夏である。暑いである。熱中症には気をつけるであばばばばっ!
この世界にももちろんだが太陽が存在する。朝は明るく、夜は暗い。
朝は明るく、周りが見渡せていいのだが夜が大変だ。何せ真っ暗なんだから。
一応月明かりはあるのだが、普通に歩いてるだけでも街灯を見かける場所を知ってる僕としてはとても不安だった。しかし月がないとなると本当に怖いので小さく月に感謝しながら過ごしている。
ここに来てどれほど経ったのだろうか。そういう毎日を繰り返していくうちに、少々人間らしさというものを失ってしまったような気がする。
疲れていなければ夜も探索のために動いた。ほかに娯楽というものがないこの場所において、この世界の探索が一番の娯楽なのだ。
ここで本題なのだが、目の前にはおおきな水たまりがある。水たまり、と表現してもいいのか分からないそれからは大量の蒸気が出ていた。
「お湯か……?」
…………ん?お湯?
これってもしかして、温泉!?
温泉だった場合凄く嬉しい。今までは雨で体を洗って、洗剤などはなかったので草から出る汁などを加工して体を洗っていた。
そんな生活がもう大体、十年ほどすぎただろうか。いくら元いた世界の知識があるとはいえ、温泉のことについてはすっかり忘れてしまっていた。風呂に入ることは全然嫌いではないので、目の前の光景で思い出せたことが普通に嬉しかった。
「でもほんとに温泉か……?」
これで酸性の水なんかだったらたまったものではない。僕は恐る恐る水に触れようとする。
そこに、
「おぉー!! いい水があるじゃないかぁ!」
恐竜がいきよいよく飛び込んできた。そばにいた僕は当然びしょ濡れになり、同時にそれが僕の期待していた温泉だったということがわかる。びしょびしょになりながら、温泉ならばと上着を脱ぎにかかる。
因みに服については、最初にここへ来た時に着ていた服とこの世界で集めた服の素材を合わせて、だましだまし着ている。
そして先ほど十年程経ったと言ったが、なぜが見た目がほとんど変わっていない。成長したのは髪が長くなったくらいか、それはもうかなり長い。ただ、ボサボサというのも嫌なのできちんとできる限りの手入れをして清潔に保ち、旅の邪魔にならないように細い蔦などで括って止めている。
と、そんなことよりも今は……
「………………はぁ」
恐竜が温泉につかった事によって大半のお湯があふれて零れてしまっていた。
「いや、僕がつかる分が……」
「……ん? 気にすんな!」
笑いながらそんなことを言う。
「十年ぶりの風呂が……」
「細かいことを気にしてたらはげるぞ」
毛がないお前に言われてたまるかっ!と、そんなやり取りをしながら今日も過ごしていた。
結局水深二十センチ程の温泉とはとても呼べないような温泉に入ることになった。
「スッキリしたぁ!」
最近は旅をしながらよく考え事をする。題材はもちろん自分の能力についてである。全くの不明だったこの能力も大体分かってきた部分がある。
まず一つ、能力をかける対象は自分でも相手でも自由にかけることが出来る。
二つ、魔力のようなものが存在しないのかいくら使っても体力の消耗がない。
三つ、昼間の間は相手に対して能力をかけることが出来ない。
能力の具体的な使用例としては、自分の体の限界を引き出して、それに耐えられるような体に制御する。こんな感じだろうか。こうすれば、明らかにただの人間には出せない速さとパワーで殴ることが出来る。この時に相手の動きなどを制御しておけばなおよし。
真っ先に考えついたのがこういう能力の使い方だ。この時代ではいつ食われるか分かったものではない。
制御する、それはすなわち支配することだ。自分を支配し、相手を支配する。
この能力は物や空気、痛みなども制御できる。まぁ、普通に考えれば限界を超えるパワーで殴ったら自分の手はタダでは済まない。それをカバーするために思いついた応用法だ。まさか本当に使えるとは思わなかったが。
殴る瞬間に自分に来る痛みの通り道を空気中に向ける。自分に来る衝撃などもそうすると、自分の拳は無傷で相手にダメージを与えることが出来る。
とまぁ、ここまでがここ十年ほどで考えついた応用法だ。
それと自分の年齢について。今自分の感覚では十九歳だが、見た目は髪の長さ以外まるで変わっていない。どうしたものか。
考えてもどうにかなる訳でもないので、旅をつづけることにする。
「さぁ行こう、世界の果てまで」
「何だそれ?」
恐竜が聞いてくる。うん、僕も知らない。
「さぁ……?」
「適当なことばっかり言ってたらはげるぞ」
「お前こそそんなことばっかり言ってたらはげるぞ。……あ、毛、ありませんでしたね」
「食ったろーかっ!」
ワイワイと、旅はいつまでも続いていった。
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一人と一匹の旅は、いつまでも続いた。
何年経ったのか、いつしかこの世界でたったひとりの人間は本当に一人になってしまったらしい。
しかしその人間は暗い顔を一つも見せず、自分のことを『星(せい)』、と名乗っていたらしい。
噂では大切な友人の付けてくれた名前だとか。
千年経っても、二千年経っても、この世界はその友人の自慢話で溢れていたという。
すごく時間がたちます!(次話から)