時はデュエルアカデミア入学試験から数日が経ち、場所は熱い日差しに照らされながら目的地へ進む船の上。波風が皮膚を撫で、潮の音が不思議と気分を高める。
筆記試験では中の下程度、実技試験ではギリギリの状況で勝利した
船の上では試験に合格した色々な決闘者が雑談やデュエルを繰り広げており、青谷はそれを聞き流しながら海を眺めている。
雑談の内容は人それぞれだが、やはり彼らも決闘者。主にデュエルモンスターズ関連の話が多く、中には幼い女の子の魔法使いのカードの中で何が一番可愛いかなど、ある意味
青谷はそれらの話の輪に自分から入ろうとは思わなかった。
と言うよりも、今はただのんびりしたいと言うのが青谷の本音なのだ。実技試験のあった日が強く頭に残っており、二度とあのような疲れて緊張した状態でデュエルはしたくないと切に願っている。
(……あの状況で強欲な壷を引けたのは、単に運が良かっただけ。それに、あの人からタイラント・ドラゴンを貰っていなかったら逆転は不可能だった……)
仮に試験官とのデュエルの前に、偶然ぶつかった謎の人物からカードを貰っていなかったら、最後の場面で発動された罠カードによって攻撃を無力化され、逆転の可能性は完全に断たれる所だった。
その事もあって、実技試験が終わった後にカードを自分に託した人物にお礼を言おうと青谷は思ったが、何処に住んでいるのかも分からないために探しようが無く、結局この入学の日まで見つける事は出来なかった。
(あの人は誰だったんだろう。あんなレアカードまで僕に渡して……)
青谷は謎の人物の正体が気になっていたが、今の状態では疑問を解決するための判断材料が一つも無い。
(……あ、島が見えてきた)
ふと視界に小さく、火山が見える陸の孤島が見え始めると、青谷は目的地であるデュエルアカデミア本校にそろそろ到着する事を理解した。
(……三年間、あの島で過ごすんだよね)
デュエルアカデミアの学院制度は全寮制。即ち、冬休みなどの長い休暇期間以外では家に帰宅する事は無い。三年間の間はあの陸の孤島の上で、自分を含めた生徒達と一緒に過ごしていく事になるのだ。
これからの学園生活を想像するだけでも、胸の中に期待が膨らむ……そんな思考を頭に浮かべようとする、その時だった。
「よっ、お前さんか? 実技試験で奇跡の逆転勝利を見せてくれた奴は」
いきなり横から、青谷とは違う黄色の制服を着た茶色い頭髪の少年が青谷に話しかけてきた。青谷は突然話かけられた事で驚いたものの、一定の間を置いて返答する。
「あ、えーっと、多分そうだと思います。貴方は?」
「俺か? 俺は
「僕は空井青谷。受験番号は61番だったよ」
受験番号37番――
「お前さん、今時間はあるかい?」
「? 島に到着するまでの間なら、あると思いますが」
「そうか。なら……」
衛は突然、持っていたリュックサックから
「俺とデュエルしないか? 直ぐに終わると思うし」
「……分かりました。少しの間だけ、相手になりますよ」
決闘者として、売られた
そして腰元にあるポーチから自分のデッキを取り出し、決闘盤に差し込む。そしてデッキから五枚のカードを手札として加え、互いに決闘の開始を意味する言葉を言い放つ。
『デュエル!!』
◆ ◆ ◆ ◆
「まずは俺の先攻で構わないな?」
「別に構いませんよ。僕のデッキだと先攻でも後攻でも大差無いですし」
「そっか。じゃあ遠慮無く……俺のターン、ドロー!!」
互いに先攻後攻を決め、先攻は衛に決まった。
「俺は手札からモンスターをセットして、カードを三枚伏せてターンを終了するぜ」
衛はデッキからカードを一枚引くとそれを手札に加え、風でカードを飛ばしてしまわないように気をつけながら決闘盤に手札の一枚を乗せた。
カードの画像データを読み取り、その場に立体映像としてモンスターを出現させるソリッドビジョンシステムだが、それは野外でも例外では無い。
船の上だろうが山奥だろうが、一定の範囲内に二つの決闘盤とデッキがあれば対戦を可能とするのが決闘盤の最大の特徴。衛の目の前には裏側に伏せられたモンスターカードが現れ、その後ろの辺りに三枚のカードが伏せられた状態で現れる。
衛のターンが終了し、青谷のターンへ移行する。青谷はデッキからカードを一枚引くと、衛の場に存在する三枚の伏せカードに目を細める。
(三枚もカードを伏せて……どう見ても、罠だよね……)
場に伏せられた三枚の伏せカードには、確実に罠が仕掛けられているのは馬鹿でも無い限り直ぐに分かる。問題は、その仕掛けられた罠にどんな効果があるかだろう。
モンスターを破壊するカードか、攻撃を無効化するカードか、考えるだけでも様々な可能性が頭を過ぎるが、今はまだ初動の段階。まずは攻めて様子を見る事から始めるべきだろうと決め付け、手札からモンスターを召喚した。
「僕は、仮面竜を召喚します」
青谷が召喚したのは、実技試験の時にもお世話になった、戦闘によって破壊された時に効果条件を満たしているドラゴン族モンスターを特殊召喚出来るモンスターの仮面竜。
このモンスターのように、戦闘で破壊された時にデッキから新たなモンスターを効果によって召喚出来るモンスターの事を、決闘者達の間ではリクルーターと呼び多用されている。
≪
「そして、バトルフェイズに移行してその裏守備のモンスターを攻撃!!」
「おっと、攻撃宣言時に永続罠カード、追い剥ぎゴブリンを発動させてもらうぜ」
衛は青谷が攻撃宣言すると同時に決闘盤のボタンの一つを押し、伏せられている罠カードを発動した。しかし、この罠カードには攻撃を無効化する効果が無いようで、仮面竜は裏側表示のカードに向かって攻撃態勢に入る。
戦闘が成立した事によって裏側表示のカードは表に返り、カードイラストからモンスターが現れる。
現れたモンスターは、独自の技術が使われている石像の姿をしたモンスターで、その守備力の数値は2000と高水準。
ここで捕捉しておくと、守備表示のモンスターを攻撃したモンスターの攻撃力が守備表示のモンスターの守備力を上回っていない場合、互いに戦闘による破壊は発生せず、守備力が攻撃力を上回っている分だけ攻撃側のモンスターをコントロールしているプレイヤーに戦闘ダメージが発生する。
仮面竜は石像に対して口から炎の
「
≪アステカの石像≫ 攻撃力300 守備力2000 地属性
仮面竜の攻撃力は1400で、アステカの石像の守備力は2000。アステカの石像の効果によってこの戦闘で発生するダメージは二倍になるため、合計ダメージは1200。
青谷LP4000→2800
(様子見のつもりが、いきなり結構食らっちゃったなぁ……)
「今の戦闘によって俺の場にある永続罠カード、追い剥ぎゴブリンの効果が発動する。自分フィールド上に存在するモンスターが相手プレイヤーに戦闘ダメージを与えた時、相手プレイヤーの手札をランダムに捨てる。こちらから見て右から二番目の手札を捨ててもらうぜ」
「うっ……墓地に捨てたのは、リビングデッドの呼び声です」
「お? 良いのが早速落ちたな。今日の俺は運が良いぜ」
追撃と言わんばかりに衛の場にあるカードが効果を発動し、青谷の手札を一枚削る。このような『手札の数を減らす』効果を決闘者達の間ではハンデスと言い、場に出て効果を発動する前に戦術を潰す事が出来るのが最大の特徴。手札を四枚に減らされた青谷は墓地に捨てられたカードを見て苦い表情を浮かべながらも、攻撃が可能なモンスターが居ないため、メインフェイズ2に移行する。
「カードを一枚伏せて、ターンを終了します」
青谷は残っていた四枚の手札から一枚を伏せ、自分のターンを終了した。
衛は自分のターンになった事を確認し、デッキの上からカードを一枚引く。
「俺は場に伏せておいた罠カード、
先のターンで伏せられていたカードの一枚を発動し、衛はカードを一枚ドローする。一度伏せてからじゃないと使えない罠カードと言う立場でありながら、カードを一枚引くだけと言う地味な効果だが、よく似た名前の強欲な壷と言うカードなどの手札を増強する大抵のカードには、デッキの中に一枚しか加える事が出来ないという制限がかけられており、その点から見れば三枚入れる事も出来てブラフにも活用出来るこのカードは、有用性に長けている。
「俺は手札からモンスターをセットして、カードを二枚伏せてターンを終了するぜ」
衛の場は守備力2000のアステカの石像に、セットされたモンスターと伏せカードが四枚。岩山の如き堅い守りを構築している。だがその代償に手札はほぼギリギリで、一枚のみとなっていた。
(守備型のデッキだなぁ……これ、船が島に着くまでに終わるのかな?)
青谷は内心でデュエルの展開に疑念を浮かべつつも、デッキからカードを一枚引く。
(……伏せカードが怖いけど、このカードなら!!)
「伏せカード、オープン!!
「!!」
「まずは手札から一枚を墓地に捨てる……僕は、
青谷は罠カードの効果発動に必要な
「そして効果を発動。このターンのエンドフェイズ時まで、罠カードの発動を封じる!!」
衛が青谷の使った罠カードに対して発動出来るカードは無く、強引な安全協定の効果が発動。フィールドに伏せられた魔法・罠ゾーンのカードの一部が
これによって衛は、このターンの間は罠カードを使用する事が出来なくなった。罠カードを多めに伏せていたのか、衛はしてやられたと言わんばかりの悔しそうな表情を見せる。
「僕は手札から魔法カード、大嵐を発動。場に存在する魔法・罠ゾーンにあるカードを全て破壊する!!」
青谷が発動したカードイラストから
そんな中、一枚だけ表側に反転し、効果を発動しようとしているカードが衛の場に存在していた。
「おっと、タダじゃ破壊されないぜ……大嵐の発動に
「!!」
チェーン。
それは
カードが効果を発動した際に、相手プレイヤーはその発動に対してチェーンを作る
この場合、青谷が使った≪大嵐≫のカードの発動宣言時に『場に存在する魔法・罠ゾーンのカードを全て破壊する』と言う効果が適用される前に、衛が場に伏せておいた≪収縮≫の発動宣言が行われたため、
まず、衛が発動させた≪収縮≫の『選択したモンスターの元々の攻撃力はエンドフェイズ時まで攻撃力は半分になる』が適用され、青谷の場に存在する仮面竜の体が縮こまるように小さくなっていくと共に攻撃力の数値が1400から700へ下がる。
次に青谷が発動した≪大嵐≫の『フィールド上の魔法・罠カードを全て破壊する』と言う効果が処理され、効果発動後の≪収縮≫のカードと効果発動中の永続罠≪追い剥ぎゴブリン≫と、二枚の
これらの効果処理の流れを
効果の処理が終わり、場から魔法や罠のカードが全て消え、残されたのは互いのモンスターのみ。
(んー、アヌビスの裁きと無効が強引な安全協定のせいで発動出来ず、纏めて除去されちまったな……まぁ、決まらなかった物は仕方無いけど)
「僕はエレメント・ドラゴンを召喚します!!」
青谷が新たに召喚したのは、ブラウン色の頭髪にピンク色の体をした四足歩行のドラゴン――エレメント・ドラゴン。先の実技試験でも、瞬間的な活躍を見せたモンスターだ。
「場に炎属性のモンスターが居る時、エレメント・ドラゴンは攻撃力を500ポイント上昇させる!!」
青谷の場に存在する仮面竜の炎の力に感応し、エレメント・ドラゴンは体の色をピンクから赤へと染める。
≪エレメント・ドラゴン≫ 攻撃力1500→2000 守備力1200 光属性
「更に僕は手札から魔法カード、強制転移を発動します!!」
「げぇっ!? そのカードって確か……!!」
青谷が発動した≪強制転移≫と言う魔法カードを見た衛は、思わず焦りの声を上げる。その理由は無論、その効果にある。
「強制転移の効果は、互いのプレイヤーがそれぞれ自分フィールド上のモンスター1体を選び、そのモンスターのコントロールを入れ替えると言う物。僕は、収縮の効果で攻撃力が半減している仮面竜を選択。そちらはどうされます?」
「ぐむむ……俺は、このセットしているモンスターを選択するぜ」
互いにモンスターを選択すると、カードの効果が適用され仮面竜とセットモンスターの位置と操作権利《コントロール》が、文字通り入れ替わる。これによって青谷は衛が使っていたセットモンスターを、衛は青谷が使っていた仮面竜を
(この裏守備モンスターは……いや、どの道強制転移の効果で表示形式は変更出来ない。なら今は!!)
「バトルフェイズ。エレメント・ドラゴンで仮面竜を攻撃!!」
メインフェイズからバトルフェイズに移行し、青谷はエレメント・ドラゴンで仮面竜に攻撃の宣言を行う。
元は同じ主が使っているカードだが、相対してしまえば互いは容赦無く敵を叩き潰そうとする。攻撃力2000と言う高水準の数値に上昇しているのが、今エレメント・ドラゴンが倒そうとしている仮面竜のおかげなのが何とも皮肉である。
エレメント・ドラゴンの放った炎の
衛LP4000→2700
そして、仮面竜は元の主である青谷の決闘盤の墓地へと送られる。場から炎属性のモンスターが消えた事でエレメント・ドラゴンの攻撃力は元の1500へと戻ってしまう。
「仮面竜の効果を発動。戦闘で破壊され墓地に送られた時、デッキから攻撃力1500以下のドラゴン族モンスターを一体、特殊召喚出来る。僕はデッキから、二体目の仮面竜を特殊召喚!!」
だがデッキから二枚目の仮面竜が現れ、エレメント・ドラゴンに再び炎の力が宿った事で攻撃力は再び2000に上昇する。
「僕はこれでターンを終了します」
青谷はバトルフェイズからメインフェイズ2へ向かわず、そのままターンを終了した。
衛はカードをドローした後、自身の手札と青谷の場に存在するカードを見比べる。
(裏守備のアイツはともかく、あのエレメント・ドラゴンは速めに除去しとかねぇと面倒だな。手札が乏しいから少し不安な面があるが、ここは仕掛けるか)
「手札から魔法カード、ライトニング・ボルテックスを発動するぜ。コストとして手札にある血の代償を墓地に捨てて、効果を発動。相手フィールド上に存在する表側表示のモンスターを全て破壊するぜ!!」
「んなっ!?」
衛が手札から魔法カードを発動すると、青場の場のモンスター達の頭上へ突然雷雲が発生する。そして、その雷雲から大量の雷が一斉に青谷のモンスター達に向かって渦を巻きながら降り注ぎ、セットモンスターを除いて全てを消滅させた。
仮面竜の効果はあくまで『戦闘で破壊された時』にしか発動出来ないため、このように魔法や罠で破壊された場合は効果で新たなドラゴンを呼ぶ事が出来ない。
「アステカの石像を攻撃表示に変更して、バトルフェイズ!!」
衛の手札は魔法カードのコストを含めて使用され、残りはもう0枚。だがこの状況で、衛は攻勢に出る決断をした。
「アステカの石像でセットモンスターを攻撃!!」
衛の攻撃宣言と共にアステカの石像がゆっくりとした挙動でセットモンスターへ向かって上昇していく。
そして、戦闘が成立したためセットモンスターが裏から表側へ反転。カードイラストからモンスターが出現し、その姿が明らかになる。
≪メタモルポット≫ 攻撃力700 守備力600 地属性
丸型の壺の形をしており、内部に赤く充血した一つの目と黄ばんだ歯が並んだ大きな口が見える、いかにも苛立ちを煽るような顔をした岩石族のモンスター……メタモルポット。
アステカの石像はゆっくりとメタモルポットの頭上へ移動する。そして、ひゅーんと言う擬音が聞こえてきそうなモーションで落下するが、堅かったのかゴォーンと岩同士がぶつかり合う音と共に弾かれた。
衛LP2700→2400
アステカの石像は守備力が高い代わりに攻撃力が300と物凄く低く、守備力600と言うこれまた低い数値であるメタモルポットすら破壊する事が出来ず、衛は戦闘ダメージを僅かに受けた。
「こんぐらいは必要経費だぜ」
「メタモルポットのリバース効果が発動。互いのプレイヤーは手札を全て墓地に捨て、その後にデッキからカードを五枚ドローします」
戦闘が行われた事で表に返ったメタモルポットなどの一部のモンスターが持つ、裏側表示から表側表示に変わった時に自動的に発動する≪リバース効果≫が発動され、青谷は手札に残った一枚を捨て、衛は手札が無いため何も捨てず、その後に互いはデッキから五枚のカードを引いた。
「じゃ、メインフェイズ2に移行するぜ。俺はカードを四枚伏せてターンを終了!!」
「僕のターン、ドロー!!」
「スタンバイフェイズ時に罠カードを発動させてもらうぜ。罠カード、岩投げアタックを発動。デッキから岩石族モンスター一体を選択して墓地に送る事で、相手プレイヤーに500ポイントのダメージを与えるカードだ。俺はデッキからグレート・スピリットを墓地に捨てて効果を発動。500ポイントのダメージを受けてもらうぜ」
「うわっ!?」
衛のデッキからモンスターカードが一枚墓地に送られると、罠カードのイラストから大きめの岩が勢い良く青谷に向かって射出された。立体映像でなかったら、トンでもない大怪我を負っていただろうと青谷は内心で思った。
青谷LP2800→2300
途中で罠カードの発動が行われたが、気にせずに青谷は今ドローしたカードとメタモルポットの効果で引いた、合計六枚のカードを見て戦況を分析する。
青谷の場には効果を発動し終え、最早使い物にならなくなったメタモルポットが一体残っているだけ。
(このカードは……よし、どんなに罠があっても、これなら届く!!)
青谷は自身の手札と衛の場を二度見すると、このターンで決着をつけるべくして行動に出る。
「僕は手札から、死者蘇生を発動。対象は僕の墓地にいる
青谷が特殊召喚しようとしているモンスターの名前を聞き、衛は前のターンに伏せておいたカードの一枚を早速発動する。
「罠カード発動。カウンター罠カード、マジック・ドレイン!! このカードは相手が魔法カードを発動した時に発動出来るが、相手は手札から魔法カードを一枚墓地に送る事でこれを無効化出来る。出来ないなら、発動された魔法カードは効果を無効化して破壊されるがな」
「じゃあ僕は手札にある魔法カード、突進を捨てて効果を無効にする!!」
衛が伏せていたカードから無数の
そして、死者蘇生の効果が成立して現れたのは、赤い衣装に青いジーンズを履いた、周囲に燃え上がる炎を出現させている魔法使いのような姿をしたモンスターだった。
≪
「炎属性のモンスターを生け贄召喚する際、炎を支配する者は二体分の生け贄とする事が出来ます。僕は、炎を支配する者を生け贄に……」
炎を支配する者の姿が光の粒子に変わり、強きモンスターを召喚するための糧となる。
そして青谷は、手札に眠る切り札を決闘盤に乗せ召喚する。
「タイラント・ドラゴンを召喚します!!」
青く広大に広がる海を渡る船の上に、巨大な翼を広げた黄土色の巨躯を持つドラゴンが現れ、咆哮を上げる。
≪タイラント・ドラゴン≫ 攻撃力2900 守備力2500 炎属性
「そいつがお前のエースか。確かに、俺のデッキとの相性は最悪だな!!」
「はい。このドラゴンには、自身を対象にした罠カードを無効にして破壊する効果があります。貴方がどんな罠を仕掛けていても……これで終わりです!!」
青谷はそう言い、バトルフェイズに移行。衛の場に存在する伏せカードを一切恐れずに、攻撃の宣言を行う。
「タイラント・ドラゴンでアステカの石像を攻撃!!」
タイラント・ドラゴンは口に炎を溜め、目の前の敵を粉砕するための攻撃を放つ準備を行う。
攻撃の宣言は行われた。もうどんな罠カードにも、この攻撃を止める手段は無い……そう、青谷は思っていた。
(どんな罠カードが来ても、もう止められないはず……!!)
「……だけど残念だったな。罠カード発動!!」
「え!?」
衛の罠カード発動宣言を聞いた青谷は、思わず疑問を覚えて声を上げてしまった。
知恵の差とでも言うのだろうか。青谷が全く考えていなかった事を、衛は平然と覆すつもりらしい。
その答えが……発動した罠カードだった。
「ディメンション・ウォール!! 相手モンスターの攻撃宣言時に発動出来て、この戦闘で受ける戦闘ダメージは代わりに相手が受ける!!」
「!?」
そう。タイラント・ドラゴンが無効化出来るのは、あくまで『自身を対象に取った罠カード』であり、それ以外の罠には対応していない。効果が戦闘ダメージに対して発動されるカードなど持っての外だ。
タイラント・ドラゴンの口から吐き出された炎の
この戦闘で発生するダメージは、タイラント・ドラゴンの攻撃力である2900からアステカの石像の攻撃力の300を引いた数。即ち……2600だ。
そして、衛が使った罠カードの効果によってこの戦闘で受けるダメージは青谷が受ける事になる。
青谷LP2300→0
◆ ◆ ◆ ◆
切り札を出し、勝ったと思ったら負けていた。青谷はショックだったのか俯き下を向いたが、そこに衛の手が見えると顔を上げた。
「ありがとな、良いデュエルだったぜ」
「は、はい……ありがとうございました」
清々しく声を掛けてきた衛に青谷は少し動揺しながらも返答し、握手を交わす。
そして、偶然にも握手と同時に島に到着した事を告げる船の汽笛が鳴った。
「おっと、到着したみたいだな。それじゃあまた、会った時には仲良くしような」
衛は青谷にそう言うと、他の決闘者達と同じように船を下りるために歩き始める。
その背中を見て、青谷は思った。
(……あの人強いなぁ……いや、僕が弱いだけか……その両方だと思うけど)
青谷は内心で呟き、一つため息をつくと、他の決闘者を追いかける形で船を降りるのであった。
どうも、作者の紅卵です。
いやぁ、前回のデュエルからうって変わって、火力勝負と言うよりは何か違う感じになりました。デッキの構成上と島に到着する前と言う時間軸の問題から、あまり罠を出させる事が出来ませんでしたが……どうだったでしょうか? プレイングミスや誤字とかが無ければ良いのですが……不安です。
あと、予定ではこの話でデュエルアカデミアの入学式の話もするつもりだったのですが、結局の所……次回にお預けに。
と言うか、今回の話はあまり物語が進みませんでした。期待していた読者様方には頭が上がりません。
では次回、第四話。
『デュエルアカデミア入学』お楽しみに。質問などがあればいつでも受け付けます。
ところで、GX時代のカードだけで他のキャラと被りの無いデッキを考えるのって、以外と難しいと思ってしまうのは自分だけですか。