異世界転生したからって選ばれし勇者になれる訳じゃない。 作:アルトルト
やぁどうも、ケンゴだよ。
とうとう全ての女神の試練を突破した俺たちは、神殿の中心部に入っていくんだけど…。
***
広間の中央にあった最後の扉を潜る。
その先には、台座と、それに刺さった1本の剣があった。
剣はこれといった派手な装飾のない、悪く言えば飾り気のない剣だった。
「これが…古の勇者の剣」
「そうだ。それこそが我が友ケインの愛剣だ」
「…誰だ?」
声のした方を向くと、そこにはゆっくりとした足取りに、黒いローブに身を包んだ老人がいた。
「私の名はリヴァス。
…ここの主で、かつて、古の勇者ケインのパーティで魔道士をやっていた者だよ」
「へっ、リヴァス!?」
「ウッソだろお前、リヴァスって言ったら…」
「リヴァスは、もう数百年も前の人間ですよ!?生きてるわけが…」
「ところがどっこい、こうして生きているのだよ」
俺らは口々にアレコレ言う。
そうだ、エリーの言う通り、リヴァスは数百年も前に活躍した古の勇者のパーティメンバー。普通ならもう死んでいるはずだ。
「ふっ、私は今は無き精霊の森の一族。私を含む彼らは数百年を生きる長寿の一族なのだよ。
…とは言っても、それでももう長くはないがな」
「そりゃ凄い話だなぁ」
ジョンが頷く。
するとリヴァスは俺たち3人を代わる代わる見ていく。
「ふむ…しかし、見れば見るほどあいつらに似ているな…」
「あいつら?」
「うむ、ケインとその仲間のエレノア、ジョニーにな」
「へ?それって、どういう…?」
「どういうもこうも、そりゃお前たちがあいつらの子孫だからに決まっているだろう」
………え?
「「「えぇぇぇーっ!!??」」」
どういうことなの!?だって、勇者の血縁者はあのアランじゃ…
「ふむ、地上ではアランという男がケインの血縁とされているが、あれは偽物だな」
「そ、それって…どういう事なんですか?」
エリーが問いかける。
「いや、恥ずかしい話だがね、私たちがかつて魔王を倒して王都に帰った時、私たちを名乗る偽物が代わりに勇者扱いされていてな…多分、アランという男はそいつの子孫だろう」
「はぁ?そんなアホな話があったのか…?」
「あったのだよ、これが。そして元凶は女神の間違えた…というわだな。フッ、女神も衰えたな!」
リヴァスはカッカッカ、と笑い飛ばす。なんか凄い人だなぁ…
てゆうか、俺やっぱり選ばれし勇者じゃんヤッター!異世界転生してよかったー!うれしー!まあ、ハーレムなんざ作る気はないが。だってエリーを怒らせて死にたくないもん。あと
「ふっ…実はな、君たちにプレゼントがあるのだよ」
「プレゼント?」
「ああ。まあ、どんな物かは見てからのお楽しみだがね。
…ではまず、ジョン君。君はジョニーの子孫だね。ならば、これを」
「あっ、はい!
…これは、盾?」
ジョンが渡されたのは白銀に光る大盾だ。
「これはかつてジョニーが使っていた盾だよ。君の為に保管してあったんだ」
「うわ…それって相当凄いもんじゃねぇか。
…おお、持ち手ジャストフィット。こりゃいいもんだ。なんか力湧いてくる気がするし」
ジョンは早速自分の手で盾を持っていた。どうやら丁度いいサイズだったようだ。
「ふふふ、かつてのジョニーを見ているようだな。
で、エリー君は、エレノアの子孫のようだね。ならばこれだな」
「…これは法衣?不思議な法衣ですね」
エリーが渡されたのは未だに新品の如き光沢を持つ青い法衣だ。
「これはエレノアが使っていた神の法衣…一応、君に合わせてある程度修繕してある。後で合わせるといい」
「…ありがとうございます。私があの賢者エレノアの子孫だなんて信じられませんが、それでもこれは、彼女の大事な物だったんでしょう。私も大切にします」
エリーも良いのを貰ったようだ。
…で、俺のは?
「最後にケンゴ君、君だけど…まあ、見ればわかるかな。あの勇者の剣、あれが君へのプレゼントだ。君ならあれを引き抜けるだろう。なにせ、ケインの血縁以外は絶対に引き抜けないようにトラップを作ったからね」
「え、なにそのめんどくさいトラップ」
「いや、あれには凄まじいレベルの女神の加護がかかっていてね…魔力を込めれば、ある程度の奇跡を起こせるクラスの聖剣になっているんだ。だから、彼の血縁者以外に渡すわけにはいかなかったんだ」
「えっ何それは」
うっわこえーこえー…そんな危険物なのかよアレ。
「さぁ、持ってごらん。きっと君の手にフィットするはすだ」
「………」ゴクリ
俺は意を決して剣の柄を握る…!
………何も起きない。それどころか柄は俺の手にフィットしてる気がする。
そして何となく引っこ抜いてみる。
ずぼっ。
…何の抵抗もなく抜けた。こんなん草や(白目)。
「スゲーぜケンゴ!やっぱ俺らは伝説の後継者だったんだな!」
「なんだか、実感が湧きませんね…」
伝説の後継者とか…確かに、そんな実感は湧かない。不思議なもんだ。
元々持ってきていた剣を鞘から引き抜き、伝説の剣を差し込む。ジャストサイズだった。
「…ふっ、あとは君たちを入り口まで飛ばし私の役目も終わりかな」
ふと、リヴァスが呟く。
「へ?」
「私は君たち子孫にこの神器を渡すためにずっと、何百年もここにいた…そして今日、君たちが来たことで私の役目も終わったわけだ。この神殿は元々この神器を守るためだけに作られた神殿…私が命じれば崩れて消えてなくなる…私諸共ね」
「…それってつまり…自殺する気ですか?ここと一緒に?」
俺が問いかける。
「まあ、そういう事だね」
「…いいんですか?」
「構わないさ。老兵は去るのみ、と言うしね」
「…そうですか」
リヴァスの目からは、死の覚悟と、生きることへの執着心の無さが感じられた。
「ああそうだ、最後に君にこれを渡しておこう」
そう言って彼は木の杖に青い宝玉がはめ込まれた杖をエリーに渡す。
「これは…魔法の杖?」
「ああ。それは私が生涯使っていた杖でね。森の長老から貰ったものなんだ。これを、君に託そうと思う」
「いいんですか、こんな大事な物?」
「なぁに、私の屍と共に瓦礫から掘り出されるよりは、君について行って、君や私の子孫の武器になるほうが幸せでしょう」
「そうですね…。
ってちょっと待ってください、『私の子孫』?リヴァスさん子供いたんですか?」
「ああ、いるとも。今どこにいるかは知らないけどね。私の知る限りでは、私によく似ているらしい…。あと、セレナ…うちのパーティの盗賊の子孫もどこかにいるらしい。彼女はセレナのダガーを受け継いでいるから、わかりやすいだろう。機会があったら探して会ってみてくれ」
「…はい、わかりました!」
「では、君たちを神殿の入り口まで飛ばそう。…君たちの旅路に幸多からんことを。『テレポート』」
こうして俺らは、神殿探索を終えたのだった。
***
「うおっと」
「よっと」
「きゃっ、転んじゃいました…」
リヴァスのテレポートで俺たちは神殿の入り口前のキャンプまで戻ってきた。
ゴゴゴゴゴゴ………
すると、地響きの音と共に神殿が崩れ始めた。
「…リヴァスさん…」
「…エリー?どうしたんだ?」
エリーは祈りの姿勢を取っていた。
「私も修道女の端くれですから。彼の黄泉路の平穏を祈ろうかと」
「なるほどな…ジョン、俺らも祈るか」
「ああ…そうだな」
そして俺らは皆手を合わせ、崩れゆく神殿に向かって祈りを捧げた。
そして祈り終えて立ち上がると、
チュッ。
エリーが俺にキスしてきた。
「!!!???」
あるぇー俺なんかフラグ立ててたっけぇー!?
…あ。
『ええいくそ、ならこの神殿の攻略が終わったら1回だけキスさせてやるから!今は全力全開で頑張れ…っ!』
『本当ですか!?わかりました、エリー頑張ります!言質取りましたからね!』
…そういやそんな約束しましたね。
エリーのキスは止まらない。俺の口の中を蹂躙するかの如く舌を這わせてディープキス。
まあかく言う俺も満更でもないから俺もエリーの口に舌突っ込んでるけどね!!
そして数分くらいねっとりとキスをした後、お互いに唇を話す。
…あ、やべー。唾液の糸が凄く…えっちいです…。
「…あの、ケンゴ?」
「…なんだエリー?」
「…押し倒していいですか?」
「…ダメ。というかそれって男が言う事じゃないかなフツー」
まあ俺も我慢してるだけでここが宿で二人っきりだったら押し倒してる自身あるけどね!
「……もう我慢の限界だおいゴラァ!!お前らのいちゃいちゃを目の前で見せつけられるこっちの身にもなりやがれこの無自覚バカップルゥ!!砂糖吐きそうだわコンチクショウ!!もう慣れたけど!!」
なんか後ろでジョンが騒いでるけど気にしないことにした。
***
しばらくして。
「…嘘だろ、神殿が…無くなってる」
「どういうことなの…?」
「わかんねぇよ、勇者がわかんないならアタシにもわかんねぇよ」
「メレナの言う通りだねぇ…」
「…む?あそこに誰かいるぞ」
「… あれって、人…ですかね?」
「ああ…人、だな。でも、なんでここに?」
キャンプの撤収作業を終えて出発しようとすると、上と繋がっている道の入り口から声が聞こえてきた。これは…
「…ん?おお、ハーレムクソ男…じゃねぇ、アランじゃねえか爆発しろー!」
と元気よく挨拶()してやった。
「なんだよその挨拶!?ハーレムクソ男ってなんなの!?てかケンゴなんでここにいるんだい!?」
今来たのは女神の神殿に特訓に来たアラン御一行だった。どうやら今到着したようだ。少し遅かったな、ざまぁ。
「…ねえ、ケンゴ?ここにあるはずの「女神の神殿」は?なんでないのさ?」
「んー?俺らもさっき来たとこだからわかんねぇな」
アランに訪ねられる。
当然だか思いっきり嘘をつく。
こうでもしなきゃ色々めんどくさそうだからな…
「そうか…すまない、天性のバカと言われた君に聞いた僕が馬鹿だったよ」
「ほんっとお前のナチュラルクズっぷりは相変わらずだなオイ」
ほんとコイツ昔からさらっとクズい言葉をさらっと言ってくるから恐ろしい。てか俺が天性のバカって言われたのは昔バカにされた時だけなんだけどな!?
「まあいいや。特に何もないっぽいし、俺らは先に上に戻るぜ」
「あ、ああ…じゃあね」
とりあえずここでアランたちと話していても特に意味は無いので、さっさと先に向かうことにした。
アランは予定が大きく狂ったせいかなんか凄く落ち込んでる気がした。
そして俺たちアランと愉快な仲間たち御一行は、リヴァスさんからの
嫌な予感は尽きないけどな!(涙目)
***
〜同時刻・魔王城〜
魔王の玉座、そこで魔王の配下となったメロエロが、偵察からの報告を魔王にしていた。
『魔王サマ?勇者とその一行が「遺産」を手に入れたって情報が入ったよ』
「そうか…メロエロよ、報告感謝する。…そろそろ我らも本腰を入れるべきだな」
魔王がワイングラスを片手にほくそ笑む。
『で、何するの?僕も暴れられるなら行きたいんだけど』
「…南の都市に攻勢をかける。そろそろ、人間どもに我らの真の力を見せてやるのだよ…。なに、メロエロの手は煩わせないさ」
『そっかー残念。まあいいや。部下に攻勢の準備を伝達してくるねー』
「頼んだぞ。ククク…今度こそ、我が手に世界を…!クフフフ、フハハハハ、アーッハッハッハー!……あ痛っ!?」
『…あ、また魔王サマ段差でコケたでしょ。気をつけないと…』
「ふぇぇ…痛いよぉ…」
魔王城は今日も賑やかだった。