けんぷファー vsモデレーター編   作:八鍵 嘯

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第一話 始まり

 十二月二十四日。

 街はクリスマス商戦で埋め尽くされている。そこら中にサンタがそれぞれの店の宣伝を行っている。

 そんな中、一組の高校生カップルが手をつないで歩いていた。

 男は極めて平凡な容姿をしている。良くも悪くもない。服装などもこれといった特徴はない。

 それに比べて、女の方は眼鏡とカチューシャをした美人。スタイルも悪くない。だが、控えめな服装のためか目立ってはいなかった。

 そんな二人はなぜか先ほどから話をしていなかった。

「ナツルさん、どうかしましたか?」

 紅音(あかね)のその言葉で、俺は現実世界に引き戻された。

「最近、何か急に黙り込む事が多い気がするんですけど……」

「あ、いや、何でもない。大丈夫だよ」

 なるべく悟られないように返事をする。だが、

「……もしかして、彼女(・・)の事……ですか?」

「!」

 俺は最近、隙があれば彼女(・・)の事を考えてしまっている。

「わ、分かるのか?」

「いえ、なんとなくそんな気がして」

「そうか……」

 俺、瀬能(せのう)ナツルと彼女、美嶋(みしま)紅音はケンプファーだった。

 ケンプファーは戦う為の存在。敗れ、倒れるまで戦う存在。

 しかし、俺たちは全ての元凶である沙倉(さくら)(かえで)に勝ち、戦いに終止符を打った。

「でも、それで良いと思います。だって、考えてるって事は憶えてるって事ですから……」

「そう……だな」

「じゃあ、この話はここまでにして、アニメショップ行きましょ!クリスマス限定グッズに欲しいのがあるんです」

 その後、紅音はアニメショップ7件をはしごした末に、お目当ての品を手に入れた。

 

「あーっ、疲れた……。それにしても紅音ちゃん、アニメと本の事になるとほんと元気になるね」

「いえ、流石に七件は私にもきつかったです」

「いや、その台詞、両手に紙袋持ってスキップしてる人の言う台詞じゃないよ」

 そんな事を話してると、

「こんばんは」

 いきなり声を掛けられた。

 そこに居たのは一人の少年。多分同い年か少し年下だろう。だが、彼から発せられている威圧感の様なものは、彼が一般人とは違うと告げていた。

「瀬能ナツルさんと美嶋紅音さんですね。私、梶谷(かじや)長門(ながと)と言います」

「……」

「今日は用件だけお伝えして立ち去ります。明日の朝、あなた方二人に加え、三郷(さんごう)(しずく)さんと近堂(こんどう)水琴(みこと)さんの四人を瀬能さんの家に集めて下さい。話があります。では、また明日」

 そう言って彼は言ってしまった。

 全く、動けなかった。あの不自然な貫禄と尋常じゃないくらいの威圧感。

「水琴さんに、雫さん……まさか!」

「……ケンプファー?!」

彼の言った四人の共通点、それはケンプファーだった事。

「……とりあえず、俺の方から二人に連絡しておくよ」

「はい……」

「じゃあ、今日はもう帰ろう」

「はい……」

その後、会話と言える会話はせずに俺と紅音は家に帰った。

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