様々な
周囲を海に囲まれ、中心部には大きな火山が灰色の煙を空へ噴出しているのが見える絶海の孤島の上に、その本校は建てられている。
火山がすぐそこにある島だからか温度が高く、日差しは容赦無く生徒や教師達の体力を奪っていく。その暑さはまさに常夏と言っても過言では無いだろう。
最初に青谷を含む生徒達を待ち受けていたのは、学校と言う場所の恒例行事である校長先生の無駄に長い話が中心の入学式だった。
話を聞いている生徒はほとんどいない……と言うよりも、この話を真面目に聞ける人物はよほど物好きな人か、はたまた意地で聞き続けている人以外にいないだろう。事実、デュエルアカデミアに存在する三つの階級の生徒のほとんどが既にダウンしている。
その理由は先ほど述べた暑さと、校長先生の話の退屈さが見事なまでにコラボレーションし、他の学校でもここまでは無いとすら言える地獄の空間が完成しているからである。毎年入学した生徒が体験していると考えると同情物だが、実際に一番被害を受けているのは間違い無く立ち合いをしている教師の方だろう。
一部の生徒は校長先生の話より、お
額や背中などから汗が流れ、体から水分を奪う。
そうして話を始めてから一時間と半は過ぎたのではないかと思った頃になって、ようやく校長先生の話が終わった。
(うぅ……校長先生の話が長いのは、小学生とかの頃でも同じだったけど……デュエルアカデミアでも同じなのかぁ……)
青谷は体力的にも精神的にも疲弊している体に鞭を打ち、自身がこれから住まう事になる寮へと向かう事にした。
◆ ◆ ◆ ◆
デュエルアカデミアには三つの
一つ目はトップクラスで優秀な成績を残した生徒が入れる……と言われている『オベリスク・ブルー』。制服の色は青色で、家柄などの関係で成り上がった生徒も少なくはない。ちなみに、女子は基本的に入学した時点でこの階級が確定している。
二つ目は良くも悪くも及第点な成績を残した生徒が入る事になる『ラー・イエロー』。制服の色は黄色で、住まう場所に不満な要素がほとんど無い安定した環境が与えられる。
「……うわ、ボロいなぁ……」
そして住まう場所に大して苦言を思わず吐いた青谷が配属された三つ目が……非情に悪い成績を残した生徒が入る事になる『オシリス・レッド』。制服の色は赤色で、住まう場所は通常の学校の寮と比べても環境が悪く、一軒の二階建てのアパートが寮となっている時点で色々と心配になる点が多い。
その上に、寮はこのアパート以外に無く、一つの部屋に複数の生徒が住まう事になる事も少なくない。
青谷の制服は赤色。つまり、オシリス・レッドの寮が青谷の住まう場所だ。二階に続く階段から最も近い場所にあるドアを開けると、部屋の内部が明らかになる。
複数の人数で過ごすと考えると狭そうな一室だが、眠るのに使える三段ベッドに勉強用の机とパソコン。物置用のクローゼットなど、住まう場所としての機能は最低限整っているようで、外見の割りに内部は安心出来そうだった。心配になる点があるとしたら、何かの拍子で建物が崩落してしまわないかと言う事ぐらいだろうか。
この部屋には青谷を含めてあと二人の生徒が入るらしいが、姿はまだ見えない。寮に到着していないか、もしくは校舎内を見学しに行ったのだろう。
「ふわぁ……疲れたぁ……」
青谷は荷物を下ろして背伸びをすると、疲れた体を少しでも癒すために仮眠を取る事にした。三段ある内の一番下の段のベッドに横になり、瞳を閉じて楽になる。
自然と意識が遠のいていき、青谷は意識を夢の中に落とし――
「此処がレッド寮の部屋か……」
残念ながら、青谷には仮眠する時間は用意されなかったようだ。扉から自分と同じ部屋に入る事になったブラウン色の頭髪の生徒が、部屋の感想を独り言で呟きながら入室してきた。その際に扉を閉めた音が耳を突き、反射的に青谷は体を跳ね起こす。
「くぉぉぉ……!!」
その際に二段目のベッドを乗せる木製の壁に頭をぶつけ、頭部に
「……え?」
その光景の一部始終を見ていた、一人の入室者は、ただ一言だけ呟いた。
「うぅぅぅ……」
「だ、大丈夫か?」
「これが大丈夫に見えるのなら、貴方の目はどうかしてると思いますよ……」
突然の来訪者のせいで僕の頭はボドボドだァ!! とでも言いたげな青谷は涙を拭き、心配そうに自分を方へ声を掛けている来訪者に向けて返答する。ベッドの方に一切の被害が出ていないのは不幸中の幸いとでも言うべきだろうか。
「悪い、既に先客が居るとは思ってなかったよ」
「……まぁいいですけど。僕は、ここの部屋に入る事になった空井青谷と言います。貴方は?」
まずは自己紹介を互いに行うために、青谷は自分の名前を来訪者に伝える。
「俺の名前は
互いに自己紹介を終えると、朱鷺は自分の荷物を部屋の片隅に置いた。
「さてと……俺はちょっと見学しときたい場所があるから、また外に出るけど……君はどうすんの?」
「……僕は疲れてるので、ここで待機して休ませてもらいますね」
青谷がそう返答すると、朱鷺は部屋を出て目的地に向かい出した。
「……はぁ」
青谷は今度こそと願いながら、ベッドの上で横になる。
(……寝付けないなぁ)
先ほどの出来事が原因なのか瞳を閉じても全然眠くならず、何故か船の上でのデュエルの事が思い出される。青谷はため息を一つ吐くと、ベッドから自発的に這い出て、先ほど自分で部屋の中に置いておいた荷物から、自分のデッキを取り出した。
デッキの内容を見てみると、青谷のデッキはモンスターカードが二十枚。魔法カードが十三枚。罠カードが七枚と言う
デュエルに使うデッキの枚数に制限は無いが、あまり多く入れすぎると、その分だけドローした際に狙いのカードを引ける確率が低くなるため、結果的にデッキが使いにくくなる。それ故に、基本的に初心者はデッキの最低枚数である四十枚に出来る限り抑えている。
(僕のデッキはモンスターを強化したり、戦闘をやりやすくなるカードが多めに入っている……)
青谷のデッキに入っているモンスターカードの殆どは、効果や魔法を使わないと攻撃力が1500を超えない物が多い。その代わりに、戦闘破壊された際に特殊召喚する効果を持つモンスターが多めに入っている。それ故に、攻撃力を強化する魔法やモンスターを破壊出来る罠による補助が必須となる。
しかし。
(……改めてみると、ドローソースが少ないなぁ……)
青谷は自分のデッキを改めて確認すると、デッキからカードをドローするカードが数枚程度しか入っていない事に気がついた。
先の実技試験でも逆転に繋がった魔法カード、強欲な壷が一枚。
墓地から五枚のカードをデッキに戻す事でデッキから二枚をドローする効果を持つ魔法カード。多くのプレイヤーが使用している、貪欲な壷が一枚。
そして船の上でのデュエルで相手が使っていた、自分のデッキにも入っている強力なリバース効果を持つモンスター……メタモルポッドも一枚入っている。
だが、青谷のデッキにはその三枚しかドローする効果を持つカードが入っていない。
(……三枚だけなのは、やっぱり厳しいのかな……)
デッキの上からカードを引く効果を持つカードの事は、
しかし、何も手札を増やすだけがカードの確保手段では無い。カードの中には、デッキから特定のカードを手札に加える、もしくはフィールドに呼び出す事が出来る物も存在する。それらの効果を一般的に≪サーチ≫と呼び、文字通りデッキに眠っている状態のカードを探り、限定的に手札に加えられる効果の事を指す。
青谷の場合、まだデッキ構築用のカードを元からあまり所持していないため、デッキを根本的に強化するのは難しいわけだが。
そして、悩みに悩んだ結果。
(……これからの学園生活の中で、購買部のデッキを購入して地道に強化していこう……)
自分の所持しているカードだけでは今以上のデッキにする事が出来ないと判断し、これからの学園生活で地道に強化していく事にしたようだ。
青谷は隣に置いていたデッキに使用していないカードを、リュックサックの空いている場所に入れ、デッキからカードを一枚抜き取る。
(……このカードをくれた人のためにも、頑張らなきゃ)
タイラント・ドラゴンのカードを一目見てデッキに戻した青谷は、大きな欠伸をした後にレッド寮の部屋から外に出て再び背伸びをする。
(……どうせ眠れないのなら、少し出かけて見学するのが一番だよね)
内心で行動の方針を決めた青谷は、デッキと
どうも、紅卵です。
二連続でデュエル回が続いたので、今回はデュエル無しの物語進行回。
ストーリー全体で言えば全然物語は進んでいませんが、地道に進めていくのも良いですね。
今回は青谷のデッキ構築方針と、同じ寮室のメンバーの一人の登場がメインです。鮫島校長のお話は面倒なのでカットカットカットォ!! 校長先生のお話の退屈さには青谷も敵いませんでした。
青谷のデッキはこれまでの話を見たお方になら分かる通り
【仮面竜(ドラゴン族)】【UFOタートル(炎属性)】【ドラゴンフライ(風属性)】と三種類のリクルーターが存在し、入手するカード次第では色々な派生を考える事が出来そうで、作者である俺自身もこれからのデッキの変化が楽しみだったりします。
では、次回はちゃんとデュエルの回なのでお楽しみに。
え? 精霊になった者の出番はいつなのか、ですか?
……まだ先じゃないですかね?(白目)