異世界転生したからって選ばれし勇者になれる訳じゃない。 作:アルトルト
やっほう皆、ケンゴだよ!
さてあの後、俺たちは大陸の南にある大都市にやって来ました!
勇者パーティの子孫探しと、あと最近ここらに魔王軍が集まっているという情報を聞きつけたのが理由だ。ちなみにアランたち御一行はいつの間にか俺たちを追い越してもう到着して戦場入りしている。はえーよホセ。
「ここかぁ…流石大都市、でっかいねぇ」
「そりゃケンゴ、ここは王都に次ぐ大都市にして国1番の交易都市だからな」
「美味しいものとか、綺麗な物とか、いっぱいありそうですね」
「まぁ、観光目的ではないがな!」
「「そりゃそうだろう/でしょう」」
「うーん2人ともナイスツッコミ!」
とまぁいつも通り平常運転な俺たちだった。
***
「しかし…あれだな、出店多いな」
「ここは世界中の交易品が集まる市場ですからね」
「だからこそ、世界中の貴重な物品を求めて多くの店と客が集まるのさ」
「ふぅーん、そーなのか」
今、俺たちは人通りの多い市街地を歩いてる。
道横には多くの出店が並び、いい感じの店からなんか怪しげな店まで様々だ。人によってはぼったくられることもありそうだ。
まあ、前世でそこら辺嫌という程警告されたので俺は大丈夫…だと思う。そう言う奴ほど引っかかりやすいらしいが。
どんっ
「うぉっ」
「キャッ…ごめんなさい…」
そんな事を考えていたら、俺は反対側から歩いてきた、フードを被った少女とぶつかってしまった。
「あー、ごめん、大丈夫?」
「…はい、大丈夫です。ありがとうございます」
一応少女に大丈夫だったかと聞くと、少女はそう言ってさっさと行ってしまった。
「おいおい何やってんだよケンゴ…気ぃつけろよ?」
「わーってるよジョン…あれ?」
ふと、ズボンのポケットの中が軽いような感覚がする。
サッとポケットを漁ると…
…あれ、財布が無くなってる!?
「?
ケンゴ、どうかしましたか?」
「あー、いや何でもない…」
表向きは平静を保っているが、ぶっちゃけ内心動揺しまくってる。
落とした?いや、いくらこの人通りでも落とせば音が鳴るはずだ。だってこの世界には紙幣なんて無いから貨幣しか入っていないはずなのだから。
では…盗まれた?
いつ?
どこで?
どうやって?
……あ。
『うぉっ』
『キャッ…ごめんなさい…』
…もしや、あの少女!?
確かに、財布が無くなったのはあの少女とぶつかってからだ。となるとやはり…
「すまんジョン、エリー!俺用事思い出したわ!行ってくる!」
「え!?ちょっと待てケンゴ!」
「えっ、ケンゴどこへ行くんですかー!?
…えーっと、
「オーケー分かった一と半刻後な!んじゃ!」
そう言って俺は人ごみの中へ駆け出した。
***
市場から少し裏手に入った裏路地。
ケンゴが追う件の少女は、フードを脱ぎ、ケンゴの財布をその手に握りニヤニヤしていた。
「ふっふっふ…チョロい」
やった。
まったく警戒されることなく財布をスれた。
旅行客の、それもあんな不用心で優男そうな兄ちゃんほど楽なカモはいないね。
さて、どのくらい入っているのかな?
「さーて、中身は…うっひょ、いっぱい入ってんなぁ〜!これで当分は大丈夫だな!あいつらも喜ぶぞ〜!」
ルンルン気分で『家』に帰ろうとする。
…と。
ふと、後ろから声。
足音も。走る音だ。
「………待てやドロボー!!俺の財布返しやがれぇぇぇ!!!」
「げぇっさっきの兄ちゃん!?もう追いかけて来たのか!?」
「ったりめぇだ金返しやがれぇぇぇ!!!」
「ヒィィィィッ!?」
なんか凄くどす黒いオーラ放ってるような気がするんだけど!?殺気が凄まじいよ!?
…この人やばい、逃げなきゃ騎士に突き出される!!社会的に殺される!!
少女は咄嗟に素早く、路地の更に奥へ駆け出す。
「くっ、来るなぁ!」
「財布返せば追わねぇよだから財布返せクソガキィ!!」
こうして少女とケンゴの夜の裏路地捕物レースが始まった。
***
逃げる、追う、逃げる、追う。
少女は時に自身の軽い身のこなしを使い、自分たちしか行けないはずの裏ルートや壁走りなどで逃げ切ろうとするが、何をやってもケンゴはそれに追いすがって来る。
何なんだこいつは、財布の一つや二つスられたくらいで何故そんなにムキになれるのか、普通は今すぐ追うなんて考えずにさっさと騎士に通報して、自分はガックリくるのが先だろうに、というか今更だけどアホみたいに足速いなコイツ!?と少女は考える。
残念、
そして。
「え゛え゛い、埒が明かねぇ!ならばくらえ『バインドチェーン』!」
痺れを切らしたケンゴが魔法を唱えると、少女を縛らんと鉄の鎖が現れる!
「っ魔法!?だったら…これだ!」
すると少女は隠していたタガーを取り出す。
そのダガーは古ぼけた、年季の入った一品のようだ。
そして少女はダガーを構え、
「『聖なる刃よ、魔を払え』!」
と叫ぶと、急にダガーが光り、彼女を縛ろうとしていた魔法の鎖が一瞬の内に消え去る。
「んなっ、『退魔の刃』!?」
退魔の刃。
それは決められた詠唱を唱える事で魔法を含む「『魔』を払う光を放つ刃」であり、今の技術では生産が非常に難しい特殊かつ希少な製品である。
それを何故こんな少女が?とケンゴは考える。
「へっ、『なんでこんなガキンチョがそんなもん持ってんだ?』って顔してるぜ兄ちゃん!財布と引き換えに教えてあげるよ!これはね、アタシの家に伝わる逸品なのさ!どーだ、凄いだろ!」
「そりゃあ凄いな!だが財布は返せゴルァァ!!」
「へっ、誰が返すか!」
こうして、夜の裏路地捕物レース第二幕が幕を開ける…と思いきや。
「……あーめんどい!そろそろ本気だすわもう…」
「は?」
え、今の今まで本気じゃなかったの?と少女は愕然とし、内心焦り出す。それもそうだ。今までがこの男の本気じゃないのなら、今まで本気で走っていた自分などあっさり捕まるのでは?と。
「ホイ捕まえた」
「!?」
そんな事を考えていたら、少女はあっさりと捕まってしまった。早すぎる、どんな超スピード!?と少女は驚愕する。
そしてケンゴは少女の手からサッと財布を取り上げると、
「さてとガキンチョ、何が目的でスリなんてしたんだ?」
「え…いや、それは…」
「言いにくいような事か?正直に答えないと騎士に突き出すぞ?…言っとくが、俺は本気だ」
「ヒィッ」
少女は直感で、まずい、言葉の通りこの男は本気だ!と理解する。
「こ…」
「こ?」
「こ、孤児院に…近くの孤児院に寄付するためだよ…」
おや、案外まともだな、とケンゴは考える。
「へぇ…動機は?」
「そこの孤児院、経営が良くないんだ…だから、アタシが出来る事をして、それのお金を…」
「だからって、人様の金を盗んでいいわけじゃねぇだろ?」
「そ、それは…わかってるけど…でも」
「でもじゃねぇ。理由は真っ当でも、やり方が真っ黒じゃ意味がねぇだろ?お前がどうしてもそこの力になりたいのなら、今のお前の身の丈にあった仕事をして、真っ当に金を稼ぐんだな」
これは、前世でもこの世界でも変わらぬ思想だろう。それに、人様から盗んだ金で自分たちが助けられているなんて知ったら、孤児院の人々はどう考えるだろうか。そのためだけに自分の地位を投げ打つのは、どうなのだろうか。
ケンゴとしては、愚の骨頂でしかなかった。
「…う」
「ホレ、お説教はここまで。ほらほら、帰った帰った」
少女は歯噛みし、ケンゴはシッシッ、と手を振って少女を追い返そうとする。
「…なあ、アンタ、名前聞いてもいいか?」
「え?俺はケンゴだけど…どうかしたのか?」
「いや、聞いておきたかっただけだよ…」
「そうか。…じゃあ、名前の代わりにお前の名前と、そのダガーについて詳しく教えてくれねぇか?」
もしかしたら勇者ケインのパーティメンバーの一人、セレナのダガーかもしれないからな。まあ、それなら彼女セレナの子孫ってことになるが…まあ有り得ないか。とケンゴは楽観視した…のだが。
「あー、それくらいならいいぞ。アタシはエレナ。んで、このダガーはさっき言った通り、アタシの家に伝わる逸品で、最初の持ち主はえーっと…『セレナ』って言ったたかな?」
……うっそーん、ビンゴですか。
ケンゴは、うっかり開いた口が塞がらなかった。
うーん、三人称視点って難しい…
もうちょっと上手く書きたいですね。