転生提督が元ブラック鎮守府に着任しました。これより、艦隊と共に深海淒艦を駆逐します‼ 作:逸ちゃんこ鍋
鎮守府に俺が着任して最初に行ったことは緊急会議を開いたことだ。正規空母の加賀に頼み、放送でここにいる艦娘を食堂に集まるように呼びかける。すると放送した5分後には全員集合し、整列をキチンとしていた。俺は前に立ち、マイクを使い1番後ろの娘に聞こえるのを確認してから話を始める。
「本日をもって、この鎮守府に着任することになった『相良彰斗』だ。わからないことが多いから、皆に迷惑をかける。だけど、提督として精一杯努力をしようとーーー「善人ぶってんじゃねぇ!」...」
話の途中に割り込んできたのは、重巡洋艦の摩耶である。
「どうせ手前ぇも前任のように扱うんだろ!この偽善者が!」
「そーだそーだ!」「帰れ!」「出ていけ!」「飯食わせろ!」
すると他の艦娘達も俺に対して罵詈雑言を浴びせる。一部関係ないのが聞こえたがそれは無視。
「なるほど、そこまで言うのなら俺を撃てばいい。俺に対して敵意がある奴は明日の朝ヒトヒトマルマルに艤装を身につけ俺と勝負だ。何人でも構わん。お前らが勝てば俺は出ていこう。しかし、俺が勝ったらここに着任することに異議を唱えることを止めてもらう。では話は以上だ。解散!」
解散と同時に艦娘達は自室に戻る。俺も今日はいろいろありすぎて、疲れているので自室に戻って休むことにした...
だがそうは問屋が降ろさない。提督の自室は執務室の隣にあり、入るには執務室を通らなければならない。そこで執務室に入ったのだが、先ほどのいざこざで窓が割れている。更には書類の山まである。窓の修理は今の時間からだと遅いので明日の朝早く妖精さんに頼むことにする。後は書類の山をどうするか考える。そして今から処理していくことに決めた。その書類の山を1時間で処理し、後日それを知った眼鏡をかけたある艦娘が「あいつ化け物だ」と語ったのはまた別の話。
深夜。草木も眠る丑三つアワーに、彰斗は執務室に誰かが入ってきた気配を察知した。起きてブリッツガンダムを装備し、ミラージュコロイドを展開した。そして部屋の隅で誰が来たのかを確認する。入ってきたのは駆逐艦の響改めヴェールヌイである。ヴェールヌイは俺がフートンで寝ていると思っているようだ。手にはナイフが握られており、まさに夜中の暗殺を実行しに来たのである。フートンに穴が開くのが嫌だったので、ミラージュコロイドを解除し後ろから声をかける。
「夜中に男の部屋に忍び込むなんて、勘違いされるからやめといた方がいいぞ」
いきなり後ろに現れた彰斗に驚くが、軍人ということもあり臨機応変に対応するが、彰斗の方が早く動きヴェールヌイを拘束し手に持っていたナイフを回収する。
「...ッ!こ、殺せ!どうせ拷問にあうなら、いっそ死んだ方がーーー」
殺せと言ってくるが、拘束を解き解放する。ヴェールヌイは何故という顔で彰斗を見る。
「自分の部下を殺そうとする程堕ちたつもりはなかったんだけど?それに...」
続けて話す。
「目の前で今にも泣きそうな顔をしている奴を殺せねぇだろ?」
ヴェールヌイは気づいてなかったが、その顔は今にも泣き出しそうだった。
「今回俺を殺そうとしたことは不問にするが、お前が抱えている気持ちを話して貰うぞ」
そして彰斗はヴェールヌイから様々な話を聞いた。姉妹が暴力を受けているのに、自分は見ていることしか出来なかったこと。姉妹がいっつも自分を心配させないように振る舞っていたこと。今回の提督の解任及び新提督の着任を機に仲間を解放したかったこと。全て話してくれた。ヴェールヌイは話している途中にまるでダムが決壊したかのように涙を流し始めた。
「話してくれてありがとう。ヴェールヌイは優しいんだな。姉妹思いで」
ヴェールヌイが少し泣き止んだのを見て声をかける。ここで俺はそんなことはしない、と言いたい所だが今までの話しからそんな簡単に信頼はされないだろう。そう思い考えた結果、彰斗は脳内でテンセイ=ニンジャに呼びかけた。
『どうしたのだ、サガラ=サン』
テンセイ=ニンジャ、俺の能力の一部を他人に与えることってできるのか?
『可能だが、与えた分の能力は自分では使えなくなるぞ。それでもよいのなら好きにするがいい』
そう言ってテンセイ=ニンジャは引っ込んだ。好きにしろ、か...ならその通りにさせて貰う。
「ヴェールヌイ、ちょっといいか?」
「なんだい?」
彰斗はヴェールヌイの頭の上に手を起き、能力を与える呪文を唱える。
「そなたの願いを叶えんとするため、主の名のもとにこの剣を与える。そなたがこの剣を悪に使うのではなく、善を行うために使うことを」
すると、ヴェールヌイの身体が数秒間発光した。発光がおさまると、違和感を感じるのかヴェールヌイは自分の身体を見渡す。
「ハラショー、なんだか力を感じる」
ヴェールヌイはその違和感が力だと判断した。
「ヴェールヌイ、お前に今力を与えた。俺は無理に信頼しろ、とは言わない。だから、俺が信頼出来ないと思ったときは遠慮せずに俺を撃て」
「わかった。そうだ、司令官?お願いがあるんだけどいいかな?」
ヴェールヌイが小首を傾げながら聞いてくる。
「何?」
「明日...ていうか今日なんだけど、朝に訓練に付き合って欲しいんだ。この力がどんなものなのか知りたい。そして明日の勝負、私も参加させて貰うよ。司令官側にね」
ヴェールヌイの頼み事は今日の朝の訓練及び、提督反対派との勝負に提督側に付かせて欲しいとのこと。前者は構わないのだが...
「ヴェールヌイ、その勝負には君の姉妹だって来るだろう。君は姉妹を撃つ覚悟があるのか?」
そこなのである。ヴヴェールヌイの話を聞く限り、ヴェールヌイの姉妹は反対派として参加するだろう。
「司令官、それは違うよ」
ヴェールヌイから思わぬ解答が返ってくる。
「私は、ただ司令官の手助けをしたいだけじゃない。姉妹に、いや皆にこの司令官は信頼に足る人物だっていうのを教えてあげないといけないんだ」
その目には、決意と覚悟が込められていた。
「...わかった。明日の勝負の参加を許可する」
そんなヴェールヌイの意思をねじ曲げるのはいけないことだ。彰斗は心の中で、これからヴェールヌイは更に強くなれると確信したのだった。
ヴェールヌイ「そうだ司令官。もう一つお願いがあるんだけど」
彰斗「なんだ?」
ヴェールヌイ「私のことは『ヴェールヌイ』じゃなくて、『ヴェル』って呼んで欲しいな」
彰斗「じゃあそのかわり、俺のことは『司令官』じゃなく『彰斗』って呼んでくれ」
ヴェル「了解、これからよろしく彰斗」
彰斗「よろしくな、ヴェル」