異世界転生したからって選ばれし勇者になれる訳じゃない。   作:アルトルト

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お待たせしました!今回は番外編です。
時系列的にはメロエロとの戦いの後、女神の谷に向かう最中の事になります。


番外編 友情の始まりが穏やかなわけじゃない。

「…うし、今日はここら辺で野宿としようか」

「オッケーだケンゴ。あ゛ー…今日も疲れたぜ…」

「そうですねぇ…砂漠越えってなんでこう…大変なんですかね…?」

「知らんがな。さージョン、エリー?うだうだ言ってないでテント組むぞー」

「「はぁーい…」」

 

よっす、俺ケンゴ。

メロエロとの戦いから1週間とちょっと、俺たちは『女神の谷』に向かうためにただ今絶賛砂漠越え中。…まあ、めっっっちゃ大変だけどな!(涙目)

 

そして今は陽炎で揺れる地平線に落ちる夕暮れが美しい中、適当に休めそうな小高い場所で野宿のための準備をしていた。

 

「にしても…夕日が綺麗だな、特に今日は」

 

テント設置の最中、突然ジョンが話を切り出す。

後ろを向いて夕日を見る。…確かに、今日は一段と綺麗な気がする。

 

「そだな。前の世界でもこんな景色は見れなかったな…」

「ん?前の世界?」

「あ゛っ!?あーいや、何でもない何でもない、こっちの話…ハハハハハ」

「はあ…そうかい」

 

はー危ない、ついつい口走ってしまった…ごまかせて良かった…

 

「にしたってなぜ急に夕日の話を?」

「いや…思い出してさ。俺とお前が仲良くなるきっかけになった大喧嘩の時のこと。懐かしいなー…って」

「あー…そういやあの時もこんな感じの綺麗な夕日だったっけか」

「ああ。あれは確か…そう、10年くらい前の話だっけか…」

 

***

 

あの頃、俺は村でも有名なワルガキだった。

よくイタズラはするし、勉強も大したことがない。喧嘩っぱやくて、性格もいわゆるガキ大将で大人からも女子からもあまり好かれてはいなかった。

でも、当時の俺は村のチビ共からは慕われていたっけ。俺はそれだけで充分だって思ってた。

 

でも、俺が唯一気に食わない同年代の奴が3人いた。

1人は3年前に引越してきた教会の娘のエリー。

もう1人はそこそこ頭が良くてイケメンで優しいけどナヨナヨしいアラン。

最後の1人は無駄に頭が良くていっつもこっちを見下したみたいな態度のケンゴだった。

 

それで、俺はまずアランから手を出すことにした。そしたらあいつは、「ゆっ、許して…!何でもするから、許してくださいっ…!」って言って何もしないまま俺に頭を下げた。流石にこんなのに手を出す気にはなれなくて、見逃してやった。

 

次に手を出したのはエリーだった。俺はあいつをボコるために仲間を連れてからボコしてやった。いうならリンチ…ってとこか。はぁ、今考えると恥ずかしさを通り越して惨めにさえ覚えてくるな…。

まあ、その頃の俺にとっちゃ、誰かを殴ったり蹴ったりするのは快感でしかなかったな。あー恥ずかし。

 

で、ある時エリーを森に呼び出したとき、お前…ケンゴは、「村の男子のよしみだ、付いてってやるよ」って言って付いてきたんだったな。まあ、俺はお前が俺たちとエリーをボコすのかと期待していたが…まあそんなことはなかったな。

んで、エリーのペンダントを森に投げ捨てて、次の日になったら何故かもうエリーがペンダントを見つけてて、嬉しそうな顔で何故かお前にべったりで、何が起こったのかさっぱりわからなかった。なんせ、俺としてはエリーはペンダントを見つけられなくて、心をバッキバキに折ったつもりだったからな。

 

それから俺はなんでこんなことになったかの情報を集めて、それでお前が手伝ったことを聞いて、「余計なことしやがって」って思った。それでお前を村の広場に呼び出して、決闘を申し込んだんだ。

 

***

 

10年前、村の広場。

そこではジョンの取り巻きやエリー、村の大人たちが集まっており、その中心にできた円の中に、幼き日のジョンとケンゴが立っていた。

 

「…俺をこんな所に呼び出して、何の用だよ」

「何の用もなんも、決闘だって言ってんだろ!さあ、俺と戦え!」

「…嫌だね。なんでそんな事しなきゃならないんだよ。それに、俺はあまり痛いのは嫌いなんだよ…」

「うるせぇ!…よしお前ら、ケンゴが逃げないように道を塞いどけ!」

『りょうかい!』

 

ジョンの命令で、ジョンの取り巻きたちがケンゴの逃げ道を塞ぐ。

 

「へっ、これで逃げられねぇぞ!さあ、俺と戦え!」

「…はぁ…めんどくせぇが、テメーみてぇなガキには1発思い知らせてやらんとダメか…」

「はぁ!?てめぇもガキだろーが!ごちゃごちゃ言ってんじゃ…ねぇぇぇ!」

 

ジョンは駆け出してケンゴに殴り掛かる。

 

「…そんな単調なパンチじゃ、俺には当たんねぇぞ?」

 

それをケンゴはひらっと華麗に回避する。

 

「っ!くっそぉぉ!」

 

それを追う形でジョンは更に殴り掛かる。

 

「よっと…そら、これで懲りろ!」

「うおっ…ガッ!?」

 

ケンゴはその拳を両の手で受け流し、バランスを崩したジョンの腹に右のストレートを叩き込む。

 

「そら…これで諦めろよ」

「ガッ…うう…くそっ、まだだ…」

「…まーだ懲りないか…いいぜ、殴られたいならいくらでも殴ってやるよ!」

「グッ…オオオ!!」

 

ジョンが殴り掛かる。ケンゴが受け流してカウンターをかける。ジョンが後ずさり、また殴り掛かる。

…それが何回繰り返されただろうか。

昼頃から始まった決闘は、もう既に夕方に入っていた。

 

「はあ、はあ、はあ…クソ、なんでまだ諦めない…!?」

「ハァ、ハァ、ハァ…決まってる…お前が、気に食わないからだ…いっつもいっつも上から目線で…スカしてて…ウザイんだよ…だから、俺がお前を倒して…お前に思い知らせてやるんだ…俺の方が強いって…だから、俺は、お前に…勝つ…!」

「…そうかよ。じゃあ、次でその信念ごとテメーを倒してやる!」

 

遂に、転生者で精神的には大人のケンゴも我慢の限界だった。

本気の一撃で、奴を倒す。

それだけを胸に、ジョンに殴りかかった。

 

「ぐっ、オオオオオ……!!」

 

すると、ジョンは同じく駆け出してケンゴに殴り掛かる。

ケンゴはともかく、ジョンは満身創痍。もはや結末は誰の目にも明らかだった。

 

…だが、勝利の女神は、気まぐれなのだ。

 

バキィ!

 

「ガッ…!?テメー…」

「グフッ…へっ、1発…くれてやった…ぜ…」

 

ジョンの放った拳は、ついにケンゴの頬に当たったのだ。

それとクロスカウンターになる形でケンゴの拳もジョンの顔に当たり、ジョンは遂に倒れてしまった。

 

「クソ…ジョン、お前…やるじゃねえか……お前、ある意味すげぇよ」

 

ぶっ倒れたジョンを見ながら、ケンゴはニヤリと笑い、赤くなった頬を擦りながら呟き。

 

ジョンは薄れゆく意識の中、燃えるような夕日を見ながら満足げにわらうと、そのまま気絶したのだった。

 

***

 

それからというもの、形を変えては俺はケンゴに決闘を挑んだっけか。

野菜の早取り対決、足の速さ対決、知識対決…他、いろいろ。

そんなバカばっかりしてる内に、俺とお前は仲良くなっていって。んで、ケンゴとよく一緒にいたエリーとも仲良くなって。

…その頃にはもう、俺は誰かを傷つけることに快感は覚えなくなってた。友達といる時間の方が楽しいって、そう思えるようになったから。

それで、俺は思ったんだ。俺はこいつらを守りたい。大切な友達を守りたいって。それで、俺は盾を持つことにしたんだ。

 

***

 

「…んで、そんなこんなでもう10年だ。…腐れ縁だな」

「そうだな…しかしあれだな、今思うとやっぱガキだな、当時のジョンは」

 

2人でかつての思い出に浸り、それでしんみりしながら思ったことを口にする。

 

「ハッ、やめてくれよ…俺も恥ずかしいんだよ…」

 

ジョンも少々赤面しながら答える。

 

「…それに、お前も昔は超が付くほどにカッコつけてた癖にさ。

…『閃光と暗黒の剣(ライトアンドダークネスソード)』とか」

「ばっ、それは…!?」

 

やっ、ヤメロォー!それは俺が13の時に初めて手に入れた剣に2度目の中二病真っ盛りの俺が付けたスゲー恥ずかしい名前じゃねえか!?

 

「ふふふ、お前も人の事は言えまいよ…?」

「ぐっ、ぐぬぅ…」

 

くっ、人の黒歴史を引き合いに出すとは…卑怯な!

 

「…まあ、それもいい思い出ってことで流そうや。さ、テント建てようぜ」

「…黒歴史をいい思い出で流していいかはともかく…まあ、そうだな。いい思い出ってことで。何だかんだこうやって仲良くやれてるんだしな」

「そういうこった」

 

ハハハハハ、と笑い合い、俺たちはテントの設置に戻ったのだった。

 

***

 

いつか、この友情に終わりが来たとしても。

いつか、俺とお前が道を違えることになっても。

 

それでも俺は、お前と過ごした日々のことは、忘れないだろう。

 

あの、大切な日々の事を。




という訳で、ジョンとケンゴの友情の始まりでした。
かつての2人はライバルでしたが、今ではお互いを認め合い、いい仲間で親友です。ジョンは、そんなケンゴやエリーを守るために盾を取った…といった具合です。
ちなみに、ケンゴ一行の年齢は大体全員とも18ぐらいです。

次回は…いつになるでしょうか。でも、なるべく早く更新するために頑張る所存です。では。
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