とりあえず頑張ってみようかと思います
僕、俺、私・・・・・いや、やはり俺と呼ぶ事にしよう。
俺は今宵で二十歳を迎え、成人式も来月に控えている。そういう訳で俺の家族はようやく大人になるのだと張り切っているのだが俺は全く喜べなかった。
なんてったって実感が無いものだからな。
中学から高校へ進学し、そこそこ良い学校生活も送れたのだが3年生となると勉強尽くしで身も精神もすり減らし、なんとか大学を合格する事が出来た。だが、その大学に進んだ理由は【何となく】。特に目的もその先の目標も無いままそこへ行った訳なのだ。
・・・まぁ、元より俺には将来の夢なんぞ最初っから無かったんだがな。
とまぁ、こんな感じで大学で勉強、勉強。友達も知り合いも誰一人この大学へ希望していなかったので誰一人友達も居ない。また、前からやり続けていたゲームそのもの自体飽きてしまい、何をやってもつまらなく感じるようになった。
「ふぅー、だが酒は旨い」
そう、酒は旨い。二十歳になったお祝いと缶ビール片手にちょびちょびと飲み続けてこれで5つ目である。体はまだ少し暖かい程度でそこまで酔っては居ない。
俺は初めて飲む酒は始めは不味いのか美味しいのか不安だったのだが、その不安も飲む内にすぐに消えてしまいこうして飲む行為に少し嫌悪感を感じてしまう。
それは俺の親父が酒豪でとても酔いにくい体質だったのだが、一昔前に肝硬変を患って今でも入院中なのだ。
あぁ、だからと言って家庭が厳しくなった訳では無い。元々親父は建設業を営んでいて、それでずっと調子が良かった時の貯金が沢山残っているのだ。また、入院中でもその仕事は一つ下の弟が引き継ぐ予定で、ずっと建築、経営やらを人一倍頑張って学んだ弟は他の人からもとても信頼され、将来の見込みもあるともてはやされている。
「だからだろうかねぇ、こんなに自分が惨めに感じるのは・・・」
俺は親父の仕事を継ぐ事になんら興味も無く、かと言って他にやりたい仕事も無くこれまで生きてきたのだが今でもやりたい事は何も見つからない。そしてただただ勉強し、何時でも学生である訳にも行かない。
これから先適当に生きていく自分が周りの意気込む人達を見ると本当に惨めに感じてしまうのだ。
「はぁ・・・」
ふとため息を吐くが、その息は自分でも分かるほどの酒臭さを感じてつい「クサッ!」っと反応してしまった。
飲んだビールの本数を見ると8本目に突入した。始めにどの位飲めるのだろうと買ってきた8箱入り2ケースの計16本の半分を飲みつくしたのだが、やはり遺伝のせいなのかまだ良いが回ってこない。
だが、先程よりも体が熱く感じてしまいベランダの窓を開けた。そこから見える空の様子は何時もと変わら無かったが、何時もと違ってより星々の光が強く見えた。酒が入っているからだろう。
こうして家のアパートの一室から見える夜の街、星空を見ながらしみじみとこれからの事を考えていたのだが、やはり先は何も見えてこない。希望も絶望さえ見えない黒だった。
「ん?もう終わりか」
いつの間にか16本全てを飲み尽くしてしまい、少し酔ってきてしまった俺はそのままベランダの窓を開けっ放しのまま部屋の中で眠ってしまった。
朝。何時もの様にして起きた。だが、まず体にある異変を感じた。とてつもない爽快感だ。まるで何も身に着けていない様な─────
「ありゃりゃ、本当に素っ裸だよ」
少しばかりの頭痛を感じながら、寝ぼけ眼で薄っすらと自分の体を見落とすと何にも着けていない状態であった。
そして、床に対しても一つ疑問があった。異様に冷たいのである。
そこで俺はハッキリと意識を覚醒させ、立ち上がった。そして辺りを見渡し思う。これは夢なのだと。