異世界転生したからって選ばれし勇者になれる訳じゃない。 作:アルトルト
やあどうも、ケンゴだ。
俺は今、メロエロ神とかいう
そこで、偶然居合わせて、さらに俺と同じく仲間を奪われたアランと協力してメロエロとやらをぶっ飛ばしてやることにした。
さあ、やってやるぜ!
***
〜同時刻・街の中央部の神殿〜
「…何?厄介事だと?」
「はい、メロエロ様に仇なす可能性のある冒険者を2人、取り逃してしまったとの報告が」
そこでは、2人の男が話し合っていた。
1人は豪勢で金ピカな修道服を身にまとい、大神官と呼ばれている。もう1人は地味な服を着ている。
「何をしているか…早く引っ捕らえろ。そいつらはソロの冒険者ではないのだと聞いた。ならばそいつらの仲間は既に『祝福』されているのだろう?であればそれをぶつけてやれば簡単に心が折れよう」
「いえ、大神官様、それが…その2人、もう既に仲間を気絶させてから逃走しているとの事で…」
「む、存外図太い精神の持ち主のようだな…ならば信徒どもに命を出せ。その者のどちらかでも捕らえた者には更なるメロエロ様の加護を与える…とな」
「ハッ。了解しました、今すぐ命を出します」
そう言って地味な服の男は部屋を出ていく。
自身1人になった後、大神官は呟いた。
「フム…面倒なことになったな」
『大丈夫だよ、僕が人間ごときにやられるワケないじゃーん』
すると、彼の横の空間におどけた口調の黄色い悪魔が現れる。
「…メロエロか。そうだな、お前は強い。凡百の人間であれば、その手を上げるまでもなく殺せるだろうよ。…だが、その慢心が貴様を殺すこともある。一応、用心しておけよ」
『はいはーい、わかってるよ。まあ、大丈夫だろうけどね』
そう言ってメロエロは虚空へ消える。
そして大神官は外を見て再び呟いた。
「…彼らなら、終わらせてくれるかもしれんな…」
***
「で、奴さんの根城は?」
「多分、街の中心にある神殿だと思う」
俺とアランは路地裏に隠れながら、メロエロ撃破のための作戦会議をしている。
「なるほどな。じゃあ、神殿に突撃かけるか?」
もっともシンプルかつ単純な作戦、それが正面突破だ。でもこの状況だと…
「いや、正攻法で行けばきっと敵との物量差であっさり殺られるだろう。向こうには僕や君の仲間もいるしね…貴重かつ強力な冒険者だ、確実に投入してくると思う」
だろうな。幾ら何でも2VS多数の腕に自信がある狂信者+狂信者と化した俺たちの仲間相手に突撃戦法じゃ、善戦はできても突破は無理だろう。
「それもそうだな。じゃあ、裏取って潜入か?」
「うん、大体そうかな。でも少し違うのは…ゴニョゴニョ」
「…ほおー、へぇー…なるほどね。いいじゃん。
…しっかしお前、たまに勇者らしからぬ作戦考えるよな、昔から。さすが仲間内のあだ名がナチュラルクズだっただけあるな」
「そ、そんなことないよ…」テレッ
「褒めてねぇよ」
こんな危機的状況でも冴え渡る己のツッコミが恐ろしいな!(真顔)
「まあ、何はともあれその作戦で…ん?」
「緊急!緊急!この顔を見た者は至急捕らえて大神官様の元へ連行されたし!繰り返す、緊急!緊急!…」
路地から表通りを覗くと、神官らしき男が叫びながらビラをばらまいていた…っておいこれは…!?
「…おいアラン、このビラに書かれてるのって…」
「…うん、ケンゴ、僕たちだ」
なんということでしょう。今神官らしき男がばらまいていったビラには俺とアランの似顔絵が書かれていた。そしてそこにはこんな字も。
『この顔の男を見つけた信徒は、捕らえて連行又は殺害の後遺体を持って大神官の元に届けること。届けた者には更なるメロエロ神の加護を与える』
「…つまり、これって…」
「ああ…そうだ、つまり僕たちは…」
「「…指名手配されたーー!!??」」
俺とアランの悲痛な叫びが夜の街にこだました。
「…あ!いたぞー!いたぞー!お尋ね者だー!」
「あ、やっべ見つかった!逃げるぞアラン!」
「あ、ああ!」
うっかり叫んだせいで周囲の狂信者が集まってきてるし!踏んだり蹴ったりじゃねぇかよー!!
「どーすんだよアラン!?プランがいきなり崩れたじゃねぇか、どうすんだよ!?」
「いや、この程度ならまだ修正は効く!そうだな…よし、こうしよう!ゴニョゴニョ…」
「…オーケー了解!よっしゃ強行軍だ、行くぞ!」
***
その日、神殿の周囲は物々しい雰囲気に包まれていた。
神殿の2つある出入口は多くの警備隊に守られ、神殿内に虫の1匹も通さないと言わんばかりの雰囲気を醸し出している。
その中の内の1つ、裏側の出入口の守備隊は、近くの通りから地響きの様なものを感じた。
部隊員たちがざわざわとざわめき立つ。
そして地響きが近づいてくると、その地響きの先頭にお尋ね者の2人がいた。おそらく、追われてヤケになって突撃してきたのだろう。
「フン、いいカモだな…攻撃隊、奴らを捕らえろ!」
『ハッ、メロエロ様のために!』
攻撃隊が次々と魔法や剣で攻撃を仕掛ける。しかし、奴らはそれをひょいひょいと躱し、いなしていく。
しばらくして、表側の守備隊が合流し、奴らも押され気味になってきた。
そしてーー
ザクっ
「……!!」ゴフッ
奴らの内の1人がとうとうその身に槍の一撃をモロに受け、倒れ込む。
もう1人もその隙に槍や剣を刺され、血を吐いて倒れ込んだ。
防衛隊の隊長はニヤリとほくそ笑む。これでメロエロ様の加護は俺のものだ、と。
「これまでか…よし、遺体を回収して帰還する…ぞ!?」
すると、まるで役目を終えたから、と言わんばかりに遺体が影も形もなく消え去る。
「これは…分身の魔法!?」
隊長の顔に驚きと焦りが浮かぶ。
「…まさか、本命は…!」
すると1人の伝達兵がやって来て、このような事を言った。
「伝令!正面口に『奴ら』が現れ、守備隊が全滅!突破されたとの事です!」
***
「いやー、意外とすんなり行ったなぁ…」
「確かに。立案しといてなんだけど、僕もびっくりなくらい上手く行ったよね」
裏口で伝令を受けた守備隊が大混乱に陥っている時、俺たちは神殿内部の階段を駆け上がっていた。
ちなみに、俺たちの作戦はこうだ。まず初めにアランの作った分身と入れ替わり、分身を裏口に向かわせ、陽動。表側の部隊が増援に出た所で潜伏していた俺たちが表口に突撃、そのまま突破して侵入を試みる、といった形になっている。
普通に頭のいい司令官がいるなら即バレるような単純な作戦だが、いくら狂信者とはいえ元市民の集まり、あっさり引っかかってくれた。
しばらく階段を駆け上がると、広間に出る。
そこには、
「…来たな、ケンゴ。アランも一緒か。だが、それでも俺はメロエロ様を守り抜く。突破できるとは思うなよ…!」
「ああ…ケンゴ、来てしまったのですね?ああ、残念です。あなたのような、敬虔な信徒になれる可能性を持つ人を殺すことになるなんて…」
「………」
アランとエリー、その後ろには喋りこそしないがアランの仲間もいた。
…やっぱり、どこか狂っている。ねじ曲げられている。早く解放してやらなきゃな…!
「…ケンゴ、彼女たちは強い。僕も本気で行く」
「当たり前だ、あいつらは強いさ。俺も全力だぜ」
「「…行くぞ!!」」
「「メロエロ様のために!」」
ジョンは盾を構えて突撃、エリーはジョンに強化魔法をかける。
まず手始めにアランが動く。
「まずは眠ってもらおうか。…『サンダーボルト』!」
アランの手から鋭い雷の槍が放出される。
エリーはジョンの防御でどうにかなったが、他のアランの仲間たちはモロにくらって一撃でダウンしていた。
「…オイオイ、一撃かよ…やっぱお前頭おかしいわ(褒め言葉)」
「そんな軽口言ってる場合かな!?」
「死ね、ケンゴ、アラン!」
「「うわぁ!?」」
ジョンが手に持つ大剣を横に薙ぐ。
俺たちはバックステップでどうにか躱す。
アランはそれに反応して剣を振り抜く。
「くっ、このぉ!」
カキィン!
アランの剣とジョンの盾がぶつかり合う。
しかし、盾は破れない。
「くそ、硬い…!」
「よしアラン、ならコンビネーションだ!お前がジョンを引き付けてくれ!そうすりゃ後は俺がどうにかする!」
「わかった、頼むよ!」
そう言ってアランはジョンを引きつける。ジョンはエリーから強化を貰いながらパワーを高めている。おそらくアランにカウンターを決める気だろう。
…でもな、俺たちをそう簡単に倒せるわけないだろ?
ザッ、と足に力を込める。
くらえ、俺が鍛え上げた奥義ーー!!
「……!?」
「…奥義、
俺は目にも留まらぬスピードで、アランに集中したせいでがら空きになったジョンの脇腹に剣を叩き込む。これぞ、俺が密かに鍛えていた奥義、
ジョンは対応しきれずにモロにくらい、鎧の隙間の脇腹から血を流しながら倒れ込んだ。
「…アラン、ジョンの治療頼む。俺はエリーを」
「わかった」
俺はジョンをアランに任せ、エリーへ詰め寄って行く。
「…何をする気ですか?ジョンにほとんどの魔力をつぎ込んだ以上、私にはほとんど魔力は残っていない…つまり、抵抗できない私にあんなことやこんなことをするつもりでしょう!?
「何を言うかこのアホ!?こういう時くらいシリアスしやがれバカタレー!!」
妙なことを言い出したエリーにチョップを叩き込む。
こういう時に限ってアホになるのは何でだろうかね!?もうちょいシリアスにはやれんのか!?ていうかこの世界に薄い本の概念があるのか…(困惑)
…あれ、なんか「これも全部
「ったく…ほれ、落ち着けバカエリー」
「…ふぇっ?」
落ち着かないエリーをギュッと抱きしめる。
「ったくよー、この間は俺が好きだって言っといて今度はメロエロ様とやらが好きになったのか?浮気早すぎんだろオイ。それに…俺がまだこの間の返事もしてねぇのによ」
「…え?え?け、ケンゴちょっと、離して…」
「ダメだ、離さん。今回ので思い知ったよ、俺はお前らがいないと案外落ち着かないってことにな…だからこそ、今ここでこの間の返事をしようか。
…俺も、お前を愛してるぞ、エリー」
「………ふぇっ!?え、ケンゴが、私を好き!?嘘、やだとっても嬉しい…あ、けど私は敬虔なるメロエロ様の信徒、そんなこと…そんなことダメ、なのに…ど、どうすれば…私、どうすれば…あうぅぅぅ…!…きゅう」
あ、倒れた。
きっと、「元々の恋心」と、「後から植え付けられた恋心に似た信仰心」のせめぎ合いが普段ならありえないような葛藤を作り出し、彼女の頭をオーバーヒートさせたのだろう。それで倒れたのだ、多分。
…あー恥ずかしかった!!
「…あー…その、ケンゴって結構、情熱的なんだね…」
はいそこアラン、黙らっしゃい。
***
2人を安全な場所に寝かせてから、俺たちは神殿の奥へ進んでいく。
そこには…
「…フム…やはり、来たか。恐れ入ったよ、勇者諸君」
『いやぁ、凄いね彼ら。僕の『祝福』された兵士をバッタバッタと倒していくんだもん。凄いよねー』
金ピカの修道服に身を包んだ中年くらいの男と、見るからに悪魔です、と言わんばかりの姿をした黄色い悪魔がいた。