スランプ気味でどうも捗らず、今回も文字数が少なくなってしまいました。
調子が戻り次第がりがり書きますので、どうかお許しください。
「烏沙義、雪! 雪降ってる!」
「お姉ちゃん雪合戦しよう!」
一体何が嬉しくって、こんな寒い日に外に出るのだろうか。榊に買ってもらった防寒具をいそいそと身に着けて玄関から飛び出す二人を見送り、私は暖房の電源を入れてソファに身を委ねた。
昨日ラジオで雪の予報だとは言っていたが、朝からこんなに降るとは思っていなかった。榊も目をダークマターに変貌させていたくらいだ。私も寒いのは苦手だが、榊は雪が随分嫌いなようだ。
ぽこん、と私の手元のスマートフォンが通知を知らせる。榊が連絡用に、と私達に買ったものだ。管理は私に任されている。下の二人に渡すとすぐゲームとかを始めるからね。
ネット小説、という物があるらしいけど私はやはり紙媒体で読むのが好きだし、動画とかも興味はない。従ってスマートフォンを弄るのは榊とのやり取だけだ。
まだ気持ちを切り替えてないのか、メッセージは「雪が積もってる……」と写真付きで届いていた。一言、「頑張って」と返信して電源を落とし、ポケットにしまい込む。下手に長く返すと、つい好意が漏れそうになる。ハートマークや音符をつけそうになる。
だから、いつもそっけなく返す。気が付けばそれが当たり前になっていた。榊と私だけの”当たり前”、なんだか心がふわふわしてくすぐったくなる。
「お姉ちゃんそれ何? 雪兎?」
「ぴょんこりーぬ8世」
「ぴょんこ、りーぬ……?」
「あー、そうだね。この子は”ぴょんこりーぬ8世”じゃなくて”ぴょりびあん2世”って顔だね!」
かすかに聞こえる、フォローのしようのないネーミングセンスのなさ。私に名をくれたのが榊でよかったとつくづく思う。
ソファ専用のブランケットに身をくるみ、最近榊が気に入っている小説を開いた。
榊は気に入った小説を私に貸してくれる。というか貸してくれといつも頼む。そうしてお互いの感想を話し合うのが、これ以上ないほどに幸せで尊い時間だ。
八重と烏沙義が眠りについた後、榊と二人きりでお菓子を食べながら談笑するのもお気に入りの時間だ。
八重と再会し、榊に会ってからというもの、私もだいぶ変わったなぁと自覚している。榊をもっと知りたい、榊ともっと居たい、榊にもっと好かれたい。
気が付けば私の中は榊で満たされていた。こんな幸せな暮らしの中心にいるのが榊だから仕方ないのかもしれないけど。
手にした小説の角は少しよれ、榊が何度も読み返した証となっている。それがなんだか愛おしくて、持っているだけで手が幸せ色に染まる気がした。
まったく、私はどれだけ榊が好きなんだろうか。
と、玄関が開く音に次いで居間の扉が開かれる。そこに立っていたのは涙目の二人だった。
「ど、どうしたんだい!?」
慌てて立ち上がり、毛布に足を取られて転びそうになりながらも二人の元へ駆け寄る。
「手が、痛いの……ぐすっ」
「痛いのです……」
しもやけ……まぁ手袋をしていても長時間雪を弄っていればそうなるだろう。予想以下の事態に思わず頬が緩んでしまう。二人を一気に抱え、ソファにそっと降ろした。二人とも軽すぎないかな、同じもの食べてるはずなのにね。
「今ホットミルク作ってあげるからね」
二人を撫でて台所に向かうと、ポケットの中のスマートフォンが振動と共に通知音を鳴らした。
『寒すぎ、帰りてぇ』
そんな拗ねたような内容に笑みが零れ、私は一言返信して、ホットミルクを作り始める。
榊にもあとで作ってあげよう。
『榊が帰ってくるの、待ってるよ♪』
自分の気持ちに素直になるのも、悪いもんじゃない。
紅葉が完全にヒロインになってる気がする?
気のせいですよ(白目