異世界転生したからって選ばれし勇者になれる訳じゃない。   作:アルトルト

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今回は番外編、「古の勇者ケイン」のお話です。


番外編 真・古の勇者伝説

ある世界、その内の一大陸。

 

そこには、人類が繁栄していた。

 

人々は物を作り、発展し、集団を作り、文明を築き、国を作り、時に人類同士で争いながらも、日々を平和に暮らしていた。

 

しかし、それは脆くも崩れ去る。

 

『我ガ名ハ魔王…我ハ、人類ニ宣戦ヲ布告スル…我ハ、世界ヲ統ベル者ナリ…』

 

突如として現れた「魔王」なる存在と、その配下…「魔物」により、世界は闇に覆われ、人類は蹂躙された。

王国の精鋭集団である王立騎士団でさえ、その一部を除き、誰も魔物に適う者はいなかった。

 

魔王の出現からおよそ半年。

 

ーー人類は、もうその生存圏の半分以上を失っていた。

 

***

 

それはある日の、突然の事だった。

王都に住むただのしがない鍛冶屋の息子ケインは、家で今日も呑気にゴロゴロと寝ていたのだが。

 

ドンドンドン!

 

「王立騎士団だ!ケインは、ケインはいるか!?」

 

ドアが強く叩かれる。

うるさいなぁ…眠れねぇじゃんか。

 

「おい!ケインは、ケインはいないのか!?」

 

ドンドンドンドンドン!!

 

更に強くドアが叩かれる。これではうるさすぎて眠れやしない。

 

………イラッ☆

 

「……るっせぇな眠れねぇだろいい加減にしやがれクソッタレーー!!」

 

俺がストレスをぶちまけながら叫び、ドアへ向かうと、

 

「おおケインか!王が貴様をお呼びだ!付いてきてもらおう!」

「…はっ?」

 

騎士殿がそんな事をのたまった。

…さすがに突拍子無さすぎてしばらく理解できなかった。

 

***

 

「うぉっほん!君たちに集まってもらったのは他でもない、今王国を危機に陥れようとする魔王の軍勢の事についてだが…」

 

そして安眠を邪魔された挙句言われるがままに騎士に連れられて今、俺は王城、それも王の間にいた。

 

俺はケイン。ただの一市民のケインだ。王様に呼ばれるようなことなんてしてないし、力自慢ってわけでも、魔法がとても上手いわけでもない、ただのケインだ。強いて言うなら親父が国一番の鍛冶師ってぐらいで、今俺が持ってる剣も親父が今ある最高の素材で作った最高傑作の剣だ。

そして俺の周りには今、国一番の僧侶エレノア、最強の騎士ジョニー、噂の女盗賊セレナ、精霊の森から来たという魔道士のリヴァスがいた。

…何これ。こいつらが世界を救うパーティメンバーなら、俺は不釣り合いってレベルじゃねーぞ恥ずかしい。

 

「…あー、であるからして。女神様に選ばれた君たちには勇者として魔王討伐に行ってもらいたい!我々からも全力で支援することを誓おう」

 

あーヤダヤダそういう重苦しいの俺には会わないっての。なんでたったの5人で国を救わなきゃならんの。それこそ騎士サマの仕事でしょうに。そんな救国の勇者様的なの後免なんで。

ということで拒否しようとしたら、

 

「…ちなみに拒否するならば、この場で処刑もやむ無いのであしからず」

 

…脅迫じゃねぇか!!

 

こんなとこで死にたくないので渋々受けた。

 

***

 

「あー…俺はケイン。よろしく」

「エレノアと申します」

「ジョニーだ、よろしく頼むぜ」

「あたしゃセレナ!よろしくね!」

「…リヴァスだ」

 

とりあえず仲間と超簡単な自己紹介をして、王様から武具をもらって旅立つ。

 

前途多難の気がビンビンしていた。

 

***

 

そして初の戦闘。相手はスライムの大軍だった。

 

「俺がやるぜぇぇぇ!」

「あ、待ってくださいジョニー!そこまで行かれると私の支援が…!」

「お宝持ってないなら興味無いね。アンタらで勝手にやっといてくれ」

「お前らちょっとは協力しろよ!?」

 

…ヤバイ、チームワークのチの字すらありゃしないぞこれ。ちなみにリヴァスはいつの間にか魔法でどっかに隠れたようだ。くっそあのクソダサ黒ローブめ、後で小言言ってやる。

 

やっぱり前途多難だった。

 

***

 

…それから、いろんな事があった。

仲間たちは誰1人として協調性がなかったので、大体俺がメンバーの間に立って調整する役…つまりまとめ役になっていた。気がつけば俺は「勇者」なんて大層な異名を貰ってたっけか。

確かに前途多難ではあったが、それでも俺たちは最後には協力して、強大な敵を倒してきたのだ。

本当に、色々なことがあった…

 

***

 

…それはある時、ある村を魔物から守れず、俺がとても落ち込んでた時。

 

「ケイン、お前はリーダーだろ?リーダーが沈んでちゃなんもならねぇだろ。ほら、シャキッとしろ!この俺、最強騎士のジョニーもいるんだしよ!」

「ジョニー…ありがとう、こんな俺のために」

「いいってことよ!さ、悔やんでる暇があったら、飯食って、鍛えて、リベンジだ!」

「…ああ!」

 

ジョニーに励まされて、俺は村を滅ぼした魔物を倒すことができた。それ以来ジョニーとは悪友的な仲になった。

 

***

 

…それはある時、南の大都市でちょっとしたメンバー間の不和が原因セレナがパーティを抜けると言い出して、街を出ていこうとした時。

 

「もう誰もお前を要らないなんて言わない!言わせない!お前は…セレナは、俺たちに必要なんだよ!だから…だから!いつでも帰ってこい!そん時は、俺たち皆が待っててやるから!だから…!」

「…泣くんじゃないよ、リーダー。あんたが泣いてちゃ、私も旅立てないよ」

「…っ!ごめん…」

「謝ることじゃないさ。あたしゃ好きに生きるって決めたんだ。そのうちまたふらりとアンタらの所に戻ってくるかもよ?…それまで、元気でいるんだよ」

「…!!

ああ、もちろんだ!じゃあな、セレナ!また、いつか!」

 

それからまたしばらくしてセレナは戻ってきてくれた。セレナは、俺たちのパーティメンバーの心の支えでもあったのかもしれない。

 

***

 

…それはある時、西の精霊の森が魔物たちに焼かれて撤退を余儀なくされた時。

 

「私は故郷を失ったのだぞ!?その恨みを、悲しみを…何にぶつければいいのだ!?あまつさえ貴様は私にここから逃げろというのだ!ケイン、貴様は私にどうしろと言うのだ!?」

「どうしろとも言わねぇよ!お前の恨みも、悲しみも、俺が分かちあってやる!だから、今は逃げるんだよ!あいつにはまだ勝てない!今は、耐え忍ぶ時だ…!」

「くっ…確かに、そうだ…。

…長老…皆…済まない…!いつか、いつか必ず、私と、私の仲間たちが、皆の無念を晴らすため、仇を取る!そう、誓おう!だから、今は…今は、安らかに眠ってくれ…!」

 

あれから、リヴァスは俺たちに心を開いてくれるようになった。リヴァスがいなかったら、俺たちはどこかで死んでいたかもしれない。

 

***

 

…それはある時、魔王の城に突入する前の晩。

 

「…勇者様、いえ、ケイン…私は、もう誰も失いたくないのです…もう、私は仲間を、家族を失いたくないのです…!」

「大丈夫、大丈夫だ、エレノア。俺が、俺が絶対に、絶対にお前を守り抜いてみせるから。安心してくれ。俺は、お前を置いて逝ったりはしない…!だって、俺はお前を愛しているんだから…!」

「ケイン…私は、私は…っ!私も、あなたを愛しています…!だから、私を置いて逝ったりしたら…許しませんからね…!」

「…ああ、エレノア。誓うよ。絶対に、君を置いて逝ったりはしない…!皆で、生きて帰るんだ…!」

 

そうして、俺とエレノアは愛を誓い合った。

 

そして…

 

***

 

『グォォォォ…!!オノレ、勇者ヨ…!コノ我ヲ倒ストハ…!シカシ、我ヲ倒シテモ悪ハ決シテ滅ビヌ…!イズレマタ新タナ悪が現レ、世界ヲ滅ボスダロウ…!!』

「うるせぇ!!黙って成仏しやがれ、魔王!!」

 

俺の最後の一刺しが、魔王の胸を貫く。

そして、魔王は一際大きな叫びを上げて消滅した。

 

…瓦礫の隙間から、黒い雲に覆われていた空が晴れ、青く澄みわたった大空が見える。

 

「ついに…やったんだな、俺ら…」

「ああ…これで精霊の森の皆も浮かばれる」

「ヘッ、この青い大空が、今のアタシたちだけのお宝…ってわけだね」

「ええ…さあケイン、帰りましょう」

「ああ…エレノア、皆、帰ろう。皆が待ってる場所へ…」

 

こうして、俺たちの冒険は終わったのだった。

 

***

 

そして、いざ王都に戻ってみるとどうか。

 

俺らを語る何者かが勝手に「俺らが魔王を倒しました」と言ったせいで既に魔王撃破の記念祝典は終わっており、そいつらが本物扱いされたせいで俺らは本物にも関わらず偽物扱いされたのだった。

 

「はは…なんだこりゃ」

「…なんか王様からお宝が貰えるかもって思ったんだがねぇ」

「あはは…」

「最後は貧乏くじ、ってことか?笑えるな、こりゃ!」

「…まあ、ある意味私たちらしいと言えばそうではないかな?」

 

『…ぷっ、ハハハハハ!』

 

そんなリヴァスの一言に俺らは全員で笑い合った後、

 

『…ああ、そうだな/ですね!』

 

と言い合ったのだった。

 

***

 

それから俺たちは魔王討伐に使った武具をそれぞれ1つずつ、いずれ訪れるであろう脅威に対して立ち向かうであろう子孫たちの為に、それを残すことにした。

 

俺は親父の剣を。

エレノアは自身の大切な法衣を。

ジョニーは師匠の形見の大盾を。

セレナは愛用のダガーを。

リヴァスは長老から託された杖を。

 

そうして、これらの武具は旅先で出会った信用できる人々に預けることにした。

エレノアの法衣は国立教会の大神父に。

ジョニーの篭手は王国騎士団の将軍に。

セレナのダガーは彼女の子孫に。

そして俺の剣はリヴァスに。

リヴァスは精霊の森の人間特有の長寿もあったので、自身で管理することにした。

 

そして俺たちはそれぞれの道に向けて歩み始めた。これからの未来に向かって…

 

***

 

あの冒険から数年後のある日、不思議な夢を見た。

 

そこは王都だった。でも、俺の知ってる王都じゃない。直感がここは未来だ、と言っていた。どうやら、周りの人には俺が見えてないようだ。

 

そして大量の人に囲まれた通りの真ん中に、「勇者様御一行」と書かれた馬車があって、そこから勇者らしき人物とその仲間が外を覗いていた。

…うっわ、俺や俺の仲間に似ても似つかねぇ。多分例の偽勇者どもの子孫だろう。

 

そして視点は切り替わる。

そこはセレナがパーティを一時抜けることになった大都市だった。

そこの裏路地で盗みを働く少女。彼女はエレナと呼ばれていた。セレナに良く似ている。手にはセレナの物と全く同じダガーが握られていた。

 

さらに視点は切り替わる。

そこはどこかの洞窟だった。

そこには老人と少年が1人。

少年はリヴァスによく似た、リヴァイアという少年だった。どうやら老人から魔法を教わっているようだ。

 

そしてまた視点は切り替わる。

次に見えたのは、3人の少年少女。1人はエレノアによく似た女の子で、エリーと呼ばれていた。もう1人はジョニーに似た男の子で、ジョンと呼ばれていた。そして最後の1人は俺に似たやつで、ケンゴと呼ばれていた。

彼らはスライムとコウモリの群れに追いかけられながら、「なんでこんなに魔物が湧くんだよぉ!?勇者倒せよオイ!」と叫んでいた。…ああ、貧乏くじ体質、受け継がれちゃったかー…まあ、頑張れ。

 

そして目を覚ます。

…ああ、きっと彼らが俺たち勇者パーティの子孫なのだろう。彼らには様々な試練が待っているだろう。けど、彼らならきっと乗り越えられるだろう。

俺は、そう信じてる。




ついに書き溜めが尽きたのでこれからは更新頻度が落ちます。多分。
拙い作品ですが、完結まで頑張りますのでこれからもよろしくお願いします。
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