絞り出したけど後はちょっと無理矢理な部分がかなり多いですってことだけ。
前はどこまで話したっけな?あぁ、確か俺が全て失った日のとこまでだったっけか。それじゃ続きを話すとするか。
俺が目を覚ました時崖の下に広がる森の下ではなく何処かの部屋の中だった。
「知らない天井だ…」
こんな状況でもネタに走れる程の気力はあったのか俺はそう呟く。
「へぇ、こんな状況であってもそのくらいの気力はあるのか。」
扉が開き、男がお盆にお椀と木匙を乗せて運んでくる。
「ほれ、粥だ。うちの前で何故か倒れてた上に全身怪我だらけな上に所々骨折があってまるで崖から落ちたような感じだったがどうした。怪我は一応ヒールかけといて治したが。」
男は俺の寝ているベッドのそばにあった簡素な造りの椅子に座り、俺にお盆を渡す。
かなり高い筈の崖から落ちたのに傷1つない体と男の言葉の中にあったヒールという言葉に俺はこの男は普通の人間ではない事という事を感じ取る。
「んで、どうしてうちの前で倒れてたんだ?」
男の言葉に俺は一瞬押し黙る。正直な話あんな荒唐無稽な話をしても信じてもらえる可能性は低い。だから俺はこの男に話そうか迷っていた。
そんな俺の様子が話したくないと思っていると感じた男は椅子から立ち上がり、ドアに手を掛ける。
その様子に俺は今話さなければ後悔すると思い、絞り出すように言葉を紡ぐ。
「話したら、俺を強くしてくれるか?」
「ん?まぁ、内容によってはだ。ただし復讐関係は御免被るがな。」
男は何気無い様に言い、ドアに伸ばした手を止めて再びイスに腰掛ける。
俺は男の言葉を信じ、自らの体験した事を語った。
男はこんな荒唐無稽な話を何の疑問を持たずに聞き、俺が話し終えると少しの間考える素ぶりをした後口を開いた。
「まずいっておくが恐らくこの世界はお前の住んでいる世界とは異なる世界だ。この世界には駒王町なんて町はないしそれに加えて落ちてきた場所が違う。お前が落ちたというのは切り立った崖の下にある森の中なんだろ。だが俺の家はごく普通とは言えないが森でもなければ切り立った崖の下にもない民家だ。」
男の説明に俺は謎の安心感を覚えた。それは何故だかは分からない。もう誠二の奴と合わなくて済むだとか俺の努力が報われないことがなくて済むだとかあの日々に戻らなくて済むだとか思ったんだろう。
だけどそれと同時に少しだけ心にチクリと痛みが走った。彼奴はこの世界は物語の世界であるかのように語っていた、そして俺が主人公であるとも。どんな物語かは分からないが誠二に俺が救う筈だった人、仲間になる筈だった奴、あり得たかもしれない恋愛を奪われたということだ。そのことに関しては別に何とも思わない。
だが彼奴が起こしたと思われるあの意識のなさそうな瞳、あれを使って救われる筈だった人を、仲間になる筈だった人を、愛したであろう人を不幸にするというのは許せなかった。あの時点で俺と本来の道を行った俺とは別人なのかも知れない。だけど彼奴は分かっていないだろう。自分がしでかした事は、自分の欲望のままに行なった所業は誰かの運命をめちゃくちゃにするかも知れないのだと。
ならば俺は彼奴に会って、彼奴を1発ぶん殴ってやらないといけない。
別に彼奴に恨みがないわけではないがそれでも自分が救えた筈の誰かを不幸にするというのは俺の正義感が許さなかった。
「で、どうする?一抹の可能性に賭けて俺に修行をつけてもらうか。はたまたここで新しい人生を始めるか。」
答えなどとうに決まっていた。
「修行をつけてくれ…師匠。」
その人に向かってベッドに腰掛けた状態ではあるが頭を下げた。
「分かった、修行をつけてやる。俺の名前は那賀田一成だ。覚えておけ。先ずは…」
師匠は名乗ると奥の部屋からテレビとアクション系の映画を何本か持ってきた。
「お前はまだ体が回復しきってないからな。しばらくの間は映画を見てそこに出てくる動きを軽く覚えてろ。」
何故に映画とは思ったものの思っただけに留めておいたが残念ながら師匠にはバレているようで。
「何でって顔してるな。あるOTONA曰く『飯食って、映画見て寝る!男の鍛錬はそれで十分だ!』らしいぞ。あとはさっき言った通り単純に体の回復だ。」
そう言われ、俺はとりあえずおいてある中から1つ取る。結構有名なアクション映画だ。それをビデオデッキにセットして見始める。
数日間体を休めながら映画を見て動きを頭に叩き込む日々を送っていると、そろそろ体を作っていくのか師匠に外に連れ出された。
「まずは今まで見てきた動きをしてみろ。どこをどう鍛えるかはそれを見ないと難しいからな。」
師匠に言われた通りにやってみるが当然ながら、もともと鍛えてなかったのと数日間体を動かしていなかった為に体が動きについていけていなかった。
師匠はそれを見て俺に何が必要かを教えて、俺はその通りに鍛えていく。
そんな日々を過ごしながら俺は様々な修行をこなし、そして3年の月日が流れていった。あの頃から身長はかなり伸びて180cm台に届くかぐらいの背丈になり体も十分戦闘で使えるような感じに仕上がってきた。
そして今日、俺は自分に足りない実戦経験や生き残る為の術を手に入れる為、武者修行に出ることにした。
「俺からは何も言わんよ。出るもの拒まずが俺のモットーだからな。それに次はいつこっちに来れるか分からん。それとこれは俺からの餞別だ。」
そう言って師匠は俺に何かを渡す。
「そいつは一度行った世界に行けるようになるもんだ。と言ってもこの世界には来れんがな。」
そして俺は師匠に向き直り、両手両膝をつく。
「師匠、今までお世話になりました。」
「おう、行ってこい。」
師匠の言葉に背を向け、俺は自分の世界を目指して他の世界に旅立った。
誠一の修得技術
・見様見真似の武術 new
・未完成の奥義 new
今回から誠一の修得技術を載せて見ました。
ちなみに師匠の名前は『かずなり』と呼びます。
それにしても最近のアニメは面白いですね。まぁ、何がとは言いませんが。