異世界転生したからって選ばれし勇者になれる訳じゃない。 作:アルトルト
お待たせしました、しばらくモチベ低下に苦しめられてましたがようやく最新話投稿です。
やあ皆、ケンゴだよ。
今俺は、エレナと共に街の中心部にたどり着いた所だ。
「っ…これは…」
「なんだこれ…ひどい」
街の中心部は燃え上がる炎に包まれていた。
幸い、人の死体らしきものは見当たらない。
けれど、つい数時間前まで平和に賑わっていた市場の姿は、もうなかった。
そして、その中心には白いローブの人物が1人。男か女かは分からない。
「…ん、以外にもお早い到着だね、もう1人の勇者クン?」
「…誰だあんたは!?これをやったのはお前か!?」
「うむそうだね…うん、イエス、かな。こうやって騒ぎを起こせば君に手っ取り早く会えると思ってね。あ、人は殺してないから安心してね、僕はそこら辺の配慮はできる方なんだ」
「……!!」
「あ、おいケンゴ!」
その言葉を聞いた瞬間、俺はエレナの静止を無視してそいつに切りかかっていた。
…が、剣の刃は奴に届くこと無く、何も無い場所で弾かれる。まるでバリアでもあるかのようだ。
「くうっ、なんで剣が当たらない!?」
「…プッ、そんなちゃちな攻撃じゃ僕にダメージを与えることなんて出来るわけないじゃないか」
ケラケラと奴は俺を指差しながら笑う。
…こいつ、イラッとくるな…。
「でもまあ、その程度じゃまだまだあいつには勝てないかな…」
「…あいつ?」
「ああごめんよ、こっちの話さ。…まあ、これならこれで、成長は見込めるかな。それじゃ、僕はこれで」
「なっ…!?ちょっと待て、お前、誰なんだ!?魔王軍なのか!?人間なのか!?お前は…!!」
「それはまだ答えられないかなぁ…。じゃあね、僕の大事なナイトさん」
俺の問に答えぬまま、奴は虚空に溶けるように消えていった。
俺は、呆然とその場に立つことしかできなかった。
「…あ、おーい!ケンゴー!お前何やってんだよ、探したんだぞオイ!」
「あ、ジョン…悪ぃ、ちょっとな」
「ちょっともそっともねぇよ、早くここから離れるぞ、危ねぇかんな!」
「お、おう…。
…何だったんだ、あいつは…」
あの謎のローブの人物の存在は、俺に謎を残すだけ残して混乱させただけだった。
***
その後、俺たちは他に宿がありそうな港の方へ向かった。泊まる予定だった宿は焼けちまったからね…あいつ、なんてことをしてくれたのでしょうか。
仕方ないから宿を回ることにした。
とりあえずはエレナがたまに使うらしい宿へ。
「ごめーん、空き部屋あるー?」
「ん?ああエレナかい?残念だけど今日はもう空き部屋はないよ」
「あ、そう?ありがとねー」
***
次の宿。次はジョンが入っていった。
「すんません、空き部屋あります?」
「む?ないぞ」
「そうですか、ありがとうございます」
***
次はエリー。
「すいませーん、空き部屋ありますかー…?」
「ごめんねぇ、今日はもう無いのよ」
「あ、そう、ですか…」
***
続いては俺。
「すんません、空き部屋は…」
「(そんなものは)ないです」
「アッハイ」
以下略。
***
「結局全滅だよ!!」
ジョンの悲痛な叫びが街中に響き渡る。
「どうしてこうなった…」
「多分街が焼けたからじゃねぇかな…?」
「それで家を失くした人が溢れて…ってことですか?」
「そういうこったね」
おにょれあのローブ野郎…どこまでも邪魔しやがって…これじゃ街で野宿とかいうホームレスじみた事になるぞ…ううむ、それだけは避けたいな。
「…おい、そこのあんちゃんども。宿を探してんのかい?」
すると、背後から見知らぬ老父が俺に話しかけてきた。
「ん?ああそうですけど…それがどうか?」
「…ウチは宿やってんだ。設備やサービスががイマイチだとか言う輩はいるがよ、宿無しよりゃマシだろう?
…どうだ、泊まってかねぇか?なぁに心配なさんな、別に騙したりボッたりするつもりはねぇし、値段も少しだけサービスしてやるからよ」
「え、ホントです!?おい皆、この爺さんが宿屋やってるらしくてさ、安値で泊めてくれるってよ!」
「マジで!?やったぜケンゴ、これで宿無しは回避だ!」
「よ、よかったぁ…」
「おー、そりゃよかった」
皆からも好感。
「…交渉成立、だな。付いてきな」
こうして俺らは宿屋の爺さんに連れられて宿屋に向かった。
***
宿屋に付く。
そこは、街の中心からそこそこ離れた所にあった。見た感じ、民宿の類だろうか。
「…入んな。部屋は2階に二部屋、女用と男用で分けるといい。
…今回は特別だ、本来なら4人分の宿代に部屋代2つ分を請求するとこだが、今回は部屋代は一部屋分でいいぜ。
…おーい、帰ったぞー!客は4人だ、夕食の準備頼む!」
奥から、あいよー、と声が聞こえた。きっと、ここの女将さんが夕食の準備をするのだろう。
「じゃあな、なんかあったら1階の管理人室に来いよ」
「はい、ありがとうございます」
その夜は、女将さんの作った暖かい家庭料理に懐かしさを感じながら、ゆっくりと更けていった。
***
早朝、そろそろ日が昇るころかという時間。いまいちよく眠れずに目が覚めた俺は、外に出て風を浴びていた。
頬を風が撫でていく。
今は日本でいう所の秋半ば頃、程よくカラッとした冷たい風が心地よい。
この宿は郊外の小高い丘にあるため入口の辺りの開けた場所から市街地を一望できる。
女将さん曰く夜景が綺麗らしいのだが…今は中心街が焼けてしまったためにその景色は台無しだろう。
…本当にあいつは余計なことしていってくれたな。
「……ハァ……」
つい、ため息が出る。
「…あいつ、強かったな…」
剣が全く通じなかった。
魔王軍の幹部クラスは、あんなのがウヨウヨいるのだろうか。
もしそうなら、俺がもっと強ければ、力があれば、皆を…
「どうした兄ちゃん、眠れなかったのかい」
「あ、爺さん…」
ふと、後ろから宿の爺さんに声を掛けられる。
「……フム…お前、悩んでるだろ。こんな老いぼれで良けりゃ、相談相手になってやるよ」
「……ありがとうございます」
俺は爺さんの提案に乗って隣に立ち、悩みを洗いざらい吐き出した。
勝てない相手がいる、そいつに勝つためにもっと力が欲しい、でもそれで本当にいいのか、という事を。
「……なるほど、ねぇ…。
…兄ちゃん、力ってのはな、無いと生きては行けないのさ。力が無くちゃ、守りたい物を何一つ守れやしないからな。
でもな、だからと言って力を持ちすぎることは悪だ。力を持ちすぎた者は時に力に飲まれて暴走する。力を持ちすぎた者は知らぬ間に他人の「守りたい物」を壊しちまう。
確かに、昔は強い力を正義の為だけに使った奴もいたらしい。けどな、今そんなのができるのはきっと、巷で噂の勇者とやらだけだろうよ。
…だからよ。お前さんは今すぐに力を手に入れようなんて考えない方がいい。ゆっくりと、着実にやっていけばいいだろうよ」
「……深い言葉、ですね」
「ん?これが理解しきれない程兄ちゃんの頭は悪いのか?…なんてな」
「…からかわないでくださいよ。流石に理解くらいはできます」
「へっ、そうかい。
…まあ、つまりあれだ。力の使い方を間違えるなよってことだ。分かったな?」
「…はい!」
力強く返事をする。
その後ろからさんさんと登る朝日は、まるで今の俺の心の様に澄み渡っていた。
***
そして、朝。
俺たちが諸島部へ行くための船に乗るために出発する時間だ。
「それじゃ、ありがとうございました」
「オゥ、また機会があったら来てくれよな。今回程じゃねぇが、サービスしてやるよ。頑張りな」
「はい、ではまた!」
***
「なあケンゴ、諸島部ってどんな所なんだろうな?」
「え?そりゃ…魔物の巣窟…じゃないのか?」
数時間後、港で出航を待つ船の上で俺とジョンはそんな会話をしていた。
「…だよな、うん、そうだよな…」
「…どうかしたのか、ジョン」
なんだか挙動不審だ。何かあるとしか思えない。
「…いやさ、噂を聞いたんだよ。
酒場でさ、聞いたんだ。諸島部の街は人間でも過ごしやすい、それどころかもはや
「なんだそりゃ。噂だろ?信じれるもんじゃないさ」
「……だよな!有り得ねぇよ、魔物の人間が共存するなんて…悪かったな、不安を煽るようなこと言って」
「いいってことよ。俺達一応親友だろ?」
「一応が付くのな…ま、とりあえず俺は部屋で休んでくるわ」
そう言ってジョンは船室まで戻っていく。
…しかし、ユートピア、ねぇ…そういうのが1番怪しいって昔から言われてるからそれ。
それに、あのローブ。あいつがまた出てくるかもしれないしなぁ…。
この先どうなる事やら。
そんな一抹の不安と共に、船の出航を告げる声が響く。
錨が上がり、ロープが外され、船は大海原へ向けて動き出す。
この先には、何が待っているのだろうか?
新たな仲間と共に、船は進み始めた。
久々なのでキャラがぶれてないといいんですが…そこが不安ですね。