカなのは変わらないか」

「んだとぉ!?」

「そっちの世界のセブンも、マシな教育をしなかったらしい」

「親父は関係…待て、そっちの世界?」

ゼロはその時、黒鏡の騎士の言葉を思い出した。さらに、自分の身に何が起こったのか、何故気を失ったのか…記憶が、段々とよみがえってくる。

黒い自分と、その仲間たち…まるで、反転しているような世界。自分にとっての仲間は敵。すなわち…。

そこまで考え、彼の姿に見覚えがあることに気がつく。

「…お前、まさか!」

相手になんとか近付こうとするが、上から誰かが降りてきたことにより阻止された。

「親父…」

そう呼ばれたウルトラマンは、安心したようにほっと息をつく。

「こうして目の前に現れても、何もしでかしてこないのを見ると…お前は本当に別の時空からやってきた、私の息子なのだな」

相手はゼロの肩を軽く叩いた。

「無理をするな。座って休むといい」

「お、おう…」

ぎこちなく、地面に座る。その隣に、父親も腰かけた。

「親父。ここは…どこなんだ」

「光の国だ。この場所は、神秘の碑と呼ばれている」

「神秘の碑…」

確かにその名の通り、神秘的な場所に感じられる。

「初めて来たぜ、こんなところ」

「彼がウルトラの母がいるウルトラクリニック78まで連れていってくれた後、ここまで運んでくれたのだ」

父親は、遠くにいるウルトラマンを見た。不機嫌そうに、立ったまま貧乏揺すりをしている。

「そいつはこの星では重罪人だからな、変な騒ぎになる前にほとんど誰も来ないところへ持ってきただけだ」

重罪人。

そう呼ばれたゼロは、うつむいた。

「俺は…こっちの俺は、何を犯した?」

隣にいる父親も、同じようにうつむく。

「大きな力を求めすぎた。…思い当たるところはあるだろう」

「…やっぱり、そうなのか」

自分の過去を思い出し、うう、と唸って首を振った。ここでも自分は、同じことをしでかしたらしい。

「この星を追放され恨みをもったお前は、M76星からも脱走し、行方がわからなくなった」

父親は話を続ける。

「そしてエンペラ星人に魅入られ、すさまじい闇の力を得て…幾度となくこの星へ戻ってきたのだ。この星を、滅ぼすためにな」

「そんなことが…」

「…あそこにいる彼のように、闇に囚われても戻ってくることができたらよかったのだが」

彼と呼ばれた人物を、父親が見つめる。

「そうもいかなかったようだ」

「あいつも、俺と同じように…」

「そうだ。彼はお前と同じように力を求め、エネルギーコアに手を出した。その後、レイブラッド星人に…」

遠くにいるウルトラマンは、ダンッと力強く足を鳴らした。

「俺様はそいつとは違う。奴の力さえも、自分のものとして取り込んだ」

一緒にするな、と怒ったように言い放った。

「…べリアル…なのか」

ゼロが名前を呼ぶと、相手は貧乏揺すりを止めた。

「…そっちの俺様は、この世界と真逆だと聞いたが…」

ゆっくりと振り向いた相手は、腰に手を当ててため息をついた。

闇のオーラをまとってないにしろ、彼はウルトラマンべリアルに違いなかった。

「まぁ、そういう時空の話もあったっておかしくはない。だが、ちょいと頭が足りなかったな。上手く利用すればいいものを」

「…ゼロは若い。お前ほど考えることができなかったんだろう」

父親がゼロを擁護すると、彼はズンズンとこちらへ近付いてくる。

「そりゃ、あっちの世界の俺様に向けた悪口か?」

「いや、そういうつもりではないが…」

「もう一度言ってみろ、コラ」

マントを鷲掴み、脅すように低い声を出した。

「や、やめろ!」

ゼロは父親と彼を引き離した。例え善のウルトラマンだとしても、ずっと敵として戦ってきた相手だ。反射的に動いてしまった。

「…親思いだな、あっちの世界のこいつは」

乾いた笑いをもらし、相手のマントから手を離すと、そのまま飛び上がった。

「どこへ行く、べリアル」

父親が話しかける。

「そいつの仲間を連れてきてやる。軽い冗談でいちいち突っかかられてたら、キリがねぇからな」

彼はすぐさまスピードをあげ、見えなくなってしまった。

「すまない、ゼロ。悪い奴ではないんだが…」

「…ああ。よくわかったぜ」

消えていく彼を見て、唇の上を親指で擦った。

「べリアルも、ウルトラマンだったってことがな」

 

その後は、この世界の自分と何が違うのかというのを二人で話し合った。ついでに、自分の仲間の話もする。

心なしか、父親が嬉しそうに話しているように見えた。あまり話すことがないからだろうか。

それは、ゼロも同じだった。こんなにも長く二人で話し合ったことはない。

(これが、親子って奴なのか)

気兼ねなく、信用しているからこそ、込み入った話もできる。そんな存在は、仲間だけだと思っていた。

だが、本当はもっと近くにいたのかもしれない。

そんなことを考えていると。

「ゼロォ―――――――――――――ッ!!」

突然、大声で名前を呼ばれる。

誰なのか確認しようとしたが、声の主はもうすでに自分の体に向かってきていた。

「よくも帰ってきやがったな、この野郎っ!!」

思いきりしがみつかれた勢いに耐えきれず、ブッ倒れる。

「うおあぁ!?」

「こんなにも心配させやがって!! どう落とし前つけて…あれ、生きてるか? 生きてるよな!?」

ペシペシ、と顔を叩かれる。

「ハハハハ…」

笑い出したゼロを見て、グレンファイヤーは安心したように額をぬぐう。

「ああよかったぁ、生きてたぜ! また逝っちまったのかと思った」

それを聞いていたミラーナイトがクス、と笑った。

「本当に危ないので、止めましょうね」

「ハーイ、ゴメンナサーイ」

グレンファイヤーが謝っていると、ピグモンが走ってゼロのもとへやって来た。鳴きながら、ぴょんぴょんと跳ねている。

「お前にも、心配かけたな」

相手を軽く撫でていると、ジャンボットが声をかけてきた。

「ゼロ」

「ジャンボット!」

ゼロは立ち上がり、彼の元へ向かう。

「あん時は、ありがとな! お前がいなけりゃ、俺は今ここにいないぜ」

「…」

彼は何か納得がいっていないのか、目線を逸らす。

「どうした?」

「私がもう少し、早ければ…」

「…いいんだよ、気にすんなって。結局は、俺が一人で突っ走ったせいだ」

首を横に振るゼロ。

「お前はそれでも、俺を助けてくれた。そうだろ? だから、気にしなくていい」

な、と相手に向かって親指を立てる。ジャンボットはそれを見て、嬉しそうな声をもらした。

「…ありがとう、ゼロ」

「よぉーし! んじゃあオレたち、ウルティメイトフォースゼロが全員揃ったところで」

その二人の間に、グレンファイヤーが肩を組んで割り込んできた。

「ケジメつけにいこうぜ。もちろん今度は、全員でな!!」

「ああ、そうだな」

ゼロはその言葉に、力強く頷く。

「困ったときは、助け合う…それが仲間だ。ただ護るだけじゃない。お互いに、支えていくべきなんだ!」

拳を握り、上へと振り上げる。

「行くぜお前ら!! ウルティメイトフォースゼロ、出撃だ!!」

「おう!!」

全員、同じように手を上げた。

 

 

 

9

ウルティメイトフォースゼロの一同がいなくなったあと、べリアルはその方向をじっと見つめていた。

「行かないんですか?」

タロウが、彼に声をかける。

「ああ?」

彼は振り返らずに答えた。

「なんで行く必要がある」

隣に並んだタロウは、べリアルと同じ方向を見る。

「あとはあいつらの問題だ。そこまで関わる必要はない」

「…ああいう空気は、苦手ですか」

「黙れ」

食い気味に答えると、見ていた方向から目をはずす。

「まず、ガキってのが嫌いでな」

てめぇもだ、と相手ににらみをきかせた。

「…すみません」

タロウは謝るが、べリアルの機嫌は直らない。

「よくもそんなことが言えたもんだな。生意気にもほどがあるぜ」

イラついたように腕を組んだ。だが、タロウは引かない。

「自分に子供ができたら…その気持ちが変わるかもしれないですよ」

「皮肉か?」

うんざりとしたように相手を見る。いいえ、とタロウは首を振った。

「尊敬できる人が親なら、子供も嬉しいってことです」

「…」

その言葉に、べリアルは黙りこんだ。

尊敬できる人。

一組の幸せそうな夫婦が、頭に思い浮かぶ。

「あなたも、光の国のために戦ってきた人です。充分、尊敬に値すると思います」

誉めてくれているのだろうが、べリアルには嫌みにしか聞こえなかった。

「…俺様には、必要ない」

そう言い放つと、向いていた場所と反対方向に歩き出した。

「どこへ行くんです?」

「久しぶりに戻ってきたんだ。どうせだから、お前の親父に会ってくる。たまには顔を出さないと、うるさいからな」

面倒だぜと首を振り、タロウの方に向き直る。

「それで、ケンの野郎は今どこだ」

「ああ、それなら…」

彼がウルトラの父の居場所を言おうとしたときだった。

いきなり轟音が鳴り響き、地面が割れる。

「!」

二人は、空へ飛び上がった。

街を見下ろすと、あちこちで火が上がっている。

「なんてことだ…!」

タロウが急いで降りていくが、べリアルは動かなかった。

「…きやがったな」

ボソリ、と呟くと、ギガバトルナイザーを片手に出した。

「この前のお礼は、きっちり返させてもらうぜ」

 

「おいおいおい、どうなってんだよ!!」

次々に倒れていく建物を避けながら、グレンファイヤーが叫んだ。

「何か攻撃を受けているんでしょう。それが誰なのか、何故そんなことをするのかは分かりませんが」

「…奴だ」

ゼロの父親が、重々しく呟く。

「ゼロが、帰ってきた」

「もう一人の、俺…」

拳を握りしめる、ゼロ。

―――――今度は、負けねぇ。

心の中で決意し、キッと前を向く。

その時、目の前に小さく黒い炎が舞い散った。それに気付いたゼロは、全員に叫んだ。

「避けろ、お前ら!!」

「ファイアァァァァ!! フラアァ――――――ッシュ!!」

放たれたエネルギー弾を、彼の声で全員が回避する。

「同じ手は食わねぇ、ってか? 仲間のことまで考えるたぁ流石だねぇ、ゼロ陛下は」

攻撃を仕掛けてきた彼は、嘲笑うように上から降りてきた。その姿を見て、グレンファイヤーが指をさす。

「ああ!! お、おお、オレ、だ…!?」

そう、彼はグレンファイヤーと瓜二つの、闇炎の戦士だったのである。

「へっへー! どうも初めまして、光のゼロちゃんご一行様!」

頭をかきあげ、得意げに胸を張る。

「この黒炎の戦士、グレンファイヤー様が! 地獄の一丁目までご案内させてもらうぜ!」

相手はそのまま、こちらへ突っ込んでくる。グレンファイヤーは、その言葉にわなわなと震えた。

「にゃろぉ~…なかなかいいセンスしてるじゃねぇか、心にガツンと来ちまったぜ! だがなぁ!!」

両手を思いきりパンッと叩き合わせ、やる気満々で構える。

「地獄に行くのは、てめぇの方だ!!」

しかし、そんな彼の前にジャンボットが立ちふさがるように現れた。

「ここは、私が行く」

「はぁ!?」

「…奴には、返さなきゃいけない借りがある」

それだけいうと、彼は真っ黒な炎に向かっていった。ジャンボットが飛んでくるのを見て、相手がバカにしたような声をあげる。

「ハッ、本当に焼き鳥になりてぇのか? だったらその体が溶けちまうまで、燃え付くしてやるぜ!!」

「やれるものなら、やってみろ!!」

空中で、二人の拳がぶつかり合う。

グレンファイヤーは手持ちぶさたになってしまった腕を、頭の後ろで組んだ。

「あーあ、いいとこ取りされちまった」

「とりあえず、ここはジャンボットに任せましょう」

なだめるように、ミラーナイトが彼の肩をポンと叩く。

「私たちは、この騒ぎの首謀者を止めに行く必要があります」

「…こっちの世界のゼロか」

「ええ」

遠くの方で、また建物が崩れていく。

「早く、止めねぇとな」

彼らはその場所へ向かおうとするが、目の前に三人の闇の戦士が降り立った。

「その必要はない」

ジャンナインに似ているロボットが、冷たく言い放つ。隣には、先程飛んでいってしまったはずのロボットが立っている。

「陛下は、この星を破壊することを目的としている」

そして、闇をまとった鏡の騎士が、こちらに殺気を向けてきた。

「あなた方に、邪魔はさせません」

「おっとぉ! あちらさんも勢揃いってか」

グレンファイヤーが指を鳴らしながら、一歩前に出る。

「ここはオレたちがやっちまっていいんだよな、ミラーちゃん」

「もちろんです」

ミラーナイトはピグモンをゼロに渡し、グレンファイヤーの隣に並んだ。さらにその隣に、ジャンナインが歩いていく。

「行け、ゼロ。ここは僕たちに任せるんだ」

「お前ら…」

父親が、ゼロの肩を叩いた。

「いい仲間を持ったな」

「…ああ」

ゼロは気恥ずかしそうに、唇の上を軽くこすった。

「ほんと、いい奴らだぜ」

ピグモンも手の中で頷いている。

「そうだ、こいつ…」

このまま戦場に連れていくことはできない。あまりにも、危険すぎるからだ。すると、父親が彼のことを優しく掴んだ。

「彼は私が安全な場所まで運んでおこう」

マントをひるがえし、飛び上がる。

「その間は、任せたぞ」

そう言葉を残すと、飛び去ってしまった。

「…ありがとな、親父」

呟くように言うと、ゼロも飛び上がり、破壊されていく建物の方へと向かっていった。それにいち早く気付いた黒鏡の騎士が、追いかけようとする。

「どこ行こうってんだ、オラァ!!」

だが足をつかまれ、地面へと叩きつけられてしまった。

「うっ!」

「へへ、そう簡単に行かせるわけねぇだろ」

頭をかきあげ、炎を散らす。

「てめーらの相手はあいつじゃねぇ! この、オレたちだ!!」

 

「ぐはぁ!!」

何人かのウルトラマンが、弾き飛ばされる。

「…つまんねぇな、お前ら」

そのうちの一人を、踏みつけた。

「どいつもこいつも、弱いくせに…護るとかなんとか言いやがって、笑わせんな!!」

黒い炎をまとったエネルギー弾が撃たれ、辺りの建物が損壊していく。

逃げ惑う人々のなかに、転倒してしまった子供がいた。その上に、ビルの一部が落下する。

「う、うわあぁ―――――っ」

子供が叫び、頭を抱えてうずくまる。

しかし、何もおちては来ない。

「叫んでる暇があるなら、さっさと逃げやがれ」

上を見ると、べリアルが瓦礫を支えていた。

「早くしろ。それとも、俺様に殺されたいか?」

じたばたと体を動かし、子供は走って逃げていく。

べリアルは瓦礫を静かに置き、手をパンパンとはたく。

「殺しちまえばよかったのに」

上から、ゼロが降りてきた。

「あんなガキ、でかくなってもそこまでの強さなんて持てねぇだろうが」

「うるせぇ、くそガキ。たったの6000才程度で、強さなんてもんを語るんじゃねぇ」

「そっちだって、15万年のジジイじゃねぇか。じいさんならじいさんらしく、大人しくしてやがれ!!」

ゼロが向かってきたのを見て、べリアルがギガバトルナイザーを向ける。

「そのジジイに固執してるのは誰だ」

その先端から、砲撃のようにエネルギー弾が飛び出した。相手ははねのけながらもこちらへ向かってくる。

「邪魔なんだよ!! ぶっ殺してぇほどに、てめーがな!!」

ゼロの炎の拳を、べリアルがギガバトルナイザー越しに受け止める。

「何故固執する? 俺様の方が強いと、そう言いたいのか」

「違う!! この銀河で最強なのは、俺だけだ!!」

二人は一旦離れ、また向かっていく。

べリアルが深く拳を当てたと思うと、ゼロは相手の腕をつかみ床に叩きつける。ゼロが蹴りを腹にいれたと思うと、べリアルがギガバトルナイザーで電撃を浴びせた。

両者一歩とも引かない、すさまじい攻防。その衝撃で周りの建物や地面が、激しく損傷していく。

「でぇえええりゃあ――――――っ!!」

しかし、ギガバトルナイザーを蹴り飛ばされてしまった。

「!」

取りに行こうとするが、その目前でゼロが立ちはだかる。

「ほらほらどうした!! あれがなきゃ、何にもできねぇのかよ!!」

徐々に押されていくべリアル。とはいえ、隙はほとんどない。相手の攻撃を、うまく受け流していく。

「それはこっちのセリフだ、ノアの鎧をブン盗っていきやがって」

ゼロの腕をがっしりとつかむと、自分の方へ勢いよく寄せた。

「怖かったんだろ? 強大な力をもった俺様が、恐ろしくて仕方なかったんだろ」

ゼロも負けじと、べリアルの首を絞める。

「ああいうのはな、本当に強い奴が持つべきなんだよ。それをてめぇが持ったのが、気に入らなかっただけだ!!」

「そのわりには、使いこなせてねぇみたいだな」

それでも、べリアルは余裕を見せる。

「違う世界の自分を連れてくるのに、どれだけ余計なもんをくっつけてきてやがる?」

「だからこそ俺は、俺自身の力を吸収したんだよ」

その瞬間、目の前が真っ黒な炎に包まれた。

「ぐっ!! あぁ!!」

べリアルはその熱さに叫び、ゼロから手を離して地面に転がり回った。その様子を見て低く笑いながら、ゼロは自分の手を見つめる。

「確かにお前から奪った力は、制御が難しくてな。まだうまく動かせねぇ…」

だがな、と言葉を付け足す。

「俺は、気がついたんだ。もしかして、お前から能力を奪ったから、うまく機能していないんじゃないかとな」

ようやく炎を消したべリアルが、咳き込みながらも立ち上がる。

「どういうことだ…」

「拒絶反応が起きたってことだ。他の奴から奪ったために、体にうまく馴染まなかった。だが、『俺』から奪うなら? 自分自身に、自分自身の力を入れるとしたら? 答えは簡単だ」

彼は、再び炎を腕にまとわせる。

「拒絶反応なんて、起きる訳がない。つまり、お前から能力を奪った時より、本当の力が出せるんだよ!!」

「…なるほど、そういうことか」

べリアルは納得したように頷き、自分の顔を尖った爪で軽く撫でる。

「それで違う世界の自分から、力を奪ったのか。通りでエネルギーがなくなって、ぶっ倒れるわけだぜ」

低い声で笑ったべリアルに、ゼロが再び向かっていく。彼はそれに気付き、バッと構える。

「試してみたが、確かにこいつはスゲー力だ!! 力が…力がみなぎってくる、ククク…溢れんばかりの力がな!!」

矢継ぎ早に炎が放たれ、べリアルは宙返りしながら避けていく。その途中、彼はギガバトルナイザーを掴んだ。

「ったく、面倒なことしやがって。しつけるこっちの身にもなれ」

それを素早く回転させると、相手に向ける。

「ガキがオモチャを持つと、こうなるからいけねぇ」

 

 

 

10

「べリアル!!」

ようやく黒い自分を見つけると、べリアルと激しい格闘を繰り広げていた。彼の隣に降り立つと、ちらりとこちらを見た。

「よう、遅かったな」

その声には、少し疲労の色が入っている。かなり苦戦しているようだ。

「元気そうじゃねぇか、ゼロ」

黒い自分が、楽しげに言った。

「また会えて嬉しいぜ」

「ああ、俺もだ」

ゼロはスラッガーを抜くと、相手に向ける。

「ダイナとコスモスの力、返してもらうぜ!!」

全力で走り出すと、その後ろからべリアルが追ってくる。

ダークゼロもスラッガーを抜き、彼らの前に飛び出した。

スラッガー同士がぶつかり合い、火花が散る。なかなか攻撃を当てることができない。べリアルが横からギガバトルナイザーで攻撃を加えようとするが、ギリギリではねのけられてしまう。

…やはり、強い。

能力を奪われている、というのも原因に入るだろう。その能力を黒い自分が見事に使いこなしている、というのもある。

ただ、それだけではない。

彼の強さは、『元から』なのだ。

「どうした? 本気を出せよ、ほら!!」

二人は吹き飛ばされ、ついにべリアルが膝をつく。

「お、おい!」

手を貸そうとするが、相手は首を振った。

「…気にするな。それよりも、あいつを倒すことだけを考えろ」

「でも…!」

うろたえるゼロに、ギガバトルナイザーを向けるべリアル。

「倒すつもりがないんなら、てめぇもぶっ飛ばすぞ。それでもいいのか?」

先端部分に光が溜まっていく。彼は、本気のようだ。

「…どの世界でも、嫌みったらしい奴だぜ」

唇の上をこすると、べリアルに背を向け、もう一人の自分の方をにらみつけた。

「そんなこと、言われるまでもねぇんだよ! はなっから倒すつもりがないなら、ここに立ってないんだからな!!」

「一度負けておいて、何言ってんだか…」

ダークゼロは軽く笑うと、自分に向かって指をさした。

「お前は、俺には勝てない…それは、充分わかってるんじゃねぇのか?」

「バカにすんな! さっきみたいに、簡単に行くと思ってんじゃねぇぞ!!」

そして、二人は同時に地面を蹴り飛ばした。

 

「…遅い」

グロッケンが、床から起き上がった。

「なぁ、やっぱおかしくねぇか? 送り届けるだけでこんなにかかるもん?」

「心配性過ぎやしないか、貴様は」

ヴィラニアスが相棒であるタイラントを撫でながら、ため息をついた。

「同胞はついてくるなといった。何か考えがあるのだろう、我輩たちがそれ以上関わる必要はない」

「そうだけどよぉ~…なぁ、お前も心配じゃねぇ?」

隣にいるデスローグに、寄りかかるグロッケン。重さを感じて相手を見ては、彼は迷惑そうに低く唸った。

「…あっそ、お前もそっち側ね、ハイハイ」

寄りかかるのを止め、立ち上がる。

「あーあ! 薄情な奴らだなー!」

「いや、だからな、同胞はついてくるなと…」

二人が言い合っていると、スライとジャタールが外から帰ってきた。

「なんですか、騒々しい」

入ると同時に聞こえてきた大声に、うんざりとしたスライ。

「ジャタール共々、疲労困憊なんです。お願いですから、騒がないでいただけますか」

「ギョポポ…光の国なんて二度と行かんぞ…」

フラフラとジャタールが倒れこむように寝てしまった。

「私だって勘弁したいところですが、あの方に連絡を頼まれてしまったなら断れるはずもないでしょう」

「なんか、あったのかよ」

「ええ…」

スライはやれやれと座り込むと、ため息をつく。

「先程光の国に交渉結果をお伝えしてきたのですが、帰ろうとした時、ゼロたちの襲撃に遭遇しまして」

グロッケンとヴィラニアスが、顔を見合わせた。

「火の海の中、命からがら帰ってきたんです」

「…それって、さっきか?」

「そうですが」

ところで、と彼は辺りを見回した。

「まだ帰ってきていないのですか? 本当に道草がお好きなんですね、自分の故郷が一大事だというのに」

「いや…そのー」

ヴィラニアスが、言葉を濁す。

「多分、道草どころじゃないというか…」

「は? 一体何を言って…」

いち早く、基地の出口へ向かうグロッケン。

「いいから、早く行くぞ!!」

ヴィラニアスがそれについていくと、他のメンバーもあとに続いた。

深い眠りにおちてしまったジャタールは、もちろん置き去りである。

 

「よっ! とぉ!!」

グレンファイヤーが突進してきた相手を跳び箱のように飛び越え、ジャンボットと背中合わせになる。

「どうよ、そっちのオレ! やっぱ強いか?」

「ああ、強いとも! 世界は変わっても、強さはそのままらしい!」

「そりゃ、おめでたいこった!!」

「どこがだ!!」

軽く口喧嘩をすると、二人は離れてまた戦いへと身を投じる。

「これでは、決着がつかないぞ」

ジャンナインがこちらへ向かってくるミサイルに、胸からのビーム砲を浴びせる。

この世界は、自分がいた世界と表裏一体。つまり自分の強さは、こちらの世界の自分に比例するのだ。

「皮肉ですね」

ロケットパンチを受け止め、持ち主に向かって返すミラーナイト。

「自分たちの強さが、仇になるとは」

「ま、いいんじゃねぇの! たまにゃこういう、歯応えのあるやつと戦わねぇと!」

楽しそうなグレンファイヤーはヘヘ、と笑った。

「楽しんでいる場合じゃない」

ジャンナインが口を挟む。

「僕たちも早く、あそこへ向かわなければ」

遠くから響いてくる衝撃音の方へ、顔を向けた。

「どこを見ている」

その時、彼の後ろから風を切る音が聞こえた。すかさず振り向き、振り下ろされた斧を受け止める。

「くっ…」

「貴様らは、陛下がいる場所に到達することはない」

赤い目を光らせ、相手を押し退ける。

「我々が、息の根を確実に止めるからだ」

「そうそ、オレたちがブッ殺すから安心して諦めろって!」

黒い炎が舞い上がり、ジャンボットにラッシュを食らわせ、最後に重い一撃を与える。

「うう!」

思いきり吹っ飛ばされるが、なんとか耐えた。だが腕が少し焼けてしまったのか、煙が上がる。

「そろそろお遊びもここまでにしましょうか」

闇の刃が向かって来ているのに気付き、グレンファイヤーが弾こうと腕を伸ばすが、目の前一面にヒビが入る。

「なっ…鏡!?」

直後、背中に力強い蹴りが入った。

「ごはっ!!」

かなりのスピードで落下するが、何とか地面に叩きつけられずに着地する。ミラーナイトも攻撃を受け、彼らの近くに降りてきていた。

その四人に、闇の自分達が近付く。

その時だった。

いきなり、5つの光線が黒炎の戦士に直撃する。

「ぐあっ!?」

光線が飛んできた方を見ると、ゾフィー隊長率いるウルトラマンたちが立っていた。

「あなた方は…!」

「セブンから事情は聞いている。私たちは、君たちを援護するためにきた」

ゾフィーがそう言うと、次に口を開いたのは、ジャックとAだ。

「別の世界から来た、光の戦士だと聞いた」

「この騒ぎの原因を、この世界の君たちが起こしているそうだというのも知っている」

闇の戦士たちを見ると、こちらをうっとおしそうににらんでいた。黒炎の戦士が撃たれたところを押さえながら、文句を言う。

「おいおい、邪魔すんなよ。これはオレたちの話だ、おっさんどもは引っ込んでな」

「これ程までに星を破壊されて、何もしない者はいない」

レオが拳を握りしめ、にらみ返す。

「我々は平和を守る戦士だ。それがどこであろうと、変わらない」

故郷ならなおさらだ、とマンが言い放つ。

そして、全員が構えた。

「行くぞ!!」

 

 

 

11

「はああぁぁぁぁぁぁぁ!!」

黒い自分に、連続して蹴りを入れられる。

「かはっ…」

ゼロは少しよろめき、胸を押さえて膝を付いた。

もう一人の自分に、押され始めたのだ。べリアルも、ピグモンをかばった時の傷が響きだしたようだ。肩で息をしている。

(くっそ…!!)

また、負けるのだろうか。

 

もう一度、自分に――――――

 

「ううううおおおおおおおああああぁ――――――ッ!!」

声が枯れるほど叫び、立ち上がる。

「ほう、まだ立つか? 流石だな、ゼロ」

余裕そうに、ダークゼロが笑った。その声には、哀れむようにも聞こえた。

「うるせぇ!!」

相手の言葉に耳を貸さず、また自分に向かっていく。

必死に蹴りや拳をぶつけようとするが、早々とかわされ、一瞬の隙に腹へと黒い炎が放たれた。

「ぐぅっ!!」

しかしそれでも相手の腕をつかみ、瓦礫の山へとぶん投げる。

反撃されると思っていなかったのか、ダークゼロは瓦礫の中に埋もれてしまった。

「俺は…俺は!! 負けるわけには行かないんだ!!」

スラッガーを再び抜き、自分のカラータイマーの横に装着する。

「ふざけやがって…」

瓦礫をかき分けながら出てくると、相手の動作に気付いた。すぐに避けようとするとべリアルが攻撃を仕掛けてきたため、その場から動くことができない。

「この…!」

「何を焦ってる。てめぇはこの銀河で、一番強いんだろう?」

「邪魔だ!! どけ!!」

ようやく押し退けたときには、もう遅かった。

盛大にゼロツインシュートが放たれ、目の前が真っ白になる。

「あああああああああぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」

黒い自分の叫び声と共に、轟音があたりに鳴り響いた。すさまじい衝撃波が、近くにいたべリアルだけでなく、ゼロ自身でさえも吹き飛ばし、地面に叩き付ける。

 

少し経つとゆっくりと煙が晴れ始め、さっきまであった瓦礫の山が消え、撃った場所に深いクレーターができていた。

「いって…」

ゼロが立とうとすると、べリアルが肩を貸してくれた。

「しっかりしろ」

「ああ…」

よろめきながら、立ち上がる。

「俺たち、勝ったのか…?」

「どうだかな」

クレーターの方を見るが、まだ煙が完全に晴れていない。まだ、奴が生きている可能性はある。

「ここにいろ」

べリアルがゼロから離れ、確認のためクレーターに近付く。

「き、気を付けろよ」

ゼロがそういったのもつかの間、煙を裂くように黒い光線が撃たれ、べリアルに直撃しようとする。ギガバトルナイザーでとっさにガードしたが、光線の強さに弾かれてしまった。

「べリアル!!」

駆け寄ろうとすると、煙の中からなにかが飛び出してきた。

「ずいぶんとなめた真似しやがって…」

それは、怒りをあらわにした、ダークゼロだった。

よくみると、横腹を押さえている。渾身のゼロツインシュートが当たったはいいものの、確実に仕留めることはできなかったらしい。

「フフフッ、フフハハハハハハハハハハ…」

低い、狂ったような笑い声が響く。

「てめーは、絶対殺す…跡形もなくなるほど、ぐちゃぐちゃにしてやる!!」

「…時間稼ぎした意味がありゃしねぇな」

何とか立ち上がったべリアルはもう一度構え、戦いに挑もうとする。ゼロも同じように構えるが、心底焦っていた。

負けたくない。頭の中でそう思っても、あの攻撃を避けられてしまった事実がある。

勝てる、という自信が消えかかり始めていた。

「死ね!!」

ダークゼロがスラッガーを抜き、こちらへまた向かってくる。

だが、その瞬間。

一本のアイスラッガーが、彼らの前に突き刺さった。

「これは…!」

一瞬気を取られたダークゼロの背後に誰かが降り立ち、その体をがっしりと抱え込んだ。

「親父!!」

ダークゼロは暴れるが、うまく引き剥がすことが出来ない。しかし、時間の問題だろう。なんとか父親がゼロたちの方を向くと、叫んだ。

「このまま私もろとも、奴を撃て!!」

「な…!?」

「それしか方法はない!! 早く!!」

自分の親を、闇に堕ちた自分と共に葬る。

それしか方法は、ないのだろうか。

 

…仲間だけではなく、父親までも手にかけなくてはならないのだろうか。

 

「バカみたいに突っ立ってんじゃねえ」

いきなり、べリアルがゼロの顔を殴った。

「いっ!?」

「貴様の親父もでしゃばってきたんだ、それにきちんと応えろ」

「だからって、殺せるわけないだろうが!!」

ゼロがやり返そうとするが、その手は押さえられてしまった。

「よく考えろ。ただ、倒せばいい。それだけのことだ」

「ただ、倒す…?」

「先に突っ込む。援護しろ」

べリアルが、ダークゼロに向かっていく。

 

ただ、倒すだけ…

親父を殺さず、奴だけを倒す…

 

殺さず…?

 

ゼロがハッとする。

「そうか!!」

即座に、タイプチェンジを行った。

「ルナミラクル、ゼロ!!」

青いウルトラマンと化すと、べリアルに隣に並ぶ。

そのべリアルも、体色が青くなっていた。

「お前…!」

「同じ力を持ってるなら、その力も二倍だ」

そして、暴れているダークゼロに標準を合わせた。

「失敗するんじゃねぇぞ」

「当たり前だ!!」

二人は同時に手をつきだすと、光の粒子を集め始めた。

「俺に! 俺たちに!! 闇の力で勝とうなんざ!!」

自分の声に、黒い自分が気付く。必死にあがくが、やはり逃げることが出来ない。

ついに、二人が目の前に飛んでくる。

 

 

 

「2万年、早いぜ!!」

 

 

 

青い光の手が勢いよく相手に触れると、無理矢理に闇を浄化していく。

「がああああああぁぁぁぁぁぁぁあああああ!!」

苦しむダークゼロ。それでも、ゼロのカラータイマーをつかむ。

「能力をもらっちまえば、こっちの…!」

だが、その腕さえも光に包まれていく。

「あぁあぁぁぁぁぁ!!」

その様子を見て、べリアルが呆れたように笑った。

「バカが。闇に負けた奴が、慈愛の心なんて取り込める訳ねぇだろ」

「くそっ!! こんな、こんなはずじゃあぁあ…!!」

叫びもむなしく、闇の力は浄化されていく。

同時に、ウルティメイトイージスが彼の体から飛び出し、べリアルの元へと返っていく。同じように、赤い力がゼロへと戻っていった。

能力を失った彼の体が、おどろおどろしく溶け始める。

驚いたゼロが、手を離した。

「これは…」

「おそらく、闇の力が解放された影響だ」

父親は拘束していた相手を、ゆっくりと床に寝かせる。

「闇の力を体にまとわせていたため、それさえも浄化させられているのだろう。それが、剥げおちていっているだけだ」

彼の姿を見て、ゼロはあの悪夢を思い出した。

 

後ろを振り向いたとき、そこにいたのは黒い自分自身だった。しかし、ただのダークゼロではない。

今ここにいる、闇の力を失った『浄化された状態』の溶解している自分だったのだ。

思わず叫んで起きてしまうほど、恐ろしい光景だったのである。

 

「…いや、だ…」

ダークゼロだった相手は、手を震わせながら腕を上に伸ばす。

「おれの、力が…おれ、の…」

泣きそうな声で、空をつかむ。しかし、そこには何もない。

「哀れな奴だぜ」

べリアルがその様子を見て、軽く笑った。

「力に溺れすぎたんだ、こいつは」

「…」

ゼロはその言葉に、何も返すことができなかった。

もし足を踏み外していたら、この状態になっていた可能性だって否めないのだ。

自分の世界のべリアルを見れば、よく分かった。

「…大丈夫だ」

セブンは、その手を優しく握った。

「闇の力よりも、もっと強い力なんてものはいくらでもある。今度は、きちんと教えてやるからな」

「…あ、ぁ…?」

目が見えないのか、手をつかんでくれた父親の方に顔を向けない。

しかし、彼は安心したように小声で呟いた。

「…あた、たかい…」

 

 

 

12

「お~~~~~~~い!」

遠くから、声が聞こえる。

「グレンファイヤー!」

ゼロは嬉しそうに走っていくが、途中でよろめいた。

「うぉおっとぉ!?」

なんとか受け止めたグレンファイヤーが、肩をバシバシと叩いた。

「なんだよなんだよぉ、なに疲れてんだよ。あ! まさかもう終わっちまったのか?」

「ああ、全部終わった」

「えぇーっ! せっかく急いできたのにぃ~!」

ジタバタとその場で足踏みをする彼の後ろから、他の仲間たちも駆け寄ってきた。

「決着は、ついたようですね」

セブンの近くに横たわる彼を見て、ミラーナイトがそう言った。

ジャンボットが、ゼロの肩をポンと叩いた。

「今度は、勝ったんだな」

「お疲れさま、ゼロ」

ねぎらいの言葉をかけたのは、ジャンナインだ。

「ああ…ありがとな、お前ら」

彼らがいなければ、ここへたどり着くこともなかっただろう。

感謝をしても、しきれない。

「ウルトラマン、ゼロ」

聞きなれない声で名前を呼ばれ、振り向くとウルトラの父とウルトラの母がそこにいた。母の手の上で、ピグモンが飛び跳ねている。

二人は、こちらへ歩いてきた。

「この星のため、彼を倒すため…戦ってくれて感謝する」

「きっと、私たちの世界の彼も光の戦士になることができる…そんな希望を持つことができました」

「いや、そんな…」

少し照れくさそうに唇の上をこする。

「俺だけじゃなく、こいつらや親父…べリアルがいたから、勝てたんだ」

「…そうだな」

ウルトラの父は頷くと、べリアルの方を向いた。

彼は暇そうに、地面に突き刺したギガバトルナイザーに腕を組んで寄りかかっている。

「べリアル」

名前を呼ぶと、気だるそうにこっちを向いた。

「ありがとう」

「…ハッ。俺は2番手か」

そんなことを言われると思っていなかったらしく、ウルトラの父は動揺した。

「そんなつもりは…何をすねている」

「すねるか。ガキじゃねぇんだ」

ギガバトルナイザーを引き抜き、肩に担いだ。

「ただ、最高の獲物をそいつにブン盗られちまったのは、頭に来てるがな」

尖った指で、ゼロを指差す。

「俺かよ!」

自分でも指差し、驚いた声をあげる。

「当たり前だ。俺様ひとりの力じゃ、奴を仕留められなかったのがまたムカつくぜ」

「なんだよ!! 倒したんだからいいだろ!!」

「あいつは俺様の獲物だった。それをお前が、横取りしてきたんだろうが」

「こんの…!!」

掴みかかろうとするが、周りの一同が止めに入る。

「まあまあまあまあ、落ち着けって」

「落ち着いていられるか!! べリアル! やっぱてめーは最悪な野郎だぜ!!」

騒ぐ相手を見て、クク、とべリアルは笑った。

「それは、お互い様だぜ」

 

一方、セブンの方にはウルトラマンたちが集まっていた。

「彼を、どうするんだ」

「…私直々に、叩き直そうと思う」

ゼロを抱え、立ち上がる。すると、彼の後ろから声がする。

「同じことを繰り返さないとは、限らない」

振り向くと、そこにはウルトラマンキングが立っていた。

「本当であれば、彼をどこかへ閉じ込めてしまうのがよいのだが」

「…二度と、同じことはさせません。あそこにいる、他の世界の息子のように」

仲間に囲まれ楽しそうに話しているゼロを見て、眠っている自分の息子に視線を戻した。

「必ず、更正させて見せます」

「…そうか」

キングが、深々と頷いた。

「それなら、もう何も言うまい」

「ありがとうございます」

一礼すると、レオが彼の肩に手を置く。

「私も手伝おう。アストラと共に、修行をつけてやる」

「…ああ、もう一度頼みたい」

「今度は、逃がさんようにしなくてはな」

「そうだな、もう少し頑丈なテクターギアを…」

二人は話しながら、歩いていった。

「皆さん!」

その時、上からメビウスが降りてくる。

「救助活動は、終わりました。あとは再建作業だけです」

「うむ。ご苦労だった、メビウス」

ゾフィーが彼の肩を叩き、よくやったと頷く。

はい、と嬉しそうに返事をすると、遠くの方で騒いでいるゼロたちに気が付く。

「…彼らは」

マンが答える。

「別次元のゼロだ。ここの世界とは違い、強い正義感と光に満ちあふれている」

「そうなんですか…」

いつもならこの星で大暴れしていた彼らも、次元が違えばここまで変わってしまう。あちらは正しい選択をした、ということになるのだろうか。

「…僕らの世界のゼロも、あんな風になれるといいですね」

「きっと、なれるさ」

Aが、去っていくセブンの方を見て言った。

「間違いは、直せるのだから」

ジャックも、Aと同じ方向を見て、そう言った。

「しかし…」

ゾフィーが、不安そうに下を向く。

「ゼロの手下たちに、逃げられてしまった。いつまた彼らがこの国を襲撃するか、分からない」

闇の戦士四人はゾフィーたちと戦っている際、ゼロから闇の力が無くなったと感じると逃走してしまったのだ。

「新しい闇に従い、ここへ戻ってくる可能性がある。それだけではない。彼を…ゼロをもう一度、闇にいざなう可能性だってある」

首を振り、上を向く。

「なんにせよ、もう彼をあちらへ返すわけにはいかない。何故なら、彼は」

そう、彼は。

 

 

 

ウルトラマンなのだから。

 

 

 

 

 

「我が同胞よー!! 無事かー!!」

上から、何人かの人影が飛んでくる。

「ああ?」

振り向くと、仲間の宇宙人たちだった。

「なんか…大変なことになってたらしいから…」

ぜいぜいと息を切らしながら、グロッケンが降り立つと共に倒れた。

「助けに、来た…」

「もうボロボロじゃねぇか」

倒れた相手を、軽く蹴飛ばす。

「いてっ! 急いできたんだから、仕方ねぇだろ!!」

「そんなんでよく助けるとか言えたな」

フンとそっぽを向く。

「全部、事は済んだ。てめぇらが来た意味はねぇ」

「マジかよぉ!」

グロッケンが、顔をあげた。

「とりあえずご存命でなによりです。お怪我は、ありませんか」

スライが、べリアルを心配したように声をかける。

「ねぇよ」

「それなら、本当に喜ばしいことです」

「俺様がやられる訳ないだろうが…」

体を横に向けると、担いでいたギガバトルナイザーが近くにいたデスローグの頭に直撃した。痛そうにうめき、当たった箇所を押さえてべリアルから離れる。

「悪い」

軽く謝ると、何かを思い出したように彼らを見回した。

「…おい、ジャタールはどうした」

「あっ」

しまった、と全員が顔を見合わせた。その様子に、べリアルは大きくため息をつく。

「帰るぞ」

「はい」

スライが頷くと、ゼロたちの方を見た。目が合ってしまったゼロは、少し動揺する。

「あ、えっとだな…俺たちは…」

「話は聞きました。あなた方に会うことはもう二度とないでしょう。が…」

深々と、一礼する。

「ありがとうございました」

「お…おう」

敵対している宇宙人に頭を下げられたのは初めてだったため、うろたえる。

「きっと、あの方はこんな言葉を渡していないのではないかと思いまして」

「ああ…まぁな」

唇の上をこすると、へへ、と笑う。

「お前らも、お疲れさま。あいつのこと、大事にしてやってくれよな」

「ええ。もちろんですとも」

二人が会話していると、遠くの方からタイラントの鳴き声が聞こえてきた。

そのあとに、べリアルの声が響いてくる。

「スライ、早くしろ」

「それでは」

もう一度礼をすると、スライは仲間たちの方へと歩いていった。

「…さて」

ミラーナイトがピグモンを片手に持ちながら、こちらに顔を向けてきた。

「これからどうするんですか、ゼロ」

「え?」

グレンファイヤーが肩を叩く。

「まだ遊び足りないのかよ?」

「いや…」

「さっさと帰ろうぜ! オレだって、流石に疲れちまったよ」

はーあぁ、と座り込む。ジャンボットが、そうだな、と賛同した。

「早く帰って、姫様に報告しなくては」

「お前そればっかりな!!」

「何がいけないんだ、何も悪くないだろう」

二人がまた言い合いを始める。ジャンナインがそんな二人を横目に、ゼロに話しかけた。

「帰ろう、ゼロ。僕らの世界へ」

「…ああ、そうだな。帰るか!」

ゼロは、唇の上をこすった。

 

 

 

「俺たちの、本当の居場所へ!!」

 

 

 

救いを求める人々が居る。

 

闇に覆われている場所もある。

 

それを見つけたなら、救いにいかなくてはならない。

 

何故なら、俺は。

 

 

 

 

ウルトラマンだから。

 

 

 

 

 

エピローグ

 

光の中から、声が聞こえる。

誰なのか、何をいっているのかは分からない。ただ、聞き覚えがあるような気がした。

―――――誰だ?

自分が発した言葉により、声が一瞬止む。

が、次の瞬間。

 

「ゼロ」

 

その声にハッとし、起き上がる。

目の前には、赤色に銀のラインが入った、誰かが立っている。

深呼吸をして、ゆっくりと上を向いた。

そこにいたのは――――――。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

―完―




ウルトラマンゼロは人々の苦しみを全て救うまで、戦いを止めることはないだろう。もちろん、仲間たちもだ。

人々の光になるため、今日も彼らは未来に向かって進み続ける。



それが、彼らの使命なのだから。
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