異世界転生したからって選ばれし勇者になれる訳じゃない。   作:アルトルト

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戦いの後こそ気を抜いていいわけじゃない。

ようよう皆、ケンゴだ。

俺とアランは遂に黒幕のメロエロと大神官を見つけた。さて、どうするかねぇ…

 

***

 

神殿の最奥、祈りの間と呼ばれる場所で、俺たちは悪魔と神官に向き合っていた。

 

「フム…自己紹介をしておこうか。私は…そうだな、大神官とでも呼んで貰おうか」

『僕はメロエロ!君たちのお目当て…かな?』

 

2人はゆっくりと、剣呑な雰囲気を消さないまま自己紹介をする。

 

「御託はいい…お前らが、今回の黒幕か?」

 

それに対し、アランが問いかける。

 

「…ああ、そうだ」

「何故こんな事をした!?何故この街を巻き込んだ!?何が目的だ!?言え、言うんだ!!」

「おいアラン、落ち着け!」

 

修道服の男がゆっくりと答えると同時に、アランが強い口調で次々と問いかける。俺はヒートアップするアランを静止しようとする。

 

「まあ、そう焦るな若者よ。順に説明しよう…」

「…ずいぶん物分りがいいんだな、大神官とやら?」

「なに、老人の気まぐれと言うやつさ」

「…老人って言うには若くないかな、アンタ」

「なぁに、魔法で若作りしているだけだ」

 

なるほど、魔法で若作り。そういうのもあるのか。じゃなくて。

 

「で、アンタの目的と動機は?早くしてくれ」

「そう急かすな、急いては事を仕損じるぞ?

…そうだな、まず私の事から話そうか。

…私は、どこにでもいる、平凡な魔道士一家の一人息子だったのだーー」

 

***

 

…私は、幼い日から魔法の鍛錬を積み、若き日には王都の魔道学院にも通っていた、ほぼ普通の魔道士だった。

…しかし、現実は厳しいものでな。私は魔道士の一家に生まれたにも関わらず、魔法の適正がとても低かったのだ。

 

確かに、私自身も努力はした。努力すれば天才共にも追いつける、いつかあいつらを見下してやる…とな。けれど、いつまで経っても私の魔法は上手くならず、結局、若作りの魔法くらいしか取り柄のない魔道士になってしまったのだよ。

 

さらに私の受難は続いた。私が20代後半くらいの頃か。両親が殺されたのだ。優れた魔道士であった両親を疎ましく思った何者かによってな…。私は、その下手人を探し続けた。憎かったのだ、両親を殺した者が。

 

…そして、長い間探し続け、気がつけば私も老人になっていた。そしてとうとう見つけたのだ。そいつは、この街の街長として、豪遊生活を送っていた。…私は、より憎しみを覚えたよ。誰かを殺し、誰かの幸せを奪っておきながら、そいつがのうのうと幸せに暮らしていることにな。

 

そして、強い復讐心に駆られた私は、禁忌を犯した。悪魔との契約という、禁忌を。

そして、復讐の手伝いという契約の元呼び出されたのがメロエロだ。こいつは自身の細胞を人に飲ませることで、そいつを自身の忠実な下僕と出来たのだ。

 

私はまず手始めに、街長の周辺の人物を下僕とし、メロエロを神とする宗教をでっち上げ、私はそこの大神官になった。

そしてその下僕を利用して、他の人々に洗脳の魔法や細胞を飲ませて下僕という名の信徒を増やし、そしてとうとうこの街の大半の住民が信徒となった時、私は街長を背信者として捕らえ、処刑したのだ。

 

…こうして、私の復讐は終わった。しかし、問題があった。人々のメロエロによる洗脳を解くには、私がメロエロとの契約を切らなければならないのだが、メロエロが契約破棄を認めなかったのだ。「君にはまだ復讐したい者がいる、僕はそれを手伝うまで契約を切らない」とね。

 

…おそらく、私の劣等感から来るエリートへの憎しみを感じ取ったのだろう。しかし、私はもう両親の復讐だけで充分だったのだ。しかし、メロエロは止まらなかった。そんな時に、お前たちがやって来たのだ。私は希望を抱いた。彼らなら、メロエロを止めてくれるかもしれない…と。

 

***

 

「つまり…俺たちを巻き込んだのは、アンタが俺たちにメロエロを止めて欲しかったから…なのか?

…だからって、ふざけるなよ、俺たちにしたら迷惑でしかねぇんだからよ」

 

俺の問いに、司祭は頷く。

 

「ああ。ふざけてると思うならそれでいい。迷惑ならばそれでいい。憎ければそれでいい。殺したいなら殺せばいい。何故なら、今の私の願いは死なのだからね。死ねば、自然とメロエロとの契約は切れる」

「…自害は、出来なかったのか?」

「ああ。首を吊ろうと、高所から飛び降りようと、首を切ろうと、死の魔法を使おうと、どれもメロエロに邪魔をされたからね」

『だってー、君に死なれたら僕もここから消えちゃうからねー。そんなの僕やだよ?』

 

俺の問いかけに対する男の言葉に、メロエロがくぐもった声で言葉を加える。

…この人も、苦労してきたのだろう。

 

「…死が償いであるとは思わないが、だからといって、それ以外に解決策が見つからないのだ。

…頼む、私を殺してくれ」

「ハン、勝手だな…でも、巻き込まれた以上はやるさ。なあアラン?」

「…そうだね。勇者である以上に、僕は困った人は見過ごせないんだ。僕は、あなたを助けるよ」

 

男の願いに、俺たちが答える。

そうだ。巻き込まれた以上、やりきるしかない。やらなければならないのだ。逃げ出すことは、許さないのだ。

 

「…さあ、行くぞ!」

『へぇ、彼を殺すって言うの?本気?…彼は殺らせないよ、従者の僕がいるからね!』

 

俺たちはメロエロを無視して大神官へ切りかかる。

すると、メロエロが片手を振り上げる。そして、

 

「がうっ!?」

「あいたっ!?…壁!?見えない壁が、僕たちと大神官の間に…!?」

『言ったでしょ?彼は殺らせないってね』

 

奴の魔法だろうか、俺たちは透明な壁に行く手を阻まれる。つまり…

 

「お前を倒さなきゃ、目的は達成できない…ってことか?」

『うん、そういうことだね。

…さあ、殺し合おうよ、さあ!』

 

気迫と共にメロエロが両の手から火球を発生させ、こちらに投げてくる。

俺たちはそれを地面を転がることで回避する。そして、そのまま起き上がりカウンターを仕掛ける…!

 

「くらえっ!」

「でえぇぇい!」

 

カキィン!

 

「くっ、また見えない壁か…!」

『アハッ、その程度の太刀筋じゃこの盾は破れないよ?

…さ、お返しだ!それっ!』

 

俺たちの剣は奴が自身の周囲に張った見えない壁に阻まれる。

そして奴は両の手の手刀にし、こちらに切りかかる形で振り下ろす。

 

「ガッ!?」

「ぐうっ!?」

 

奴の手刀は本物の剣のように鋭く、回避をしたはずの俺たちの肩を的確にスライスしていく。

 

『アハハハッ、それだけかい!?まだまだ、もっと!全力で僕を殺しにかかってきてよぉぉぉ!!』

 

メロエロは飛び退いた俺たちに火球を連打する。

傷ついた肩を案じながらもどうにか回避する。

くそっ、このままじゃジリ貧だ…!

 

その瞬間、俺の脳裏に閃光が走った。

…そうだ!閃きッ!圧倒的閃きッ!これなら行けるかもしれない…!

 

「…なあアラン、あの壁、『一点突破』で叩き割ることって出来ねぇかな?」

「え?そりゃ…物理法則を無視しているか、余程の硬さでなければ、行けると思うけど…うわぁ!?」

『コソコソ話してないでさぁ、もっと殺し合おうよ?君たちが防戦一方じゃ、僕つまらないよ」

「知るか悪魔!」

 

俺たちの作戦会議の間にも、奴は火球を放ってくる。気は抜けない。

 

「…おいアラン!ちょっとでいい、奴を引き付けてくれないか!?俺のプランを実行するには『溜め』が要る!」

「…わかった!君に賭ける(・・・・・)!だから…決めてくれ!」

「…ああ!」

 

俺は溜めの体勢を取る。

 

『ん?何が目的かは知らないけど…まあいいや、さっさと…うおぅ、危ないなぁ』

「お前の相手は…僕だ!メロエロッ!」

 

アランが何発もの剣撃をメロエロに加えるが、奴はそれを全て躱し、いなしていく。

俺は力を溜めて、溜めていく。

精神は静まり、ただ一撃に集約されるーー!

 

『どうしたのさ?当てる気が全く感じられないよ?』

(そうだ、当てる気なんて無い。時間稼ぎが出来ればいい…!)

「…行けぇーー!ケンゴぉぉぉーー!!」

 

ーーー今だ!!

 

一線突き(ソニックランス)ーー!!」

 

俺は一線切り(スピードスラッシュ)の要領で剣を突き出し、己が脚力を持って真っ直ぐ壁へ突撃するーー!

 

ガキィンー!

 

壁に剣が、突き刺さる。

 

…そしてそのまま、突き抜ける!

 

バキィン!

 

壁が破られ、

そしてーー

 

「これまでだ、メロエロぉぉぉー!!」

 

ザシュッ

 

「…ありがとう…私を…解放してくれて」

 

その刃は、そのまま大神官の胸を切り裂いた。

 

大神官は大量の血を流し、口からも血を吐き出しながら前のめりに倒れ込む。

 

「はぁ…はあっ…やった…やったぞぉぉぉぉぉーーー!!」

 

俺は、勝利の雄叫びを上げる。

 

『……あーあ、彼、死んじゃったかー。残念。僕もここまでかぁ』

「…ああそうだ、これで、お前も終わりだ!さっさと立ち去れ、悪魔メロエロ!」

 

アランがメロエロに告げる。

 

『…フッ、フフフフッ、アッハハハ、ハーッハハハハ!』

 

すると突如、メロエロが高笑いを始める。

 

「…!?何が可笑しい!?」

 

俺は驚きからつい問いかける。

 

『なーんちゃって!いやさ、だってさ、勝ち誇ってる君たちが滑稽で仕方なくてさ!何でって、僕はまだ消えないからさ!だって、僕の次のご主人はもう決まっているんだから!つまり、僕はまだ負けてないってことさ!』

「は!?…なっ!?それは…どういう!?というか、それならこの街は…!?」

『ああ大丈夫、この街の人たちはもう下僕にする必要ないからね!解放してあげるよ!君たちの仲間もね!だって僕の敵じゃないんだもの!』

「はぁ…!?ま、まあ解放するなら…」

 

今思いっきり煽られたが…まあ、そんな事は気にしない事にしよう、重要なのはそっちじゃない。

 

「それより、お前の新しい主とは誰なんだ!?答えろ!」

『えー?ホントは答える恩も義理も理由もないけど、何となく特別に教えてあげるね!なんとー、僕の新しいご主人は、あの魔王様なのさ!』

「「…………ハァーーー!!??」」

 

俺とアランの驚きの声が部屋中に響く。

 

『あれー?そんなに驚くことかなー?まあいいや。もうこの街にも用はないし、僕行くね。じゃあね、2人の勇者サマ(・・・・・・・)

 

そう言って、メロエロは虚空にその身を消し、去っていった。

2人の…勇者?奴が最後の最後に強調したその部分が、俺の頭の片隅に引っかかった。

けど。

 

「…もう…何がなんやら…」

「…どうしようケンゴ、頭が追いつかないよ」

 

それ以上に、俺たちは惚けるしかなかった。

 

***

 

その後、街の人たちは正気に戻ったのだが、この数週間の間ーーつまり、メロエロに洗脳されていた間のことは覚えていないらしく、記憶に齟齬が出てしまっていたが、結構逞しく復興したようだ。

そして、俺たちもーー

 

「ハァー…あの小っ恥ずかしい告白も無駄足だったのが、今でもちょっと辛いぜ…」

「まあまあ、ドンマイだよケンゴ」

 

俺たちの仲間は、何があったかは知らないが俺とアランがボロボロになって帰ってきたのに少し驚いた後、せっかく両パーティ会えたのだからと合同の宴会を始め、その中で事件の当事者だった俺たちは回復を受けた後、「そっとしておいてくれ」と仲間たちに言って、2人でゆっくりと呑む事にしたのだ。

 

…なんか、立ち去る時にエリアさんが「まさか…2人は既に■■■■(アーン)な関係で私たちの意識がなかった間に■■(ピー)を済ませていて…そして2人はこの後ベッドで■■■■(アッー)をするのでは…!?うおおお、捗るぅぅぅぅ!!!」と1人でトリップしていたが、気づかなかった事にした。深入りしたら俺のハートがブロークンしそうだ。

 

「しかし…メロエロが魔王の下僕になるなんてね…」

「ああ…あの実力の悪魔がまた敵として立ちはだかるのかと思うと…考えただけで寒気がするぜ」

「ハハハ…笑えないね、割と本気で…」

「…ええいこうならヤケよ!愚痴るぞー!」

「え、ええ…まあ、少しなら付き合ってあげるよ…ハハハ…」

 

アランは優しいなぁ!

その日はもう、酔いに任せてアランと愚痴大会していた。

 

***

 

チュンチュン…

 

「んん……ふわぁ……あー、もう朝か…あ゛ー頭痛い…飲みすぎたか…」

 

翌朝、俺は宿のベッドで目を覚ます。…二日酔いで頭が痛い。

それと何故か俺は昨日の夜来ていた寝間着を脱ぎ捨てて、裸だった。

それに、天井も俺の部屋と少しだけ違う。周囲を見ても俺の部屋とレイアウトが少しばかり違うし。

 

「…んー?俺いつ寝間着脱いだっけか…?てかここどこ…?」

 

モゾ…

 

「ん?」

 

俺の寝ていたベッドの毛布が少し動く。よく見ると俺の横は少し…というか人1人分くらい盛り上がっている。

…あれ、猛烈に嫌な予感がする。

…ねぇちょっと待ってなんでここで無駄直感発動すんの何がどう「やばいよ」なの!?

 

背中に冷や汗をダラダラかきながら恐る恐る俺が毛布を捲りあげると…

 

 

「ん……あ、ケンゴ…おはようございます…いい朝ですね…」

 

そこには、俺と同じく全裸のエリーがいた。

 

 

「……え゛え゛え゛え゛え゛え゛え゛え゛え゛!!??」

 

えっちょ待って何があった何をやらかした!?

これはいわゆる朝チュン…つまりモロ事後の可能性ががが…!?

 

「…どうかしましたか?」

「い、いやどうもしてないから大丈夫」

 

いえ、思いっきりどうかしてます。超動悸が止まらないし頭の整理も追いついてないです。

 

「そうですか。

…ふふっ、昨夜は楽しかったですね。突然ケンゴが私の部屋に来たと思ったら、『お前が好きだ、食べてしまいたいくらいに…』と言って、私をベッドに押し倒して…そのまま…キャッ♪」

「」

 

あ、これアウトですわ。完全に事後ですわ。既成事実できてもおかしくないですわ。

てか確かに昨夜の記憶が一部曖昧だ。特に飯食い終わってから部屋で寝落ち対策に寝間着に着替えた後からの記憶なんて全く残ってないし…完全に酒の勢いでやらかしましたわ。やべぇよやべぇよ…

 

「…やっぱり変です。どうかしたんですか?」

「あ、いや…昨日は、ごめんな?急に押しかけて、その…ゴニョゴニョ…」

「ああ、それですか。

…私は、気にしてませんよ?それに、私も嬉しかったですから。ふふっ、ケンゴ、大好きです!」

「あ、うん…俺も、お前が好きだ、愛してる」

 

ああ…半分心にも無いことを言ってしまった…アッやめて!そんな眩しい笑顔を向けないで!そんな純粋な瞳で見つめないでー!!

 

 

こうして、俺たちはそんな一悶着を起こした後、アランたちと別れ、再び旅立つのだった。

…この先、大丈夫かなぁ…




ハイ、というわけで今回でメロエロ神編(適当に名前つけた)は終了です。
…まあ、代わりに少しいつもより長くなってしまいましたが。だが後悔も反省もしていない()
シリアス書くのちょっと疲れたので、次回からはまたシリアルにコメディで行こうと思います!
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