異世界転生したからって選ばれし勇者になれる訳じゃない。 作:アルトルト
はるか古のある時、王国に魔の力を持つ王、「魔王」が現れ、世界は闇に包まれました。
国王は国中の騎士たちに魔王の手下ーー魔物を倒させようとしましたが、魔物たちの圧倒的な力の前に騎士たちでは相手になりませんでした。
仕方なく国王は女神の神託に頼ることにしました。
そうして神託により選ばれた5人の勇者たち。
1人は国の教会でも名のある僧侶「エレノア」。
1人は国の騎士の中で唯一魔王の軍勢と対等に戦っていた戦士「ジョニー」。
1人は王国でも悪名高い女盗賊の「セレナ」。
1人は王国の中でも未踏の地とされていた精霊の森に住む魔道士「リヴァス」。
そして最後に、女神の加護を受けていた以外はただの一市民だった男「ケイン」でした。
国王は彼らに国の命運を託し、彼らを旅に出しました。
勇者たちは最初の頃こそ仲は良くなかったそうですが、旅を続ける内に強い絆で結ばれたそうです。
そして彼らは数多くの試練を乗り越え、とうとう魔王を倒し、国を、世界を救ったのでした。
その後彼らは自分たちの持っていた武具をいずれ再び魔王が現れた時の為にそれぞれ1つずつ後世に残し、世界のどこかに封じたといいます。
勇者「ケイン」は己の愛剣を。
賢者「エレノア」は神の祝福を受けた法衣を。
大戦士「ジョニー」は師より賜った大盾を。
大盗賊「セレナ」は母の形見のダガーを。
大魔道士「リヴァス」は森の長老から賜った杖を。
そして彼らの子孫は今でも世界のどこかにいると言います。いずれ再来する魔王を倒すために…。
***
やぁ。前からしばらくたったけど俺だよ、ケンゴだよ。
え?今の文は何かって?ありゃこの国に伝わる古の勇者伝説(子供向けバージョン)だな。短い?伝記なんてそんなもんでしょ(適当)。
さて、あの事件の後アランと愉快なハーレム御一行は北の方へ向かい、少年漫画でよくある試練にぶち当たっては危機に陥りながらもその度に自分か仲間の誰かが覚醒してそれを乗り越えるという王道的展開を繰り返しながらも旅を続けているらしい。あとアランが時々ToLOVEってメンバーの誰かといい感じになったりして朴念仁発動したりしているようだ。はぁーほんとアランだけ爆発しろ。
で、俺らはというとあの後数週間かけて砂漠を渡っていた。凄い疲れたよモー。エリーとは…うん、まあ、あれ以来彼女が今まで以上に積極的になった&俺の言う事だいたい聞いてくれるようになったのと、それを見てジョンが笑ってくるくらいかな…。
で、今はというと。
「あれがかの有名な『女神の谷』?」
「そうですね。あそこの谷底には女神に選ばれし者とその仲間しか入れない神殿があるとされています」
「ふぅーん…」
今回、砂漠を乗り切った俺らはアランの先を行く形で目的地の「女神の谷」までやってきた。
女神の谷はその名の通り女神の守護する谷で、聖地でもある。そのため女神の加護で安全区となっている。
そしてその谷の底には「女神の試練」を受けることができる神殿があるとされているが、谷底まで行くのがそこそこきついらしく、行けるのは1握り、行けても試練を受けられない、なんてのはザラだと言う。
ちなみにアランたちはここの北にある「霧の塔」のボスにボコボコにされたようで、療養の後、特訓の為にここに来る予定らしい。
「で、ケンゴよ。ここに先回りした目的は?」
「一つ、下手に霧の塔に行っても多分いつものように大したことが起こらないから。
二つ、勇者が来ると何かしら事件が起こってめんどくさいことになるからその前に何かやっとくため。
三つ…というかこれが本題だな。アランたちより先に「女神の試練」を俺らで突破する!…だ」
「はぁ!?女神の試練の突破!?無理無理、伝承じゃあの試練は女神に選ばれし者しか受けれないって話だぞ!?」
ジョンから反論が帰ってくる。だが、
「なら入り口を強行突破してでも受けよう」
「なんだそりゃ…」
あ、ジョンが呆れ顔だ。
「…まあ、こうなったらお前言う事聞かないもんなぁ…エリーもお前の味方だろうし、ここで俺だけ行かずにお前ら見殺しにしたくないし…しゃあない、俺もついて行くよ…」
「さっすがジョン俺の心の友!」
呆れ顔のジョンにクッソいい笑顔でサムズアップしてやった。
ジョンの顔はいっそう暗くなっていた。
***
「ここかぁ」
「うっわすげえ神々しい気がする…行きたくねぇな…」
「ここまで来て何を言いますかジョン。腹をくくってください」
というわけで俺らは谷底の「女神の神殿」に1日かけて到着した。
一応、神殿前の広場にテントは張ってあるので、そこが今回のベースキャンプとなる。
「よっしゃあ、早速挑戦だ!」
「おいケンゴちょっと待「ぐぎぴゃ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛!?」…言わんこっちゃない。伝承ではこの神殿は許可なく立ち入る者に裁きの雷を落とすらしいからな…」
痛い!超痛いんだが!?
神殿に入ろうとしたら死ぬほどではないが凄まじい電撃が俺を襲った。
ジョンよ、それを先に言ってくれ←
そして神殿の方からこんな声が聞こえた気がした。
『去れ。選ばれぬ者にこの門を通る資格無し』
…なんだそりゃ。
なんか悔しいぜ。
「…よっし、ジョン、エリー!」
「はぁい?」
「ん?」
「決めたぞ、今日から俺らでこの門の突破方法を全力で研究する!異論は認めないっ!」
「わかりました、ケンゴ。あなたのためにこのエリー、頑張らせていただきますね」
「うっそぉ…マジでやんの?やだなぁ…俺死にたくないなぁ…」
エリーはいつも通りあっさりやる気になってくれていたが、ジョンは凄い嫌そうな顔をしていた。
***
3日後の朝。
今日もエリーの飛ばした伝書鳩が谷上の情報を伝えてくれる。
「えーっと、上では昨日の夜にアランたちが到着したとのことです」
「そうか。…ふふふっ、そうか、そうかそうかそうか!だが残念だったなぁアラン!この「女神の神殿」を先に突破するのはぁ…このケンゴ様だぁー!!ハーッハッハッハァー!!」
「キャー!ケンゴかっこいいー!」
「ハイハイ、かっこいいかっこいい(棒)」
2日かけて俺たちはとうとう神殿の門の突破方法を探り当てることに成功した。
そして今日がその実行日である。
そしてその方法というのが…
「よっし、やるぞー!」
「おー!」
「はぁー…できることならやりたくねぇ…!俺ァ死にたくねぇ…!」
「今更逃げは許されないんだよなぁ…なぁジョンよ?」
さめざめと泣くジョンを無理やり落ち着かせる。そして。
「よーし、イクゾー!」
「「「マジックウォール!」」」
その方法というのは、魔法を弾く壁の魔法、「マジックウォール」を使うことだ。
この2日間はどのくらいウォールを張れば門を突破できるかの試験をやっていた(そしてその度に俺が電撃を受けていた)。
今回幸いだったのは最初の数発であの雷撃が物理か魔法かが判明したことか。お陰でウォールを張って強行突破、という戦術が取れるのだし。
そしてとうとう突破可能な分量を見つけ、翌朝に神殿への突入準備をしてから出発、という手筈となったのだ。
俺らは全員でマジックウォールを展開し、縦に並んで突入する。
『去れ。選ばれぬ者に挑戦する資格無し』
あん時のイラつく声が聞こえる気がするが気にしていられない。
ベキィ!
1枚目、ジョンの張った分が速攻で破られる。まあ、元々ジョンは魔法そこまで上手くないからね、仕方ないね。
バリィ!!
次に2枚目、俺の張った分が割れる。
くうっ、想定より早いな…!?
ビシィ!!
そして3枚目、エリーの張った分にヒビが入る。
マズイ!
「おいエリー頑張れ!お前の分が割れたらオシマイなんだよ!?」
「頑張ってますよ!」
ビシッ、ビシビシッ…
…だめだ、ウォールが割れるスピードが変わらない!
「ええぃくそ、ならこの神殿の攻略が終わったら1回だけキスさせてやるから!今は全力全開で頑張れ…っ!」
「…本当ですか!?わかりました、エリー頑張ります!言質は取りましたからね!」
すると急にウォールが割れるスピードが落ちたかと思うと、さらにウォールが修復され始めた。さっすがうち1番のサポーターだぜ!
…え?俺の唇?既成事実作っちゃったんだしあとは何回やっても変わらんでしょ(適当)。
そして、
「抜けたーっ!」
「やりました、これでケンゴのキスはいただきです!」
「なぁケンゴ、エリー、俺生きてる!?生きてるよな!?生きてるんだな!!ヤッター!」
とうとう突破に成功する。
俺らはお互いに生きてる感触を確かめあった。
すると声が聞こえてくる。
『…驚きだ。選ばれぬ身で門の試練を突破した者など初めてだ。いいだろう。貴様らに「女神の試練」に挑戦する権利をやろう』
どうやらここの管理人らしき輩の声の主も驚きが隠せないようだ。
どうだ、これが俺と俺の仲間たちの実力だ!
こうして俺らは門の試練を突破こそできたが、門の突破だけで力を使い果たしたので、もう1回キャンプで休憩してから再突入することにした。もう電撃が襲ってくることもないしね。