遊戯王GX 交差する魂の物語   作:紅卵 由己

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7月14日追記

デュエルシーンの終盤にあったミスを修正しました。

土下座カウンターが1つ増えました。

7月14日追記2

ルビの振り方が分かった(実を言うとルビに必要な縦線が『|』である事を知らなかった)ので、所々に編集を加えてみました。

感想で指摘された誤字を訂正しました。

土下座カウンターが2つに増えました。

7月14日追記3

前半の基本ルール説明の部分を、若干編集しました。

感想で指摘された誤字を訂正しました。

土下座カウンターが3つに増えました。


第二話 デュエルアカデミア入学試験 実技編

 内側にバスケットコートを想わせる競技場が四つあり、外側に大勢の人が座る事が出来る観客席が見える、スタジアムのような場所。

 

 海馬コーポレーションと言う、世界規模で名を轟かせている会社が所有しているこのドームの中で、デュエルアカデミア入学試験の一つ、実技試験が行われている。

 

 観客席やその上の位置に存在する受験生や生徒の、ある者は馬鹿にするような発言で、またある者は純粋な歓声を上げており、ドームの中は様々な声で賑わっていた。

 

 

 

 今この時にも、受験生が試験官と対戦を始めており、その対戦の内容から実技試験の配点を決定している。

 

 デュエルモンスターズの基本的なルールとして、最初は4000から始まる相手プレイヤーのLP(ライフポイント)を0にする事が大抵の勝利条件となり、逆に自分のLPを0にされる事は敗北条件にもなる。

 LPを減らす手段として最も一般的なのは、茶色い縁取りのモンスターカードを使い、バトルフェイズと言う攻撃の宣言を行う事の出来るフェイズで、そのモンスターの攻撃力の数値分だけ引き算の要領で減らすという物だ。

 相手側にもモンスターカードが場にある場合、攻撃した側と攻撃される側で引き算を行い、ダメージを計算する。

 

 ここで、実技試験を行っている受験生と試験官の対戦の一部分から例を挙げてみよう。

 

 受験生のLPは1200。試験官のLPは700と、互いに切羽詰まった状況になっている。

 

 受験生の場には攻撃力の数値が2100のモンスターが一体と、その後ろ側に伏せられたカードが一枚。試験官のフィールドには、攻撃力が1400のモンスターが同じく一体と後ろ側に伏せカード。

 

「ダークヒーロー・ゾンバイアで、巨大ネズミを攻撃!!」

 

 この場合、バトルフェイズで受験生側のモンスターが試験官のモンスターに攻撃をした時、何もしなかった場合に試験官は100のダメージを受け、LPが700から0に減少する。

 

 しかし、ここで試験官側がモンスターカードとは違うカードを、モンスターカードのすぐ後ろ側にあるゾーンに設置していた場合、状況が異なる事もある。

 

「罠カード発動、炸裂装甲!!」

 

 受験生側が攻撃した際に、試験官側がモンスターの攻撃に反応して発動出来る紫色のカード――(トラップ)カードを発動した場合、バトルフェイズを強制終了させられたり、攻撃した側のモンスターを破壊させる事がある。

 

 この例の場合は、罠カード≪炸裂装甲≫の「攻撃した相手モンスター一体を破壊する」と言う効果によって、受験生側のモンスターが破壊されたため、バトルは中断される。

 

 罠カードは、伏せたターンに使用する事は出来ないものの、その効果は強力な物が多く、相手側のターンの時でも発動出来る。今のように、何のリスクも無く相手のモンスターを破壊する事も可能なのだ。

 

 ちなみに、破壊されたモンスターカードは基本的に、『墓地』と呼ばれる使い終わった、もしくは破壊されたカードの置き場へ送られる。

 

 話を戻すと受験生側にモンスターが残っていないので、バトルフェイズの次にあるメインフェイズ2と呼ばれるフェイズにて、試験官と同じく罠カードを伏せて出しておかない限り、丸裸の状態で試験官のモンスターの直接攻撃(ダイレクトアタック)が成立し、1400のダメージを受けて受験生のLPが0になる。

 

 しかし、デュエルモンスターズにはもう一種類だけ、状況を動かすカードが存在する。

 

「メインフェイズ2に移行して……魔法カード、死者蘇生を発動します!!」

 

 それが緑色のカード――魔法(マジック)カードである。

 

 罠カードとは違い、伏せずとも任意に使用する事ができ、対戦の流れを最も変えるカードと言っても過言では無い。

 

 この例の場合、魔法カード≪死者蘇生≫の「自分または相手の墓地のモンスター1体を選択し、選択したモンスターを特殊召還する」と言う効果が適用され、受験生側の場に再びダークヒーロー・ゾンバイアが現れる。

 

 このように、モンスター・魔法・罠カードを上手く使って、最終的に相手側のLPを0にすれば勝利となる。

 

 LPを0にする以外にも勝利する方法は存在するが、それはまた別の機会で語る事にさせていただく。

 

 

 

 ◆ ◆ ◆ ◆

 

 

 

(遂にこの時が来た……落ち着け僕。いつも通りやれば大丈夫……)

 

 そして、受験生の一人である空井青谷も……あと数分で受付終了と言うギリギリの時間で、試験会場に到着していた。

 

 全力疾走したために、ぜぇぜぇと息を切らせながらも、時の運は青谷に味方したようだ。今は無事に実技試験を行おうとしている。

 

「では試験番号61番、試験を開始する。負けても不合格になるとは限らないので、気を楽にして挑むように」

 

「空井青谷です。よろしくおねがいします」

 

 青谷の右腕には決闘盤《デュエルディスク》が装着されており、対戦に使用するデッキが接続されている。

 

 青谷も試験官も、まず最初に行ったのはデッキの一番上から五枚のカードを引くという事。

 

『デュエル!!』

 

 互いに対戦の準備が整った事を確認すると、ほぼ同時に青谷と試験官は、デュエルモンスターズと言うカードゲームをする際に必ず言われるお決まりの台詞を言い、決闘を開始した。

 

 

 

「試験では、受験生側が先攻を取れる事になっている。君が先攻だ」

 

「分かりました。俺のターン、ドロー!!」

 

 試験官から先攻を告げられ、ドローと宣言しながらデッキの上からカードを一枚引く。

 

 デッキの一番上から一枚カードを引くドローフェイズから、場を確認し準備するスタンバイフェイズ、そしてメインフェイズ1へ移行。

 

 初動はまず、最初のターンには必ずある六枚のカードから自分の布陣を展開する事から始まる。

 

(最初は……うーん、とりあえず様子見のためにコイツで……)

 

「僕は手札から、モンスターをセットしてターンを終了します」

 

 青谷が手に持っているカードの中から茶色いカードを決闘盤の台の上に乗せると、決闘盤がカードの画像データを読み取り、裏側表示で横向きのカードをフィールドに出現させる。

 

 通常召還を行う事が出来るのは1ターンに一回のみであるため、このターンはもうモンスターカードを召喚・セットする事は出来ない。青谷は相手の動きを観察するために、モンスター以外には何も伏せずにターンを終了した。

 

 エンドフェイズを通して、試験官側のドローフェイズが始まる。青谷と同じくドローを宣言し、デッキの一番上からカードを一枚引く。

 

(……ふむ、まずは様子見だな)

 

「メインフェイズに移る。私は手札から、ゴブリン突撃部隊を攻撃表示で召喚!!」

 

 試験官がカードを決闘盤の上に乗せると、フィールドには三人で部隊を組んでいるゴブリンの姿が立体画像として現れる。攻撃力の数値は2300と表示されている。

 

 

 ≪ゴブリン突撃部隊(とつげきぶたい)≫ レベル4 攻撃力2300 守備力0 地属性

 

 

「バトルフェイズ。ゴブリン突撃部隊で、裏側表示のモンスターを攻撃する」

 

 試験管が攻撃の宣言を行うと、青谷の場に伏せられていたカードが表側に裏返り、カードイラストからUFOのような形をした甲羅を背負った亀が現れる。

 

 

 ≪UFOタートル≫ レベル4 攻撃力1400 守備力1200 炎属性

 

 

 三体のゴブリン達は敵である亀に対して突撃をかけ、一斉に棍棒を頭部に振り下ろす。まるで何かの鬱憤を吐き出すかのように見えているのは、恐らく気のせいだろう。

 

 ゴブリン突撃部隊の攻撃力が、UFOに似ている形をした甲羅を背負った亀の守備力を上回っているため、UFOタートルは戦闘に敗北し、ガラスが割れたような音を出しながら砕け散る。

 

「UFOタートルの効果発動! 戦闘で破壊され、墓地に送られた時……デッキから攻撃力1500以下の炎属性のモンスター一体を、特殊召喚します!!」

 

 しかし、負けじと青谷は効果発動の宣言をした後、一度デッキを取り出し、その中から召喚条件を満たしているモンスターカードの一枚を決闘盤に乗せた。

 

「僕が召喚するのは……仮面竜!!」

 

 画像データを読み取り現れたのは、白と赤の体色を持ち顔に仮面を被っているドラゴン。

 

 

 ≪仮面竜(マスクドドラゴン)≫ レベル4 攻撃力1400 守備力1200 炎属性

 

 

 

「その後、デッキをシャッフルします」

 

 そう言い青谷はデッキを細かくシャッフルし、デッキを再び決闘盤に戻した。

 

(ふむ……リクルーターか。良い選択だ)

 

「ゴブリン突撃部隊は、攻撃を行った後に守備表示になる。メインフェイズ2に移行し、カードを二枚伏せてターンを終了する」

 

 試験官は内心で青谷を評価しながら、ゴブリン突撃部隊のカードを縦向きから横向きに変え、魔法・罠カードゾーンに二枚のカードをセットし、ターンを終了した。

 

 青谷は最初のターンと同じようにカードを一枚引いた後、一度場を確認する。

 

(とりあえず場にモンスターは残せたし、ゴブリン突撃部隊の守備力は0だからどのモンスターで攻撃しても倒せる。でも、あの二枚の伏せカードが気になるな……石橋は叩いて進む!!)

 

「手札から魔法カード、スタンピング・クラッシュを発動します。このカードは自分の場にドラゴン族のモンスターが居る場合のみ発動でき、相手の場にある魔法・罠カード一枚を破壊し、500ポイントのダメージを与えます!!」

 

 場に出現したカードが一瞬だけ光ると、試験官側のフィールドに存在する伏せカードの一枚が突如現れた巨大な竜の足に踏み潰され、砕け散る。

 

「む……」

 

(落とし穴を破壊されたか……)

 

 その砕け散った破片が試験官の方に向かうが、あくまで立体映像故に身体的な外傷は無い。しかし、カードの効果によってそのLPを僅かに削られた試験官は一瞬苦い顔を見せる。

 

 破壊したカードの名前は落とし穴と言い、相手がモンスターを召喚した時、そのモンスターの攻撃力が1000以上あるならば破壊すると言う効果を持っていた。破壊出来ていなければ、次に召喚した青谷のモンスターは破壊されていただろう。

 

 

 試験官 LP4000→3500

 

 

(もう一体モンスターを召喚すれば、ダイレクトアタックでLPをあと少しに出来る……もう片方の伏せが気になるけど、落とし穴は破壊したし、ここはもう一体召喚しよう!!)

 

「僕は、手札からドラゴンフライを召喚します!!」

 

 一度思考を練ったのちに青谷が召喚したモンスターは、外見は一見するとトンボなのかカマキリなのかよく分からない昆虫族のモンスターだった。

 

 

 ≪ドラゴンフライ≫ 攻撃力1400 守備力1200 風属性

 

 

「バトルフェイズ。ドラゴンフライで、ゴブリン突撃部隊を攻撃します!!」

 

 攻撃宣言を行うと、ドラゴンフライは一度空中に高く飛び上がってから急速にゴブリン突撃部隊に向かって奇襲を仕掛ける。

 

「!?」

 

 しかし、破壊してそのままダイレクトアタックが出来ると思った矢先、守備体制に入っていたはずのゴブリン突撃部隊は一転攻勢。カードの向きが横向きから縦向きに変わると同時に、奇襲を仕掛けたドラゴンフライを逆に棍棒で殴り落とした。

 

 

 空井青谷 LP4000→3100

 

 

「何でドラゴンフライが……? 戦闘は確かに行われたはずなのに……」

 

「悪いな。君が攻撃の宣言をした瞬間に、罠カードを発動させてもらった」

 

「えっ!?」

 

 青谷は疑問に思っていると、そんな青谷に分かりやすいように試験官が説明をする。

 

「永続罠カード、最終突撃命令。このカードがフィールド上に存在する限り、フィールド上に存在する表側表示モンスターは攻撃表示となり、表示形式を変更出来ない」

 

 つまり、青谷が攻撃宣言を行った際に、そのカードの効力によってゴブリン突撃部隊は攻撃表示に変更。戦闘は既に行われているから中断は出来ず、攻撃力で勝るゴブリン突撃部隊がドラゴンフライを戦闘破壊したのだ。

 

 思わず青谷は試験官が使った罠カードがモンスターを破壊するカードで無かった事に驚いたが、忘れない内に破壊されたモンスターの効果を発動する。

 

「破壊されたドラゴンフライの効果を発動。破壊された時、デッキから風属性で攻撃力1500以下のモンスター一体を特殊召喚する。僕はデッキから二枚目のドラゴンフライを特殊召喚!!」

 

 再びデッキからカードを一枚抜き取り、二枚目のドラゴンフライを決闘盤に乗せる。しかし、ゴブリン突撃部隊の攻撃力を越えるモンスターでは無いため、現状では肉壁と言う役割以外に持てない。

 

(あのカードがある限り、守備表示には出来ない……ゴブリン突撃部隊のデメリットをこう消してくるなんて)

 

「カードを一枚伏せて、ターンを終了します」

 

 もう一体のモンスターである仮面竜で攻撃しても、ダメージを貰った上でモンスターの数を減らす事になるので、やむを得ず青谷は逆転への布石としてカードを一枚伏せ、二回目のターンを終了した。

 

(……ふむ、再びリクルーターで場を繋いだか。だが、どこまで持つかな?)

 

 試験官はカードをドローし、自分の持つ四枚の手札を見ながら青谷のデッキを分析すると、一気に攻勢に出る。

 

「私は魔法カード、サイクロンを発動。その伏せカードを破壊する!!」

 

「げぇっ!?」

 

 試験官の翳したカードから旋風が巻き起こり、青谷の伏せていたカードを巻き込み破壊する。その光景を見た青谷は、思わず口から焦りの声を上げてしまった。

 

「成程、ミラーフォースか。それで私がこのターンに召喚したモンスターも含めて全て破壊し、次のターンの直接攻撃でライフを削りきる予定だったんだろうな」

 

「うぐっ……」

 

 破壊された罠カードの名前は聖なるバリア・ミラーフォースと言い、相手の攻撃宣言時に発動、相手の攻撃表示のモンスターを全て破壊すると言う強力な効果を有している。

 

 しかし、強力なカードほど知名度が高く、そのカードの存在を警戒されてしまう可能性が高い。それ故に試験官は青谷の伏せたカードを、攻撃に反応してモンスターを破壊するカードと予測して破壊したのだ。

 

 観客席からは「アイツ終わったな」や「ミラーフォースは添えるだけ」と言った声が飛び交う中、試験官は畳み掛けるようにモンスターを召喚する。

 

「最終突撃命令の効果も利用した良い選択だったが、詰めが甘かったな。私はジャイアント・オークを召喚!!」

 

 カードから現れたモンスターは、白く巨大な体を持ち、両手で巨大な骨棍棒を持っている怪物。その攻撃力はゴブリン突撃部隊より僅かに下回る2200だが、今の青谷のモンスターを倒すのには十分すぎるモンスターだった。

 

「ジャイアント・オークでドラゴンフライを、ゴブリン突撃部隊で仮面竜を攻撃!!」

 

 ジャイアント・オークは巨体に見合うのそのそとした動くから、手に持った巨大な骨棍棒でドラゴンフライを野球のバッターのように打ち飛ばし、ゴブリン突撃部隊は仮面竜を囲んで包囲し、土煙のようなエフェクトを出現させながら連続して殴る。

 

「くっ……ドラゴンフライの効果で三体目のドラゴンフライを、仮面竜の効果で二枚目の仮面竜を特殊召喚!!」

 

 青谷は三度デッキからカードを抜き出し、破壊されたモンスターと同じモンスターをそれぞれ召喚する。

 

 しかし、いかにモンスターの数が元に戻ろうとも結局の所、青谷のモンスターは両方共破壊され、その戦闘で発生したダメージは容赦無く青谷のLPを削っていた。

 

 

 青谷 LP3100→1800

 

 

 残りのLPは初期値の半分を切り始め、次第に青谷は顔に焦りの色を見せ始める。

 

「私はカードを一枚伏せて、ターンエンド」

 

「僕のターン!!」

 

 相手の場には、ノーコストで召喚出来るレベル4のモンスターでは一部を除いて単体では到達する事の無い攻撃力が2000以上のモンスターが二体。そして伏せカードが一枚と、先ほどから永続して効果を発動している罠カードの最終突撃命令。

 

 対する青谷の手札は三枚。しかし、そのどれも今の状況で使って状況を変える事の出来るカードでは無い。

 

 ならば、次に引くカードに望みを託すしか無いのだろう。青谷は天に運を任せるように願いながら、カードを引いた。

 

 そして、その顔が……分かりやすい笑みを浮かべた。

 

「僕は、エレメント・ドラゴンを召喚!!」

 

 

 ≪エレメント・ドラゴン≫ 攻撃力1500 守備力1200 光属性

 

 

 召喚したのは、ブラウン色の頭髪にピンク色の体をした四足歩行のドラゴン。攻撃力の数値は1500となっており、試験官のモンスターには到底敵いそうに無い。

 

 しかし、そのドラゴンは隣に居る仮面竜に宿る炎の力に呼応するように、体の色がピンクから赤へと染まる。

 

「エレメント・ドラゴンは場に炎属性のモンスターが居る時、攻撃力が500ポイント上昇します。よって、攻撃力は2000!!」

 

 効果によって攻撃力が上がったものの、まだ足りない。

 

 しかし、青谷はそのままバトルフェイズに移った。

 

「バトル! エレメント・ドラゴンでゴブリン突撃部隊を攻撃!!」

 

 エレメント・ドラゴンは大きく息を吸い、ブレスの体制に入る。対するゴブリン突撃部隊は、エレメント・ドラゴンに向かって名の通り突撃する。

 

 それに対して試験官が伏せカードを発動しない事を見て、青谷は二体のモンスターが衝突する瞬間に手札から魔法カードを発動した。

 

「ダメージ計算に入る時に、僕は手札から速攻魔法……突進を発動!!」

 

「!!」

 

 青谷が発動したカードの名前は突進。魔法カードの中でも速攻魔法と言う分類とされるカードの最大の特徴として、発動出来るタイミングが多種多様である事が挙げられる。

 

 突進もその一つで、バトルが既に成立した状態でもダメージ計算に入るより先に、手札から発動する事が出来る。

 

 既に戦闘が始まっているために、攻撃宣言に反応して発動出来る罠カードは発動出来ない。そして、突進の効果は「フィールド上のモンスター一体を選択し、攻撃力を700ポイントアップさせる」と言う物。

 

 故に、エレメント・ドラゴンの攻撃力は2000から2700に上昇する。エレメント・ドラゴンの口から放たれた赤色の炎がゴブリン突撃部隊に直撃し、ゴブリン突撃部隊を破壊した。

 

(速攻魔法を、ダメージ計算前に使える事をきちんと知っているようだな……)

 

「更に、エレメント・ドラゴンは自分フィールド上に風属性のモンスターが居る場合、相手のモンスターを戦闘で破壊した際にもう一度攻撃が出来ます。エレメント・ドラゴンでジャイアント・オークに攻撃!!」

 

 ゴブリン突撃部隊を破壊した後、直ぐさまエレメント・ドラゴンは翼にドラゴンフライに宿る風の力を纏い、ジャイアント・オークに向かって翼を羽ばたかせた。

 

 すると、鋭い風の刃が翼から出現し、ジャイアント・オークの体を真っ二つに切り裂いた。

 

(今の攻撃で発動しなかったと言う事は……もしかして、あの伏せカードは攻撃に反応して発動出来るカードじゃない?)

 

「ドラゴンフライで、ダイレクトアタック!!」

 

「リバースカード発動。罠カード、リビングデッドの呼び声。墓地に存在するモンスター一体を特殊召喚する。私はゴブリン突撃部隊を特殊召喚!!」

 

 試験官は場に伏せておいたカードを発動させ、先ほどエレメント・ドラゴンの攻撃で破壊されたゴブリン突撃部隊を墓地から蘇らせた。

 

「……攻撃を中断します」

 

 がら空きだったフィールドにモンスターが再び現れた事によって、攻撃は一度巻き戻される。青谷はこれ以上攻撃しても意味が無いと悟り、攻撃を中断させた。

 

 

 試験官LP3500→3100→2600

 

 

 試験官のLPも初期値の半分に近づいて来た事で、青谷は流れがこちらに向いていると内心で呟いている。

 

 しかし、試験官はまだ余裕があるのか、もしくは試験官と言う立場からなのか、あくまでも冷静だった。

 

「……カードを一枚伏せて、ターンを終了します」

 

 その表情に本能的に不安を覚えた青谷は、念のため一枚のカードを伏せ、ターンを終了した。

 

「私のターン、ドロー」

 

 試験官の手札は、ドローした分を合わせると現在は二枚。場には最終突撃命令と一枚の伏せカードがある。

 

「私は手札から魔法カード、強欲な壷を発動。デッキからカードを二枚ドローする」

 

 魔法カードを使って手札を増強し、手札の枚数を二枚から三枚に変える。

 

「………………」

 

(ふむ、ここでこのカードが来るとは……あの受験生には可哀想だが、試験とは言えこれもデュエル。容赦せずにいかせてもらう)

 

 試験官は引いた二枚の内一枚のカードを見ると、内心で受験生である青谷を可哀想に思いながらも、そのカードを決闘盤に乗せる。

 

「では行くぞ。ゴブリン突撃部隊を生け贄に、偉大魔獣ガーゼットを召喚する!!」

 

「ッ!?」

 

 ゴブリン突撃部隊の姿が光となって消え、それを糧として現れたモンスターは、青色と緑色を混ぜたような体色をしており、飴色の防具を装備している、頭から二本の角が生えている悪魔。

 

「ガーゼットの攻撃力は、生け贄召喚の際に生け贄に捧げたモンスター一体の攻撃力を倍にした数値になる。つまり……」

 

 

 

 ≪偉大魔獣(グレートまじゅう) ガーゼット≫ 攻撃力?→4600 守備力0 闇属性

 

 

 

「攻撃力……4600!?」

 

 先ほどのゴブリン突撃部隊とは比べ物にならない圧倒的な攻撃力。攻撃力を選択する効果以外に効果を持たないが、その効果によって生まれた攻撃力は十分すぎる威圧感を青谷に与えていた。

 

「バトルだ。偉大魔獣ガーゼットで、ドラゴンフライを攻撃!!」

 

「バトル前に罠カード、生け贄の祭壇を発動! 僕の場に居るモンスター一体を墓地に送り、墓地に送ったモンスターの元々の攻撃力分だけライフを回復する!!」

 

 エレメント・ドラゴンの周囲に儀式の祭壇のような物が現れると、エレメント・ドラゴンの体が光の粒子となって消え、青谷のLPを回復させる。

 

「モンスターの数が減り戦闘は巻き戻されるが、攻撃を続行する。ガーゼットでドラゴンフライを攻撃!!」

 

 攻撃宣言と共に偉大魔獣ガーゼットの放った鉄拳は、ドラゴンフライを木っ端微塵に粉砕した。その攻撃の余波が青谷に襲い掛かり、青谷のライフを大きく削る。

 

 

 青谷LP2800→4300→1100

 

 

「くっ……ドラゴンフライの効果で、デッキからリトル・ウィンガードを召喚……」

 

 青谷は三度ドラゴンフライの効果を使い、デッキから盾に紋章が刻まれた小さな戦士――リトル・ウィンガードを召喚した。

 

 

 

 ≪リトル・ウィンガード≫ 攻撃力1400 守備力1800 風属性

 

 

 

「私はカードを一枚伏せ、ターンを終了する」

 

「僕のターン……」

 

 逆転したと思ったら、またあっさりと逆転されていた。その事実が青谷に重く圧し掛かり、カードを引こうとしている手を震えさせる。

 

(試験官さんは、負けても不合格になるわけじゃないって言ってた……このまま負けても、誰も悪く言わないよね……)

 

 勝てない。自分のデッキにあるモンスターでは、自分の手札にある切り札の魔法だけでは、目の前に居る攻撃力4600のモンスターを倒す術は無い事を青谷は理解していた。

 

 破壊出来るとしたら魔法カードか罠カード。しかし、今ある手札の中にモンスターを破壊する効果を持ったカードは無く、このドローで引かないと次は無い。

 

 この状況で青谷が次のターンを生き残るためには、魔法か罠カードを破壊出来るカードを引くか、攻撃そのものを無力化するカードを引く以外に無い。

 

 そして勝とうとするのであれば、どの道ガーゼットを場から取り除く事が絶対条件である。

 

(でも、降参するのも嫌だなぁ……)

 

 だが、降参する事を心は拒否している。

 

(……どうせなら、出来る事を全部やって負けよう。勝てないとしても、評価点ぐらいは取りたいし……!!)

 

 それは、まだ青谷の闘志が消えていない事を意味していた。

 

(……願わくば、モンスターを破壊出来る方の魔法カードが来てくれ!!)

 

「ドロー!!」

 

 現実逃避するように頭の中で自分のデッキに祈りながら、青谷は勢いよくデッキからカードを引いた。

 

(!! 良し、まだチャンスはある!!)

 

「魔法カード、強欲な壷を発動! デッキからカードを二枚ドローします!!」

 

 希望通りとはいかないものの、運良くカードを引けるカードをドロー出来た青谷は、再びデッキに人差し指と中指を当て、カードを二枚引いた。

 

「……ドロー!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 その時。

 

(……やっと引いてくれたか。遅いっての……)

 

 青谷は頭の中に、見知らぬ誰かの声が……響いた気がした。

 

「!?」

 

 青谷は周りを見渡すが、自分の後ろには誰も居らず、居るのは斜め上に存在する観客席から青谷を見下ろす受験生や生徒達だけだった。

 

(観客席から聞こえる声で誤解したのかな……っと、それより今引いたカードは……?)

 

 頭の中で響いた声を幻聴だと割り切り、青谷はドローしたカードを見た。

 

「……え?」

 

 青谷は自分の引いたカードを見て、思わず気の抜けた声を漏らした。

 

(こんなカード、僕入れてたっけ……?)

 

 そのカードは、記憶として覚えている限り青谷自身がデッキに入れた覚えも手に入れた事も無く、本来ならば入っていないはずのカード。

 

(……もしかして、あの時の人がくれたカード? あの時は急いでたからカードテキストに目をやる事無くデッキに入れていたけど……)

 

 その正体は、試験会場に向かう途中でぶつかった人物から運命のカードと称されて貰ったカード。そして……

 

(……でも、このカードとこのカードで……このカードを使える! せっかくだから、使わせてもらいます!!)

 

(表情が変わった? モンスター除去のカードを引いたのか?)

 

 青谷は、先ほどまでの負けムードが嘘のように、瞳に闘志を宿した表情を浮かべていた。

 

「僕は、仮面竜とリトル・ウィンガードを生け贄に……」

 

 青谷の場にいる仮面竜と、リトル・ウィンガードが光となって消えていき、より強力なモンスターを呼び出すための糧となる。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「タイラント・ドラゴンを召喚します!!」

 

 二体のモンスターの命を糧として召喚されたのは、黄土色の巨躯と額に緑色の宝玉を埋め込み、背中から大きな翼を生やした巨大なドラゴン。

 

 額の宝玉と同じ色をした瞳を輝かせ、力強く吠える。

 

 立体映像とは言え、まるでその場に生きているような錯覚をプレイヤーに与えている辺り、決闘盤を作った会社の技術力の高さが伺えるだろう。

 

 

 

 ≪タイラント・ドラゴン≫ 攻撃力2900 守備力2500 炎属性

 

 

 

 そして、その攻撃力は……2900。まだ足りないが、青谷にはまだ一枚だけ手札があった。

 

「攻撃力2900……凄い数値だが、それではまだ私のモンスターには敵わないぞ?」

 

「はい。だから……こうします!! 装備魔法、団結の力をタイラント・ドラゴンに装備!!」

 

 青谷が発動したカードから光が放たれ、タイラント・ドラゴンが照らされる。

 

「このカードの効果は、装備モンスターの攻撃力と守備力を、自分フィールド上に表側表示で存在するモンスター1体につき800ポイントアップすると言う物!!」

 

「しかし、君の場にはそのタイラント・ドラゴン一体のみ! 攻撃力は800しか上がらず、攻撃力は3700で止まる!!」

 

「まだ僕には手札があります! 魔法カード、浅すぎた墓穴を発動!!」

 

「!!」

 

(そうか、例えガーゼットを破壊出来なくても、この手があったか……!!)

 

 青谷が発動した浅すぎた墓穴と言うカード。その効果は、お互いのプレイヤーは墓地に存在するモンスター一体を選択し、それぞれのフィールド上に裏側守備表示でセットすると言う物。

 

「僕は、墓地から仮面竜をセットします」

 

「……私は、墓地からゴブリン突撃部隊をセットする」

 

 互いにモンスターをセットし、そこで青谷の手札は尽きた。

 

「さっきのドラゴンフライの時に気付きました。最終突撃命令は、例え裏側表示でも……戦闘が起きた時、強制的に攻撃表示にすると言う事を。こちらの場には表側表示のモンスターが一体しか居ないので、団結の力で上がる攻撃力は800から変わらない……だけど、十分です!! タイラント・ドラゴンで、セットモンスターを攻撃!!」

 

 攻撃宣言を行うと共にタイラント・ドラゴンを息を大きく吸い、ドラゴン族の攻撃手段であるブレスの体制に入る。

 

「攻撃宣言時に私の場にある罠カード、ドレインシールドを発動! 君のタイラント・ドラゴンの攻撃を無効にし、その攻撃力分だけ私のライフを回復する!!」

 

 試験官は万が一のために伏せておいた罠カードを発動し、タイラント・ドラゴンの攻撃を吸収する盾を出現させたが、それを気にする事無くタイラント・ドラゴンは火炎弾を放った。

 

「無駄です! タイラント・ドラゴンには、自身を対象とした罠カードの発動を無効にし、破壊する効果がある……らしいです!!」

 

「!!」

 

 そう、試験官の使ったドレインシールドと言う罠カードは、攻撃宣言を行って来た時に攻撃モンスターの攻撃を無効にして攻撃力の数値分だけLPを回復出来るカードだが、それはつまり攻撃モンスター一体を『対象にとって』初めて発動出来るカード。

 

 そして、タイラント・ドラゴンには青谷の言った通り『このカードを対象にする罠カードの効果を無効にし破壊する』永続効果が存在する。よって、攻撃を無効化する効果自体を無効化し、LPを回復する効果も不発に終わる。

 

 巨体に見合った凄まじい火炎が、魔法の力を宿した盾を溶かしながらゴブリン突撃部隊に向かっていき、直撃すると共に大きな爆発のエフェクトを残した。

 

 この戦闘で発生したダメージは3700から2300を引いた1400。つまり……

 

 

 

 試験官LP1200→0

 

 

 

 試験官のLPが0になった事で試験官の敗北条件が成立し、青谷の勝利条件が満たされた。

 

 

 

 

 

 試験官のLPが0になると共に、場に残っていた立体映像は消え、対戦が終了した。

 

「……か、勝った……」

 

 負けるのなら手札を全て使って負ける。その考えで掴み取ったのは勝利。

 

 試験官も、あの状況で魔法や罠による破壊も行わずに、モンスターの戦闘ダメージによって負けるとは思っていなかったのか、内心で驚いていた。

 

「試験は終了だ。多少迂闊な部分も見られたが、合格は確実だろう」

 

 試験官は半場放心状態にある青谷に声を掛け、試験の終了を伝える。

 

「……試験用のデッキとは言え、中々楽しめた。万が一、仕事以外で出会う事があれば、今度は私の自前のデッキで相手をしよう」

 

「は、はい。ありがとうございました」

 

 ようやく事実を受け止めた青谷は試験官に一礼し、デュエルフィールドを後にする。

 

「……まさか、訳も分からないまま貰ったカードのお陰で、勝つ事が出来たなんてね……」

 

 青谷は誰にも聞こえないほどに小さな声で呟き、デッキからカードを一枚抜き取る。

 

 そのカードは、試験デュエルのフィニッシャーとなったタイラント・ドラゴンのカード。

 

(……これからよろしくね、タイラント・ドラゴン)

 

 青谷は内心で呟いてから、カード(貰い物)をデッキに戻したのであった。

 

 




どうも、作者の紅卵です。

今回初となるデュエル描写でしたが、いかがだったでしょうか。所々不足気味な部分もあるかもしれませんが、少しずつ良くしていきたいです。

……特に良くしたいのが、モンスターの詳細表記方法ですかね。今回のようにすれば良いのか、それとも今回の物にモンスター効果を乗せた物を書くべきなのか……

ちなみに作者的に一番『やっちまった』的な印象があるのは、今回の試験官とのデュエルでの試験官のデッキ内容と、試験官のキャラ。

だが後悔はしない←← カッコいいモブキャラが居てもいいじゃないですか!!

では、第三話にてまたお会いしましょう。


PS もしかしたら、今回の前半部分は無駄な部分に思われるかも……

PS2 自分でも思わない内に書いていたら今回の文字数が10000字を突破していたでござる。
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