やはり人というものは何事にも相手を求めるものだと思う。会話するためにはもちろん自分のやったことに対して何らかの評価を求めて。
外見と精神面から、どう見ても幼い自分にもそんなことは分かっていた。
落とされたこの場所では自分の声を聞いてくれる人はいないのだと、そう思っていた。
自分にはここに来る前の記憶がまるで無い。どんな名前だったのか、どこに住んでいて、どんな人が父さんと母さんだったのか。
分からない。分からないけれど、知識は残っていた。前の世界には車もあったし、道路もあった。こんな、完全に森と荒地のような場所は広がってはいなかった。
ただ、空だけは青いままだった。
「聞いてるのか?」
そんなことを考えていると、後ろから声が聞こえてくる。
「うん、そろそろいこーか」
僕の声を聞いてくれる『人』は確かにいなかったけど、今はこいつがいるから別に寂しくはない。
僕がこの場所に来て最初に出会った恐竜、こいつがそばにいてくれるから僕は僕でいられるのかもしれない。
こいつは何故か僕の言葉が分かる。僕もこいつの言葉がわかる。そして初めから僕を食べるつもりなんてなかったらしい。見たことのない生き物を見て興奮してしまったんだと。そのおかげでかなり恐怖に呑まれた僕の身にもなって欲しいのだけど。
そこまで大きな恐竜ではないがなかなか強く、守ってもらうことも多々あった。
まぁ、そんなこんなでこいつと旅をしている。
「……? どうした?」
少しボーっとしていたらしく、そう聞いてくる。首をもたげながら聞いてくるその感じは、僕が小さい頃に見た恐竜図鑑に出てきた恐竜そのものだった。
「……あっ、うんごめん! そろそろ行こう! 食料を探しに!」
「おう! そう来なくちゃな!」
テンションをあげて答えると、恐竜も気分が良くなったようだ。
食料という名の恐竜の餌を探して歩くこと小一時間。恐竜が住む時代だからといってそこかしこに恐竜がいる訳でもないようで、比較的安全に探索を続けることが出来た。
まず見つけたのは木の実だった。僕は基本肉ではなく、こちらを食べるようにしている。初めはどれが食べられるやつでどれが食べられないやつか見分けがつかなかったけど、恐竜が教えてくれた。
見た目は『the 恐竜』って感じだけど、なかなか優しく、僕に対して結構気を使ってくれている。たった一人の友人のためにやってる事だから気にすることは無い、といつも言ってくれる。超優しい。
そして始めに使った能力については自分でもよく分かっていないので恐竜にも話していない。本人は金縛りのようなものとでも勘違いしているのか、僕に対して聞いてくることは無かった。
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木の実は沢山見つかった。しかし、肝心の肉が見つからなかったので恐竜と一緒に木の実を食べる。必ずしも肉ではないとダメな訳では無いらしく、木の実を頬張っていた。
「…………」
僕は心の中でため息をついて考える。今が嫌な訳では無いし、恐竜の事が嫌いなわけでもない。でも僕自身いつまで生きられるのか分からない。こんな時代に飛ばされて寿命が人間のそれだったら、こんな時代に飛ばされる理由がない。普通の人間だったら、百年生きたらすごいほうだ。
それともう一つ、あの力が僕のものだとしたらそれを与えたものがいるはずなのだ。
…………神様とか……?
ないないない。有り得ない。
「…………」
そう思いたいけど、素直に信じることが出来なかった。
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